おかえりなさい1
カダージュ達との戦いが終わり、あの教会で目が覚めた俺に最初にかけられた言葉。
おかえりなさい
何て優しい言葉なんだろう、今まで気付かなかった言葉。
おかえりなさい
何て温かい存在なんだろう、その言葉をかけてくれる人達は。
おかえりなさい
なんて幸せ者なんだろう、その言葉をかけてくれる人達を持つ事を許されている自分は。
おかえりなさい
きっとこれからも様々な出来事があるだろう。でも、この言葉をかけてくれる人達がいる限り、何度でも立ち上がれる。
だから約束する、この言葉をかけてくれる人達に。必ず帰る…。
ただいま、を言う為に。
カダージュ達との戦いも終わり、星痕症候群も奇跡の雨で癒され、これ以上はない幸福な笑顔で満ち溢れる教会。
その教会でひとしきり幸せな一時を満喫した後、集まり、癒された人々はそれぞれあるべき場所へと一人、また一人と帰っていき、やがて教会は本来の静けさを取り戻した。
そうしてその頃にようやく、俺達も教会をあとにし、セブンスヘブンへの帰路に着いた。
本当ならティファやデンゼル、マリンだけでセブンスヘブンに戻りたかった。
勝手に出て行って散々心配を掛けてしまった事をきっちりと三人に謝りたかった。
しかし、まあ、いかんせん俺の仲間は、お祭り大好き人間が多い。
更にはマリンやデンゼル、ティファまでが
「こんなに素敵な日なんだから、皆でお祝いしなくちゃ!」
と大乗り気だった為、かつての旅のメンバー全員とセブンスヘブンでお祝いする事となった。
セブンスヘブンに着くまで、仲間に散々家出の件で説教を受け、その間俺の後ろでデンゼルが、かつての旅の間での俺の話を皆から聞きたがり、調子に乗ったユフィを中心に、皆がある事ない事話すものだから、落ち着いて彼女と話す時間なんか全くなかった。
皆…、わざとやってるんじゃないだろうな…。
そんな調子でセブンスヘブンの前に着いた時、ハッと我に帰って思わず俺は店のまん前で立ち止まってしまった。
皆が一斉に俺を怪訝な顔で振り返るのが、いちいち見なくても気配で分かる。
勝手に出て行って、電話をくれても絶対に出なくて、心配掛けて、そんな酷い事しておいて本当に俺はここに帰ってよいのだろうか。
そんな後ろ向きな考えに一瞬囚われる。
そう、本当に一瞬だけだった。
何故かと言うと、立て続けに後頭部と背中をはたかれた、否、殴られたからだ。
しかも数回ずつ…。
少しの手加減もなく…。
「あんた、またくっだらない事考えてんじゃないでしょうね!!」
「おら、びしっとしろ、びしっとよー!!」
「いつまでもこう、ぐずついてんじゃねぇぞ!子供の教育に悪いだろうが!!」
「全く、クラウドは戦闘の時には頼りになるのに、それ以外ではまだまだ子供だねぇ」
完全に無防備だった事と、必要以上に入っていた力の数々に思わず頭を抑えてうずくまる。
そんな俺を、
「おかえりなさい」
彼女の笑みを含んだ温かい声が包み込んだ。
はっとして恐る恐る顔を上げる。
店の入り口に佇み、真っ直ぐに俺を見て微笑んでくれる彼女を見て、
俺の居場所はここなんだって
今更ながらに気がついた。彼女の微笑みに俺も自然と笑みが浮かぶのを抑えられない。
「ただいま」
俺のその言葉にマリンとデンゼルが「おかえりなさい」と大きな声で言ってくれながら、思いっきり飛びついて来てくれた。
久しぶりのわが子を両腕に強く抱きしめると、暖かな懐かしい匂いがして胸が一杯になる。
そう、俺の居場所だ…と再確認する。
「へへっ!いよぉっし!!今日はじゃんじゃん飲むぞ!!」
「もっちろ〜ん」
「俺も飲むー」
「駄目でしょ、私達はジュース!!」
「そ、そのつもりで言ったんだい!」
「そうかなぁ、デンゼルあやしい!」
「ほらほら、二人共喧嘩しないの。皆、今日は腕によりをかけて美味しい物作っちゃうんだから、早く入って」
「やったね、ティファおいらの好きなデザートも作ってよ」
「うん!任せといて」
などなど、シドの言葉に次々と明るい声が上がったのは言うまでもない。
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