「残念だったな。これで広場の人間は木っ端微塵よ!」

 狂い笑う男を、若き隊員は冷たい眼差しでただ見下ろしていた。







WRO隊員(後編)







 広場は混沌としていた。
 誰も彼もがわけも分からず走り出していた。
 右も左も、前も後ろも。
 ぶつかった人間が、自分と縁のある人間か、それとも全くの赤の他人か。
 武装グループの男達なのか、それとも同じ被害者なのか。
 それすら分からず闇雲に人々は走り出した。

 その大混乱の中。
 確実に銃声の数が減っていっていることに気づいたのは一体どれほどの人間がいただろう?
 その数少ない人間の中に、幼い少年と少女がいた。
 デンゼルは自分よりも小さい手をしっかりと握り締め、決して離さなかった。
 そして少女もまた、自分の身体に小さな身体を押し付けるようにしてしがみ付き、離れなかった。
 二人は、パニック状態に陥っている大人達の波から運良く外れることに成功した。
 公園の広場をグルリ…、と取り囲むようにして林立している街路樹の間に生い茂っている背の高い草に身を伏せる。
 そしてクラクラとまだ視力の戻らない目を必死にこじ開け、人々が逃げ惑う様を懸命に見つめていた。

「デンゼル…大丈夫?」
「あぁ、俺はどこも。マリンは?」
「私も大丈夫」
「そっか、良かった」

 弾む息を整えながら互いに安否を確認し、ホッと安堵の溜め息を吐く。
 どうやらかなり幸運だったらしい。
 ほんの少しのかすり傷で済んだのはむしろ奇跡だ。

「ラナ姉ちゃんは!?」

 まだ戻らない視力に苛立ちながら、ゴシゴシと両目を擦る。
 マリンの方が先に視力を取り戻したらしい。
 先程の閃光弾と人々の暴走によって立ち上った砂埃や煙が収まりつつある広場を睨むように見つめ、息を飲む。

「いない!」
「え!?」
「ラナお姉ちゃん、いない!!」

 泣き出しそうな声を上げながらマリンが草むらから飛び出そうとする。
 それをなんとか阻止し、デンゼルはもがくマリンを草むらの影に引っ張りこんだ。

「ダメだ!俺達はバレちゃいけないんだ!」
「でも…!」
「分かってる、分かってるけど…!!」
「……うん…ごめんなさい」

 悔しそうなデンゼルに、頭に上っていた血がスーッと下りる。
 マリンは素直に謝ると項垂れた。
 悔しそうに小さな唇を噛み締める。

「どこに行ったんだろう…」

 一抹の不安がよぎる。
 恐らくWROの誰かが閃光弾を放ったのだろう。
 その隙に、人質を解放して武装グループを討伐する作戦だったことは、小さい二人にも理解出来た。
 問題は、その直前まで拷問されていたラナの安否だ。
 逃げ惑う人々の波に飲み込まれ、踏み潰されていないだろうか?
 あれだけ屈強な男達に殴られ、蹴られて弱っていた彼女だ。
 逃げ惑う人質が彼女を上手に避けて逃げてくれたとは考えにくい。
 それに…。

「どこで爆発があったんだろう…」

 デンゼルはようやく取り戻しつつある視力を確かめるように、目を眇めながら市場の入り口方向を見つめた…。


 *


「ぐふっ…」

 ドサリ。

 クラウドの足元に男が血を吐きながら倒れた。
 渾身の力を込めて蹴り上げたのだ。
 胃壁が破れたかもしれない。
 だが、それがどうだというのだ?

「ラナさん、しっかりしろ!」

 グッタリと意識のないWRO隊員を抱きかかえる。
 つい先ほどまで、この男は彼女を散々殴りつけていた。
 いつもは勝気に微笑まれ、凛とした眼差しで真っ直ぐ前を向いて歩く美しい人。
 その彼女が血の気もなく、顔中に痣を作り、目と口元は赤黒く腫れてまるで別人だ。
 おまけに彼女は…。

 クラウドは新たに込上げる怒りをそのままぶつけるように、自分の上着を破り取った。
 自身はタンクトップ一枚になり、彼女の裸体を包む。
 恐らくまだ誰にも見せていないであろう彼女の裸体は、砂と埃にまみれてもはっきり分かるほど真っ黒い痣がいくつも刻み付けられていた。
 浅く早く、彼女が呼吸する。
 もしかしたら、顔面や腕、胸の骨が折れているかもしれない…。
 クラウドはしっかり彼女を抱きかかえて…。

 ビクッと身体を震わせ、己の本能によって『それ』を回避した。
 ラナを抱えたまま前転する。
 さきほどまでクラウドがいた場所に、「タタタンッ!」と小気味の良いリズムを刻みながらマシンガンが打ち込まれる。
 そのまま銃痕がクラウドとラナに迫る。
 クラウドは走り出した。
 途中、逃げ惑う人達が視界に入り、彼等が流れ弾に当たる可能性が脳裏に過ぎり、方向転換する。
 マシンガンは真っ直ぐクラウドを追った。

「くそっ!」

 敵の居場所ははっきりしている。
 ラナを抱えていなかったらとっくに奴を地べたに叩きつけているところだ。
 だが、相手はクラウドが負傷した女性を抱えているのを良い事に、まるでいたぶるように徐々に追い詰めている。
 クラウドが『英雄』だと気づいているのかいないのか…それは分からないが、クラウドが人気のない所へ移動しているのだけは分かっているらしい。
 少しずつ少しずつ、いたぶりながら追い詰めていく。
 角へ。
 端へ。
 そうやって退路を防ぎ、完全に八方塞になったところを蜂の巣にするつもりだ。
 クラウドは……、怒りで目の前が真っ赤になった。

 と…。

 銃弾が急に止んだ。
 クラウドは思わず振り返った。
 そこには…。

「ユフィ!?」
「クラウド、遅くなってごめん」

 ウータイの忍が木立の上から男を蹴り落とした。
 頭から真っ逆さまに落ちた男の首が、異様な音をたてる。
 ユフィもクラウドも、そのことには全くの無関心…いや、冷酷ともいえる感情で無視をした。

「大丈夫かい、この女の人」

 駆け寄り、クラウドの腕の中でグッタリとしている女性を覗き込む。

「ユフィ、彼女をWROの作戦本部まで連れて行ってくれるか?彼女は隊員だ」

 ユフィは目を丸くした。
「そっか…だから…」
「頼む。俺はデンゼルとマリンを探しに行く」
「うん、分かった」

 ユフィは慎重にラナをおぶった。
 彼女のむき出しの足が、クラウドの目に入り、慌てて目を逸らす。
「なにやってんのさ?」
「あぁいや…その……ユフィ、お前、そのパーカーを彼女にかけてやれないか?」

 クラウドが不可思議な仕草でそっぽを向いた理由を悟り、ユフィはバツの悪そうな顔をした。
 慌ててラナを下ろしてパーカーを脱ぐ。
 キャミソール姿のユフィに再度おぶわれ、ラナはまだ煙る広場の出口へと消えていった。
 人の気配の『種類』が変わってくる。
 先ほどまではただ『混乱』し、慌ただしく逃げ惑う人々と、その人質を一人でも多く道連れにしようとする闇雲な殺気だけだったのが、統率の取れた『闘気』が強くなってきた。
 速やかにWRO隊員達が行動に移した証拠だ。
 クラウドはその頼もしい気配を背後に感じながら、広場の噴水目掛けて跳躍した。


 *


 ブンッ!!
 ガシッ!!
 シュシュッ、メキッ!!
 ガッ、クルッ、トン、シュタッ!!

 幾度拳を交えたことか…。
 ティファは目の前の巨漢に舌を巻いた。
 自分の格闘術があの旅から衰えた…とは思わない。
 日頃から鍛錬はしている。
 いつ何時(なんどき)、自分達にWROの仲間からSOSが入るか分からない。
 だから、身体が鈍(なま)らないよう、日々の鍛錬は怠らなかった。
 それはクラウドも同じだ。
 だからこそ、この目の前の男とここまで対等に渡り合うことが出来たのだとも思う。
 もしも鍛錬を怠っていたら、自分はもしかしたらこの男に負けていたかもしれない。

 それほどまでの……猛者。

 荒々しく、その拳は血の匂いがする。
 恐らく、自分の歪んだ快楽を追い求め、好きに拳を振るって来たのだろう。
 自分や師匠にはない『汚さ』を感じる。

 ティファは自分のことを『聖者』だとは露ほども思っていない。
 むしろ、ミッドガルのプレートを落としてしまった『殺人者』だと思っている。
 その自分が、この目の前の男を『穢れた者』として見るのは間違っているのかもしれない。
 だが!

「アンタだけは…!!」

 同じ格闘家として、断じて許し難い。
 戦う術は、己の快楽の為にあるのではない。
 戦う術を持たない弱者を守り、そして立ち上がらせるためにあるのだ。
 それを、この目の前の男は根底から覆すような存在として目の前にいる。

 今ここで、この男の『格闘家』としての命を終らせることが出来なければ、これから先、多くの人が地獄を見るだろう。

 下肢を屈め、渾身の力を振り絞って飛ぶ。
 地面すれすれを平行するように。
 男が嘲笑に唇を歪めた。
 地面すれすれを真っ直ぐ飛ぶティファを、片足を持ち上げて踏み潰そうとする。
 その刹那!
 ティファは片手で地面をつき、体勢を大きく崩して横に大きく身体を開いた。
 男の足が何もない地面を踏みつける。
 それと同時に、ティファのケリが男のこめかみにヒットした。
 男の巨体が宙を舞う。
 ティファは間髪いれず、体勢を整えると再び地面を両脚で蹴った。
 真っ直ぐ男の上に重なる。
 男の歪んだ顔が恐怖で引き攣るのを茶色の瞳は冷たく見た。

 そのまま…。


 ティファの究極リミット技が放たれ、男の身体が地面にめり込んだ。


 *


 恐怖に見開かれた男を再度蹴り上げる。
 耳障りな悲鳴が男の口から漏れる。
 それを塞ぐように、地面に転がった男を踏みつけた。
 口を中心として顔面を踏まれた男は、目に一杯の涙を浮かべ、冷や汗を流している。

「それで、最後の爆弾はどこにある?」

 シュリは問う。
 WRO支給のブーツの下で、男の前歯がメリメリと音を立てて折れていくのが分かった。
 男が苦悶にのた打ち回るが、顔を踏まれているので動かせるのは手足だけ。
 首から上はピクリとも動かすことが出来ない。

「どこにある?」

 男は血走った目を自分の周りに走らせた。
 ボディガードとして身辺に置いていた選りすぐりの優秀な男達が白目を向いて倒れている。
 男はもう一度、端整な顔をしているWRO隊員を見上げた。
 恐怖が男を支配する。
 こんなにも綺麗な顔立ちをしている人間がいたことにも驚きだが、こんなにも華奢な青年が、まさか裏社会で名を馳せている男達を一瞬で叩きのめすなど、一体誰が想像出来るというのだ?

「先ほども言ったが、あの爆発はWROの手榴弾だ。しかも、爆発の力はほとんどなく、煙が主体の…な。お前の爆発物は機能していない」
「 〜〜!!〜〜〜!!!」

 声にならない声で反論しようとする。
 しかし、それもままならない。
 彼は自分の能力をどこまでも信じていた。
 今回、反WRO組織の人間についたのも、自分が作った爆薬で人が吹き飛ばされるのを見たいがため…だ。
 そのことは、反WRO組織のリーダーしか知らないはずなのに…。

「……あぁ、そうか。もう良い」
「〜〜!?」
「お前に聞かなくてももう良い。星が応えた」

 シュリは冷酷にそう言い捨てると、男の顔から足をどけた。
 男がホッとしたのも束の間、シュリは思い切り男の顔を蹴りつけた。

 失神した男の指から指輪を外すと、シュリは傍に転がっていたコンピューターを操作し始めた。
 いくつかの過程の後、画面に『オールクリア』と表示される。
 シュリは指輪をタッチパネルにカチリ…と合わせた。

 画面が切り替わる。
 そこでシュリは更にもうひと手間加えた。

 暫くして画面に『転送』という表示。
 そして更に数秒後には『完了』という文字。
 シュリはカタカタとピアノを叩くように滑らかな仕草でキーを操作した。

 そしてその動きを終える。

 シュリは溜め息ともとれる息を吐き出すと、一本の筒を取り出し、着火した。
 シュルシュル…と煙幕が空に上る。
 
 それを確認してから携帯を取り出した。

「局長、終了です。電磁波妨害を解除して下さい。本部に全データを送信しました。それから、爆発物はジープ内と噴水のベンチの下に合計六個あるはずです」

 こうしてシュリは任務を終えた。


 *


「本当に皆さん、ありがとうございました」
「「「「 ありがとうございました!! 」」」」

 無事に事件は終着した。
 しかし、誰も彼も、浮かない顔をしている。
 浮かれているのは…誰もいない。
 英雄に憧れている隊員達ですら、目の前に英雄がいるというのに浮かない顔だった。

「クラウドさんとティファさん、そしてユフィさんがいなければもっと犠牲者は増えていたはずです。ほんとうにありがとうございました」

 リーブが深々と頭を下げる。
 ティファはマリンをしっかり抱きしめながら、涙を堪えるようにして首を強く振った。
 クラウドもデンゼルを抱きしめたまま、顔を背けている。

 今回の犠牲者は、反WRO組織の人間を除いて13名だった…。
 反WRO組織の数と、その持っていた武器を考えると、これは少ない犠牲者数といっても良いだろう。
 だが、そういう問題ではないのだ。
 失われた命の数で、その重みが消えるわけではない。
 終始、暗く辛そうな顔をしているのはユフィが一番だった…。
 彼女は心から悔いていた。
 大型手裏剣の武器を持って来るべきだった…と。
 そうしたら、最初の犠牲者の人達は助けられたはずだった。
 場合によっては、自分が『ジェノバ戦役の英雄』ということを名乗り出れば良かったのだ……『彼女』のように。

 ラナ・ノーブルはまだ治療を受けていた。
 酷い拷問。
 その拷問の一部始終をユフィは見ていた。
 子供達には見せないよう、一生懸命自分の胸に抱きしめて隠していたが、それでも自分だけは目を逸らしてはいけないと思い、最後まで…見ていた。

 まさか、彼女が隊員だったとは…。

 彼女と共に同僚も市場に来ていたらしい…ということを、クラウドとティファはリーブから後でそっと聞いた。
 では、他の同僚はその時一体何をしていたのだ?
 至極当然な疑問。
 だが、『彼女達』に言わせると…。

 ― 『ノーブル中尉が『自分が囮になる。もうすぐシュリ中佐が来るから』って…』 ―
 ― 『だから、中佐が救出作戦を行動された際、大混乱になるのは分かってたので…』 ―
 ― 『人々を凶弾から守りつつ、避難先に誘導を…』 ―

 クラウドとティファ、そしてユフィは…顔を見合わせ苦い表情で押し黙った。
 彼女達の活躍があったのかどうかは、あの混乱の中でははっきり分からなかった。
 だから、もしかしたら彼女達の言う通りなのかもしれない。
 だが…。

 なら、何故、傷ついたラナをそのまま放置していた?
 ラナを痛めつけることに飽き始めていたあの男は、人前でラナを犯そうとしていたではないか!
 それでなくても、混乱が起きたら一番にラナが危なかったはず。
 彼女はもう、一人で立ち上がれないくらい、酷い状態だったのに…。

 だけど…。
 それを責める資格はない。
 ユフィは、特にそう思っていた。
 彼女たちを責める資格は自分にはない……と。



「WROは…決してこのような脅しに屈してはいけません。まだこの星には我々が必要です。非人道的なことをする輩が消える事はないでしょう。ですが、星がまだまだ安定していない証拠でもあります。星が本当に解放されるまで…頑張りましょう!」

 リーブの言葉に、隊員達は力強く敬礼した。

 その姿を、クラウドとティファはぼんやりと見つめていた。
 なんとも言えない苦いものが込上げる。
 確かに…必要な組織だ。
 だが、このまま武力を保持したままの組織ではいずれ…。


「心配は要りません」
「シュリ…」

 いつの間にか背後に立っていたシュリに、クラウドはもう驚かなかった。
 青年が神出鬼没なのは今に始まったことではない。

「星が『必要ない』と判断した時、自然とこの組織も潰れます。組織が間違った方向に歩み始めたら、また新たな『選出者』が現れるでしょう」
「『選出者』?」
 ユフィが怪訝そうな顔をする。
 シュリは真っ直ぐ前を向いたまま口を開いた。
「ジェノバ戦役の時、皆さんが立ち上がった。それまであなた方が生き延びたのは、あなた方の力と星の恵みによるものです」
「…じゃあ…アタシ達が…」
「えぇ、ジェノバ戦役の時の『選出者』です。だから星はあなた方の呼びかけに応えた」

 ユフィはなんとも困ったような顔をした。
 そして、そのままティファを見る。
 ティファも困ったような…複雑な顔をした。

 クラウドは暫くぼんやりとリーブの演説を聴いていたが…。

「ところで、ラナさんにはちゃんと言ってやったのか?」
「はい?」
「だから、彼女の功績があったからこそ、こうして無事に事件は終結したんだろ?」
「えぇ、勿論です。ですが、まだ彼女は治療中」

 と、そこでシュリは言葉を切った。
 ゆっくりと後ろを振り向く。
 クラウドも…ティファも…ユフィも…デンゼル、マリンも見た…。


「すいません、遅くなりました」


 顔中包帯でグルグル巻きにされ、右腕を三角巾で釣っている……ラナ。
 唖然とする英雄達を尻目に、深々と上司に頭を下げる。

「申し訳ありませんでした。私があの場にいながら…何も出来ませんでした」

 早口で謝罪をし、パッと顔を上げた。
 奇妙に強張った笑顔を張り付かせている。

「すいません、まだ完全には治っていませんが、簡単な作業くらいなら可能です。隊に戻らせて下さい」
「ちょ、ちょっと待って!」
「そうよ、ラナさん!まだそんな急に動くなんて無理よ!」

 ユフィとティファが慌てて止める。
 そしてシュリを見つめ、目だけで『なんとか言ってやって』と訴えた。
 シュリはそのやり取りを無表情で見つめていたが…。

「中佐!」
「中佐〜!」
「シュリ中佐ー!」

 先ほど、ラナと一緒に市場にいたという女性隊員達が駆け寄ってきた。
 ふと顔をリーブの立っていたところに戻すと、どうやら気づかない間に解散宣言をしたらしい。
 女性隊員三人は、ラナの姿にギョッとして立ち止まると、引き攣った笑みを浮かべながら取り囲んだ。

「ノーブル中尉!ほんっとうにすごかったです〜!」
「さっすが中尉!あの大富豪のお嬢様だからどんなものかと思ったら…とと」
「うん、でもすごく素敵でした。感動しました〜!」

 ラナは微笑んだ。
 無理をして…微笑んだ。
 それが分かる…。

 元々情に厚いユフィが一番最初にカッときた。
 一言文句を…と口を開きかけた時。


「そうだな、ノーブル中尉。よくやった」


 シュリが淡々とラナを褒めた。
 いや……褒めた…と言って良いのか分からないほど、その声には感情が無かった。
 戸惑うラナと英雄達を前に、シュリは言葉を続けた。

「ノーブル中尉。あなたの熱心さはもう充分見させてもらっている。これからは治療に専念してくれ」
「中佐!」
「局長にもちゃんと報告してある。もうすぐ昇格か…あるいは金一封があるかもしれない。いずれにしても、リーブ局長も非常に感動しておられた」
「中佐…」
「俺も、あなたのような優秀な部下を持てて誇りに思う。怪我が治るまではゆっくり養生するように」
「中佐…」
「以上だ。すぐに医療班のところへ」


「シュリ!!」


 シュリの言葉をクラウドの怒声が遮った。



 わ〜〜…また終らなかった。あとがきは最後に書きますね。