「うぅ……本当に大きくなって……」
「ええ……本当に逞しくなって……」
「いつの間にこんなに大きくなったんでしょうねぇ…」

「「「あんなに小さかったのに…」」」

 目を見張るばかりの大きな屋敷の大広間で…。
 大財閥の当主が……その妻が……その長男が……。
 巨大スクリーンを前に感動のあまり身体を震わせていた。



とある大財閥の素顔(後編)




 クラウドは思った。
 確かに…確かにプライアデスとグリートの戦いぶりは素晴らしかった。
 二人の息の合ったコンビネーションには心から感服した。
 そして、二人の戦いに対する意気込みも…!
 だが…。

『…本当に…親バカ・兄バカだなぁ……』

 チラリと視線を転じると、真っ赤な顔をして俯いている哀れな親友の姿。
 隣からふと視線を感じ、そっと見やるとティファも同じ様に憐憫の眼差しを紫紺の瞳をした青年と、その従兄弟達に注いでいた。
 自分達の両脇には、子供達が興奮しきりにスクリーンに見入っており、親友達の項垂れている姿には気付いていないらしい…。

『『せめてもの救いだな(ね)』』

 英雄達はそう思った……。


「危ない!!」


 突然、当主の悲鳴のような声にビクッと身を縮こませて振り返ると、丁度スクリーンではクラウドの必殺技が子息達にクリーンヒットしているラストファイトに差し掛かっていた。
 手に汗握るそのラストシーンに、使用人達も口元を覆ったり、目を固く瞑ったり……。
 まさに闘技場の観客席で観戦しているかのような面持ちで見入っている。
 バルト家全員が、ものの見事に完全にスクリーンの試合に入り込んでいる現実に、クラウドとティファは固まった。

 何故ならば…。

 試合の結末を知っているから…。

 プライアデスとグリート、そしてラナは第二試合が始まった時点で既に固まっている。
 プライアデスは頭から湯気が立ち上ってもおかしくない程の紅潮振りだ。
 そして、とうとう…。
 恐れていたその『シーン』が映し出された…。

「「「……!!!!」」」

 バルト家の人間が、声にならない声を発する。
 鋭く息を吸い込み、目を見開き、完全に石化している。


 クラウドとティファの全身から汗が噴き出した。

 いくら正々堂々とした試合の結果とは言え、自分の最愛の息子をコテンパンにのしてしまった張本人を目の前に、果たして親バカ・兄バカであるこの家族が笑って許してくれるだろうか……?
 そもそも、今回の手合わせ試合の『意味』を彼らは知っているのだろうか……?
 知っていてくれているなら、少しは心象も違うだろうが、もしも知らずに『局長からの命令で…』という単純な理由から『英雄』との試合に臨んだと思っていたとしたら……。

 まずい…。
 非常にまずい!!


 ― クラウドの勝利でーっす!! ―


 無情にも試合終了をスクリーンのユフィが告げる。
 途端に湧き起こる歓声と、三人の健闘を称える拍手がスピーカーから広間一杯に響き渡った。

 ゴクリ…。

 クラウドは無意識に生唾を飲み込んだ。
 そして…。
 ギギギ……とぎこちなく軋みながら当主へ顔を向ける。

 そのクラウドの目に映ったものは…。



 真っ赤な顔で俯く息子の頭をクシャクシャと撫でる父親、その隣で微笑む母親。
 反対隣には穏やかな笑みで見つめる兄。
 そして、赤い顔のまま父親の手から身を捩って逃れようとするその弟。

 それは本当に…本当に嬉しそうな…幸せそうな家族の姿。

 恐らく、普段のクラウド達の姿と全く同じなのだろうその光景に、クラウドとティファは驚いた。
 逆に、子供達は嬉しそうに顔を見合わせて笑っている。
 子供達には違和感が無いらしいその光景は、クラウドとティファにとっては微笑ましい以上に『違和感』を感じさせるものだった。

 何しろ、プライアデスはもう『大人』なのだから。
 小さい子供を……デンゼルやマリンを可愛がるような仕草を親がするような年齢は、とっくの昔に過ぎているはずなのだから…。
 それに、こうして『客人の目の前』でそんな親バカ振りを披露するのは如何なものだろう…?
 色々な意味で常識から外れている『バルト一家』だが、ちょっとこれはどうかと思われる。

 ティファは単純に驚いただけだったらしいが、クラウドは思わず呆れた顔をしてしまった。


「叔父上と伯母上は、『小さいライ』にしてあげられなかった事を取り戻そうとしてるんですよ」
「え…?」


 いつの間にか傍に来ていたグリートがそっと囁いてきた。
 ハッと我に返った英雄に、グリートが悪戯っぽく笑いかけながらも……それでもその目は悲しそうに揺らいでいる。
 クラウドの表情を正確に見て取ったのだと分かるには十分過ぎて…。
 呆れたことを気付かれてクラウドは慌てたが、何か言葉を発する前にグリートが口を開いた。
「ほら、『社交界』とか『財界』って色々うるさいんですよね。見ても分かるように、ライだけでしょう?黒髪で紫の目をした『バルト家』の人間って」
 指摘されて改めて気付く。
 プライアデスの両親とその兄は、揃って薄茶色の髪にグレーの瞳。
 プライアデスだけが……目の色だけではなく髪の色まで違うという事実…。

「まぁ、所謂(いわゆる)『隔世遺伝』だと思うんですけど、俺達や叔父上達が知る中で、黒髪で紫の目をした人間はいないのでね。言いたい放題だったんですよ……皆ね。だから、叔父上は『家』を守る為に、ライを全面的に庇う事が出来なかったんです。ま、今では全く逆ですけど…」
 そう言って笑ったグリートを、向かい合って座っていたアイリが虚ろな目で見つめていたような気がしたのは、クラウドの気のせいだろうか……?

 クラウドとグリートの小声で交わされる会話の間も、親バカ・兄バカの会話は続いている。

「本当に強くなったなぁ…」
「ライは本当に努力家だし、素質があるんですね」
「私にもヨシアにも『戦闘』に関する素質はないのになぁ…」
「もしかしたら母上の血かもしれないですね」
「そうか!…ふむ、なるほど。それでサライはあんなに『色々な面』で『強い』のか…」
「そうですね、きっと。良かったな、ライ。素晴らしいものを引き継げて…」
「いやいや、ヨシアにも沢山母上の良いところが引き継がれているぞ?例えば、その物腰の柔らかさとか、意志の強さとか」
「フフ、ありがとうございます。でも、物腰が柔らかくて意志が強いのは、ライの方が優れていますよ。そうでなくては『二階級特進』など出来るはずないですから」
「うむ!確かに!!クラウドさんとティファさんという素晴らしい『英雄』の皆さんと親しくして頂けるのも、ライの人徳の賜物!だが、ヨシア、お前もその『人徳』という賜物はしっかり受け継がれているから安心しなさい」

 感涙に咽ぶ父親と、嬉しそうにそう評する兄、そして黙って微笑んでいる母に囲まれたプライアデスは真っ赤になっていて、これ以上赤くなるところは無いほどになっている。

 そしてとうとう…。
「お願いですから…クラウドさん達がおられるのでもうやめて下さい…」
 消え入りそうな声で懇願した。

「おっと…申し訳ない。お客人の前だというのに、すっかり自分達の世界に入り込んでしまって…」
 ラーハブムが照れ臭そうに頭に手をやる。

『本当に気付いてなかったんだ…』

 苦笑するしかない。
 呆れてしまったことに対する罪悪感が、彼のすっとぼけた言動のお蔭で綺麗に消えてくれたのだから…。
 しかし、まぁ、何と言うか。
 この『ボケっぷり』はどうだろう……。
 良いのだろうか、そんな事で!?
 仮にもこの屋敷の主であるバルト家の当主が客である自分達の事を忘れるとは!!
 大財閥であるが故に、客を招待し、もてなす経験など腐るほどしているはずなのに!!
 それなのに!!!!
 そう思いつつも、

『そんなにライの成長が嬉しかったのか…』

 しみじみとそう思う。
 こうして、手放しで褒めてやれなかったプライアデスの少年時代を取り戻すかのように、息子の成長を素直に認めて喜べる…。

 今、目の前で『父親』として、『母親』としてプライアデスの前に立っている両親は、どうれだけの苦労を背負い、どれだけの誹謗中傷を受けて…、どれ程の代価を払って今の『家族』としての『幸せ』を手にしたのだろうか?

 大財閥ゆえの苦労が……恐らく想像も出来ないような苦労があっただろう。
 いや、きっと今もあるに違いない。
 それを否定するようなことを一瞬でも思ってしまった自分が………情けない。

「ライ兄ちゃんが可愛くて仕方ないんだな…」
「うん、そうみたいだね」
「良かったよなぁ。兄ちゃん、結構、気にしてるみたいだったし…」
「そうだね。やっぱりお父さんとお母さんとお兄さんに『本当に好かれてる』かどうか、心配になっちゃうよね…。髪と目の色がここまで違ってたら…」
 そう囁く子供達の声。
 何故か無性に愛しく感じてしまう…。

『本当に…素直で良い子達だな』

 自分とは違い、素直に喜んでいる子供達に、クラウドはホッとしたような……寂しいような……複雑な気持ちになった。
 しかし…その複雑な感情は『ガタタン!!』と、隣のティファが大きな物音を立てたことによって掻き消された。
「ティファ?なんだ、どうし……」
 真っ赤な顔をして固まっている彼女を見て、何気なく彼女の視線を追ったその先には…。
「!?」


 第二試合が終了して、無意識の内に微笑み合いながら見つめ合っている……自分達の姿。
 まるで映画のラストシーンに良くあるようなラブシーンになっている…。


 そんなこっぱずかしいシーンをスクリーン一杯に映し出されてクラウドとティファが平静でいられるはずが無い。
 真っ赤な顔をして引き攣りながら、
「ちょ、ちょっとー!!こ、こここ、これって全然『戦闘技術』に関係ないじゃない!」
 そう大声で喚きながら、携帯を取り出しどこかへ電話をかけ始めた。
 当然、クラウドもポケットから携帯を取り出し、ピピピ…と履歴から探って目的の人物名にピタリと手を止め、通話を押した。
 その慌てふためく英雄達の姿は……。

 周りで見ている者全員が思わず噴き出してしまうもので…。

「あ、ちょっと、リーブ!どういうことよ!!な、な、なんであんな…あんな仕上がりになってるの〜!!」
 ティファの悲鳴のような叫び声の途中で、相手が出たらしいクラウドも猛烈な勢いで話し出した。
「おい…シェルク…。確か、映像の編集をリーブから頼まれてたよな?WROの隊員達の戦闘技術訓練時に参考にするからって、リーブからお願いされてただろう?それなのに、何だってあんなにノリノリでまるで『映画』みたいに俺達の…その……シーンで終ってんだよ!!何考えて……。え………は!?…ちょ、ちょ、ちょっと待てよ、『俺達用の特別バージョン』っておい!!……………あ、切れた」

 呆然と手の平の携帯を見つめるクラウドの隣では、同じくわなわなと震えつつ携帯を握り締めるティファがいる。
 どうやら、シェルクと同じ様にリーブも話の途中で逃げたらしい。
 リダイヤルまでして問い詰める気にはならないようで、真っ赤な顔をしてスクリーンから頑なに視線を逸らしている。
 チラリとクラウドを見たティファの目が、紺碧の瞳とかち合った。

 バッ!!

 同時に勢い良く顔を背けた英雄に、とうとう堪えきれずに子供達と大財閥縁(ゆかり)の者達がお腹を抱えて笑い出した。

 近来稀(きんらいまれ)に見る初々しい二人を、温かな笑い声が包む。
 包まれた当の二人は、とてもじゃないがそれを喜べる心境には無くて、ただただ、WROの局長と編集に当たったシェルクに怒りとも照れともいえる感情をくすぶらせるのだった…。





「本当に…あなた達が羨ましい……」
 試合の『一騒動』から暫く経ち、子供達が客間に通されて夢の中に旅立った後…。
 広いテラスに出て酔い醒ましをしていたクラウドに、バルト家の当主が話しかけた。
 その声音は、はしゃぎまくっていたものとは打って変わって真剣で……少し打ち沈んだ……そんな口調で…。
 クラウドは軽く困惑した。
 当主は星空を見上げながら、
「出来る事なら…。ライにもあなた方のように、『想い、想われる人』と幸せになって欲しい…。そう願って止むことはありません…」
 淡々と、まるで独り言のように語る。
 クラウドの返事は待っていないような口ぶりだったが、それでもクラウドは、
「ですが…アイリさんはライを想ってるでしょう?」
 と、言わずにはいられなかった。
 ラーハブムは、その言葉に初めてクラウドを見た。
 今日、初めて見る『当主』としても『父親』としても通じる『威厳』と『真摯』な眼差しに、英雄は口を噤んだ。

「ええ…分かってますよ…。『アイリ』がライを好いてくれているということは…」

 初めて『姫』ではなく彼女の名前を口にしたラーハブムの目は、悲しそうに揺らぎ……静かに伏せられた。


「でも……彼女はライと生涯を共にすることは出来ないでしょう」


 小さな声だというのに…。
 その言葉はクラウドの耳に突き刺さった。
 胸がズキンと痛む。
 咄嗟に広間へ視線を投げ、自分以外がこの言葉を聞いていないことを確認した。

「それは……彼女が『バルト家』の血を引く人間に相応しくない…からですか」

 口がカラカラになる。
 声が震えそうになる。
 身体の奥から込上げてくるのは、怒りか……それとも悲しみか……?

 自分自身でも分からない感情に支配されたクラウドを、大財閥の当主は悲しそうに見た。
 そして…小さく……しかしハッキリと首を横に振った。

「そうではありません」
「なら何故!?」

 思わず大きな声になる。
 広間にいたティファ達が驚いて振り返るのが見える。
 使用人達が咄嗟に身構える姿も。

 財界に大きな影響力を持つ『バルト家』の当主に大声を上げるなど、如何に『英雄』であろうとも『無礼』に当たる。
 しかし…。
 当のラーハブムは怒らなかった。
 ただ…静かに…穏やかに…。
 自分の身の安全を守るべく駆けつけようとする使用人達に軽く手をあげて制した。

 そうして、改めてクラウドに向き直る。


「アイリは……『結婚生活』に耐えられません……」
 この意味が分かりますか?


 クラウドの全身から熱が一瞬で引き、代わりに冷たいものが背筋を走る。
『ああ……そうだ……。彼女は……』

 魔晄中毒患者は、極端に体力が……免疫力が低下している。
 ほんの軽い風邪でも簡単にその命が奪われる。
 そんな彼女が、こうして無事に生活出来ているのも、バルト家の人達が細やかな心配りと緻密な栄養バランスを考えた食事を提供し、少しでも体調が崩れたら早急に手が打てるように完璧な体勢を整えているからに他ならない。
 ミディールの診療所を退院出来たのも、『バルト家』に引き取られる事が分かっていたから…。
 孤児院にいた頃に彼女が無事だったのは、孤児院の人達が手厚い看護を施してくれたから。
 だから……彼女は今、ここにいる。

 言葉を無くして俯いたクラウドに、当主は苦笑し、自分の髪をクシャリと軽く掴んだ。
「フッ…本当に申し訳ない。こんな埒もない愚痴をお聞かせするつもりは無かったんです。ですが……」
 言葉を切って、広間を見る。
 心配そうな顔をして見ている家族とティファ、そして使用人達に笑顔で手を振りつつ再び口を開いた。
「あなたとティファさんの幸せそうな…あのシーンを見て、つい……ね。重ねて見てしまったんですよ、ライと…アイリを…」


 ― 決して、目にする事はない……息子の幸せそうな姿を…… ―


 これほど重く、悲しく、辛い言葉を耳にしたのは…あの旅以来なかったことだ。
 かけるべき言葉が見つからない。

 元々、口下手なクラウドが気の利いた台詞を言えるはずも無く、中途半端に口を開けては……結局何も言えずに口を閉ざす。
 ラーハブムは自嘲気味に微笑んだ。
「申し訳ない、クラウドさん。あなたがお優しい方だと分かっていたはずなのに…。お辛い思いをさせてしまいましたね。忘れて下さい」

 無理に貼り付けた笑顔が痛い。
『バルト家の当主』という立場にある彼が、『紫紺の瞳と漆黒の髪』を持つ息子との関係を巡って、一体どんな苦労があったのか…。
 それは想像することしか出来ないが、きっとクラウドが想像する以上に辛い過去があるのだろう。
 その過去をやり直すかのように、当主は現在(いま)、全身全霊をかけて『息子』を愛している。
 そしてだからこそ、息子には誰よりも幸せになって欲しいのだ。

 プライアデスがプライアデスの想う人と…一緒に…!

「あらあら。お二人とも、目がお休みになっておられるのかしら…?」
「「!?」」

 いつの間にか傍らにやって来ていた当主夫人が、穏やかな笑みを湛えて立っていた。
 その表情は、当主と違って…心から幸福そうに…慈愛に満ちている。
 その視線の先には…。

 ゆっくり…ゆっくりと自室に引き上げるアイリの手を引くプライアデスの姿。
 彼女の歩調に合わせ、決して引っ張るわけではなく…あくまで『隣に立って』歩く青年の幸せそうな微笑。

「ねぇ…ライは不幸せそうに見えますか?」
「……サライ……」
「………」
「あの子があんなに自然に…心から幸せそうに微笑むことが出来るだなんて…。それだけで奇跡です。そうでしょう?」
 ゆっくりと夫の腕に自分の腕を絡ませる。
 その目は少しも不安と悲しみを浮かべてはいなかった。
 浮かんでいるのは…息子を愛しく思っている母親として、息子が手にした幸せを喜んでいる歓喜の色。

「さきほどのクラウドさんとティファさんの…その…ラストシーンですが、その時、アイリちゃんがそっとライに手を伸ばしてくれたんですよ?お二人とも、気付いてらっしゃらなかったみたいですが…」
 クスクスと笑いながらそう言った財閥婦人に、夫は目を丸くした。
 クラウドもそれどころでなかったので、その嬉しい事実に胸に圧し掛かっていた重くドロドロとしたものがスーッと
消えるのを感じた。

「アイリちゃんが自分から手を伸ばす事は滅多に無いです。勿論、ライには別ですけど。でもだからこそ……それだけで十分でしょう?アイリちゃんとライにとっての幸せは、一緒にいること…ただそれだけでしょう。一体何がその人に幸せなのかは…それは当人たちが決めることですもの。私達が決めることではありませんわ」
 だから、あんなに幸せそうな二人を見ることが出来て、私も幸せなんですよ…。


 ああ…。
 そうだ。
 幸せは本人が感じるもの。
 だから…。


「あれが、ライの幸せのかたち…か…」
「ええ…私はそう思います。アイリちゃんが我が家にやって来てからというもの、ライはますます穏やかな顔をするようになりました。それに伴い、最初は戸惑っていた使用人達も徐々に打ち解けてきて…」
 嬉しそうに話すサライに、ラーハブムがうんうん、と何度も頷いている。
 その瞳が嬉しそうに滲んでいる。
「それに…彼女、アイリちゃんはこう……温かい雰囲気を生み出してくれるんですよね。一緒にいると…心が休まると言うか…。ですから、今では使用人も誰もが彼女の事を愛してます。大事に想ってます。そのアイリちゃんが誰よりも一番想ってくれているのがライだということが……本当に私は嬉しいんです」

 だから。
 世間一般で言う『結婚生活』に耐えられる身体ではないとしても…それでも一緒にいることが二人にとって何より幸せなことだと思いませんか?
 今日、ライが久しぶりに帰宅することを伝えたとき、滅多に自分からこの屋敷の外に出ようとしないのに、一生懸命門扉まで歩いていこうとしてたでしょう?
 それだけで…。
 彼女がどれだけライに会いたいと思ってくれているか…。
 ねぇ、そんな人に想われて……そしてその人の事を想っている息子は、本当に幸せじゃないですか?


 ギュッとクラウドの腕を握る繊手。
 いつの間に来たのか、ティファが目を潤ませてクラウドの腕を強く握り締めていた。

「ええ……そうですね。俺も……そうだと思います…いや、そう…願ってます…。ライがアイリさんと幸せにこれからも…出来るだけ長い時間をともに生きられるように」

 クラウドの言葉に……プライアデスの両親とその兄が心から嬉しそうに……そして切なさを交えた表情で……笑った。


 人の幸せは…本当に人それぞれ。
 でも…。
 出来るならば…。
 その幸せな時間が、少しでも長く……長く……。
 親友に与えられるように…。


 そう願わずにはいられなかった。


 満天の星空の元、クラウドはそう強く願いつつ、自分の腕を掴んでいるティファの手に、そっと自分の手を重ねたのだった。



 あとがき

 お、お、終った〜!!
 っていうか、リクエストと全然違ってゴメンナサイ。
 リクエストは…。
『英雄シリーズの後日談で、ライの家族に食事に招待されたクラウド一家はそこで任務帰りのライと試合の映像を見せられる、その映像はティファがクラウドにメロメロな所で終わり、二人を除いて幸せな空気に包まれる、(当然二人は恥ずかしがっているクラウドとティファ)そんな空気の中アイリはライに心配した事と会いたかった事を必死に伝え、この二人にもクラウド達のように幸せをゆっくりと積み重ねていけるよう、できれば最後に以前した膝枕のような描写を入れてアマアマというよりはホッとするようなシメにしてv』
 だったのに…。
 出来上がったら……なにこれ……(猛省)。
 本当すいません。
 もう、全然どうしていいのか分からなくて!!
 も、もう一度ライを泥酔させたらいいのか…!?
 それとも、アイリがもう少し『病気が回復』しているという設定にしたらいいのか!?!?
 わ、わ〜〜ん!!。・゜゜ '゜(*/□\*) '゜゜゜・。
 む、無理〜!!
 ごめんなさい、隠しを読んでらっしゃらない方はご存じなくて当然なのですが…。
 アイリはまだまだ治療中なんです〜(涙)。
 という訳で、これが精一杯でした!
 ほんとに長らくお待たせしてこんな…こんな駄文…(汗)。
 こんな話で本当に申し訳ないです。
 もしもお許し頂けるなら……貰ってやって下さいませm(__)m
 リクエスト、本当にありがとうございました!!