理想の家族=友達の家族=? (後編)




 その時、俺にギューッとしがみ付いていた二人が、突然顔をパッと上げると、ドアの方を勢い良く振り向いた。
 ティファさんは何だか戸惑ってる。
 そして、俺は訳が分からないから、そのまま俺から離れて飛びつくように大きくドアを開けた二人をポカンと見守っていた。
 そのドアの先には…。

 金髪で紺碧の瞳をした、セブンスヘブンの住人の一人。
 デンゼルとマリンのお父さん代わりでティファさんの恋人、クラウドさんが立っていた。
 その格好は、今まさにドアを開けようとしてた…って言う姿で、ちょっと面白かった。
「ただいま、デンゼル、マリン」
「「おかえりなさい!!」」
 嬉しそうにクラウドさんに飛びつき、そのままクラウドさんは軽々と片腕ずつでデンゼルとマリンを抱き上げた。
 そして、店内に固まって突っ立ってるティファさんの傍に行くと、デンゼル達を床に下ろして悪戯っぽく笑って見せた。
「ただいま、ティファ。びっくりしたか?」
 ティファさんはクラウドさんに声を掛けられるまで固まってたけど、話しかけられた事によって一気にこっちの世界に返ってきた。
 真っ赤な顔をして「もう!こんなに早く帰れるなら連絡してくれたら良いじゃない!」と、拗ねたように、何だか涙目になってる。

 あ〜、泣きそうだよ…!
 良いのか……!?
 デンゼルもマリンも、落ち着いて見てるけど……本当に良いのか!?!?

 焦る俺を尻目に、クラウドさんは優しく微笑んでティファさんをそっと抱きしめた。
「ごめん。ちょっとびっくりさせたくてさ。子供達にも黙ってもらうようにお願いしてたんだ」
「……信じられない……もう、本当にクラウドったら子供なんだから……」
 泣き声でそう言うティファさんを、クラウドさんはとっても優しく、大切な物に触れるように何度か髪をゆっくりと撫でる。

 うわ〜…。
 良いのかな、こんなシーンを家族以外の俺が見てて!
 いや、絶対に良くない!!
 ここは……『ミザル・キカザル・イワザル』だ!!

「…キッド…何してるんだ?」
 両耳を塞いでギュッと眼を瞑ってる俺に、ご丁寧にデンゼルが話しかけてきてくれた。

 このバカ!!
 もっと気を利かせてくれたって良いじゃないか!!
 折角クラウドさん気付いてなかったのに、お前の一言で……。
 見ろよ〜〜、びっくりしてるじゃないかぁ!!
 絶対に俺の事なんか気付いてなかったんだぞ!
 あ、何だか凄い顔してこっち見てるよ…。
 いや、本当にすいませんでした!
 覗くつもりなんか全然なかったんです!!
 本当です!!!

「キッド、どうしたんだ、その顔!?」
 クラウドさんの大きな手が、恐る恐るそーっと俺の頬っぺたと目元に伸ばされた。
「喧嘩か?相手は誰だ?まさか……デンゼル……とか言うわけじゃないよな……??」
 物凄く不安そうに聞くクラウドさんが、こう言ったら失礼だけどとっても可愛く思えて思わず笑っちゃった。
「そんなわけないだろう!俺だって怪我してるじゃん!!」
 クラウドさんの後ろで、デンゼルが唇を尖らせてる。

 ティファさんとマリンがクスクス笑いながら、昼間の出来事を代わる代わる説明して、クラウドさんは漸くホッとした顔をした。

「そっか…。本当にありがとう、デンゼルとマリンと一緒にいてくれて」

 柔らかくて温かい笑顔とその言葉に、物凄く心臓がバクバクする。
 顔がカッカカッカ熱くなって、とっても照れ臭い。
 いや、だってさ〜。
 やっぱり憧れの人にそういう風に言ってもらえると嬉しいし、照れ臭いし、くすぐったいだろ?
 もう、身体がフワフワしてる感じだよ。

「デンゼルも約束ちゃんと守ったんだな」
「当然だよ!男と男の約束だろ!!」
 クラウドさんがそう言って、デンゼルの頭をクシャクシャ撫でる。
 俺がそれを何となく不思議そうに見てると、マリンがそっと傍にやって来た。
「あのね。クラウドに護身術習ってるんだ」
「へ?そうなの?」
「うん。でも、その約束が『喧嘩では絶対に使わない』なんだよ」
「あ〜、それで…」
 なるほど。
 さっきクラウドさんが焦ったようにデンゼルを見た事も、それに対してデンゼルが口を尖らせて見せたのも、んでもって、今、この目の前の二人の様子にも納得だよ。

 それにしても…。
 良いなぁ、クラウドさんに護身術教えてもらってるなんて。
 俺も教えてもらいたいな。
 でも、デンゼルがクラウドさんに護身術を教えてもらってるなんて話、初耳だ。
 きっと誰にも話さないって約束もあるんだろうな。

「それじゃ、キッド。デンゼルとマリンが辛い時に一緒にいてくれたお礼代わりに家まで送って行く。久しぶりだろ、バイクに乗るの」

 さも当然のように言われて、目を丸くしてる俺に、クラウドさんがこれまた当たり前のようにヒョイって軽がる俺を抱っこしてくれた。

 うわーーーーー!!!!
 ど、どどどどどうしよう!!!!
 ドアップなクラウドさんの顔は、ティファさんとは全然違うんだけど、それでも物凄く綺麗で、何だかドキドキするんだけど、俺ってもう病気なんじゃないのかな…!?

「それじゃ、ちょっと行って来る」
「うん。キッド君のお母さんには電話してるけど、クラウドからもお詫びとお礼、言っといてね」
「ああ」
「じゃ、キッド君。また来てね!あ、そうそう。チーズケーキ忘れるところだったわ」
 ティファさんが慌てて店内に戻って行く。
 すぐに大きな紙袋を持って出てきてくれた。
 クラウドさんは、一旦俺を地面に下ろしてそれを手馴れた手つきでしっかりと荷台に固定し、もう一度俺を抱っこしなおしてくれた。

 ……まるでデンゼルとマリンにしてるみたい……。
 すっごく……すっごく嬉しい!!

「キッド、また明日な!」
「明日は今日のお礼にクッキー焼いていくから、絶対に公園来てね!」
 ティファさんとデンゼル、マリンの三人に見送られて、俺はクラウドさんのバイクに乗っけられた。
「マリンのクッキー、楽しみにしてる!デンゼルもマリンもまた明日な!ティファさん、どうもありがとうございました!」
 俺がバイクの上でペコリと頭を下げ終わると、クラウドさんが「それじゃ、飛ばすからな」って言って、本当に物凄いスピードでバイクを走らせた。

 いやもう……あっという間にセブンスヘブンが見えなくなったし、建物がビュンビュン後ろに流れていくし、道路を歩いてる人達の顔なんか全然分かんないよ。
 クラウドさんの視力ってどうなってるんだろう……。
 事故起こしそうになったりとかしないのかな……。
 あ〜、でも良いよなぁ!!
 身体中に響いてくるバイクの振動とか、風の感触とか…!!
 まるで飛んでるみたいだ!!


 なぁんて思ってるうちにあっという間に家に着いた。
 本当に物凄く早かった。
 良いよなぁ、俺も大人になったらクラウドさんみたいにこんな大きなバイクを軽々乗りこなせるようなカッコイイ男になりたいな!
 そんな事を考えてる俺を、これまたヒョイ…と軽々抱っこして、地面に下ろしてくれた。
 そのまま俺の頭に手を置いて「それじゃ、キッドのお母さんに一言ご挨拶させてもらわないと」ってニコッと笑ったんだ。
「え!?でも、本当に良いんですって!俺が勝手にデンゼルとマリンにくっついてただけだから!!」
 必死にそう言う俺に、クラウドさんは「二人の父親代わりとしてしなくちゃいけない事だから」とそのまま玄関の呼び鈴を押しちゃった。
 焦る俺に全く気付かず、クラウドさんは「は〜い」という母さんの声に少し緊張したみたいだった。
 その顔は、それまで見た事のない『家の外での父親の顔』だと思う。

「あら、クラウドさん!…と、おかえり、キッド」
「ただいま…」
「あらあら、本当に久しぶりね、そんなに怪我したの」
「今回はデンゼルとマリンの喧嘩に息子さんを巻き込んでしまって本当に申し訳ありませんでした」
 俺の顔を見て明るく言ってのけた母さんに、クラウドさんが生真面目に頭を下げた。

 いや、ホントに良かったのに…。
 実際、母さんも全然気になんかしてなくて「良いんですよ。エッジに越してくる前に比べたら全然大した事ないんですし、むしろこの子がこんなに大きく成長出来たのも、友達が沢山出来たのもデンゼル君とマリンちゃん、それにクラウドさん達のお陰ですから。前からずっとお礼を言いたいと思ってたんです」ってニコニコ笑ってるし。

 それよりも、俺は何となくこれ以上母さんをクラウドさんに見られるのが恥ずかしかった。
 いや、最近さ……母さん太ってきたみたいで…さ。
 ティファさんとかと比べる方がおかしな話なんだって分かってるけど、やっぱり太ってきた母さんを見てクラウドさんが変な顔とかしないかなぁ……とか気になっちゃったり…。
 クラウドさんがそんな人じゃないって分かってるんだけど、やっぱり何ヶ月か前に比べて急に太ってきた母さんを他の人に見られたくないって言うか……。
 ティファさんに比べたらそりゃ美人じゃないけど、それでも俺にとっては自慢の母さんだったのに、最近お腹が出てきた気がするし、顔も少しだけどふっくらした気がするし…。
 だから、憧れてるクラウドさんには余計に会って欲しくなかったんだよな…。

 ごめんよ、母さん!!こんなこと考えちゃう悪い息子で…!!!
 でも、俺の母さんは世界一だって本当に思ってるから!!!!

 グルグルそんな事を考えてると、
「よお!ただいまー!!」
 軽く手を上げて通りの向こうから父さんが大声で俺と母さんに声をかけた。
 クラウドさんがびっくりして振り向いてる。
 もう……本当に恥ずかしいんだからヤメテクレヨ!!
 ………いや…もう何を言っても無駄だって分かってるよ。
 だって、自分の息子だからって『キッド』なんて安直な名前をつけるような男なんだから…。
 超マイペースな父さんには何を言っても無駄だよな…。

 まだ車がビュンビュン走ってるのに、ほんの僅かな隙を突いて父さんが道路を横断して走ってきた。
 クラウドさんの顔がびっくりしたまま固まってる。
 危うく轢かれそうになって、思い切りクラクション鳴らされてるのに全然気にしてないこの父親に、俺は本当に眩暈がしたよ。

「お?キッド、どうしたんだ?喧嘩か?久しぶりじゃねぇか!まさか、負けたんじゃねぇよな!?」

 なぁんて人の気も知らないで、怪我したほっぺをグイグイ押すように撫でてくる。
「イタイイタイ!止めてくれよ〜!!」
「ハッハッハ!痛いのは生きてる証拠だ!ありがたくかみ締めろ!!」
「あなた、お客様の前なんですからそんな子供じみた事するのは止めて頂戴」
「客?」
 母さんの一言で、漸く父さんはクラウドさんに気がついた。
「あれ……?もしかして、もしかしなくても……クラウドさん?」
「え……あ、はい。そうです。ご挨拶が遅れて…」
「いやぁ!!いっつもキッドから話を聞いてますよ!!デンゼル君とマリンちゃんの親代わりでジェノバ戦役の英雄で、英雄達のリーダーで、無口だけどかなりカッコイイ男の人だってね!」
 うんうん、こりゃキッドの言う通り男前だ!!

 クラウドさんの顔を遠慮無しにジロジロジロジロ眺め倒す実の父親に…。
 もうどうしようもなく恥ずかしくて…みっともなくて…穴があったら飛び込みたい気分になったよ!!
 お願いだからヤメテクレヨ!!
 クラウドさん、めちゃくちゃ困ってるじゃないか!!!
 きっとクラウドさんは俺の怪我の事をいつ切り出そうかってさっきまで悩んでたんだと思う。
 でも今は、絶対に目の前にいる変態親父をどう扱って良いのかで悩んでるよ!!!!

「あなた…いい加減にして頂戴…」
「おう…いひゃいいひゃい…!!」
「痛いのは生きてる証拠。ありがたくかみ締めて大人しくしてて下さいネ」
「ふぁい…」

 母さん…本当に偉大だよ。
 こんなどうしようもない男の妻をしていけるのは、この世界中、どこを探しても母さん以外存在しないよ!!

 両手で父さんの頬っぺたを遠慮なくビミョーンと引っ張ってクラウドさんから引き剥がすと、固まってるクラウドさんに改めて向き直った母さんは、本当にカッコ良かった。
「すいません、いつまでも子供な主人ですから」
「いえ……」
 フフフ…と穏やかに笑って見せる母さんに、クラウドさんがぎこちなく笑い返そうとして失敗した。
 あ〜、何かそんな失敗した笑顔もカッコ良く見えるのは、やっぱり『もとがカッコイイ』からだよね…うん。

「本当にこのたびはうちの子供の喧嘩に巻き込んでしまって…」
 改めてクラウドさんが母さんと父さんに頭を下げた。
 それに対して、母さんは「いえいえ、さっきも言いましたけど全然気にしないで下さい」って笑ったんだけど、それを聞いた父さんがそれまで「いってぇ…ったく本当に容赦のない女だ…」ってブツブツ言ってたのに、クワッと目を見開いた。
 そして、凄まじい形相でクラウドさんに詰め寄った。
「喧嘩に巻き込まれた!?」
「……はい。本当に申し訳…」
「キッド!!」
「え…!?は、はい…!?!?」
 クラウドさんの胸倉を掴むような体制のまま、グリンと首だけ捻じって俺を見てきた父さんは、何だか良くわかんないけど、物凄く怖かった。
「お前、自分が喧嘩を売られたんじゃないのか!?」
「え…う、うん…」
「それなのに殴られたのか!?」
「う、うん……」
「すいません、家の子供達を庇ってくれて…そのせいで巻き込んでしまったんです」
 クラウドさんが俺をフォローするようにして言ってくれた一言が、更に父さんを仰天させたらしい…。
「なに〜〜!!!」
 通りの人達がびっくりして振り返る。
 そしてそそくさと通り過ぎたり、遠目から眺めたり……。
 とにかく恥ずかしい事この上ない。
 それなのに、母さんは今度は無理やり父さんを抑える事はしなかった。
 柔らかく微笑んで見守ってる。

 いやいや…。
 そこはそんな穏やかに微笑んでいられる状況じゃないから!!

 俺の心の叫びが聞えるはずもなく、母さんは一向に父さんを止めに入ろうともしないし、クラウドさんも殴られる覚悟でもあるかのような面持ちで、父さんをジッと覚悟を決めた顔で見つめている。

 いや…本当に止めてくれよ!?
 殴らないでよ!?
 父さんがそんな事したら、俺、申し訳なさ過ぎて明日からデンゼルとマリンと一緒に遊べないし、それどころかもう二度と家から一歩も出られないよ!!

 冷や汗が体中から噴出す。
 どうしたら良いのか分からない。
 頭の中はグルグル悪いことばっかり考えちゃう。
 さっきまで胸の中にあった温かい気持ちは、微塵も残ってない。
 そんな俺に…。
 クラウドさんから手を離した父さんが、ガバッと抱きしめた。


「キッド!良くやった!!」
「へ…?」

 あまりにも意外過ぎるその一言と父さんの行動に、間抜けな声が出ちゃったけど……しょうがいないよな…?
 だって……『良くやった!!』って……?

「お前も友達の為に身体を張れる様な男になったか〜!!!」

 そう言って、父さんは二カッとそれはそれは嬉しそうに笑った。
 そんでもって、俺と同じくらいびっくりしてるクラウドさんに向き直ると、ガシッとクラウドさんの両手を握り締めた。
「いやぁ、本当にありがとう!!キッドは昔っから人付き合いが下手な奴でさ〜!今はクラウドさんとこの子供達が仲良くしてくれてるから良いけど、これから先まで仲良くしてもらえるかどうか分かんないだろう?だから、正直ちょ〜っと不安だったんだよなぁ!でも、こいつがここまで成長出来たとは!!!それもこれも、クラウドさんがデンゼル君とマリンちゃんをしっかり良い子に育ててくれたからだ!!本当にありがとう!!!おっと、クラウドさんだけじゃないな、ティファさんもだよな!!うんうん。ティファさんにもお礼を言っといてくれ!!いや、後でこっちからお礼の電話を入れるべきか……うん、そうだな、電話をするべきだな、うん!!」

 ブンブン大きくクラウドさんの手を振りながら、本当に嬉しそうにマシンガントークをする父さんの姿に、なんだか物凄く泣けてきた。
 勿論、情けなくて…じゃないんだ。嬉しくて……さ。
 やっぱり、ここまで俺の事で『イッキイチユウ』してくれる父さんって、俺にとっては大切な父さんなんだ。

「あなた、ちゃんと私からお礼を言ってますから大丈夫よ。ほら、クラウドさんが困ってるでしょう」
「おっとそうか!流石俺の良い女!やっぱりお前は最高だよ!!」
「フフ、分かってるわ」

 いやいや……。
 二人共、クラウドさんの前だって言う事忘れてない?
 それよりも何よりも……ここは家の『外』!!だから、いつものバカップルぶりを発揮するのは止めてくれ!!

「それにしても、まさかここまで大きくなるとは…。子供の成長ってのは早いもんだなぁ」
 父さんが何だか潤んだ目で俺を見ながら、頭をガシガシ掻いた。
 どうやらクラウドさんに対して全く怒ってないどころか、逆に好感を持ってくれたらしい…。
 あ〜、本当にホッとした。
 いや、母さんはオールマイティーだから心配ないんだけど、父さんはちょっと……かなりクセがあるから心配だったんだよね。

 ホッとした俺とどことなく力の抜けたクラウドさんの目が合った。
 お互い何となく笑い合う。
 と……。


「これでいつ生まれてきても全然心配ないな!」


 父さんが嬉しそうに母さんのお腹を撫でた。

 は?
 何が??

「ま、あなたったら。まだあと四ヶ月はお腹の中にいてもらわないと」


 母さんが苦笑して…それでも嬉しそうに父さんの手に自分の手を重ねる。

 へ…?
 何の話し…??


「それにしても、本当に良かったぜ。弟か妹か……まぁ分からんけど『キョウダイ』が出来るって言うのにいつまでも何にも変わらないんだからちょっと心配してたんだぜ?でも、キッドはキッドなりに一生懸命『お兄ちゃん』になろうとしてくれてたわけだ」

 父さんが、一人でうんうん、と感動しきりに頷いてる。


 ………。
 …………。
 ……………はい!?!?


「きょ、きょうだい!?!?!?」
 な、ななな何の話だよ!!!!

「…おい……?どうしたんだ??」
「…あなた…もしかして……」
 真剣に首を捻ってる父さんと、何かを思いついたような顔をしてジト目で父さんを見る母さん、そして、俺と同じくらいびっくりしてるクラウドさんの視線が俺に集中する。

「あなた…もしかしてキッドに話してなかったの…?」
「うぇ!?お前、話してなかったのかよ!?」


「「お前(あなた)が話すって言うから黙ってたんだぜ(のに)!!」


 同時に大声を上げた両親に、俺の頭は真っ白になった…。

 ようするに…。
 母さんが最近太ってきたのは、肥満じゃなくて……。

「おめでたですか!?おめでとうございます!!」

 そういうこと……。

 クラウドさんのお祝いの言葉に、父さんと母さんはニッコリと嬉しそうに笑って「いやぁ、ありがとう!」「フフ、ありがとうございます。これからもキッド共々よろしくお願いします」なぁんて挨拶してるし…。

「良かったな、キッド。四ヵ月後には『お兄ちゃん』だってさ!」
 クラウドさんがニッコリ笑って、俺の頭をガシガシ撫でてくれた。
 大きな手がとっても温かくて……強くて……それでもって優しくて……。
 もう……全然知らなかった事実が判明して……おまけにそれがとっても嬉しい事で……。
 父さんと母さんが「キッドが全然お腹の赤ん坊の事聞いてこないから、本当はイヤなのかと心配してたんだよな!」「少しも前と変わらないから、兄弟が欲しくないのかと思っちゃったわ…」とかとか言いながら、安心したように笑うから…。

「うぅ〜〜〜…」

「おう!?な、泣くな、キッド!!悪かった!!」
「あらあら…ごめんねキッド。てっきり父さんが話してると思ってたの。だって、『絶対に俺から言う!』って言い張ってたから」
「おいおいおい!俺のせいか!?お前だって『私のお腹の子供の事なんだから私が言います!』って言ってたじゃねぇか!」
「その後でじゃんけんして私、負けたわよね?」
「…………………………………………………………………………………………そうだったか…?」

 バツの悪そうな顔をして母さんから視線をそらせた父さんと、そんな父さんを軽く睨んでから俺の前にしゃがみこんだ母さんと…そんでもって俺の頭をいまだに撫でてくれてるクラウドさんに囲まれて…。
 もう……すっごく幸せで!

「俺…絶対に良い『お兄ちゃん』になる!」

 そう言ったら、母さんが泣きそうな顔をしながらニッコリ笑ってギューって抱きしめてくれた。
 父さんも「良く言った!流石俺の子供だ!!」ってお母さんごとギューって抱きしめてくれた。



「それじゃ、お身体大切に」
「ありがとうございます。あ、ティファさんにもくれぐれもよろしくお伝え下さい。チーズケーキ、私、大好物なんですよ!」
「子供が産まれたら、セブンスヘブンに顔見せに行くんでよろしく!!」
「はい。楽しみにしてます」
「クラウドさん、本当にありがとうございました!」
「こっちこそ今日はありがとう。これからもよろしくな」
「うん!!」

 轟音と共に走って行くバイクの後姿を見送って、俺達三人は(…イヤ、四人だよな!)家に入った。
 その日の夕食は、いつもよりもうんと美味しかった!!
 明日、デンゼルとマリンに会うのが楽しみだ。
 きっと、クラウドさんから俺の『弟か妹』の話を聞いてるに違いない。
 あ〜、何話そうかな??

 ワクワクワクワク!!

 嬉しくて幸せな俺は、今夜は中々眠れそうにない。





 おまけ♪

【キッド宅】
「いやぁ、話で聞いてるよりもうんと良い男だったな!」
「クラウドさん?そうね。私も初めてお話ししたけど、とっても素敵だったわね」
「それにしても、面白かったよなぁ!まさかあそこまで驚いてくれるとは!」
「フフ…そうね」
「『お二人ともお若いんですね』って言われた時にはすぐ分からなかったけど、そう言えば俺達ってまだ24歳だもんなぁ」
「もう…!私はしっかり若いつもりよ」
「ああ、分かってるって!お前はキッド産んだ後から益々綺麗になったっつうの!」
「フフ…ありがとう」
「それにしても、まさかクラウドさんが俺の一つ年下とはなぁ…。しっかりしてるから年上に見えるよな」
「あなたの場合はまだまだ子供の部分が残り過ぎなのよ」
「…おまえ…容赦ないな」
「あら、これも愛情表現の一つよ」
「へいへい。それにしてもさぁ。ほんっとうに面白かったよなぁ、あん時のびっくりした顔!」
「そうね。でも、今までに私達の話をしてびっくりしなかった人はいなかったじゃない?」
「いやいや、そうだけどさ。あの『クールビューティー』な顔はびっくりしてもやっぱり『クールビューティー』なんだと思ってさ」
「プッ!何それ」
「いや、だってびっくりしてる顔も『美人顔』が崩れない人間って、男も女も早々いるもんじゃないぜ?」
「そうね…。確かに…」
「ま、何はともあれ、キッドは良い友達にめぐり合えて良かったよな!」
「ええ…本当に」
「これからも頑張ろうぜ!」
「ええ、勿論!あなたとキッド、それにこの子がいてくれたら、私はどこまでも頑張れるわ」
「…本当にお前ってば最高の女だな!」
「フフ…あなたも私にとっては最高の男の人よ」



【ストライフ家】
「え!?キッド君、お兄ちゃんになるの!?」
「えーー!!」
「俺達聞いてないぞ!?」
「いや、本人も今日知ったらしい…」
「「「えーー!?!?」」」
「なんで!?」
「デンゼル、食事中に立つな。いや、キッドのお父さんとお母さんが、お互いが赤ちゃんの事を話してるって思ってたみたいでな。それで、キッドがそれからも何にも赤ちゃんの事を話してこないから、てっきり『弟も妹もいらない』って思ってるんじゃないかと勘違いしたらしい。それで、赤ん坊が生まれるまではそっとしておこう……と、暗黙の了解みたいなものが出来たそうだ…」
「そうなの!?」
「ああ」
「あ〜、でも良いなぁ。赤ちゃんかぁ!!」
「マリンは赤ちゃん好き?」
「うん、大好き!!」
「俺も!!だからさ、俺達ちゃんと待ってるから!」
「うん!」
「ちょ、ちょっと…二人共、なに言ってるのよ!!クラウドも何か言ってやって……って、どうしたの?」
「…ん?いや……ちょっとな…」
「気になる!な、マリン!!」
「うん、気になる〜。教えて〜!」
「………キッドのお父さんとお母さんに会った事…あるか?」
「「「…?…」」」
「……キッドのご両親…俺より歳が一つ上なだけだった…」
「「「えええーーーーーー!!!!」」」
「…て事は…!?」
「キッドって…」
「父さん、母さんが16歳の時の子供!?!?」
「……デンゼル、計算が早いじゃないか…」
「なにそれ!?私達、そんな事聞いてないよ〜!!」
「いや…別にこれといって話すことじゃないだろう……」
「それにしても……16歳って……」
「ティファ……大丈夫?」
「ティファ……それにクラウドも顔色悪いぞ…?」
「いや……世の中には凄い人が身近に存在するもんだと思ってな」
「今日、初めて電話して声を聞いたけど……確かに声は若かったけど、まさかそんなに若いとは思わなかった……」
「何でも、駆け落ちしたらしい……」
「「「ええええーーーー!!!!」」」
「お二人共結構良い家柄だったそうだけど、家同士が仲が悪くかったらしくて、危うく別々の人間と見合いをさせられそうになったそうだ。それで、子供も出来たし……てことで、あっさり駆け落ちして家を飛び出したんだと…」
「……そんな……物語じゃあるまいし…」
「それでも、ちゃんとキッドを産んで育てたんだ〜!」
「すげぇ…!!俺、キッドの父さんと母さんを尊敬する!!」
「ああ…俺も本当に尊敬するよ…。普通は無理だぞ…どう考えても子供が二人で駆け落ちしたって上手くいきっこないからな」
「それでも、こうしてちゃんと家庭を築いてるのね……。本当にびっくり……」
「まったくだ…」
「あ〜、明日が楽しみ!!」
「な、何だよマリン、びっくりするだろ、いきなり!」
「だって、明日キッドにそのお話しを詳しく聞かなくちゃ!!」
「マリン、あんまり余所のお宅の事情をホイホイ聞くなよ?」
「ところでクラウド…どうしてそんなに詳しく知ってるの?」
「いや…キッドのお父さんが話好きで、『お若いですね』って言ったら、ペラペラしゃべってくれた」
「「「…………」」」

 ストライフ家の子供達も翌日、キッドに会うのが楽しみ過ぎて、中々眠れなかったのは言うまでもない…。



 あとがき

 はい、何とか書き終わりました〜!
 60900番キリリクで、設楽いずき様のリクエスト『拙宅のオリキャラのキッドのお話しを……』とのありがたいリクでした!!
 書いててめっちゃ楽しかったです♪
 本当に設楽様、嬉しいリクエストありがとうございました!!