涙 1



 のどかな風景が広がっている。
 穏やかな陽の光に爽やかな風は、生まれて間もない小さな村に清涼感を漂わせていた。
 広い広い平原の中ほどに生まれたその村は、世界地図で見ると、ジュノンとチョコボファーム、そしてカームとコンドルフォートとを線で結び、合わさった地点にある。
 畑作を村の事業としているその村は、自然と共に生きることを選んだ若者達だけで作り上げられていた。
 魔晄エネルギーに頼った生活に慣れきった2年前までから考えると、彼らの選んだ生きる道は『ジェノバ戦役』という時代を生き抜いた人々の中に、新たな人生観が確かに生まれたと確信出来る姿と言えよう。

 クラウドは愛車を村の入り口にほど近い大樹の根元へ置くと、荷物を手に村へと向かった。
 小脇に抱えられるほどの小さな段ボール箱だ。
 中身は”植物”と伝票に書いてあるのみなのでなんの植物なのか知る由もない。
 しかし、村のあちらこちらで鍬を手に畑を耕す人たちの姿から想像するに、何かの種なり苗なり、そんなところだろう。

「…ここか」

 足を止めたのは村の入り口から歩くこと15分ほどの場所にあった一軒の家。
 丸太を組んで作られたログハウスだ。
 ウッドデッキなども備え付けられているそのログハウスは、子供たちやティファが一目で気に入ってしまうほど、木の香りの高い素敵な佇まいだった。
 村にある他の家も、木を使って作られたものばかりだ。
 ログハウスも少なくない。

 数回ドアをノックする。
 しかし、応答もなければ家の中に人の気配も感じない。
 まだ昼日中だ、恐らく畑で仕事をしているのだろう。

 配達伝票を見る。

 ”差出人:リー・ナン 届け先:ヴィレイ・パルトナ

 ヴィレイ…という名では、男性なのか女性なのか判別が難しい。
 とりあえず、クラウドはログハウスから離れると一番近くの畑へと向かった。
 途中、日に焼けた小柄な男とすれ違ったのでヴィレイ・パルトナという人物について訊ねる。
 若い男で、クラウドが向かおうとしている畑にいる、という情報が手に入った。

(男…か)

 どんな男か聞けば良かった、と思ったのは、着いた畑で働いているその人数が思った以上に多かったことだ。
 6人はいる。
 そしていずれも若い男だ。
 大きな声で呼びかければ問題はすぐ解決するだろうが、なにぶんクラウドはそういったことが出来ない。
 ようするに恥ずかしい。
 一番近い場所で畑を耕している男にとりあえず声をかけてみる。

 精悍な顔立ちの男が顔を上げ、クラウドは少し意外に思った。
 畑仕事が似合わない風貌だったからだ。
 よく鍛え上げられた体つきなのはすぐ分かった。
 連日の畑仕事で身体が引き締まったのだろう。

「なにか?」

 不審な者を見るような目つきで軽く警戒する男に、一言侘びをしてからダンボールを見せる。
 すぐ男は警戒を解いてほんのり笑った。

「悪い。最近、俺達の生き方に難癖つけてくるおせっかいな奴が顔を出すようになってたから、ちょっと警戒した」

 そう言って、男は首に巻いていたタオルで手に着いていた泥を拭い、ダンボールに手を伸ばした。
 彼がクラウドの配達先の人間だった。

 受け取りのサインをもらいながら、クラウドはマジマジと男を見た。
 ダンボールを下敷き代わりにサインをする男…ヴィレイは、漆黒の髪を短く切り、まずまずな男丈夫と言える。
 サインを終えて顔を上げたその瞳も、夜空を髣髴とさせる黒曜石。
 身長はゆうに190センチはあるだろう。
 クラウドよりうんと高いことは間違いない。

「ご苦労さん」

 ペンと伝票を返しながらヴィレイは、今度はクラウドの顔をマジマジと見下ろした。
 なんとなく居心地の悪さを感じながら、軽く会釈をして背を向けようとしたクラウドに、ヴィレイは自分の不躾な態度に気がついた。

「あ〜、悪かった。つい…」
「つい?」

 聞き返さなければ良かったのに、ついつい聞き返してしまったクラウドに、ヴィレイはニヤリ、と笑った。

「いや、同じ男なのにベッピンさんだから」

 ムッとして眉間にしわを寄せ、クラウドは今度こそ背を向けて歩き去った。
 背後からヴィレイが声を殺して笑っている気配がする。


 ベッピンさん、と言われて喜ぶ男がいるか!


 ムカムカしながら村の入り口まで戻り、フェンリルを目指す。
 途中、数人の村人とすれ違った。
 いずれも若い男や女で、畑仕事がしやすい装いに身を包んでいる。
 よそ者であるクラウドを物珍しそうに見るでもなく、自分たちの話に花を咲かせながら歩いていた。
 持ち場となっている畑にでも向かうのだろう。

 フェンリルに着いて、クラウドはホッと息を吐き出した。

「…まったく…」

 苛立ちながら、もう1度今度はふ〜っ…と深く息を吐き出す。
 そこでハッと気がついた。

 全身が異様に緊張していたのだ。

 何故、こんなにも身体に力が入っていたのか理由が分からない。
 分からないが、これまで戦いの中に身を投じた生活の中で自然と培ってた己の身を守る本能が、何かを敏感に感じ取っていたのかもしれない。
 しかし、危険なことは何もなかった。
 強いてあげるならば、ヴィレイに警戒されたことだけ。
 しかも、”軽く”警戒されただけだ。

 だが、この圧迫から解放されたような感覚はなんだ?

 クラウドは腑に落ちない気色の悪さを感じながら愛車のエンジンを噴かせた。
 そうして、帰路に着きながらふと気づく。


 村には子供の姿が1人もなかったことに。


 *


 クラウドがセブンスヘブンに帰り着いた頃を見計らったかのように携帯が鳴った。
 ガレージに愛車を突っ込むと、ポケットから携帯を取り出す。
 ディスプレイの”リーブ”の文字にクラウドは軽く眉をひそめた。

「はい」
『クラウドさん、いま大丈夫ですか?』
「あぁ、いま丁度帰ったところだ」

 話しながらガレージを出て裏口へ向かう。
 今日の仕事は昼間の小さいダンボールを届けることで終わっている。
 オレンジと紫の絶妙なグラデュエーションが空に描かれ、薄い雲がその中をたゆたっている。
 1日の終わりを美しく彩る空を少し見上げながら、ゆったりした気持ちで眺めつつ裏口のドアへ手を伸ばしたクラウドは、リーブの『じゃあ、すいませんけど今すぐこっちに来てもらえませんか?』との言葉に固まった。

「は…?」

 思わず低い、呻く様な声が漏れたのは仕方ないだろう。
 何を血迷ったことを言うのか、この男は。
 1日の仕事を終えて、ホッとした人間になんと横暴なことをのたまうか。
 しかし、リーブがこんな無茶なことを言うことは滅多にない。
 恐らく何か大きな問題があって、進退窮まった状態でのSOSなのだろう。
 それを察したものの、咄嗟に出てしまった不満の声は許されてしかるべきではないだろうか?

『すいません、お疲れだとは重々承知しているんですけど…』

 歯切れの悪い言い方に苛立ちが募る。
 どうあってもWRO本部に来て欲しい、という要望を取り下げるつもりはないのだ。
 相手がバレットやユフィなら絶対に応じないところだが、この星一番多忙な男からのSOS。
 それを無視することは不可能に近い。
 そしてクラウドは、この苦労性の仲間が気に入っている。
 自分で出来ることならいつでも手を貸してやりたいと思っている。

 クラウドは大きな大きな溜め息を吐くと、了解の返事を返したのだった。

 1時間後。
 リーブは渋面で現れたクラウドに心底申し訳なさそうな顔をしてコーヒーを自らの手で淹れた。

「ティファさんも来るかと思っていました」
「デンゼルとマリンだけ置いては来れない」
「あぁ、そうですね」

 言いながら、リーブはどこかちょっとだけホッとした顔を見せた。
 クラウドはその表情に軽く目を眇めた。
 まるで、ティファには来て欲しくなかったので安心した…と思っているようだ。
 リーブはクラウドの正面に腰掛けるとコーヒーを勧めながら自らも口に運んだ。
 クラウドは勧められるまま、腑に落ちないものを感じつつ一口啜った。
 ティファが淹れた方が美味い、などと、他者が聞いたら惚気以外の何ものでもない感想を持ったが、それを言葉にするほど非常識ではなかった。
 口にしたのは別のことだ。

「それで、一体なんだ?なにか問題でも?」

 問題があったからこそ呼び出したはずなのに、リーブは時間を稼ぐようにコーヒーを淹れ、今はそれをゆっくりとした仕草で味わっている。
 仕事はなんでもスピーディーにこなすリーブらしからぬ態度に、自然、胸に不安と苛立ちが募る。

 さっさと厄介ごとを打ち明けてくれれば、とりあえず今日のところは帰ることが出来るのに…。

 クラウドが軽い苛立ちを感じていることなど百も承知のリーブは、これ以上躊躇うことの愚かさを思い、背筋を伸ばした。
 真っ直ぐクラウドを見る。
 真剣そのもののリーブにまた、クラウドも苛立ちを抑えて真正面から見つめ返した。


「単刀直入に言います。クラウドさん、暫くこちらの仕事を手伝って欲しいんです」


 クラウドは驚かなかった。
 具体的にどのような難問が持ち上がっているのか、ということまで分かりようもなかったが、リーブがこんなにも躊躇いながら連絡を取ってきた時点でこう言い出すことは察するにたやすい。
 しかし、その次に打ち明けられるであろう内容こそが重要だった。


「俺に何をして欲しい?」


 要人の警護か、反WRO組織への警戒あるいは攻撃か、それとももっと単純に未だ復興の勢いに紛れてよからぬことを企む愚か者共の一掃か、モンスター駆除か…。

 想像しうる限りで挙げられた”問題”とはこれくらいで、だからこそクラウドは眉をひそめる。
 何故なら、”この想像出来うる程度の問題”ならば、ティファの目を気にしてクラウドを呼び出す必要がないからだ。

 所詮、クラウドはクラウド以外の何ものでもなく、リーブのように多忙で煩雑な事情に日々負われている人間の苦労や苦悩は計り知ることが出来ない。
 だからこそ、彼の方から援助を求めたその時は、クラウドは絶対にその手を掴んでみせると心に決めていた。
 故(ゆえ)にクラウドは目を逸らさずにリーブを見る。
 そしてリーブも、クラウドの思いをほぼ正確に見抜いていた。
 見抜いていたからこそ、これから願うことに良心の呵責を感じながら、それでもやはりクラウドを頼るという選択を誤りだとは思わなかった。


「ユフィの様子がおかしいんです」


 クラウドは目を見開き、思いもしなかったその言葉に軽く息を呑んだ。


 ユフィ・キサラギ。

 ウータイ出身の忍で、おおよそ『忍』としては不相応なおちゃらけた人格でもって形成されている女。
 しかし、ひとたび”任務”という名がつけば、日頃見せる彼女のその一面は、到底信じることが出来ないほど”ウータイの忍”としての”質”を上質のものとなさしめる働き振りを発揮する。

 そのユフィの様子がおかしい。

 ユフィという女の子がおおよそ女の子らしくなく、”女性”として見たら少し個性的過ぎる…ということはもう仲間内以外であろうと周知の事実で、わざわざリーブが改めて言う必要などない。
 ということは他でもなく”任務中”の様子がおかしい、と言うことになる。

 クラウドはリーブが何を指しているのかを瞬時に察し、眉間にしわを寄せた。

「…体調が悪いとか…そういうことではないんだな…?」

 念のため聞いてみる。
 予想通り、否、という答え。
 リーブは深く溜め息を吐くと冷めつつあるコーヒーの水面を見つめた。

「3ヶ月前までは普通でした。いつものように”隠密行動”を完璧にこなしてくれていましたよ。しかし、急にミスするようになりましてね」
「ミス…?」
「えぇ。”隠密行動”としては致命的なミス…」

 言葉を切って顔を上げる。

「動向を探っているターゲットに動きがバレたんです。それも、WRO隊員を数名巻き込んでしまうほどの…言ってしまえば大失態でした」

 思いもしなかった厳しいその内容にクラウドは言葉をなくしてただただリーブの深い色合いを帯びた瞳を見つめた。
 ジェノバ戦役から今日まで、大変な苦労を自ら背負い込み、最前線で星の敵となりうるあらゆる脅威と戦ってきた男。
 彼の苦労と苦悩は自分などでは到底負いきれるものではない、とクラウドは分かっている。
 そしてその覚悟も、並大抵のものではないことも知っている。
 それだけのものを飲み込む決意を持って臨んでいるリーブが今、こうして厳しい局面に立たされている。
 それも、仲間のミスというあってはならない事態によって、大切な部下を危機に晒してしまった。
 それに伴い、ミスを犯したユフィ自身をも深く傷つけることになっている。

 ユフィの傷はウータイの忍、全体の汚名だ。

 恐らくそこまでリーブは考え、背負い込んでいるに違いない。

「3名の精鋭隊員がユフィと共に任に就いていました。自分の力で戻ってきた者はユフィと1名だけでした」

 沈痛な面持ちで告げるリーブに、クラウドは掠れた声で「残りの2人は?」と訊ねた。
 急速に口腔内が干上がっていく感覚は、しかし、リーブの「ユフィと、異変を察して駆けつけた隊員によって辛くも命を取り留めました」との言葉に、ホッと緩んだ。
 しかしそれでも、厳しい内容には違いない。

「それで…ユフィは?」

 リーブは目を伏せるとゆっくり頭を振った。

「失敗してしまった直後はたいそうな落ち込み具合でした。ユフィ自身、怪我を負っていたこともあったので暫く絶対安静状態だったんですけど、それにしてもあのお元気者が一日ずっと、ベッドの中でボーっと天井を見つめている姿は…」

 言葉を切って深く思い息を吐き出す。
 当時のことを思い出したのだろう、痛ましいものを見る眼差しでコーヒーを見つめる。

「よほどクラウドさんとティファさんを呼ぼうと思ったか…。怪我をしてはいましたし、言った通り、絶対安静状態ではありましたがすぐに怪我は治ったんです。正確には2日、身体を休めてくれさえすれば良かったんです。それなのに、あれだけ元気がない姿は…辛かったですね」
「……呼べば良かったんだ…」

 思わず口をついて出てきた言葉に、しかしクラウドは言いながら、もう分かっていた。
 散々迷った挙句、結局自分やティファに声をかけなかったということは、それがその当時のユフィにとって最善のことだと判断したからだ。
 なのに、もう過去のこととなっていることでリーブを責める言葉は口にすべきではなかった。
 だが、リーブはクラウドが思いなおして謝罪する暇を与えず、苦い笑みを浮かべると、
「えぇ、本当に。申し訳ありません」
 そう頭を下げた。
 だから、クラウドは口の中でモゴモゴと「いや…」と言うしかなかった。
 リーブは苦笑をスーッと消すと、少し遠い目をしてクラウドの向こう側を見た。
 何もない空間を見つめるその目は、何かを深く見極めようとしている時の表情だ。

「思えば、あの頃から既におかしかったんです」

 虚空を見つめていたその目の焦点が、少し驚いているクラウドと重なる。
 大失態を犯したこと自体が『おかしい』と言っているのかと思っていた。
 だが、リーブのこの言葉から、”失態自体”を当時はおかしい、と思っていなかったということが分かった。
 魔晄の瞳を真っ直ぐ見据え、リーブは黙ったまま耳を傾けるクラウドへ言葉を続ける。

「1週間後、ユフィは再び任務に復帰しました。彼女のたっての願いで、私は拒否をすることも、思いとどまらせる言葉をかけることすらもしませんでした。ユフィの気持ちは分かっていたつもりだったんです。自分の痛恨のミスのせいで、隊員2名が重態、1名は重傷を負いました。ウータイの忍というブランドにも傷がついた…その汚名を雪(すす)ぎたい、と思うのは当然のことだと思ったんです。しかし…」
「実際はそれだけじゃなかった…ということか?」

 リーブの言葉を先取りすると、WRO局長という重責を担う男は深く頷いた。

 そして、ゆっくりとした動きで腰を上げると、ソファの後ろにある自分のデスクへ回り込み、インターコムを押した。
 すぐに秘書から返事が返ってくる。

「中佐を呼んで下さい」

 突然出てきた”中佐”という呼称。
 このWROにおいて中佐と言う階級を持つ者は決して少なくはない。
 しかし、この深刻な話し合いの場面において呼び出される”中佐”という階級を持つ者は、恐らく1人しかいないだろう。
 ほどなくして現れたその青年の姿に、クラウドは自分の予想が正しかったことを知った。

「シュリ」

 部屋に入り、まずリーブに敬礼をした青年中佐、シュリの姿にクラウドはなんとなく頬を緩めた。
 初対面ではこの青年、随分傲岸不遜だったのだが、リーブには一目も二目も置いているところがなんだか微笑ましい…。

 シュリは椅子を勧めるリーブに頑なとも言える態度で固辞すると、スッと背筋を伸ばしてリーブの背後に着いた。
 そうすることで立ち位置は自然とクラウドの真正面になる。

「お久しぶりだ、クラウドさん」
「あぁ、元気そうだな」
「まぁなんとか」
「そうか」

 短いがなんとなく充実した挨拶を交わす。
 リーブはその短い挨拶が終わったのを見計らうと、シュリへ目配せをした。
 青年は手にしていたファイルをクラウドとリーブが向かい合って座っている間にあるテーブルへ置いた。
 どうやら極秘事項らしいファイルをクラウドは覗き込んだ。

 建設中なのか、それとも建設途中で放棄された建物なのかは分からない。
 むき出しの鉄骨の影に隠れるようにして数人の人影が写っている写真。
 しかし、その写真が意図を持って捉えているのは1人の女のみだった。
 まだ若い女だ。
 肩まで伸びた黒い髪はサラサラのストレート。
 前髪はカチューシャで止めて後ろへ流しているため、額がむき出しだ。
 卵形の輪郭をした顔には髪と同じ漆黒の瞳。
 やや吊り目勝ちなのだが、かなりの美人と言える。
 しかし写真写りが悪いのか、折角の美人は吊り目という特徴を存分に生かしたムッツリ顔だった。

 クラウドはサラリと女の顔を一瞥すると、視線を上げた。

 それで?と目だけでシュリ、リーブへ問いかける。
 シュリは黙ったまま軽く目を伏せた。
 リーブへ答えを譲った形になる。

「3ヶ月前の事件から、ユフィが密かに追っているらしい女です。恐らく、3ヶ月前の隠密行動失敗の鍵を握る人物かと思われますが…」
「…本人に確かめてないのか?」

 少し呆れたような声で問うと、リーブは軽く肩を竦めた。

 そう言えば、3ヶ月前にユフィが任務を失敗した…という直接の原因も、そもそも何を探っていたのか、ということすらも自分は説明を受けていないのだと気づく。

 クラウドは溜め息を吐くとソファに深く座りなおした。

「最初から話してもらおうか。そもそもユフィに何を探らせていて、どうして失敗したのか…。心配しなくても、話を全部聞いた後で『やっぱりこの話しはなかったことにしてくれ』なんて言ったりしない」

 リーブの疲れた瞳が、ホッと安堵の色合いに染まった。