「それで、2人とも気は済んだか?」 しかめっ面のデンゼルとマリンにクラウドはため息をついた。 「まぁ良いじゃん?そのうち戻ってくるって客足もさ〜」 その隣でユフィは満足げに腹を撫でている。 ティファほどの味ではなかったが、まぁまぁ、そこそこ満足と言ったところだ。 なにしろ、全て『保護者様』の奢りだ。 他人からの奢りだと思うと普通に美味しい食事が更に美味しく感じられる。 ユフィのそんな罰当たりな考えをクラウドは実に正確に見抜いていた。 と言うよりも、まぁ今日までの付き合いでイヤでも分かる。 「まったく…お前は少し黙ってろ」 「あ〜、はいはい。今日のパトロンさんだから一応言うこときいとくわ〜」 「聞いてないだろ」 「はいは〜い」 「………」 実に誠実さの欠ける態度に一瞬だけ怒りがこみ上げるが、すぐ虚しさにとって変わる。 ユフィにこちらの常識を訴えても無駄だ…。 それに、ユフィの相手をするよりも『敵情視察』の結果を消化し切れていない子供たちの方が優先事項。 (どうしたもんかな…) 憂鬱な気持ちで『店』兼『自宅』のドアを開け、クラウドは固まった。 らしく。(後編)冷静に考えられるだけの余裕があれば、素知らぬ顔をして、 『あ、ごめん、ちょっと開店の時間、間違えた〜』 とか、 『あれ?お店、今日はお休みですか?』 とか誤魔化して、赤の他人のフリをしたら良かったということに気づいただろう。 それが成功する可能性は非常に高く、彼女はこの時点では自分たちの正体に全く気づいていなかったのだから。 だが、元々こういう突発的なアクシデントに咄嗟に対応出来るほどクラウドは器用ではない。 ユフィも、実は器用なフリをしてはいるが、実はかなり強引に、と言うかバレバレで苦し紛れなその場しのぎしか出来ず、あまりにも哀れなその姿に相手が気づかないフリをしてやっているだけなのだ。 いわゆる、お情けで急場を凌いでいた…というか、凌げていなくても本人はそうと気づいていないというか。 話がそれたが、ようするに! 不測の事態に弱いクラウドとユフィ、そして落ち込んでいたデンゼルとマリンは固まった。 帰宅してドアを開けたら目の前にティファが立っていたのだ。 まだ19時だというのに! 予定では『夜まで』帰れない、だったはず。 そう…夜まで。 夜って……結局、何時なわけだ? とか、そんなことを考えている場合ではない。 ティファは最初、当たり前のように堂々と入ってきた4人を見て、びっくりしていた。 しかし、『いるはずない』と頭から思い込んでいた4人に比べて立ち直るのはうんと早かった。 「すいません、今日はお休みなんです」 申し訳なさそうに眉尻を下げ、ささやかな笑みを浮かべて近寄った。 頭を下げようとして…ハタと止まる。 その中途半端すぎる姿勢のままクラウドをジ〜ッと見つめた。 正確には、クラウドの瞳をいぶかしげに覗き込んだ。 魔晄の瞳を。 しかし、そんなことクラウドには分からない。 冷や汗をダラダラ流しながら、脳内では必死にティファへの謝罪を並べ立て始めた、それも猛然と。 この場合、実は謝るほどのことではないのに(何しろ、別に悪いことをしたわけじゃない)、その事実に気づくことすら出来ない。 ひたすら、己の脳みそに入ってる少ない語彙を引っ掻き回し、どの台詞を口にすべきかパニックになっていた。 ユフィと子供たちは、ひたすらことの行方を見守るばかり。 しかし勘違いしてはいけない。 クラウドを筆頭とした4人の激しい混乱は実はほんの数秒のこと。 「クラウド!?」 クラウドの正体に気づき、目を丸くしたティファが残り3人の正体を見破るまでほんっとうにわずかな時しか経過していなかった。 * 「それで?」 いささか呆れかえった顔をするティファに、子供たちは小さくなって椅子に座っていた。 クラウドもティファの隣に腰掛けたまま居心地悪い思いを味わっている。 ユフィはというと、正体がばれた瞬間、何故か開き直ったようだった。 今はすっかり高みの見物と言った態度でティファが淹れてくれたコーヒーをすすっている。 説明するつもりはさらさらないらしい。 子供たちもすっかり縮こまっていてとてもじゃないが説明は無理だ。 (俺か…?説明するの…) せめてユフィも少しくらいは協力しろ、と思いながら、いや、やはりそんな気配りをこいつに求めても無駄だ、とクラウドは自分の置かれている立場を甘んじて受け入れることにした。 随分成長したものである。 そんなクラウドからの途切れがちな説明で大体の話の流れを理解したティファは、苦笑を浮かべると改めて子供たちを見た。 そして、片肘をテーブルに突いて頬を乗せた。 「デンゼル、マリン」 ビクリ、と小さな肩が踊る。 ティファは少し目に力を入れた笑みを浮かべて2人を見ていた。 それは、まるでちょっとした悪戯を窘める世の母親のようだ、とクラウドは思った。 同時にホッとした。 決してティファは怒っていないし気分を害してもいない。 しかし子供たちのしたことを喜んでいるわけではなく、2人の『考え』が間違えていると思っている。 母親としてその間違いを正し、きちんと導いてやらないと、と考えている意思を感じた。 その頼もしい横顔に、クラウドの胸には急速に安堵感が広がる。 つい先ほどまで占めていた居心地の悪さがうその様にゆったりとした気分で見守ることが出来た。 「2人とも、『アレイボス』に行ってみてどうだった?」 「え…うん、その…」 「……普通のお店だった…」 自分たちへの叱責が開口一番に飛ぶとビクビクしていた2人は、ほんの少し虚を衝かれた顔をしたが、ボソボソ答えた。 ティファはうんうん、と頬杖をついたまま頷くと、 「マリンの言う『普通のお店』って具体的にどんな感じ?」 答えに困るような突っ込んだ質問をする。 マリンは眉尻を下げたままデンゼルと顔を見合わせ、チラッとクラウドやユフィへ視線を向けた。 大人2人が助け舟を出してくれそうにないことを察し、おずおずとティファへ視線を戻す。 「その……うち(セブンスヘブン)と同じ感じ…」 「あ、でも、料理は絶対うち(セブンスヘブン)の方が美味しいし、安かった!」 慌てたようにデンゼルが身を乗り出した。 ティファが不機嫌になると思ったのか、それとも『アレイボス』への純粋な対抗心からか、あるいはその両方か。 マリンもデンゼルの言葉に強く同意して何度も頷く。 必死な様子の2人が微笑ましい。 しかし、ここで表情を和ませるわけにはいかない。 ティファはこれから子供たちにとても大切なことを教えるのだから。 だから、クラウドは無表情を保ちつつ、口角が上がらないように努めた。 「そう。それで、お客様のご様子は?スタッフの人の接客はどうだった?」 途端、2人の勢いがシュン…と萎む。 まるで、子犬が耳と尾を垂らしたようだ。 ティファにはその姿だけで十分分かっただろうに、あえて言葉にして説明するよう促した。 デンゼルもマリンも、渋々「みんな、楽しそうだった」「スタッフも…良かったと思う」と答えた。 子供たちにとって、それはとても受け入れにくいことだった。 自分たちの仕事に誇りを持っているだけに、ライバル店で楽しそうに元・常連客たちが楽しそうに飲み食いをしている姿はとてもとても辛いことだった。 同時に、自分たちがライバル店を褒めているというのに全く動じず、それどころか微笑みすら浮かべてうんうんと頷いているティファに苛立ったようだ。 不満そうな色が幼い顔ににじむ。 「そうなの。なら、良いんじゃないかしら」 「「ティファ!」」 ニッコリ笑ってそう言ったティファに、デンゼルとマリンが声を上げた。 頬杖を解き、ん?と小首を傾げて『まだなにかある?』と仕草だけで問う。 勿論、2人は『まだありまくり!』だ。 身を乗り出してティファへ詰め寄った。 「ティファは悔しくないの!?」 「うちのお客、沢山とられてるんだぞ!?」 「そりゃ、お店の中とか見た目とか、新しいからうちよりも可愛いかもしれないけど!」 「それでもさ、うちの方が料理は美味いし安いのに…!」 「今まで仲良くしてくれてたのに新しいところが出来たらあっさりそっちに行っちゃったんだよ!?」 「酷いだろ!?」 小さな胸の中でずっと燻っていた黒い思いをドッと吐き出すうち、2人の顔はあっと言う間にくしゃくしゃになって、その両目には悔し涙が薄っすら浮かんだ。 悔しくて…悔しくて堪らない。 それがビリビリ伝わってくる。 黙って見守っていたクラウドも、高みの見物と言わんばかりの態度だったユフィも、子供たちの様子に、言葉に切ない気持ちがあふれてきた。 しかし、それでもしゃしゃり出ることをグッと堪える。 2人の気持ちを受け止め、受け入れ、そうして綺麗に返してやれるのは『母親』でもあり『セブンスヘブンの店長』であるティファだけなのだから。 ティファは1回、ゆっくり目を閉じて小さく息を吐き出すと目を開けた。 凛としたその瞳には力強い光が宿っている。 「デンゼル、マリン」 名を呼び、そして改めて口を開く。 「私たちがお店をすることで気をつけていることは何?」 それは質問ではなく話の流れの中の台詞だったらしい。 2人の反応を待つことなく言葉を続けた。 「私はね、このお店に来てくれる人たちに温かい食事と、ほんの少しのゆったりした時間を提供して、1日の疲れをとってもらって、そうしてまた明日一日、頑張って生きて欲しい。そのお手伝いが少しでも出来たら嬉しい。そういう気持ちでお店を始めたのよ。そのことは2人にも日頃から言ってきたでしょ、違う?」 「「でも!」」 「勿論、それだけじゃないのは確か。何度もお店に来てくれたら嬉しいし、仲良くなれたらもっと嬉しいし仕事も楽しい。また来て欲しいと思うし、そう思えることで私自身も頑張れる。でもね」 言葉を切って目元を和らげると、半べそをかいている2人に微笑む。 「どのお店に行くのかはお客様に決定権があるんだよ?それを私たちが『裏切りだ』とか『酷い』とか思うのは間違ってる」 「「でも……」」 「勿論、お客様が減ったから売り上げは落ちちゃってるけど、だからと言って倒産しちゃうとか、生活出来ないって心配は全然ないし。それに、『アレイボス』が出来てからも、変わらずうちに来てくれるお客様たちが沢山いるでしょ?」 「「………」」 「デンゼルとマリンも気持ちも分かるよ。やっぱり、うちに来てくれていたお客様が他のお店に通うようになってうちに来なくなったら寂しいもの。でもね、デンゼル、マリン。そういう『来てくれなくなったお客様』にばかり目を向けてはダメ。そんなこと、今、セブンスヘブンを大好きだ!って言ってくれているお客様に失礼でしょ?」 俯き、ポロッ…と涙をこぼしたマリンとデンゼルにティファは言った。 「悔しいとか、寂しいとか、そういう気持ちってね、すごく気をつけててもどうしても接客とかの態度に出るんだよ。それって今来てくれているお客様にすごく失礼で、すごく酷いことでしょ?」 違う? 問われて2人は小さく小さく頷いた。 頷いた拍子にまた、ポロッと涙が落ちる。 「だからね、発想の転換だよ、デンゼル、マリン。『ライバル店が出来てお客が減った』じゃなくて『新しい店が出来たのにまだこんなにお客様が来てくれる』ってね。そうしたら、今来てくれているお客様を自然に心から大切に思えるし、また来てくれたら嬉しいなぁって思えるし、1人1人のお客様をもっと見られるようになるでしょ?」 言葉を切ってニッコリ笑う。 「それにね、一番忘れたらダメなこと。それは、今来て下さってるお客様はうちを気に入って下さってるんだよ。他のところにはない『セブンスヘブンらしさ』をね。だから、今まで通り、心をこめて頑張ることが一番大事なの。焦ったり、悲観したりする必要はないんだよ。大丈夫、私たちは私たちらしく…ね?」 その考え方は子供たちにとってまさに目から鱗だった。 涙で濡れたまつげを震わせてパチパチと瞬きを繰り返す。 そうして一生懸命考えて、まだ幼い心でティファの言葉を染み渡らせようとしていた。 やがて、2人はおずおずと恥ずかしそうな微笑みをティファに向けた。 小さな小さな声で「ごめんなさい」と言った2人にティファは満面の笑みを浮かべた。 それは思わず惚れ直すしてしまうほど輝いた笑顔で、クラウドは無表情な仮面の下で大きく心臓を跳ねさせていた。 「よしっ!じゃあ明日は、デンゼルとマリンが褒めてくれた料理の腕をフルに使って、とびっきり美味しいご飯を作ってあげる!」 ユフィもクラウドも、ちゃんと付き合ってね? ニッコリと笑顔を向けたティファに、ユフィが調子の良い声を上げ、クラウドはただ黙って小さく笑みを返し、頷いた。 そうして改めて思う。 我が家の大黒柱はティファだ…と。 ティファがいてくれるから血の繋がりのない寄せ集めのような自分たちは家族として強く結び付けられている。 (参ったな…) 改めてすごい女(ひと)だと痛感した。 自分がティファの隣を歩いていいものかどうか、非常に怪しい気がする。 ちょっとやそっとの努力ではその資格を手にすることは出来ないのではなかろうか? 今は…ティファが自分の歩調に合わせてくれているだけで、彼女はもっともっと、他の男(ひと)こそが相応しいのでは? (勿論、黙って譲る気はないけどな) なら、もっともっと、頑張らなくては。 なにをどう、具体的に頑張れば良いのか分からないけれど、とりあえずは自分の出来ることを一生懸命に、最後まで自分らしく。 この日は、子供たちにとって大切なものをティファからもらえた貴重な日となり、クラウドにとっては身を引き締め新たな誓いを胸に抱いた日となった。 言うまでもないが、翌日の夕食は皆の期待以上の料理が食卓に並び、心から楽しく、幸せな晩餐となった。 後日。 ドアベルの可愛い音がセブンスヘブンに来客を伝える。 看板息子と看板娘はいつものように笑顔でお客様を出迎え……ハッとその笑顔を凍らせた。 しかし、一瞬で立ち直るといつものようにテーブル席へと案内したのだが、どこかその動きがぎこちない。 目ざとく様子の違う子供たちに気づいたティファが、怪訝そうに軽く眉をひそめたとき。 「例の店のスタッフだ」 「え?」 この日、珍しく店の営業時間内に帰宅してカウンター席で寛いでいたクラウドがそっと囁いた。 あぁ、なるほど。 ティファは苦笑しつつ注文をとってきたデンゼルの頭をポンポンと叩いた。 そして、手早く料理を作り上げるとテーブルへ運ぼうとする子供たちに軽く手を振って自らが足を運んだ。 「お待たせしました。宴会セットです」 ニッコリ笑い、いつも通りの接客を行う。 まだ若い男女5人グループだった。 特にこれといって目に付くようなことはなかった。 子供たちが数日前にしたような『敵情視察』ということではなさそうだ。 なら、純粋に食事を楽しみに来ただけだろう。 ティファはそう判断すると、その客たちのことは他の普通の客たち同様、『お客様』として意識を切り替えた。 意識を切り替えてしまうと、もうその客のことは気にならない。 普通に常連客たちと談笑したり、子供たちへ料理を運んでもらったり、食事を済ませたクラウドが手伝いを買って出てくれたのでお願いしたり…。 そのクラウドが料理を運び間違えてしまって、一緒にその客へ頭を下げたり…。 はたまた、間違えてしまったことで軽く落ち込んだクラウドをやんわりフォローしたり、その姿を客が楽しそうに笑ったりまたは冷やかしたり。 そんな光景に子供たちが笑い声を上げて、クラウドが恥ずかしそうに頭を掻いて…。 いつも通りのセブンスヘブンだった。 * 「今日も本当にありがとう、クラウド。仕事で疲れてたのに…ごめんね?助かっちゃった」 閉店後。 片づけを終えて2人でコーヒーを愉しむ。 クラウドにとってもティファにとっても、『2人だけ』でゆっくりと一息つける貴重な時間。 ティファの謝意にクラウドはいつものように「いや、大したことは全然出来ていない。むしろまた間違えた」と、苦笑交じりで応えた。 「ところで、例の店のスタッフが帰り際になにか言ってたみたいだが?」 「うん、ふふ、嬉しいこと言われちゃった」 「へぇ」 ニコニコ顔のティファに片眉を器用に上げて続きを促す。 「あのね、『この店ではスタッフは募集してないんですか?』って」 クラウドは目を丸くした。 この店で募集していないか訊ねる…ということは…。 「ここで働きたい…って?」 「うん」 くすぐったそうに微笑みながら、ティファはクラウドに話した。 『この店、すっごくいい雰囲気ですよね』 『俺ら、すぐ近くの『アレイボス』ってところでバイトしてるんですけど、なんかこっちの方が『素の自分で頑張れる』って感じがして、すっげぇ羨ましかったっす』 『お客様と店長さんたちがなんか『ファミリー』って感じがして温かいし』 『うん、それに、子供たちも可愛くて頑張ってるし〜。私たちもたかがバイトだって言ってないで、頑張らないとなぁって思いました〜』 『募集してないのは残念だけど、また遊びに来るから。次はあのクラウド(男の人)もテーブルに来てくれないかな。なんかすっげぇ面白そうだったし』 「……俺が面白そう?」 「うん、なんか慣れてないけど一生懸命頑張ってる姿が微笑ましかったんだって」 「……」 「喜んでいいのよ、クラウド」 果たして喜んで良いのか迷っていたクラウドに、ティファが絶妙な言葉をかけた。 それにしても。 「デンゼルとマリンに教えてやらないとな」 きっと、どれほど喜ぶだろう。 嬉しそうに目を輝かせ、そして照れくさそうに笑う2人を想像してクラウドの頬が緩んだ。 ティファも頷いたが、少し悪戯っぽい目でクラウドを見た。 「でも、今度あの人たちが来てもクラウドはあのテーブルには行って欲しくないなぁ」 「え…」 自分の接客がまだまだ不十分だから、と言っているのだろうか? それは非常に落ち込んでしまう理由だ。 シュンとなりかけたクラウドに、ティファはそっと顔を寄せた。 「だって、あのテーブルの人たち、みんな美形ばっかりなんだもん。クラウドが女の子を見て心動かしたらイヤだし、そういう綺麗な女の子に近づけたくないもん」 なんと言うことを言ってくれるのか! クラウドは口を開け、真っ赤になった。 何を返してやろうか咄嗟に出てこない。 「……酔ってるのか?」 「コーヒーでは酔えないわ」 「……」 「でも、気分は良いの。とっても!」 そう言って笑ったティファの耳が赤くなっているのを見て、クラウドはようやっと笑みを返した。 2人揃って少し顔を赤らめたまま笑いあう。 そう、『らしく』でいい。 自分らしく堂々と。 それは、実は一番難しいことなのかもしれないが、それが出来たとき、きっと素敵なことが起こる。 セブンスヘブンとアレイボス、両方の店の常連客として人々が上手にその時その時を楽しむようになったのはそれからすぐのことだった。 あとがき セブンスヘブンのようなお店、いわゆる『居酒屋』とか『料理屋』って、実は結構沢山あるんじゃないかしら?と思ったのですよ。 その徐々に増えていく『同業者』の中で、セブンスヘブンもきっと、客足が減ったりとかもするんだろうなぁ…と。 その時、ティファ、子供たちはどうするのかしら〜?と思ったのがきっかけです。 でもきっと、セブンスヘブンはその中で、落ち着いた人気を保っていくだろうなぁ…とか思ったり…うん、どうかしら? |