英雄VSタークス。

 どうしてこんな流れになったんだろう…。
 決定的だったのは、
『タークスごときに私達が負けるはずがない、最初から勝負は決まったようなものだ、やめておけ』
 ていうヴィンセントさんの台詞だったのか、それとも…。
『…今のはいくら命の恩人でも聞き捨てならないな…』
 ツォンさんの睨みだったのか…、それともそれとも…。
『あら、じゃあ勝負する?』
『言いましたね?泣いて謝っても許しませんよ』
 ティファさんとイリーナ姉ちゃんの、クラウドさん争奪戦の延長が原因だったのか…?
 いや、違う。
 決定的にダメ押しになったのは…。
『へぇえ、言うじゃないかっと』
 抑え込めない怒りの大きさに声を震わせたレノ兄ちゃんの言葉に、それまで全く無反応だったクラウドさんが急に顔を上げたせいだ。


『黙って聞いていればさっきからティファをバカにして…』


 ドスの利いた声。
 デンゼルとマリンが「「ひっ!」」と小さく悲鳴を上げた。
 俺?
 俺はもう、声帯が麻痺しちゃって声すら出なかったよ!
 睨みあう大人達の中でも、一際怒りオーラを発散させながらクラウドさんはユラリ、と立ち上がった。

『面白い、タークス如きが俺達に敵うか敵うまいか、はっきりさせてやる』

 こうして、戦いの舞台はセブンスヘブンの店外へと移っちゃったんだ…。






酒は飲んでものまれるな(後編)







「謝るなら今のうちですよ〜?」

 ふふん!と言わんばかりにイリーナ姉ちゃんが挑発する。
 ティファさんはグローブをはめながら、
「それはこちらの台詞よ」
 そう言って睨みつけた。
 ティファさんはお酒、ほとんど飲んでないのにイリーナ姉ちゃんと同じくらい、テンションが上がってるのは、きっとクラウドさんに姉ちゃんがベッタリしてたからだな…うん。
 ヤキモチ妬くのは良いんだけど、それでこの展開ってどうなんだろう…。
 イリーナ姉ちゃんは酔っ払ってるからまぁ仕方ないとしても、ティファさんはなぁ、良いのかな、この場合。
 ティファさんの隣では、クラウドさんがほんのりと頬を赤くしつつちょっぴりふらつきながらスキンヘッドのおじさんを睨んでるし。
 さっき、ティファさんと話していたことがよっぽど腹立たしかったに違いない…。
 それにしても、外はもう真っ暗なのになんでサングラス取らないんだろう…。
 見えないんじゃないのかな…?

「神羅は確かに多くの罪を犯した。しかし、タークスにはタークスとしての誇りがある。それを愚弄されて黙ってはいられない」

 ツォンさんがカッコよく台詞をキメた。
 でもね、ツォンさんが酔っ払っているのはもう一目瞭然だった。
 だって顔が真っ赤なんだよ、ありえないくらいに。
 暗闇でもしっかり分かる赤ってどうよ、それ!?
 ツォンさん、あんまり酒飲んでなかったのにイリーナ姉ちゃんと同じくらい酔ってるってさぁ、どうなんだよ。
 戦闘は強くても、お酒には弱いんだな…。

「そんなくだらないものを、今宵、完膚なきまでに叩き潰してやろう」

 ヴィンセントさんがそう言って銃をカチリ…と構えた。
 それが合図となったかのように、一斉に皆が動いた。

 あまりにも早くてよく分からなかったんだけど、イリーナ姉ちゃんの発砲した銃はティファさんに当たらなくて、向こうのビルの壁に当たったみたいだった。
 …良かった、人に当たらなくて。
 流れ弾で死人が出たらどうするの!?
 クラウドさんのバスターソードがスキンヘッドのおじさんを狙う。
 紙一重でそれを仰け反って避けたおじさんは、そのままクラウドさんを蹴り上げようとした。
 クラウドさんはその足技を逆手にとって、逆に踏み台にして空高く跳躍。
 おじさん目掛けて空中から『気』らしきものをソードに乗せて思い切り振り下ろした。

 おじさんの襟首を引っつかんでツォンさんが後方へ飛ぶ。

 うわっ!
 うそだろ、地面が抉られたよちょっと、なに、その破壊力!!

 かと思ったら、別のところでは銃の発砲する音と、『キンキンキン!』って金属の音がする。
 スティックでレノ兄ちゃんがヴィンセントさんの銃弾を弾き飛ばしてるんだ、……すご過ぎる…!

「ここで眠れ」
「ふざけんな!っと!!」

 会話しながら戦ってるよ。
 ティファさんとイリーナ姉ちゃんは無言。
 クラウドさんとツォンさん、ルードさんも無言なのに。

 て言うか。

「クラウドもティファも、いい加減にしろよ!」
「そうだよ!ご近所さんの迷惑になるじゃない!!」

 流石に暗くなったとは言ってもまだ早い時間だから、あっという間にご近所さんにバレちゃった。
 窓から覗いたり、わざわざ外に出てきたり…。
 いくら裏道に近いところにある店だからと言っても、通行人はいるんだよ、当たり前だけど。
 その人達が立ち止まってポカン…としてる。
 気がついたら結構な人だかりが出来ていた。
 デンゼルとマリンが慌てるのも分かる。
 これ以上長引けば、絶対に関係ない人達が巻き込まれる。
 いや、それよりも早く、デンゼルとマリンが巻き込まれて怪我する可能性がめっちゃ高い!
 大人達の暴走振りに着いていけなかった2人が、ようやく己を取り戻したんだ。
 デンゼルとマリンは、無謀にも戦いの真っ只中に飛び込もうとする。

「2人とも、危ないからそれ以上近づいちゃダメだ」

 慌てて2人にしがみ付いて引き止めることに成功。
 痛い痛い!
 痛いから2人とも暴れないでくれよ!

「離せよキッド!」「早く止めないと他の人達が怪我しちゃうよ!!」
「分かってるけど、あんな中に入ったらデンゼル達がどうにかなっちゃうよ!!それよりも、誰か大人の人を呼んだ方が良いって!!」

 2人は暴れるのをピタリ、とやめて、
「「あ…そっか…」」
 納得してくれたみたいで、あっという間に店の中に駆け込んだ。
 きっと、誰か頼りになる人にSOSをするつもりなんだ。
 あぁああ、でも間に合うかな!?
 って言うか、誰を呼ぶんだ!?
 こんな恐ろしい人外の戦いっぷりの人達を止める事が出来るのって、同じ『英雄』とか、『タークス』とかでないと無理だぞ!?
 あ、もしかしてリーブ・トゥエスティかな!?
 WROのエライさんだって話しだもんな。
 WROの隊員さんならなんとかしてくれるかも、うん、そうに違いない!
 うぅ、早く早く!

「ティファをバカにするな!」
「タークス舐めるなよっと!!」
「皆、ティファさんばっかり優しくして〜!」
「クラウドは私達の家族なんだってこと、しっかり教えてあげるから!」
「……散れ」
「アナタ方がどう思おうが、私にとってタークスは誇りだ」
「………(無言)」

 なんかもうわけが分からない。
 きっと、クラウドさん達もなんで怒って、なんで戦ってるのかワケわかんなくなってるよ、絶対!
 言ってることが滅茶苦茶だ!!

 デンゼルとマリンはまだ戻ってこない。
 その時。

「え…?」

 一瞬にして俺の身体が浮き上がった。
 なんで浮き上がったのか分からない。
 分からないけど、皆がビックリして俺を見てるのだけは分かった。
 全部がスローモーションで、まるで映画を観ているみたいだった。
 ティファさんが振り上げた拳を途中で止め、目を見開いて俺を見てる。
 クラウドさんがバスターソードを振り下ろした姿勢で、固まっている。
 タークスの人達が俺を見て何か叫んでる。
 なに?
 なんて言ってんの?

「「「「 キッド!! 」」」」

 皆の悲鳴をどこか不思議に思いながら、デンゼルとマリンが丁度店から出てくるのが見えて…。
 んでもって、なんか必死に駆け寄ろうとしてくれる。
 そんな光景を見ながら俺は頭からセブンスヘブンの壁に突っ込んだ…。


 *


「「 サイッテーーーだ(よ)!!! 」」

 デンゼルとマリンが怒り狂って怒鳴り散らした声で目が覚めた。
 途端、頭頂部がズキンッ!と痛んで思わず呻き声が洩れた。
 ハッと振り返った皆の視線。
 駆け寄ってくる親友たち。
「キッド、大丈夫!?」「キッド、気がついたか!?気分悪くないか!?」
 顔を真っ赤にして覗き込んできたデンゼルとマリンに、俺はキョトン、とするしかない。
 なんで俺、寝てるわけ?
 と、そこで気がついた。
 セブンスヘブンの床では、さっきまで暴れまくっていた人達とは思えないくらい、落ち込んで小さくなっている大人達が正座してるということに。
 いや、今は俺が目を覚ましたから半分膝立ちになってるんだけどね。

「キッド、本当に悪かった」
「本当にごめんなさいね、私達、とんでもないことを…」

 駆け寄ろうとしたクラウドさん達を、デンゼルとマリンはギンッ!と睨みつけた。
 その視線の鋭さに大人達がカチン…と固まる。

「キッドに近づくな!!」「絶対に許さないんだから!!」

 デンゼルとマリンをことのほか可愛がっているクラウドさん、ティファさんは当然のことながら顔面蒼白。
 タークスさん達も、2人の気迫に完全に押されていて、シュン…とまた一回り小さくなった。
 ヴィンセントさんまでもが、
「…本当にすまない…」
 小さな小さな声で謝った。

 うわ〜…あのヴィンセントさんが…。
 お店に無理矢理連れてこられた時にはあんなに無表情で無口だったヴィンセントさんが…。

 めっちゃ落ち込んでるよ。
 この世の終わりみたいな顔してるよ。
 え、それって俺のせいなわけ!?
 って言うか、なんで俺、ここで寝てるわけ!?

「キッド、WROのお医者様があとちょっとで到着するからな。それまで動くなよ!?」
「リーブのおじさんに電話してすぐに手配してもらったの。そしたら、頭を打ってるから動かすなって言われて…」

 …。
 俺、頭打ったのか?
 なんで?

「その…俺達の闘気で吹っ飛んだんだなぁ…っと」

 …闘気で!?
 いやいや、確かに俺まだ子供だけど、『気迫』というか『気合』というか、そんなもんで吹っ飛んだの!?
 どんだけすごいの、この人達!

「本当にすまない、少年」

 ツォンさんが初めて俺を真っ直ぐ見た。
 うん、確かに『少年』だけど、なんかそう呼ばれると恥ずかしいんだけど…。

「本当にゴメンね、キッド君!」
「本当にすまなかった…んだな…っと…」
「……申し訳ない」

 ビシッとスーツを着た大人の人達に囲まれたことも初めてなら、こんな風に頭下げられるのも初めてで、どうしたら良いのか分からない。
 しかも…。

「「 絶対に許さない!! 」」

 こんなに怒ったデンゼルとマリンも初めて。
 怒りすぎて真っ赤になってるデンゼルとマリンに、段々と頭の痛みよりも胸の奥にこみ上げてきたものの方に意識が傾いていく。
 なんかすごく嬉しい。
 俺のことでこんなに怒ってくれる人がいてくれる。
 俺なんかに頭を下げて、1人の人間として扱ってくれる大人の人達がいる。
 それがすごく嬉しい。

「デンゼル、マリン、いいんだ」
「「 良くない! 」」

 すぐに否定の言葉が返ってきたけど、2人とも興奮しすぎて涙目になってて、それがまた、すごく嬉しくてさ。
 俺もなんだか涙が出てきた。
 男のクセにかっこ悪いんだけど、嬉しくても泣ける経験って初めてで、すごく幸せでさ。

「少年!?」「キッド君、痛い、痛いの?」「痛いに決まってるんだぞっと」「……泣くな、頼むから…」

「キッド、本当にすまない」「私、冷やすタオルを変えてくるわ」

 ポロッ…と泣いた俺を見て、慌ててくれる大人の人達が嬉しくて。

「キッド!しっかりしてくれよ!?」「大丈夫、もうお医者様来てくれるから!!」

 泣きそうになるのを堪えて俺の手を握ってくれるデンゼルとマリンが嬉しくて。
 泣きながら笑えてきた。
 心配かけてるのに、嬉しく思ってごめん。
 幸せだって感じてごめん。
 でも、今はまだ、もう少しだけ甘えさせて…?
 明日になったら、ちゃんと心配かけたこと、謝るから。

 そう心の中でお詫びしながら、俺は頭を打った疲れからか、またスーッと眠ってしまった。


 その後。
 俺はWROの医科学という施設の病室で目が覚めた。
 付き添ってくれていたデンゼル達の話しによると、俺が眠ったすぐ後にお医者様がきてくれたんだって。
 そんでもって、すぐにここの施設に運ばれて色々検査してもらったんだけど、奇跡的にどこもなんともなかったらしい。
 ただ、やっぱり頭のてっぺんには大きなたんこぶが出来ていた。
 父さんと母さんにひたすら頭を下げているクラウドさん達がいて、なんだか逆に申し訳なく思った。(ヴィンセントさんまでいたから本気でビックリした ← 無意識に失礼です)
「大丈夫ですって、うちの息子は俺と嫁さんににて逞しいから」
「そうですよ。それに男の子なんですから、怪我の1つや2つは勲章です」
 カラリと笑う両親に、ひたすらクラウドさん達は謝り倒していた。

「本当に悪かったんだなぁ…と…」
「レノ兄ちゃん、良いんだってば、気にしないでよ」
 心底落ち込んでいる感じでレノ兄ちゃんが俺の枕元に座った。
 他にタークスの人はいない。
 なんか仕事があるんだって。(そうそう、俺、丸々2日も寝てたんだってさ!ビックリしたよ)
 タークスの代表としてレノ兄ちゃんだけが残ってたんだけど、ツォンさん、イリーナ姉ちゃん、ルードのおっちゃんから、それぞれお見舞いを預かってきてくれたんだ。

 ツォンさんは、飛空挺のプラモデル。
 イリーナ姉ちゃんはお菓子セット。
 ルードのおっちゃんはレノ兄ちゃんと一緒に、ってことでスケボーだった。
 やった!退院したらデンゼル達と一緒に遊ぼう。

「…これは、私からだ…」

 ボソリ、と呟きながらヴィンセントさんがくれたのは、意外にもすごくカッコいい帽子だった。
 キャップ…って言うのかな?
 でもなんで帽子?
 あ、そっか。
 頭をぶつけたから、『頭に関係する物』をくれたんだな、きっと。

「ありがとう、ヴィンセントさん!」

 すっごく嬉しくてそう言ったら、ヴィンセントさんはなんかちょっとだけ目を細めて、口の端を心持ち上げた。
 うわっ、笑った!
 笑ってくれたよ、俺を見て!
 貴重だよな、この笑顔!
 笑顔…というか『微笑み』?
 うん、クラウドさんとはちょっとタイプが違うけど、それでもやっぱりすごくカッコいいから、ドキドキしちゃった。

 それにしても、今回は俺が途中で吹っ飛んだから勝負はつかなかったんだけど、あのまま続行されてたらどっちが勝ったのかなぁ?
 ちょっとだけ興味があるな。
 でも、きっとクラウドさん達が勝ったんだろうな…、って思うのは、やっぱり俺の贔屓目かな?

「本当にすまなかった…」「ごめんね、キッド君」

 もう何度目か分からない『ごめんなさい』に、俺はちょっと苦笑した。
 もしかしたら、もうお泊り会、ないかもしれないなぁ…って思って。
 やっぱり大人の人達はこういうことがあったら、次は慎重になっちゃうでしょ?
 初めてのお泊りが中途半端で終わっちゃったから、今度はちゃんとお泊りしたかったんだけどな…。
 だからさ。
「キッド…、今度、改めて泊まりに来てくれるか?」
 クラウドさんがそう言ってくれてすっごくビックリした。
 俺のビックリした顔を見て、きっとクラウドさんとティファさんは勘違いしたんだろうな、すぐに、
「あ…まぁ、すぐに泊まりに来たい、とは思わないだろうけど…」
「あのね、すぐじゃなくて良いのよ、勿論。ただ、デンゼルとマリンも楽しみにしてたのに私達のせいでダメになっちゃったから、お詫びも兼ねて……ね…」
 必死になってごまかそうとした。

 泊まりたくないわけがないよ!

「父さん、母さん、お泊りしても良い?」

 ニコニコ笑って見ていた父さん達に声をかけると、クラウドさん達だけじゃなくてレノ兄ちゃんまでが嬉しそうに笑ってくれた。

「おうよ!お行儀良くするんだぞ」
「良いわよ。元気になったらね」

 へへっ!やったやった〜!
 楽しみだなぁ。

「キッド、早く元気になってね」「キッド、今度こそ夜通しトランプ大会だからな」

 嬉しそうに覗き込んできたデンゼルとマリンに、俺は笑いながら頷いた。

 あ〜、早く退院したい!
 そのためには早く良くならないとな。(と言っても、たんこぶだけだけど)

 英雄VSタークス。
 今回のことでとっても良く分かったのは、やっぱり英雄もタークスもすごく強いってこと。
 そんでもって、皆、本当に温かい心を持っているってこと。


 そして…。


『酒は飲んでものまれるな』ってことだった。

 俺、大人になっても節度ある飲酒を目指します。



 あとがき

 灰色5号様&茶色2号様ご姉妹からの35万ヒットリクでした!
 大変お待たせいたしました。
 そして…。

 ごめんなさい、すごく長くなった上、なんか支離滅裂なお話し&ご許可を頂く前にアプしちゃいました(^^;)
 もしも描写や内容のご要望等ありましたらご連絡下さいませ♪
 リクの内容はこちらからご覧下さい。

 本当に今回は素敵なリクをありがとうございました!!
 妄想が膨らんで膨らんで、すっごく楽しかったです!!

 心からの感謝と、灰色5号様、茶色2号様のご健康を祈りつつ…。