第一印象は…。

 赤い髪の毛のお兄ちゃんは、なんか……軽そう…?
 次に入ってきたスキンヘッドのおじさんは………ヤクザ……??
 その次のお姉ちゃんは……あ、普通だ…。
 んで…その次のお兄さん?おじさん?は……、わ〜、絶対にエライさんだ〜。
 最後の人は…。


「「 どうした(んだ)(の)!?!? 」」


 素っ頓狂な声でビックリしたクラウドさんとティファさんに、俺は一番ビックリした。






酒は飲んでものまれるな(中編)







「俺の意志じゃない、不本意だ」

 まるでお化けでも見たかのように固まっているクラウドさんとティファさんに、最後に入ってきたスーツ姿の男の人は、赤い瞳をしたとてもカッコいい人だった。
 そんでもって、初対面でもすぐに分かったよ、その男の人がすっごくすっご〜く、不機嫌だってことが…。
 うん、言わなくても分かるよ、痛いくらいに!
 お兄さんが(← 『おじさん』だなんて言ったら絶対に怒られちゃうよ!て言うか、目が合ったら殺されるかもしれない…。)クラウドさん達にスーツ姿を見られたくなかった!って思ってることがビリビリ伝わってくる…。

 ん?
 どっかで見たことある気がするんだけど…?
 あれれ〜、気のせいかな…?

「「 ヴィンセントのおじちゃん!? 」」
「…おじちゃんと呼ぶな…」

 すごく嫌そうにヴィンセントさんが呟いた。

 デンゼル、マリン、ありがとう俺の疑問に答えてくれて。
 あ〜…そっかぁ…。
 WROの広報誌で見たことがあるはずだよなぁ。
 そっかそっかぁ…。
 でも、俺の記憶が間違えてなかったら、ヴィンセントって英雄さんは、赤いバンダナみたなものを頭に巻いてて、これまた真っ赤なマントを羽織って、真っ黒い上下の服を着てるはずなんだけど。
 なんで?
 なんで今、上下ともにビシッとしたスーツなの?
 しかも、トレードマークの赤いバンダナはどこいったの?

「ヴィンセント、まさか……、タークスにもど…」

 カチリ。(銃の撃鉄を起こした音)
 ピタ。(クラウドが固まった音)

 ヴィンセントさんがいつ、銃を手にしたのか全く分からなかったけど、分かったことがある。
 クラウドさんがその先を少しでも言ったら即、射殺するつもりだ…!!

「クラウド……」「すまない、悪かった…」

 …。
 俺、初めて見たよ、クラウドさんが視線を逸らせながら顔を引き攣らせたのを。
 一見の価値はあったと思うんだけど、何故か全員今の貴重なやり取りを全然見てなかったのが不思議だ。
 ティファさんまで、
「久しぶりね、ルード。元気だった?」
「………元気だ」
 なぁんて、スキンヘッドのおじさんと笑顔で話してるし…。
 あ、クラウドさんがイヤそうな顔で睨んでる。
 あ…。
 スキンヘッドのおじさん、頭のてっぺんが少しだけ赤くなった。
 ……ティファさんって本当にモテるよなぁ…。
 なんて思ってると、スキンヘッドのおじさんを見て赤い髪のお兄ちゃんがニヤッと笑ったのが見えた。

 あ…。
 モロ目が合っちゃった…。
 う…、何か『黙ってろよ?』ってめっちゃ目で訴えられてる。
 念押しされなくても何も言わないよ…、まだ死にたくないもん。
 可愛い弟(もしくは妹)が産まれてくるまで死ぬもんか。

「さぁ、みんなどうぞ座って」

 ティファさんの明るい声で皆、好き好きに笑いながら席に着いた。
 ちょっと遅れて俺も席に着く。

「ヴィンセントさんに助けてもらったお礼をしたい、と再三申し出ていたのですが断られていましてね。ですが、今回ようやっと機会が巡ってきてくれので…」
「……水をぶっかけたくせに」
「あれは不可抗力。まさか、あんなに素晴らしいタイミングで洞穴から出てきてくれるとは思っていませんでしたね」
「…やっぱり狙ってたのか…」
「愚問ですね」
「………(怒)」

 おでこにほくろのあるおじさん?お兄さんとヴィンセントさんがクラウドさんにそう言ってた。
 俺には良く分からないけど、とりあえずここは聞かなかったことにした方が良いんだろうなぁ、うん。
 それにしても、電話があったときに『来たら分かる』って言ってた意味がやっと分かった。
 こうしてここに連れてくる奇跡なんか、そうそう起きるはずがないね。
 だから、何が何でも今日でなくちゃダメだったんだ。
 …俺、タイミング悪いときにお泊り会なんかしちゃったんだなぁ…。

 とかとか、思ってみてもまぁ仕方ないよな。
 だって、もうとっくに夜になっちゃったし。
 それに、ティファさんもクラウドさんもオッケーって言ってくれたし、うん。

 ところで、席の配置だけどクラウドさんの隣はデンゼルが…って思ったから離れて座ろうかと思ったんだけど、
「キッドはクラウドの隣な」「キッドはクラウドの隣ね」
 って、デンゼルとマリンに勧められちゃった。
 え!?
 良いの、俺なんかが座って!?
 勿論、俺の反対隣にはティファさんが腰をかけたんだけど、良いのかなぁ…。

「キッド、俺の隣はそんなにイヤか?」

 ちょっとまごまごしてた俺にクラウドさんがさらっととんでもないことを言ったもんだから、
「そんなことないです!」
 って勢いで座っちゃったよ…。
 …なんだよ、デンゼル、マリン、その嬉しそうな顔は!
 そんな風に気を使ってもらって俺が喜ぶと思ってるのか?

 めっちゃ嬉しいよ!!(← 正直者です)

「じゃあ皆、グラスは持った?」

 ティファさんに皆がめいめいグラスを手に取る。
 俺とデンゼルとマリンはミックスジュース。
 大人はそれぞれビールとかカクテルとか。
 あれ?でも金髪のお姉ちゃんが持ってるのは……『小さい茶碗』?(お猪口です)

「はい、それじゃあ今回の企画者であるタークスを代表して、ツォンにお願いしようかな」
「………」

 はしゃいでいた皆が注目した男の人は、おでこにほくろのあるカッコいいお兄さん?おじさん?だった。
 皆が注目する中、
「今夜は無理を聞いて下さって感謝する」
 そう、堂々とその人は頭を下げた。
 ティファさんとクラウドさん、そしてスーツ姿が珍しいって驚かれてたヴィンセントさんに。
 ティファさんは笑顔、クラウドさんは戸惑い、ヴィンセントさんは……。

 不機嫌以外のなにものでもないね、うん。

 それなのに、デンゼルとマリンは全然気にしてないみたいで、すごく嬉しそうに笑ってる。
 赤い髪の兄ちゃんも金髪のお姉ちゃんも平気そうにニコニコしてるし。
 スキンヘッドのおじさんは……サングラスで分からないや。

「ヴィンセントさん、改めてあの時は助けて下さってありがとうございました」
「ありがとうございました!」

 気がついたら、金髪のお姉ちゃんも立って頭を深く下げている。
 その隣で赤い髪のお兄ちゃんは椅子にふんぞり返るみたいに座ったまま「ありがとな〜っと」とふざけてるのか、楽しんでるのか片手を上げた。
 そのまた隣ではスキンヘッドのおじさんがむっつりと口を引き結んで小さく頷いた。
 肝心のヴィンセントさんは…。

 虫。
 あ、間違えた、無視だ。
 ま〜ったく見ようとしないんだよねぇ、ここに来た時から全く表情が変わらないよ。
 でも、デンゼルもマリンも全く気にしてないからこんな人なのかな?
 でもさあ、何か良く分からないけど『お礼』のためにこうしてわざわざパーティー(?)を開いたツォンさん…だっけ?の気持ちを少しくらい汲んであげて欲しいなぁ…なぁんて思った俺はでしゃばりすぎなんだろうか…。

「というわけで、今夜はタークスの皆さんのおごりだからうんと飲んで食べましょ〜♪」

 歓声が上がった。
「おいおい、俺は奢らないぞっと…」「………俺までか…?」「私も勿論払いますから〜!」
 なんて声が聞こえた気がしたけど、デンゼルとマリンのはしゃいだ声でよく聞こえなかった。

「それじゃ、カンパ〜イ!!」

 何故か最後はティファさんの乾杯の音頭で乾杯となった。
 俺もクラウドさんと軽くグラスを合わせた。
 その時のクラウドさんが、俺を見てちょっと笑ってくれたのがすごく嬉しかった。


 *


「へぇ、それでそれで?お花のお姉ちゃんの小さい頃ってどんなんだったの?」
「…そうだな。エアリスは小さい頃から私達のことを敵視していた。そのくせ、とても優しくてな。私が他の任務で怪我をした時、それに気づいて回復アイテムをそっとデスクに置いてくれたんだ」
「あ〜!すっごく分かる、お花のお姉ちゃんらしいよね!」
「そうだな…。あんなに花が似合う少女を私は他に知らない」
「うん、すごくすごく大切にしてたもんね」
「本当にな…。それを私は…」
「ツォンさん、ダメだよ、自分のことを『ダメな人間だ』なんて思ったら。それこそ、お花のお姉ちゃん、怒っちゃうよ」
「『怒る』?『悲しむ』ではなくてか…?」
「ん〜。『悲しいから怒る』って感じがするの」
「…ふっ。そうだな。キミは私よりもエアリスと接した時間はうんと短かったのに、私よりも彼女のことをよく理解している…」
「えへへ、そうかな。でも、きっとお花のお姉ちゃん、ツォンさんがそうやって想ってくれてたこと、知ってたよ。知ってて、きっとツォンさんのこと、完全に嫌いってわけじゃなくて、心のどこかでは『好き』だったんだと思うの」
「…そうだと良いな」
「そうだよ絶対!ねね、それからそれから?他に何かお花のお姉ちゃんのお話は?」
「あぁ、そうだな。あれは…」
 マリンはさっきから、おでこにほくろの男の人にしきりに話をせがんでる。
 マリンにとって、きっとすごく大切な人のことなんだろうな。
 そして、ほくろの人にとっても…。
 クールな顔立ちなのに、目はとてもあたたかくて優しい。

「ちょ〜っと〜。クラウドさん、なんでそんなにお酒が進まないんですか〜?」
「………いや、むしろいつもよりもペースは早い…」
「ほらほら、遠慮しないで!今夜の食事はツォンさんのおごりですから!」
「………アンタさっき、『私も払います』って言ってなかったか?」
「はれ?そうでしたっけ?ま、細かいことは良いですから、じゃんじゃん飲んで下さい!」
「…いや、もう…」
「男は飲んで『なんぼ』ですよ〜!さぁ!一気に!!!」
「…ウータイの地酒をこんな恐ろしい量、一気飲み出来るか……」
「成せばなる!さぁ!!」
「それはこの場合には相応しくない表現だ…」
「ぐだぐだ言わないで飲む!さぁさぁさぁ!!!!」
「……(蒼白)」
 クラウドさんは青い顔をしながらジョッキグラスになみなみと注がれた『ウータイの地酒』とやらを前に真っ青になっていた。
 救いを求めてティファさんを見て…。

 あ…。
 固まった。
 視線の先での出来事は、俺が言うのも本当に申し訳ない光景が広がっていた。

「それにしても、ルードってサングラスが本当に好きなのね。今かけてるのにポケットの中にも入ってるし」
「…………唯一の趣味だ」
「そうなの。お洒落なのね」
「………(赤面)」
「クラウドもフェンリルに乗り始めてからサングラスをかけるようになったんだけど、よく壊しちゃうの。もう少ししっかりとした頑丈なサングラスが良いのかな?って思ってたんだけど、どこか良いお店、知らない?」
「………一軒だけ心当たりがある」
「ほんとに?じゃあ、いつでも良いから連れてって欲しいの。お礼はセブンスヘブン一晩無料でどう?」
「………十分だ」
「ありがとう!」

 あぁ…。
 クラウドさんが諦めてジョッキを握りなおしたよ。
 ティファさん、全然気づいてないんだね。
 ていうかさぁ、スキンヘッドのおじさんの頭がまたほんのりと赤みが増しちゃったんだけど…。
 ティファさん。
 俺、ティファさんのこと大好きなんだけど、これはあまりにもクラウドさんが可哀相だと思う…。

 …なぁんて思うくせに。

 実はクラウドさんが困ってるのをなんとかしよう!って思うよりも他にすごくすごく気になることがあるんだ。
 それは…。

「それでな、俺達はずーっと戦ってたんだ、クラウド達とそりゃあ白熱した五分五分の戦いだったんだぞ〜っと」
「え〜、うっそだ〜!なぁ、キッド」
「うん、ちょっと信じられないなぁ」
「うそじゃないんだぞっと!あの時の白熱した戦いを見せてやれなくて残念で仕方ないんだな〜っと」
「「 えぇ〜?ほんとかなぁ〜!? 」」

 てな具合で、デンゼルと一緒に赤い髪の兄ちゃんの話しに興味津々でさぁ、クラウドさんの助っ人が出来ないんだよ。

 だって、興味あることばっかりなんだ。
 クラウドさんの戦いぶりとか、英雄達のチームワークとか!
『俺達が頑張っても結局最後は美味しいところを持っていかれたんだぞ…と』
 てな具合で、楽しそうに話をしてくれるもんだから、もうね、ドキドキ、ワクワクが止まらないんだ。
 お兄ちゃんの『〜だぞっと』って言葉の最後につけるクセ、俺、移りそうだなぁ…。

「それにしても〜…」

 チラリ、とお兄ちゃんがヴィンセントさんを見た。
 ヴィンセントさんの前にはスコッチのグラスが置かれてる。
 時々、口に運んでるんだけどこのワイワイした雰囲気の中、1人だけ浮いている。
 ヴィンセントさんが主役なのに。

「ヴィンセント〜、いつまで拗ねてるんだな〜っと?」
「……」

 レノ兄ちゃんが(← 名前、覚えました)話しかけても無視。

「ヴィンセント、何かおかわりする?」
「……いい」

 ティファさんが気を使って席を立とうとしたけど、一言ボソッと答えて拒否をした。
 困ったように眉根を寄せてちょっと苦笑したけど、ティファさんの顔は『しょうがないわね』って言ってるみたいで、ヴィンセントさんの態度を不快に感じているわけじゃないんだ、って分かった。

「そんなに怒るなんて、大人気ないんだぞっと」
「…お前たちに言われる筋合いはないな」

 取り付く島もない、ってこういうことを言うんだろうな。
 気がついたら雰囲気はすっかり冷めてしまっている。
 すごく楽しい雰囲気だったのに、アッという間に…。

「なぁなぁ、なんでスーツ着せたんだ?」

 レノ兄ちゃんにデンゼルがコソコソっと質問した。
 俺も気になる。
 だって『スーツ姿』が不機嫌の原因なんだろ?
 その原因をわざわざ押し付けて『お礼』っておかしくないか?

「あ〜、それはだな〜…」

 ポリポリ、とほっぺたを掻きながらなんか視線をそらせたレノ兄ちゃんに代わって、
「はいは〜い!私の希望なんで〜す!」
 手を上げて嬉しそうに笑ったのは金髪のお姉ちゃん。
 クラウドさんの首を半分絞めるみたいにして腕を回し、上機嫌なお姉ちゃんにヴィンセントさん以外の全員が目を丸くして注目した。(あ、サングラスのおじさんは良く分からないけど、なんか固まったから目、丸くしてると思う)

「イリーナ……あれほど内緒って…」
「いいじゃないですか〜、もうこんなことになっちゃったんだし〜」

 すっごく上機嫌。
 そして、首を半分絞められているクラウドさんは無表情。
 手にしているジョッキの中身は……空っぽ!?
 …全部飲んだの、あの量のお酒を!?!?
 大丈夫なの!?
 あ、なんか大丈夫じゃなさそう…、ちゃんと、息…してる?

「なんで『スーツ』希望だったの?」

 ティファさん、どうしてそんな冷静に質問できるんですか?
 クラウドさんのこと、気にならないんですか!?

「それは〜、本当にヴィンセントさんが『元・タークス』だったのかイマイチ信じられなくて〜」

 へっ!?
 そうだったの、元・タークスだったの!?
 へぇ、知らなかった。
 うん、信じられないって気持ち、分かるなぁ。
 デンゼルとマリンもビックリしてヴィンセントさんとイリーナお姉ちゃんの顔を行ったり来たりして見てるから俺と同じで知らなかったんだな。

「それで、せめてスーツ姿になってくれたら少しは真実味があるかなぁって思ったんです」
 でも、スーツ姿がビックリするくらいカッコ良くて、それどころじゃなくなっちゃいましたけど〜。

 すごく嬉しそうに言ったお姉ちゃんに、ヴィンセントさんは丸々無視を決め込んでスコッチのグラスを空けた。

「そうだったの。うん、でも確かにすごくカッコいいわヴィンセント。とても似合ってる」
「……ティファ、私は嬉しくない、ということが分かってて言ってるのか?」
「うん、分かってる。でも、ヴィンセント、嫌がってても似合ってるのは事実よ?」
「……はぁ…」

 すごく重い溜め息だなぁ。
 ティファさんは苦笑しながら視線をイリーナお姉ちゃんに戻して、
「ねぇ、そろそろクラウドから離れてくれない?」
 ニッコリと凄みを利かせて笑って見せた。

 あ…、気になってたんだ。
 良かった、なんかホッとした。
 ティファさんがヤキモチ妬かないのってなんかイヤだなぁって思ってたんだ。
 だって、クラウドさんはサングラスのおじさんと楽しそうに話をしてるティファさん見て、すごくイヤそうな顔してたのに、ティファさんにヤキモチも妬いてもらえない、って可哀相だなぁって思っちゃって。
 うん、余計な心配だった。

「え〜?なんでですか〜?別にいいじゃないですか、いつもクラウドさんのこと、ティファさんは独り占めしてるわけですし、今夜くらいは〜」

 え…?
 いやいやいや、なんでそうなるわけ?
 あ、ダメだから!なんでもっと引っ付いちゃうわけ!?
 あぁぁぁあ、ティファさんの顔が、顔が!今まで見たことないくらいにすごい笑顔になってる!!
 怖!
 すっげー怖!!

「イリーナ、やめるんだなっと…」

 レノ兄ちゃんが焦りながらも、ちょっと不機嫌にそう言ったけど、お姉ちゃんは離れない。

「イリーナ、やめろ。酔ったのか?」
「酔ってません!なんですか先輩もツォンさんもティファさんの味方ばっかりして〜!!」

 酔ってるじゃないか…。

「酔ってるよなぁ」「そりゃ、あんだけ飲んだら酔っ払って当たり前だよ」

 デンゼルとマリンがコソコソ話してる。
 2人の視線の先には、床に転がっている空き瓶が一本、二本…合計三本。
 ハハハ、そりゃ酔うよ、うん。

「そんなにティファさんの方が良いんですか!?ルード先輩だってさっきからずーっと!ティファさんとばっかり話して、鼻の下伸ばして!!」
「………」

 黙ってるけど、おじさんが滅茶苦茶焦ってるのが良く分かった。
 ん?なんで分かったのかって?
 だって、すっごく汗かいてるんだもん、それも急激に!
 スキンヘッドだから、汗かいてるのが良く分かるんだよ。
 店の照明でキラキラ光汗の粒。
 初めてこのおじさんがかわいそうだと思ったよ、うん。

「いい加減にしろ。お前たちの茶番にこれ以上付き合ってられん」

 ガタン。
 緊迫した雰囲気をぶち壊すようにヴィンセントさんが席を立った。
 そのまま、オロオロするタークスの人達を尻目に、ドアに向かって歩き出す。
 いつもはサッと判断して行動するデンゼルとマリンも、怒りオーラ満載のティファさんと、イリーナお姉ちゃんに捕まったままピクリともしないクラウドさんを放っておけないみたいで、タークスの人達と同じくらいにオロオロしてた。

 俺?
 俺だってもうどうして良いのか分かんないよ!!(← 逆ギレ)

「逃げるんですか?」

 ピタリ。
 ヴィンセントさんが足を止めた。
 ゆっくりと振り返る。
 怖!!
 目が据わってる、めっちゃ怖!!

「なんだと…?」
「逃げるんですかって言ってるんです」
「バカな、お前たちから逃げる…と言うのか、この私が」
「そうですよ、今まさに逃げようとしてるじゃないですか、戦いもせずに!」

 ヤバイ、ヤバイヤバイよこの雰囲気!
 なんかどんどん、ヤバイ方向へ急激に向かってるよ!!
 ツォンさんとレノ兄ちゃんがオロオロしながら必死に止めようとなにか言ってるけど、イリーナ姉ちゃんとヴィンセントさんのにらみ合いは益々ヒートアップしていった。
「『英雄、英雄』って世間で騒がれていますけど、所詮は私達と同じ人間ですからね。たいしたことないですよね!」
「…ちょっと…どういう意味よ」
「そのまんまの意味です。戦いもしないで逃げるんですから、たいしたことないじゃないですか!」
「……言ったわね」
「言いましたよ」
 ついでにティファさんまでもがその争いの中に巻き込まれていく。
「面白いじゃない、白黒つけた方が良さそうね」
「あら、やるつもりですか、私達と」
「当然よ、ここまでバカにされて黙っていられるほど、人間が出来てないのよ、私は」

 ギャーッ!
 誰か助けてー!!

「おい、俺達を巻き込むな…っと」「イリーナ、いい加減にしろ。社長に報告するぞ?」「……不本意だ」

 あぁ…。
 俺の日頃の行いが悪いからこんなことになっちゃったのかな…。
 誰でも良いから助けて下さい、お願いします。