巣立ちの日まで…私の子供達は自慢の子供達。 私の血も、彼の血も引いてないから、よそ様から見たら『赤の他人』になるけど、それでも『血のつながり』に負けないものを持っている。 そのつながりが、自分がそう信じ込もうとしている『願望』から『確かなもの』に変わったのは、きっと『あの時』から…。 可愛い自慢の子供達は、お店でもお客様達に評判が良い。 それは、デンゼルがクラウドに連れて来られてからずっとそうだった。 ―『デンゼル君は本当にしっかりしてるね。うちの息子ときたら…』― ―『マリンちゃんは本当に良くお手伝いしてるよねぇ。その点、うちの娘ったら…』― などと良く褒められる。 でも、私はその褒め言葉を嬉しく思うと共に、それ以上褒めてほしくない…という実に複雑な気持ちを味わっている。 それは『確かなきずな』を持った今でもそうなの。 だって。 『言葉』というのは、時に人をその『型』にはめてしまうでしょう? 『褒める』言葉をかけられるたびに、デンゼルとマリンは『褒め言葉通りの子供にならないといけない』と自己暗示をかけてしまっている気がするの。 責任感が強く、真っ直ぐで純粋な子供達だから。 デンゼルもマリンも、お客様達に褒められると嬉しそうに笑うんだけど、その次の瞬間から少しだけど……本当にほんの少しだけどもっと頑張ろうとするの。 それ以上頑張る必要なんか、これっぽっちも無いのにね。 だから、私は子供達が褒められる姿を見るたびに、褒め言葉を子供達が受けるたびに、誇らしく思うと同時に、これ以上褒めてほしくないと願ってしまう。 子供達が一生懸命『型にはまろう』としている事に気付いているのは今のところ私とクラウドだけ。 お客様達は勿論気付いていない。 それどころか、デンゼルやマリン自身ですら気付いてないと思う。 だから、デンゼルとマリンをもっともっと『良い子』の型にはめてしまうような言葉をかけてくるし、子供達はその言葉通りになろうと伸び盛りの心を『型』にはめ、小さな身体を酷使しようとする。 だって、その証のようにデンゼルもマリンも、滅多にクラウドや私に我がままを言わない。 デンゼルやマリンくらいの年頃の子供って、『もっと休みたい』とか『あれがほしい』とか『ここに遊びに行きたい』とか言うでしょう? そんな我がままを一度たりとして口にしたことは無い。 せいぜいが、私やクラウド、そして子供達がお互いの身体を心配して、『無理しちゃダメ!』って言ってくるくらいね。 私とクラウドは、そんな子供達が堪らなく愛おしい。 そして、堪らなく切ない。 もしも…。 私とクラウドの血を引いてたら、二人共『我がまま』を言ってくれたのかしら……? あの頃はそう考えて、悲しくなってたな。 いつまで経っても、このままじゃあ『血のつながり』を乗り越える事は出来ないって。 私は勿論、クラウドにとってもそれはとても辛い事。 私とクラウドがまだちゃんとした『家族』になる為の儀式をしていない事が原因かもしれないけど…。 でも…。 私とクラウドは、その儀式について口にする事はお互いになかった。 それは、とても複雑だから…。 私達が犯してきた過去の過ちを考えると…本当に…複雑だから。 愛してるから。 ずっと一緒にいたいから。 家族になりたいから。 その理由だけじゃ、私達は儀式をする事は出来ない。 だから…。 私たち自身の問題のせいで子供達に過剰な負担がかかるなら、それを取り除けるように頑張らないと。 そう思う反面。 きっとこのまま一緒に過ごせていたら、子供達が頑張り過ぎて潰れてしまう可能性よりも、子供達が大きく成長してくれる可能性のほうが高い……なんて思っちゃうのは『親バカ』な証拠かな…? 勿論、だからと言ってこのまま何もせずに、二人が大人になるのを見守るつもりはサラサラ無いわ。 私も……クラウドも。 だって、『子供の時間』は一生の間で凄く短いもの。 今、この時を子供らしく、のびのびと楽しく生きて欲しい。 私や…クラウドがそうして生きてきたように…。 ………まぁ…。 クラウドはあんまり子供時代に良い思いではない…って言ってるし…。 私も村を焼かれたり、パパを殺されたり……とか色々あったけど……。 そ、それでもデンゼルやマリンくらいの年頃の時は、友達と朝から暗くなるまでドロだらけになって遊んだわ。 それなのに、子供達はちゃんとお店の準備の事を考えて『加減』して遊んでるみたいなのよね。 だから、毎日は無理だとしても、少しでも子供らしく……いっぱい遊んで、いっぱい楽しい時間を過ごして欲しい。 のびのびと…。 なぁんにもあれこれ考えないで。 心から…! だからね。 『来週には二連休取れそうだ』 『本当!?』 『ああ。これで、デンゼルとマリンを遊びに連れて行ってやれるな』 『喜ぶわ〜!!じゃ、どっか一泊に行く?』 『そうだな…。それも良いけど…』 『?』 『いや、一日かけてうんと遊ぶ…っていうのも悪くないんじゃないかって思って』 『一日かけてうんと遊ぶ…?』 『ああ。ピクニックでも良いし、買い物でも良いし、ドライブでも良いし…。とにかく、丸一日かけて思いっきり遊びに出かけるんだ。そういうの、した事ないからさ。翌日休みなら、丸一日かけて羽目を外せるだろう?』 『あ、そっか!』 『どうだ?』 『賛成!』 彼の提案に素直に感動して。 彼の嬉しそうな笑顔に素直に嬉しくなって。 彼と一緒に、二人には直前まで内緒にしよう……って約束して…。 二人が喜ぶ姿を想像しあって、その日を楽しみにしてたの…。 『え!?』 『本当に!?!?』 『『やったーー!!!!』』 予定の日を二日後に控えた夜に見せてくれた子供達の笑顔がとっても眩しくて。 とっても幸せで…。 クラウドは言えなかった。 そして…私も…。 クラウドが体調を崩してる……って。 クラウドは無理をしてスケジュール調整をしてくれた。 そのせいで、仕事はいつも以上にハードになり、体力自慢のクラウドも疲労が着実に溜まっていたのよね…。 更に悪いことに、配達先のいくつかで風邪が大流行してたんだって。 疲労のせいで免疫力が低下していた彼にとって、それはもう致命的だった。 『………ティファ…』 『ダメよ』 『でもな』 『ダメったらダメ!こんなに熱があるじゃない!!』 『ティファが運転してくれたら問題ない』 『ダメよ。だってクラウドが無理してるのがバレたら二人が心配するでしょう?それに、無理してまで付き合ってくれたんだ…って悲しむじゃない』 『バレなきゃ問題ない』 『クラウド!』 『折角、今日の為に無理してきたのに、全部無駄になるじゃないか…。それに、一昨日の二人の顔を見てるのに、今更熱が出たから……なんて言えるわけ無いだろう…?』 『う……でも…』 『大丈夫だ。黙ってればバレない』 『だけど…』 『本当に無理はしないさ。今日はピクニックだろ?皆で例の草原で弁当食べてゆっくりする』 『…でも…』 『心配性だな。ちゃんと風邪薬も飲んだし、昼の分も持っていくし。それに、俺もやっぱり家族と一緒に出かけるのを楽しみにしてたからな。これくらいの熱で楽しみを奪われるのは不本意だ』 『………本当に無理しない?』 『ああ、約束する』 『本当の本当に?』 『約束するよ。もし、デンゼルとマリンが俺と一緒にかけっことかしようって言ってきたらちゃんと断るから…』 私はとうとう根負けした。 今思えば、あの時にクラウドの言う事を聞かないで子供達に全てをバラしてしまう選択をしなかったのは、神様のお導きだったと思う。 いつもなら、絶対にあんな無茶な提案、受入れるはず無いもの。 だって、子供達も大切だけどクラウドも大切なの。 休みならこの先いくらでももぎ取る事が出来たはずだもの。 それなのに、子供達の見せてくれた笑顔を思い出して……ガッカリする顔を見たくなくて……。 とうとう彼の言葉に負けてしまった……。 朝食のテーブルでのデンゼルとマリンのはしゃぎぶりは、本当に見ものだった。 こんなに無邪気に嬉しそうに笑う子供達の笑顔に、クラウドは高熱が出ているにも関わらず、本当に穏やかな顔をして微笑んでいた。 その笑顔を見て、私は『ピクニックに出かけても……無茶しなかったらきっと大丈夫よね…』そう安易に考えてしまったの。 今思ったらゾッとするわ。 これから先、同じ様なことがあったとしたら、絶対にベッドに縛り付けてどこにも出さないんだから!! でも…。 あの時は予定通りに草原に出かけるという愚行を犯してしまった…。 本当に……自分でもどうかと思うわ。 でも…。 さっきも言った通り、あの時、クラウドの言葉通りに予定変更しなかったのは…。 神様のお導きだったと思うの。 草原に着いて暫くは、デンゼルとマリンが二人だけで駆けっこしたり、付近を散策したりしてクラウドに負担がかかることは無かった。 それでも、熱があるクラウドにとっては外気はあんまり好ましくない。 段々、薬の効き目も切れてきて、グッタリしてきている彼に私は後悔が押し寄せてくるのを押さえられなくなっていた。 それでも、彼が目を細めて嬉しそうに子供達を見つめているから。 子供達が本当に楽しそうに駆け回っているから。 だから、ついズルズルとそのまま草原で家族水入らずの時間を過ごしてしまった。 いつもなら鋭い子供達だけど、よっぽど楽しくて嬉しかったのね。 クラウドのことも…。 私が気もそぞろな事も…。 二人共全然気付いていなかった。 草原を穏やかな風が吹き渡り、空は快晴でピクニックには最高の日和。 それなのに、私の心は子供達の笑顔を曇らせたくない…という思いと、これ以上クラウドに負担をかけたくない…というせめぎ合いでそれどころじゃなかったの。 本当に……よく二人にバレなかったと思うわね…。 そしてそのまま浮かない気持ちを抱えて時間を過ごした。 子供達が嬉しそうに手を振るたびに『あんまり遠くに言っちゃダメよ』『前向かないと転んじゃうわよ』と声はかけたけど…。 早朝に家を出て、漸く時間はお昼時になって。 気分が高揚したままの子供達と、熱で本当は辛くてたまらないはずのクラウド、そしてそんなクラウドを案じつつも子供達に不安な顔を見せまいとする私は広げたお弁当を囲んだ。 『うわ〜!美味しそう!!』 『ティファの料理はいっつも上手いじゃん!』 『ムッ!分かってるもん!!デンゼルこそ、感動が足りないよ!!』 『ムムッ!そんな事ないね。俺はいっつもティファの料理に感激してる!!』 『ウソ吐き!』 『ウソじゃないやい!!』 『『クラウドはどう思う!?!?』』 『…………え……?』 『『クラウド〜〜!!』』 『あ、ああ…悪い。ちょっと眠たくてボーっとしてた』 『『もう〜〜!!』』 口を尖らせる子供達に、苦笑しつつ謝るクラウドは、本当に血のつながりのある親子みたいで…。 ううん。 クラウドや私の年でデンゼルやマリンの子供がいるってなんだか不自然だから、せいぜい年の離れた兄弟って感じかな…? とにかく、『血は水よりも濃し』って関係が見えた気がして…。 本当に……嬉しかった……。 でも。 『ティファ、クラウド!』 『なに、デンゼル?』 『あそこにすっごく綺麗な花が咲いてるんだ!ちょっと崖の下なんだけど、見に行かない?』 『悪いけど、ちょっと疲れたみたいだから……三人で行って来いよ』 もう、身体が辛くて仕方ないだろうに、懸命にそれを悟られまいと穏やかにそう言うクラウドに…。 『クラウド!クラウドも見てよ!!絶対に綺麗でびっくりするから!!』 いつになく意地になって、デンゼルがそこから動けないクラウドの腕を引っ張った。 マリンがそんな二人にびっくりして目を丸くしている。 きっと、デンゼルもクラウドもそんなマリンに気付いていない。 いつも聞き分けが良いのに、どうしてこんなにも意地になっているのか首を傾げつつ、 『デンゼル…。クラウドは疲れてるから……。三人で行きましょう?』 そう言って、デンゼルをクラウドから引き剥がした。 その瞬間に見せたデンゼルの傷ついた顔に息を飲む。 クラウドもそうだった。 『ごめん、やっぱり行く『良いよ!じゃあ俺一人で見に行ってくるから!!』 クラウドの言葉を遮り、そう捨て台詞を吐いて走り出してしまった……。 あまりにもその予想しなかった出来事に私もマリンもクラウドも呆然とする。 あっという間に小さくなるその背中に、いち早く反応したのはマリンだった。 『デンゼル!!』 そう叫んで走り出したマリンに、私とクラウドも漸く我に帰る。 でも、その時にはデンゼルの姿はおろか、マリンの背中も草原に所々生い茂っているアシの高い茂みに隠れてしまっていて…。 クラウドが真っ青な顔をしてふらつきながら駆け出した。 当然私も走り出す。 本当なら熱のあるクラウドはトラックで待っていた方が良いのに…。 それでも、必死な顔をして……『父親』の顔で子供達を追いかける彼をどうして止める事が出来るかしら。 どうして彼の『気持ち』を殺してしまう事が出来るかしら。 それに…。 きっと、デンゼルにはクラウドが必要なの……それも今すぐに! 私のこの直感は正しかった…。 あの後。 崖の傍で涙を流しているデンゼルを遠くから見つけて。 そのデンゼルにモンスターが迫っているのが見えて…。 マリンがデンゼルを庇うようにして地面に押し倒して、それをまたデンゼルがマリンを庇うようにしてモンスターの盾になろうともがいて…。 血の気が引くとはこのことね。 本当に、寿命が確実に縮まったわ。 でも、もっと寿命が縮んだのは…。 子供達を庇ってモンスターの攻撃を受け、傷ついた彼の姿を目の当たりにした時。 本当に情けなかったわ…。 自分の無力さに。 熱でフラフラな彼よりも先に子供達の下へ辿り着けなかったが為に、彼が傷を追ってしまったこと。 子供達が……特にデンゼルが心の奥底で、やっぱり私とクラウドに遠慮していたという事実。 それなのに、何もしてあげられなかったと言う無力感。 もう……。 全部が…!! 群れの最後の一頭を倒すまで、クラウドは武器を振るい続けた。 私も当然加勢したけど、それでもクラウドが倒したモンスターの数の方が多かったわね。。 『大丈夫か!?』 青白い顔をして、肩で息をしながら子供達を振り返り見るクラウドに、二人が強張った顔を何とか縦に振って見せると、彼は心から安心した顔をして……。 倒れてしまった……。 倒れたクラウドにマリンが泣きながらしがみ付いて…。 私も無我夢中でクラウドに駆け寄って…。 でも。 デンゼルは真っ青な顔で目を見開いてその場に突っ立っていた。 一目で分かった。 デンゼルがあまりの事に真っ白になってるって。 そして。 我に帰った時、どれほど自分を責める事になるのか……ということも。 だから。 『デンゼル、ここ、絶対に離さないで押さえてて!!』 クラウドの傷口を強引にデンゼルの手で押さえさせた。 酷いことをさせてるという自覚はあった。 でも…。 それでも、クラウドを助ける為にデンゼル自身が何かをしたという事実が無かったら、きっとデンゼルはこれから先、ずっと自分を責める事になると思ったの。 それに、実際デンゼルの力の方がマリンよりも強いからクラウドの傷口を押さえるには丁度良い。 小さなデンゼルの手がみるみる鮮血に染まっていく。 その光景は胸を抉られるようだった。 『マリン、デンゼルと一緒にここにいて』 そう言い捨てて、これ以上無いくらいバクバクと打ち付ける心臓を無視して、私はトラックまで全力疾走した。 トラックには非常用にアイテムをいくつか常備してるから。 そのアイテムを取りに行くまでの僅かな時間すら無駄に出来ない。 全力疾走しつつ、携帯から頼りになる仲間に助けを求める。 『リーブ!!お願い、助けて!!!』 私のSOSに、リーブはすぐに応えてくれた。 私達はあっという間にWROの医療施設に運ばれ、そこでクラウドは最高の治療を受ける事ができた。 勿論、WROの救援ヘリが到着するまでに、アイテムをありったけ使う事も忘れなかった。 その間、マリンはずっと意識の無いクラウドに懸命に話しかけ、何度も何度も彼の頬や髪を撫でていた。 まるで『死』に彼を攫われないように…。 でも。 デンゼルは違った。 まるで生きた人形。 真っ青な顔をして小刻みに震え、一言も発しない。 意識の無いクラウドに触れることすらしない。 ただただ、虚ろな眼差しでクラウドを見つめているだけ…。 私も、その時はクラウドが死んでしまうかもしれない…という恐怖から、デンゼルにあまり気を使って上げられなかったけど、それでもデンゼルが壊れてしまうかもしれない……という事は分かったわ…。 でも、だからと言って、私にしてあげられる事が何も無い…と言う事も……悔しいけど分かってたの。 『持つべきものは、やっぱり頼もしい仲間よね』 駄目もとでそう言ってみたけど…。 やっぱりダメだった。 デンゼルはボーっとした表情のまま、治療室のドアをジッと見てる。 やっぱり…ピクニックに行くと言ったクラウドに反対すれば良かったのかしら…? クラウドは体調が悪いと、子供達に素直に話せばよかったのかしら…? 子供達に、素直に謝って次の機会まで待ってもらえば良かったのかしら…? グルグル同じ考え、同じ後悔が頭を巡る。 マリンが私の服の裾をギュッと握って、しゃくり上げながらそれでも必死に泣き出すのを我慢してる。 そんな愛娘の小さな手をキュッと握り返してぎこちなく笑って見せたとき。 治療室のドアが開いて…お医者さんとリーブのがホッとした顔を見せてくれて、堪えきれずに泣いちゃった。 『まったくクラウドさんは無茶し過ぎですよ。元々熱があったんでしょう?それなのに、無茶して、挙句の果てに怪我なんかされたら、いくら命があったって足りませんよ?』 そのままクラウドの所まで通してもらえて、マリンと一緒に彼のベッドに駆け寄って…。 でも。 『デンゼル?』 いつまで経っても部屋に入って来ないデンゼルを、不思議そうに見つめながらベッドに横になってるクラウドが声をかけた。 そのクラウドの声に、デンゼルの虚ろな瞳がゆっくりと持ち上がる。 『さぁ…』 リーブが優しく微笑みながら、小さな背中を軽く押してくれた。 ゆっくり、ゆっくり…。 よろよろと、クラウドの寝ているベッドまで歩いて来る。 その表情は、どこか夢うつつ…といった感じで、とても頼りない。 デンゼルの小さな胸がどれほど痛んだか…。 想像するに難くなかった…。 『どうした、デンゼル?大丈夫か?』 『……それは、クラウドが言う台詞じゃないだろ?』 やっと口を開いたデンゼルの声に、新しい涙が込上げてくる。 『そうか……それもそうだな』 デンゼルの憎まれ口に、ニッと笑って見せるクラウドを、デンゼルは無表情に見下ろしていた。 のろのろとその小さな顔が俯いていく。 その愛息子の頬を…。 ツーッ……と伝う……綺麗な雫。 『なに泣いてるんだ?』 クラウドのしなやかな指先が、デンゼルの頬をそっと拭う。 その時に初めて、デンゼルは自分が泣いてるんだって分かったみたいだった。 再び頭を上げた息子の顔は、ちょっと驚いてるみたいで目を丸くしていた。 そんなデンゼルに、クラウドは苦笑すると、 『バカだな……。そんなに自分を責めるな。むしろ、体調管理の出来なかった俺が悪いんだから…』 どこまでも優しくて…あったかい声音でそう言った。 その途端。 デンゼルは顔をくしゃくしゃにして、ベッドに寝ているクラウドにしがみ付くと大声で泣いた。 もう、その姿で堪えていたものが一気にあふれ出した。 止めることなんか絶対に無理!! かつて、これほど大声で泣いた事の無かった息子をしっかり抱きしめると、周りの事なんか全然気にもならずに一緒に泣いてた。 暫く大声で泣きに泣いて、泣きじゃくるデンゼルに、クラウドは心から嬉しそうに笑いながらこう言った。 『やっと、俺もデンゼルの『父親』になれたな』 その言葉に、触発されて…。 これまでハッキリと言いたかったけど言えなかった言葉を口にした。 ありったけの思いを込めて。 『私も、デンゼルの『お母さん』なんだからね!」 その時のデンゼルの顔を、私は一生忘れない。 きっと、心のどこかでいつも怯えていたのね…。 いつか自分の元から私やクラウドが離れてしまうんじゃないかって…。 本当の『家族』じゃないからって…。 でも。 クラウドと私の言葉に、小さな胸に巣食っていた『暗闇』が確かに消え去った。 その時のデンゼルの瞳の輝きでそうハッキリと見えた気がしたの。 すると…。 『私も、デンゼルの『妹』なんだから!!』 マリンが負けじとばかりにそう高らかに宣言すると、ギューッとデンゼルに抱きついた。 デンゼルの顔が、またクシャクシャになるのを見て…。 デンゼルにしがみ付いてまたまた大声で泣き始めたマリンを見て…。 子供達を嬉しそうに見守っているクラウドの穏やかな表情に…。 私もまた、子供達よろしく大声で泣いちゃった。 子供達を両腕にしっかりと抱きしめて…。 それから随分後になって、 『俺もあの輪の中に入りたかった…』 そうクラウドがちょっぴり拗ねたように言った言葉に、私はついつい笑っちゃった。 『なに笑ってるの?』 『ふふ、内緒』 『え〜!なんだよそれ、ずるいじゃん!!』 『そうだよ〜!クラウドは知ってるの?』 『………内緒』 『『ええ〜!!二人共ずるい!!』』 ほっぺを膨らませて駄々をこねる子供達に、私はくすぐったさを押さえきれずにまたまた吹き出した。 クラウドがますます拗ねた顔をする。 子供達がますます意地になって聞きだそうとする。 以前なら、ここまで意地になって聞きだそうとはしなかったでしょうね。 こんなちょっとした『変化』が堪らなく嬉しい。 神様のちょっと痛い『お導き』だったけど、それでも結果良ければ全て良し……という事で、大目に見るわ! 『子供』の時間は一生の間で凄く短い。 『子供』が『親』の元で生活する時間は…一生の間で本当に短い。 だから…。 ねぇ、そんなに慌てて大きくならないで? そんなに急いで大人にならないで? でも、そう願っても頑張り屋は相変わらず変わらない二人だから、あっという間に『巣立ち』の時がやって来ちゃうんだろうな。 「まぁ、その時は笑って送り出してやれるだけ、俺達も成長しとかないとな」 「うん…そうだね」 「それに、あと十年くらいは一緒にいられるさ」 「十年かぁ…」 「…まぁ、その時までは俺達がしっかり見守ってやらないとな」 「うん、そうだね」 「その時が来て、『ああしとけば良かった』『こうしとけば良かった』って思うことが少ないように、今を一生懸命頑張るか…」 「うん、そうね!」 クラウドの優しい紺碧の瞳に、胸をあったかくしながら草原を走り回る子供達に目を細める。 今日も快晴。 景色は最高。 そして、クラウドの体調も万全! あの時の埋め合わせと言う形で、再びやって来た草原のピクニック。 本当にあの時と同じ光景。 でも違うのは、子供達の私達への信頼の眼差しが一層強まった事と。 やっぱりクラウドが体調バッチリで元気な事よね。 「巣立ちの日まで……こういう風に家族水入らずな時間をなるべく過ごそうね」 「ああ、そうだな!」 隣で微笑む愛しい人と共に誓う。 あなた達が巣立っていくその日まで…。 ううん。 巣立った後でも、あなた達は私達の『自慢の子供達』だよ。 だから。 全身全霊をかけて守ってみせる。 どうかあなた達も…。 巣立ってからも、私達を『親』でいさせてね。 愛しい子供達へ。 あとがき 最初に謝ります…すいません(土下座) 81818番キリリク【FILE2にある『いつか必ず』のティファ視点を〜】とのリクエストです……。 が!! 何と言うか……消化不良気味なお話しになっちゃいました……(汗)。 でも、これ以上なにも浮かばなくて(涙)。 リクをして下さり、OKして下さった設楽様にお捧げします! 本当にありがとうございました〜〜!! |