― 哂うな!! ― そう言って自分に突進してくる青年を、半ば呆然と見つめつつ反射的に身体を逸らして攻撃をかわす。 哂っているのは、自分ではなくむしろ『哂うな!!』と激昂している相手自身ではないか…。 そう思いながら…。 憎悪という感情(後編)「…あれ?」 クラウドは首を傾げた。 目の前にある光景がなんとも不可思議だった。 確か、今朝ティファと話をした時はいつも通りセブンスヘブンを営業する、と言っていたはずなのに、まだ時刻は閉店までには早い。 それなのに、店の中から常連客達がぞろぞろと出てきていた。 どの顔にも不満…と言うか、不思議な色が浮かんでいた。 まだ食べ足りない、飲み足りない、と雄弁に物語っている。 無意識に店の中の気配を探った。 …特になんの変化も、不穏な動きも察知されなかった。 なら、何故? 首を傾げつつ、重たい愛車を支えている腕に力を込めて、店の裏口の車庫へと愛車を転がした。 本当は、出てきている客達にどうしてこんな時間に閉店宣言されたのか聞いても良かった。 だが、どうせすぐ家の中に入るのだし、そもそもクラウドは人付き合いが苦手だ。 顔馴染みの常連客達と言えど、その気質は変わらない。 クラウドはエッジの入り口近くからずっと押して歩いていた愛車をそっと車庫へと駐輪することに成功した。 ここまで他の人達にバレないように運んだのだ。 最後までバレないように終わりたい。 そっと裏口から店内に入る。 店舗部分に繋がっている裏の物置スペースのドアノブに手を伸ばした時、それは聞こえてきた。 「なぁ、ティファ。なんでいきなり閉店?」 クラウドの眉がピクリ…と不快に動いた。 顔を見なくても分かる。 ここ数ヶ月、ティファに求愛している男の客だ。 彼はお調子者だった。 お調子者で、誰ともすぐに仲良くなった。 それでいて、何かの拍子に見せる真剣な眼差しは、ハッと胸を突くほど親友に似通っていた。 勿論、親友の方が何倍も良い男だったが…。 クラウドの前でも平然とティファを呼び捨てにし、馴れ馴れしく接するその姿はいっそ、清々しくすらあったが、それでもやはり親友とは違う、赤の他人。 ティファとも、マリンとも、デンゼルとも血の繋がりもなく、これまでの人生においても赤の他人だった男。 彼がティファに話しかける姿は胸がモヤモヤとするもので、心騒いで落ち着かない。 ティファが苦笑しながらも、彼の猛アタックをやんわりと受け流したり、クラウドを意識してそっと視線を投げてくる時には、なんとなく『……勝った』と優越感に浸ったりもした。 結局、ティファは自分以外の男性に惹かれることはないんだろう…と、自惚れても許されるのかもしれないな、と思えたからだ。 正直、この男はモテモテだった。 店に来る女性客が、彼を一目見るために通っていることにはすぐ気がついた。 同性のクラウドから見ても、洗練されてて、話術に長けている青年は魅力的に見えた。 ただその魅力が、ティファにとってはさほどでもない…というらしいことが救いだった…。 そんな青年が、客の出払ったセブンスヘブンに残っている。 気持ちがざわつかない方がどうかしている。 「……」 クラウドは仕事の疲れがそのままそっくり倍化されて身体にのしかかるのを感じた。 苛立ち、不安、焦燥感。 それらをぶつけてノブを回そうとする。 だが、 「だから、兄ちゃんも帰ってくれよな。今夜はもう閉店なんだから」 「私達、片付けしたいからまた明日来て下さい」 デンゼルのうんざりした声と、マリンの冷たく事務的な口調が耳に入ってきてノブを掴んだまま固まった。 そのままの流れで耳を澄ます。 すぐに聞きたい声が聞こえてきた。 「本当にごめんなさい。なんだか疲れちゃったし、今夜はクラウドも帰ってくるから、少し早めにお店を閉めることにしたんです」 温かい言葉。 すさんだ心がホカホカのお湯に浸されるようだ。 「それならそうと、最初から言ってくれたら良かったのにさぁ。俺、まだ腹ペコなんだよなぁ…」 「ふふ、本当にごめんなさい。また来てね」 「あ!ひでぇ!!マジで追い返す気!?」 「ふふ、ごめんなさい」 大げさに傷ついた声でそう言う青年に、ティファが軽く笑いながらスッパリと言い切った。 それだけで、今日一日の苦労がスーッと消えるようだ。 『…我ながら単純だよな…』 クラウドは微苦笑しながら小さく息を吐き出した。 さて、困った。 このまま青年が帰るまでここで『居留守』を使うべきなのか。 それとも、普通のフリをして『帰宅』するべきか…。 ティファが、クラウドのために閉店時間を早めたことはもうこの会話で分かった。 なら、そう言った気遣いをしてくれたティファにとって一番気の利いた行動とは? 『居留守』か。 『帰宅』か。 「 …… 」 暫しの黙考。 クラウドは『居留守』を選択した。 大して深い意味はない。 このまま出て行けば、間違いなく青年の『冗談めかしたイヤミ』に遭う事は間違いない。 そんなことになっても、クラウド自身はなんと言うこともないが、気使いしてくれたティファがいやな気分になるだろう。 それに、子供達もイヤ〜な気持ちになるのは必定だ。 と言うことは、このまま青年が帰るのを裏口でひっそりと待てば良い。 なに、大したことじゃない。 ほんのちょっぴり、腹は減っているが、これくらいあと数十分後には食事にありつけるはずだ。 それくらいの時間、待てずにどうする!? グ〜〜〜〜〜…………。 なんで鳴るかな、このタイミングで。 クラウドは己の腹の節操のなさに涙が出そうだった。 腹の虫が鳴った途端、店内でのやりとりがパタッと止み、次いで勢い良くドアが開いた。 「「 クラウド!? 」」 驚きつつも嬉しそうに顔を輝かせた子供達と…。 「「 …いつの間に!? 」」 目を丸くする愛しい人と常連客。 クラウドは取り繕おうとして、微笑んだ。 「ただいま…」 それは、どう贔屓目に見ても、引き攣った微笑でしかなかったが…。 * 微かに差し込んでくる朝の日差しに、クラウドは顔を顰めた。 ゆっくりと重たい瞼を押し開ける。 右腕に感じる心地良い温もりと重みに、そっと顔を向けた。 ぐっすりと眠っているティファに、頬が緩む。 目を閉じている彼女の顔を見つめていると、ティファの整った顔(かんばせ)がいかに素晴らしいのか、ということを再認識させられるばかりだ。 スッと通った鼻梁。 形良い唇は薄く開いて小さく息を繰り返している。 スーッと弧を描いた眉は、意志の強い瞳を完璧なまでに芸術として仕上げていた。 今は、その美しい茶色の瞳は瞼の向こうに大切にしまわれている。 長い睫毛が朝日のかけらを受けて、その影を肌理細やかな肌に落としていた。 「……」 そのまま黙って暫し見惚れる。 本当にティファは美しい。 容姿も完璧なのだが、彼女の内面の美しさはどうだろう? 魂の純真さがそっくりそのまま、肉体に現れているのだと、本気でそう思う。 だからこそ…。 彼女に惹かれてしまう人間は多い。 「……どうしたものかな…」 ティファの頬に左手の人差し指一本だけで触れながら、クラウドは1人ごちた。 いや、どうすべきなのかはもう分かっている。 分かっているのだが…、認めたくないのだ。 ―『明日の夕刻、エッジの南西荒野にて』― 茶化したようにそう言った青年を思い出す。 ティファと子供達の前で、わざと大胆にも宣戦布告した青年を。 デンゼルとマリンは、ピエロのように大仰しい動作でお辞儀をした青年に笑っていたが、ティファはぎこちない笑みを浮かべ、伺うようにクラウドを見た。 青年が、冗談だけで終わらないと分かったからだ。 そして、クラウドも分かっていた。 だからこそ、クラウドは、 『興味ないね』 と、いつもの口調で青年をあしらい、その後も特に気にする風でもなく過ごしたのだ。 だが…。 このまま、青年が『本当に決闘を申し込んだ』と気づかないフリは出来ないだろう。 それこそ、今日、指定された時間にその場所へ行かなかったら、後々なんと言われるか。 絶対に、冗談にかこつけてイヤミの応酬がバンバン飛んでくるはずだ。 それに、それだけじゃない…。 青年の最近の瞳の奥で光っている暗い情熱の色がとても気になっていた。 その光は日を追うごとに、暗く、陰気になっていく…。 このまま見過ごすことは、青年のために…というのではなく、ティファはもとより子供達にも害をなすかもしれない。 それが怖い。 クラウド自身に何らかの危害があるならいざ知らず、ティファや子供達にまでその危険が及ぶとなると話は違う。 「……それにしても、なんで今日の夕方には配達がない、って知ってたんだ…?」 まだ夢の中をまどろむ恋人の髪を軽く梳きながら、クラウドは首を捻った。 そうして…。 「へぇ、ちゃんと来たんだな」 「……来いと言ったのはお前だろう…」 クラウドがその場所に来た時、青年は既に準備万端だった。 夕日を背に負うようにして立つ青年に、クラウドは僅かに目を細める。 濃いオレンジの色が目に痛い。 だが、幸か不幸か、クラウドは魔晄を浴びた人間。 普通の人間とは違い、これくらいの陽光でも視力を低下させることはない。 だから、青年がその手に持っている武器を正確に見て取ることが出来て、クラウドは内心驚いていた。 バスターソード。 かつて、親友がその親友より託された武器。 そして、自分が親友より託された武器。 それを青年が持っている。 いや、全く同じ代物、というのではなく、同じ種類の違う武器なのだろう。 だが、どうして一般人である青年がそれを持てるのか。 持つだけではなく、武器として扱えるのか…。 その答えは1つだけだ。 「お前…、ソルジャーか」 「いんや、なりそこない」 驚嘆するクラウドに、青年はあっさりと否定した。 その言葉にクラウドは別段驚きはしない。 かつての神羅カンパニーはそういう人間を沢山生み出してきた。 青年のように、ソルジャーになりそこなった一般人はそれこそ掃いて捨てるほどいるだろう…。 クラウド自身も、魔晄こそ浴びたがソルジャーにはなれなかった。 「それにしても、よくちゃんと来たな」 「……まぁな」 「ティファのためか?」 「……それもある」 「へぇ、じゃあデンゼルとマリンのためでもあるわけか」 「 …… 」 「そういうところ、カッコいいけど、やっぱ『けたクソ悪い』ね」 「 …… 」 「それからさぁ、今日、ここに来てること、ティファには言ったのか?」 「…いや」 「へぇ…なんで?」 「 …… 」 「俺に負けるはずがない!そう思ってるんだ?」 「 …そうじゃない 」 「へぇ、じゃあなんでさ」 「 ……言いたくないね 」 「はん。欺瞞だね」 「 …なんとでも言え 」 最後の台詞でクラウドも武器を構える。 クラウドの武器が、夕日を受けてギラリ、と光った。 青年が真っ直ぐ武器をかざし、両足の筋肉を最大限に収縮する。 クラウドが肩幅に足を開いた。 青年の瞳がカッ!と見開かれ、同時にその場から一気に跳躍する。 ギラギラと光るその双眸は、クラウドしか見えていない。 クラウドもまた、青年から目を逸らさずに武器を構えて出迎えた。 何度、武器と武器を交えたことか。 クラウドの頬や腕に薄い傷が走り、薄っすらと血が滲んでいる。 そのクラウドの足元に、青年が全身で息をしながら両膝をついていた。 赤茶けた大地に膝を着く青年を、クラウドは何となく空虚な気持ちで見下ろしていた。 青年の狂気に彩られた瞳はその色を失うどころか、ますます色濃く宿っている。 自然と見上げる形になっているクラウドを、青年は口角から幾筋かの鮮血を垂らしつつ、毒を吐き続けた。 「たまたま、アンタの方がティファと出会うのが早かっただけだ」 「ティファにとって、アンタの方が、俺よりも頼りなくて、だからこそ、ティファは離れることが出来なかったんだ」 「ティファはアンタよりも俺と一緒にいた方が絶対に幸せになれるんだよ!」 「アンタに何が分かる!?ソルジャーにもなれず、初めて惹かれた女には既に恋人がいて…」 「捨てられたくせに、頑として他の男を見ようとしなかったティファの気を引こうと必死になった俺や、他の男達の気持ちが、アンタにわかるか!?」 「俺はティファを愛してる!誰よりも…、誰よりもだ!俺自身よりもだ!!」 「アンタはどうだ!?俺よりもティファを愛していると言い切れるか!?無理だろう!?!?」 「何故なら、この世界で俺ほどにティファを愛している男はいないからな!!」 どの言葉も、クラウドの耳には痛い。 どの言葉も、青年の視点に立てば本当なんだろうと思う。 だが、青年の言う言葉全てが真実か、と問うとそうではない。 クラウドは勿論、ティファを愛しているし、子供達も含めて自分自身より大切な存在だと思っている。 だからこそ、クラウドは自分自身を大切にしないといけないのだ…と、学んだのだ。 青年が言う、『ティファを捨てた』という過去の失敗から。 「別にアンタに認めてもらわなくても構わない。ただ…」 言葉を切って背を向ける。 もう青年に闘うだけの力は残っていない。 「二度とティファや子供達の前に姿を現さないでくれ」 淡々とそれだけを口にしてクラウドは愛車にまたがった。 エンジンを思い切り吹かせる。 青年の歪んだ瞳に燃え上がる憎悪の色。 唇を食い破らんばかりに食いしばっている歯。 それらを目に焼き付けて、クラウドは愛車を走らせた。 ―『誰かを憎いと思う、あるいは思ったことがあるなんてことは、汚い心を持っているからではなく、人間として至極普通のことですよ。むしろ、愛情が強い人ほど、その感情は大きく脈打つものではないかと、私はそう思っています』― ティファがそう呟いた。 クラウドはドキリ、と食事の手を止めてカウンターの中にいるティファを上目目線で伺った。 子供達には、モンスターに遭遇した、と適当なことを言って頬や腕の傷の言い訳とした。 2人とも、ウソに気づいているのかいないのか分からないが、ニコニコと笑ってその言葉を受け入れた。 ティファも、 「もう、腕が落ちたんじゃないの?」 そう軽口を叩きながらも、手当てをしてくれる手は、どこまでも優しく、瞳は心配の二文字を浮かべていた。 子供達と共に夕食を囲み、今はまた、入浴後の軽い一杯をティファと楽しんでいる。 そんな中でのティファの独り言。 とてもじゃないが、聞き流すにはこのタイミングは重い。 だが、何と言ったら良いのか? 相変わらずの口下手加減に、自分で自分がイヤになる。 「だいぶ前にラジオで言ってたの」 クラウドの視線に気づいてティファは軽く微笑んだ。 クラウドは「あぁ…そうか…」と、口の中でモゴモゴ言ったが、それをティファがちゃんと気に留めてくれたかは分からない。 「ねぇ…本当にそうだと思う?」 「え…?」 ふいに問いかけられ、クラウドはもう一度目を上げた。 ティファの茶色の瞳が真っ直ぐ自分を見つめていてドギマギする。 視線をそらせながら、ティファの言った言葉を頭の中でリプレイし、その意味を考える。 「『愛情が強い人ほど感情が大きくなる…』とかってことか?」 黙ってこっくり頷くティファに、クラウドは『さて…』と、顎に手を添えた。 そうして、必然的に考えたのは、夕刻の青年の姿。 彼は彼なりに本当にティファを愛しているんだろう。 だが、彼の愛し方は酷く一方的で、とても悲しく思えるものだった。 だけど…。 そう感じてしまうのは、そもそもクラウドが既に両想いという恵まれた状態にあるからなのではないだろうか? もしも、家出をしている間に、他の男が(例の青年も含め)ティファの隣に立つことを許されていたら、自分は冷静に自分の現状を見ることが出来るだろうか? いや、不可能だと言い切れる自信がある。 この場合、言い切れる自信があるというのは、なんの自慢にもならないのだが、本当にそうなのだから仕方ない。 開き直りと言われればそれまでだが…。 「俺の場合はそうだな、感情の起伏が大きい人は情に厚い人が多いと思うが、感情の起伏をあまり感じさせない人が情の薄い人だとは思わない」 「…それって?」 「だから…、ラジオで言っていたことは真実の1つではあるだろうけど、真実の全て、ということじゃないと…思う…」 珍しく理路整然と言葉にしたせいか、最後の方はなんだか小さく、不安げな響きとなってしまった。 だが、ティファは笑わなかった。 嬉しそうに花がほころぶように微笑んだ。 「私も同じ。『感情の起伏が激しい人が…、憎しみを強く感じる人が、その対象を強く想うことの表れ』だって人括りにされるのに、なんだか抵抗を感じたの」 「そうか」 どうやら、ティファの機嫌を損ねることは回避出来たらしく、ホッと胸を撫で下ろす。 隣のスツールに座って、ティファは自身のグラスを傾けた。 「…あの人ね」 「……ん?」 「最初は本当に普通の人だったの。それこそ、クラウドが家出する前からずっと通ってくれている人だった…」 「そうだったのか?」 初めて知った事実に目が丸くなる。 ティファは笑った。 少し寂しげな微笑だった。 「うん。でもね、最近…ちょっと雰囲気が『あ、ヤバいな』って感じることがあったりとかして、どうしたら良いのか悩んでたの…」 「……そうか」 「でも……ううん、なんでもない」 無理やり途中で終わらせたティファに、クラウドはあえて追求しなかった。 彼女の伴侶は間違いなくクラウドで、彼女の抱えている悩みも全部クラウドが共に背負うべきなのだろうが、それでも彼女の心は彼女のものだ。 悩み、悲しみ、懊悩することがこれから先の人生、腐るほどある。 その時、いかに傍にいて支えられるか…、それが問題だと自分に言い聞かせる。 そうして、その時に自分がどれだけ力になれるのか、それを問うべきだろう。 問うて、学び、成長することこそが必要だ。 決して、憎悪という感情のみに身を任せてはいけない。 悲しみは思いやりの心を生むという。 寂しさは人を包み込む温かさを教えてくれる。 だが、憎悪は何も生まない。 そこから生まれてくるのは、自分自身も含めた崩壊だけだ…。 それをクラウドは、改めて思い知らされたばかりだった。 「それでも、俺達はもう大丈夫だ」 「……うん」 「ちゃんと帰る場所があるからな」 「……うん」 「もう二度と…逃げないから」 「……クラウド」 「もう絶対に忘れないから」 「……うん!」 ニッコリ微笑んで、涙の欠片を払ったティファにクラウドはそっと抱きしめた。 そのまま、身を委ねてくるティファの身体を横抱きに抱えて自分の膝の上に乗せた。 至近距離でティファが照れ臭そうに微笑む仕草に、自然と笑みがこぼれる。 そっと唇を寄せながら、クラウドの脳裏には夕刻の青年が浮かんだ。 『…もう二度と間違えない』 ティファの温もりを感じながら、静かに思う。 かの青年にも、いつの日か憎悪から解放される日が来たらんことを…。 あとがき …またなにか偏った話になりましたね。 もう、何も言うまい……(脱兎) |