a lost child 3「さってと!それじゃ、お子様達は気をつけて行ってらっしゃ〜い!」 「あ、あれ…?ユフィはどこに行くの!?」 子供達がジェットコースターの入り口の中に消えて行くのを見送ったユフィが、ウキウキとしながらその場を離れようとする。 「ん?だってさ〜、お子様達が戻ってくるまで時間が勿体無いじゃん?私はちょっとそこまでブラブラとね〜♪」 「……お前、どうしてもチョコボレースをしたいんだな…」 キッパリ・ハッキリ言い切ったクラウドの低い声に、お元気娘はビクッと数センチ地面から浮き上がったが結局、 「エヘヘ〜〜…じゃ!」 としまりのない笑みを残して脱兎の如く駆け出してしまった。 「…全く…ユフィッたらしょうがないわねぇ」 「まぁ、集合場所と時間はさっきシド達とも決めた事だし、大丈夫だよ……多分…」 腰に手を当てて溜め息をつくティファに、自信なさそうな顔をしたナナキがフォローをする。 『ナナキ……フォローになってないぞ…』 心の中で冷静に突っ込みを入れながら、クラウドも溜め息をついた。 お元気娘の姿は既に人混みに紛れて完全に見えなくなっている。 それに、お元気娘にはお元気娘なりに見て回りたいコースもあるのだろう…。 そのコースと子供達のコースを合わせて巡る事を考えると……。 このまま別行動を取った方が良いに決まっている…。 それに、もしも一人が寂しくなったら自分達がどこにいても、どこからともなく戻って来るだろう…。 やがて、子供達が乗ったジェットコースターがゆっくりと動き始めた。 バレットは周りの目も気にせず、ジェットコースターに乗っているマリンに大きく手を振っている。 子供達は二人共、満面の笑みで手を振って見せた。 しかし、次の瞬間。 「「「「キャーーーー!!!」」」」 という歓声が上がり、レールの頂上に達したジェットコースターが急降下する。 大回転にスピンを巧みに取り入れたジェットコースターを目で追うだけで、クラウドは酔う気分がする。 「わぁ!楽しそうね!!」 「おいらも乗ってみたいなぁ」 「俺もちょっと乗ってみたくなったな」 楽しそうにキャーキャー歓声を上げている子供達の姿を見て、ティファ達が羨ましそうに話をしている。 『どこがそんなに楽しいんだ……!?』 とことん乗り物に弱いクラウドには、理解の出来ない話題だった…。 クラウドにとっては幸いにも、ティファ達の願いは叶わなかった。 何故なら、子供達二人が乗る為に二時間も待たなくてはならない超人気のアトラクションなのだ。 今から並べば、確実に集合時間になってしまう。 そんな時間の勿体無い事など出来るはずもない。 満面の笑みで戻って来た子供達を再び両の肩に担ぎ上げたバレットを見て、クラウドは心底ホッとしたのだった…。 そんなクラウドに、ティファがクスッと忍び笑いを漏らし、それを気付かせないよう配慮したのは彼女の優しさだ。 ティファのささやかな心配りに気付かないまま、クラウドはゴールドソーサーのパンフレットを広げ、次の行き先を決めかねていた。 「デンゼル、マリン、どこに行きたい?」 バレットに担ぎ上げられている二人は、クラウドを見下ろしながらニコニコと楽しそうに一斉に指を差した。 指された所は一箇所ではなく二箇所。 デンゼルが指したのは『バトル闘技場』。 マリンが指したのは『占いの館』。 その場所が、正反対にある事から子供達のバトルがバレットの顔を挟んで始まった。 「え〜、占いなんてさ〜、別にここでなくてもエッジでもやってるじゃん!」 「でも、ここの占いの方がエッジの市場の奴よりも本格的っぽいじゃない!それに、私、エッジでも占いやってもらった事ないもん!」 「『バトル闘技場』はここしかないじゃないか〜!」 「モンスターと闘う所なんか見て何が楽しいのよ〜!」 「それこそ『男のロマン』じゃないか〜!」 「私は女の子だもん!!」 「おい、二人共……頼むから耳の傍で大声出すな…」 「「あ、ごめんなさい」」 耳元で子供達の甲高い声をまともに聞く事になったバレットが、とうとう口を挟んで、その場は何とか収まった。 しかし、肝心の行き先が決まったわけではない。 クラウドは、同じ『男』としてデンゼルの意見も分かる…と言い、ティファはティファで、同じ『女の子』としてマリンの気持ちも分かる…とフォローした。 「ん〜、じゃあさ。二手に分かれる?」 足元からナナキがそう提案する。 が…! これにも子供達が反対した。 「「折角クラウドのオフの日で家族揃って遊びに来たのに、そんな勿体無い事出来ない!!」」 見事に声を揃えて言い切った子供達に、大人達は思わず吹き出した。 何だかんだ言い合っていても、しっかり『兄妹』として強い絆で結ばれている。 そう、感じたのだ。 「でも、そうなると……」 「ちょっと時間的に苦しいな」 パンフレットとにらめっこしながら、子供達の親代わりが頭を捻る。 その親代わり二人の頭の上から、子供達と義父がパンフレットを覗き込み、ナナキが後ろ足で覗き込もうと立ち上がる。 そんなクラウド達が周りの人達から少々注目を集めている事に、誰も全く気付かないのだった…。 「仕方ない。先に『占いの館』を回って、すぐに『バトル闘技場』へ向かうか…」 クラウドの出した結論に、子供達は「「え〜〜…」」と、何とも残念そうな声を上げた。 「しょうがないさ。二人の行きたい所を効率よく回るには、時間制限のない『占いの館』を先に回った方が良い。それに、『バトル闘技場』は今すぐ向かってもまだ開演前だろうしな」 苦笑しながら説明するクラウドに、子供達は顔を見合わせると漸く納得した。 「そうと決まったら急がなきゃダメなんじゃない?」 「そうよね。『バトル闘技場』が始まっちゃうのってあと四十分でしょう?」 ナナキに突っ込まれ、ティファに頷かれた一行は、駆け足で『占いの館』へと向かった。 仲間の内でもバレットは決して俊足じゃない。 その彼が、子供達を二人も肩に担いで走っている。 という事は、必然的にその速度はいつもの倍ほども遅くなる。 クラウドとティファは、それぞれデンゼルとマリンを受け取ると、肩で息をしているバレットに、 「先に行くから、『占いの館』の外で待っててくれ!」 と言い残して、先に向かう事にした。 了解の合図に、バレットが太い腕を上げて見せたが、それも人混みに紛れてすぐに見えなくなる。 「何だってこんなに今日は人が多いんだ?」 デンゼルをおぶって走るクラウドが、人の多さに思わず毒づく。 「さぁ……多分、『アイスショー』のせいじゃないの?」 マリンをおんぶしたティファが、若干息を切らせながらそれに答えた。 子供達はそれぞれ、自分達自身で走るから…と言ったのだが、こんな人混みの中、子供達が早く走れるとは思えないし、何より迷子になる可能性が高いことから即却下した。 ナナキが足元から心配そうにクラウドとティファを見上げる。 「おいら、マリンなら女の子だし背負って走れると思うよ?」 「うん…ありがとう。でも……」 ティファが何か言おうとしたその矢先、前をむいていなかったナナキは、目の前にあった看板にまともにぶつかり、その反動でひっくり返った。 「だ、大丈夫!?」 「おい、ナナキ、無事か!?」 あまりにも勢い良くひっくり返った仲間に、クラウドとティファがギョッとする。 デンゼルとマリンもびっくりしてそれぞれクラウドとティファから飛び降りた。 「あ〜…イタタ…大丈夫、大丈夫。びっくりしただけ…」 少々目を回しながらそう言う仲間に、クラウドとティファは、 『『絶対に子供達を乗せられない!!』』 強くそう思ったのだった…。 そんなクラウド達を、周りの人達が遠巻きに物珍しそうに見つめているのにも…やはり誰も気付かなかった…。 そんなこんなで、一行は何とかマリンご希望の『占いの館』に辿り着いた。 中は丸い大きな部屋が一つあり、暗い照明の下、いくつかの仕切りが施されていた。 テーブルが設置されて占い師がその各仕切り内のテーブルの向こう側に座っている。 テーブルには雰囲気を出すためなのか、はたまた本当に使うためなのか分からないが、水晶球やタロットカード、それに良く分からないが石の様な物や皿、更には髑髏の置物までが置かれている。 マリンが興味深そうにキョロキョロと見渡し、順番を待っている最後尾に並んだ。 順番を待っているのはやはり若い女性かカップルが多い。 しかし、ジェットコースターの様に何時間も待たなくてはならない…という事にはならないだろう。 ここで一旦、男の子組みは『占いの館』で待つ事にした。 マリンの付き添いと言う形でティファが中に残る。 待っている間、デンゼルが買ってもらったアイスキャンデーを舐めながらクラウドを見上げた。 「それにしてもさ。何で女の子って『血液型占い』とか『星座占い』とか好きなんだろうな…?友達でもやっぱり雑誌を一生懸命見てる子がいるけどさ〜。雑誌ごとに書いてある事が違うんだぜ?それなのにいちいちキャーキャー言っちゃってさ…」 俺にはさっぱり分かんないや…。 そうぼやくデンゼルに、クラウドは勿論、ナナキとようやっと遅れて到着したバレットも大きく頷いた。 女心は全く謎だと思う。 明らかに『大衆用』と思われる占い雑誌に釘付けになり、その評価に一喜一憂する。 ティファはその傾向は薄いものの、やはり『女の子』なのだ。 そう…何と……。 『恋愛占い』に興味がある……らしい……。 その情報をリークしてくれたのも、この自慢の息子。 どうやら、セブンスヘブンに良く来てくれる女性客と占いの話で盛り上がり、 『私はあんまり将来とかを占いで視て貰うっていうのには興味がないけど……『恋愛運』なら…少しは…』 頬をほんのりと染めながらそう話したのだそうだ。 『やだ〜!ティファさんはクラウドさんがいるじゃない!』 女性客にそう突っ込まれて更に頬を赤く染めたらしいのだが、その話を聞いた時、クラウドは少なからずショックだった。 『一度家出してるしなぁ…。未だに信用されて無いんだろうか……?』 デンゼルから耳打ちをされたその日の夜、結局眠れず朝まで過ごす羽目になったのは今でもティファには絶対に内緒だ。 「お待たせ〜〜♪」 そうこうしているうちに、マリンが上機嫌でティファと共に『占いの館』の階段を降りてきた。 対照的に、付き添っていたティファは何故か複雑そうな顔をしている。 その様子にクラウドとデンゼル、そしてナナキはそれぞれ顔を見合わせ首を傾げた。 しかし、すごぶる機嫌のいい娘に、全くティファの様子に気付かないバレットは、満面の笑みを浮かべて愛娘の前に屈みこんだ。 「何を占ってもらったんだ?」 ニコニコと愛娘は義父の質問に答えた。 「将来、商売が上手くやっていけるかどうか!」 「「「…………」」」 一名を除いた男性陣は言葉を失った…。 それに気付かないセブンスヘブンの看板娘は、嬉々として義父に占いの詳細を語って聞かせている。 「そしたら、『今のままでも充分その素質がありますけど、これから先、大きくなるにつれて学ぶことも多くあるでしょう。その学んだ事を己の物にした時、世界に名を馳せるほどの商売人になれますよ』って言われたんだ〜!私、別に世界に名を馳せる商売人にはなりたくないけど、セブンスヘブンをもっともっと良いお店にしたいんだ!」 すっかりご満悦の娘に、バレットは「そうかそうか!良かったなぁ、マリン!流石は父ちゃんの娘だ!!」と、自慢げにうんうんと頷いている。 「ねぇ…クラウド……」 「何だ…ティファ……」 「私達…マリンの育て方間違えたのかしら……」 「ティファ…それは違うよ。マリンの持って生まれた『素質』ってやつさ」 「…ありがとう、デンゼル」 「…俺もそう願いたいな…」 「三人とも、何だか不思議な苦労が耐えないんだね」 「ナナキ……それは言ってくれるな……」 「うん…おいらが悪かったよ…。大丈夫だって、きっとマリンも大きくなったら…」 「私、大きくなったらセブンスヘブンをもっと大きくして、毎日頑張る世界中の人に喜んでもらえるようなお店にしたいんだ!」 「ナナキ……大きくなったら……なんだ?」 「…ごめんクラウド、忘れて良いよ…」 「でも、マリンの志は尊いわよね…?」 「ああ……尊いな…」 「でも、マリンってまだ…確か六歳……だよな……?」 「「「…………」」」 若干六歳の子供が『商売運』を占ってもらう……。 その事実に…。 クラウド、ティファ、デンゼル、ナナキは目の前で実に幸せそうな父と娘の姿に、大きな溜め息を吐いた。 あとがき はい。 またやっちゃいました……『現実主義者』のマリン……(苦笑)。 ただ『占い』に興味のある『女の子』じゃつまらないなぁ…とか思ったら、いつの間にか『realist』再来!!(爆) そして…。 まだティファはナンパされてませんね…おかしいなぁ…(おかしいのはアンタやっちゅうねん!!) はい、まだ続きます「a lost child」シリーズ…。 最後までお付き合い下されば幸いです(^^)。 |