*こちらは『シンデレラ』を基にした完全パロディーです。
ストーリー、キャラ設定、捏造しまくりです。
苦手な方、嫌悪感を感じられる人は今すぐに回れ右して下さい。
なんでもどーんと来いや〜〜!!という度胸のある方のみ、お読み下さい。
「ねぇねぇ、本当に来るのかな?」
「来たら良いなぁ〜!」
「どんな人なんだろう、王子様って!」
「なんか、お隣の姉ちゃんが言ってたけど、王子様と兵隊さんがパーティーで並んでて、どっちが王子様か分かんなかったんだってさ」
「あ〜、俺の姉ちゃんも言ってたなぁ。二人共、めっちゃカッコ良かったんだってさ!」
「「「「 へぇ〜!! 」」」」
孤児院の子供達が町の子供達と楽しそうに話している姿に、ユフィは遠くからニ〜ッと笑って見ていた。
シンデレラ……もどき? 13
「お父様!もうすぐじゃありませんこと!?」
「おお…もう、そんな時間か」
「ふふ、絶対に私が選ばれて見せましてよ」
「あら、ワタクシかもしれなくてよ、キャハハハハ!」
「ガッハッハ!スカーレットもロッソも、自慢の娘だからどちらが選ばれてもおかしくない!」
「フフフ、ええ勿論ですわ、お父様」
「キャハハハ!」
「だが…、念には念を。アイツは絶対に外に出すな」
「「 はい、お父様 」」
義父達の話し声がドアの外から聞えてくる。
ティファは鈍く痛む頭を押さえながらドアの向こうにいるであろう義父達を睨みつけた。
王子の誕生パーティーから既に二週間が経っていた。
屋敷に戻ったティファは、とりあえず今まで通りの生活を装いつつ、ユフィや昔良くしてくれていた取り引き先の人達と密かに連絡を取り、敏腕弁護士を捜すことにした。
義父達がどのように悪辣な手法でもって、『正統』に母の遺産を取り込んだのか…。
それを覆して『不法』だと言い切るためには、どうしても法律に詳しく、且つ腕の良い弁護士が必要だった。
こんなことをしているとバレたら最後、エライ目に合うことは重々承知している。
承知しているが、動かないわけにはいかない。
今まで逃げ続けていた自分から成長しないと、彼に会う資格はない、そうティファは思っていた。
少しでも成長して……会いたい。
もう一度、クラウドに会いたい。
そう強く思った。
その思いがティファを強くしてくれたと言っても過言ではない。
むしろ、その思いがあったからこそ、大きな一歩を踏み出せたのだ。
ユフィはティファの心境の変化に驚きながらも、ノリノリで賛同し、積極的に協力してくれた。
ところが。
昔良くしてくれていた取り引き先のある人間が、ティファの作戦を義父に洩らしてしまった。
現在の『ロックハート家当主』に重きを置いたのだ。
烈火の如く義父は怒った。
そうして。
「う…イタ……」
自室で目覚めたティファが自分の身体の異常に気付いたのが一週間前。
重たい身体を必死に起こそうとして……、力なくベッドに倒れこみ、呆然とした。
なんとハイデッカーはティファ用のグラスに薬を塗り、意識をなくしている間にティファを自室に軟禁してしまったのだ。
その間、与えられている食事はもう、聞くも涙、語るも涙と言ったお粗末なもの。
飲まず食わずでは死んでしまう。
食事と飲み水にも薬が少量ずつ盛られていると悟ったのは…なんと間抜けにも昨夜。
ドアの隙間から犬にエサでもやるように放り投げられた簡易食を口にして、ティファはすぐに強い眠気に襲われた。
軟禁されてからずっと繰り返して襲う現象。
一日中、ベッドからほとんど出られなくて横になっているのに…どうして?
一週間も経ってやっと気がついたのだから、薬のせいで思考能力までもが奪われていたのだということになる。
このままでは廃人になるのに時間はかからない…。
ティファは慄然とした。
部屋にはドアしかない。
たった一つの窓すらない。
おまけに、ご丁寧にドアの外からは新しく鍵がつけられたようで、全く開かない。
開くのは食事を運んで来る一瞬だけ。
「…はぁ……」
心の底から溜め息をつく。
シャワー付きトイレの部屋で本当に良かった。
そう思わずにはいられない。
「…じゃなくて…!」
自分自身に突っ込みを入れながら、ティファは身体に力を入れた。
今朝の朝食は食べた振りをしてゴミ箱に突っ込んだ。
空腹と喉の渇きを我慢したお蔭か、昨日よりもうんとラクになった気がする。
「…もう…許さないんだから…」
フツフツと湧いてくる怒りは、今日までの一年余りの時間ずっと押さえ込んできた感情。
弱い自分から逃げ回ることで殺してきた感情だ。
取り戻した『理不尽なものへの怒り』が、今は心地良い。
「見てなさい!」
グッと拳を握り、パッと開く。
膝の屈伸運動をしてみる。
身体を伸ばして、捻ってみる。
徐々に戻りつつある本来の自分の身体。
ティファの口元に笑みが浮かび、目に力が宿る。
あと少し。
あと少しで完全に薬が抜けるだろう。
いや、完全に抜け切れなくても、部屋のドアを殴り飛ばす力さえ戻れば、後はもうどうにでもなる。
ベッドにゴロン…と転がり、薬が一刻も早く抜けるように身体を休め、空腹を忘れようと眼を瞑った。
「クラウド…」
城で再会した青年の名前を口にすると、心がポッと温かくなった。
ティファはそのまま、まどろみの世界に足を踏み入れた…。
「んで?」
「……………なにか?」
「『なにか?』じゃない。バッチリ用意してあるんだろうな?」
「……………一体なんのことですか…」
「照れるな照れるな、このこの〜!」
「イ、イタタタタタタ!!」
「あんな美人を迎えに行くのに、まさか手ぶらじゃないだろ〜?」
「痛いですって王子!それに、迎えに行くのは王子であって俺じゃないでしょ!!」
「なぁに言ってんだよ、そんなの建前じゃん。お前が彼女を迎えに行って、めでたしめでたし、だろ〜?」
「な、なに言ってるんですか!!痛い、痛いですから!!」
クラウドの頭部をガッシと抱きしめ、顎をグリグリと頭頂部に押し付ける。
馬車の中で仲良くじゃれ合う青年二人の耳に、「ゴホン!」という咳払いが聞えた。
二人に向かい合う形で座っているのは近衛隊長。
深紅の瞳がジトッと細められている。
「王子、本当にもう少し現状の厳しさを把握して下さい。クラウドもだぞ」
冷たい声音に金髪の青年がピシッと背筋を伸ばして「申し訳ありません」と謝罪する。
一方、漆黒の髪を持つ青年は、
「ふっふっふ。大丈夫だ、抜かりは無い!」
ヴィンセントの冷たい口調や表情もどこ吹く風だ。
ご機嫌なことこの上ない。
王子の上機嫌さに、クラウドとヴィンセントは同時に溜め息をついた。
二人の脳裏に蘇えるのは、二週間前の出来事。
身の毛もよだつような王と王子の熾烈な口論(バトル)。
―「父上、ですから彼女は俺が迷子になったときに助けてくれた妖精さんです!!」―
眉間に深いシワを寄せて厳しい顔をする父親に詰め寄るその息子。
本当に…あの父にしてこの子あり…、だった。
「ザックス…冷静に考えろ。あのような獣を扱い、不思議な薬を使って城の兵士達をかく乱した女を妻に娶るなど、正気の沙汰ではない」
「ですから!父上が兵士達を彼女に仕向けたからです!言わば正当防衛ですよ!!」
「正当防衛であろうがなんであろうが、普通の女性とはほど遠い証拠だろう。そんな逸脱した女を未来の王妃になどさせるわけにはいかん!天国の母上に合わせる顔が」
「父上!!約束を反故にされるほうが天国のお祖母様に合わせる顔が無いでしょう!?」
「!? 約束を反故になど」
「してるじゃないですか!!どの女性を選んでも良いと仰ったのは父上です!!」
「う……」
「町娘でも村娘でも誰でも良い、と仰いましたよね!?」
「 ……… 」
「他の国の女性でも良いと仰いましたよね!?」
「 ……… 」
「だったら、彼女を選んでも良いと言うことですよね!?」
「 ……… 」
「違うんですか!?違いませんよね!?」
珍しく口で勝とうとしているザックスに、近衛隊長として王の後方で警護に当たっていたヴィンセントは驚いたものだった。
それは、王子の護衛としてザックスの後ろに控えていたクラウドも同様で、目を丸くして主の背を見つめた。
だが、当然そのまま収まるわけも無く…。
「フッ…ザックス…」
押され気味だった王に不適な笑みが戻る。
「お前の常識を信じた上で『誰でも良い』と言ったのだ」
口は笑みを湛えているのに細められた目は全く笑っていない。
アイスブルーの瞳が冷たく光る。
王の後ろに控えていたヴィンセントは、王の表情を見ることはなかったが、醸し出される雰囲気に顔が引き攣る思いがした。
セフィロスの顔を見ていないヴィンセントですらそうなのだから、王子の後ろに控えていて王の表情をつぶさに見る羽目になっていたクラウドはもう、逃げ出したくて逃げ出したくて!!!
その気持ちをグッと堪えて逃げ出さなかったことを褒めてもらいたい。
「それなのに、お前の常識の無さにはホトホト呆れた」
「父上こそ、彼女がどんな人か知りもしないのに先入観で彼女を『悪』と決め付けてらっしゃる。一国の王たる者がなんと狭量な」
「 !? 」
大胆な発言と共に、王子の口調には嘲笑が混じった。
これまでこんな風に父親に真っ向から逆らったことなど無い。
ヴィンセントとクラウドは目を見開き、内心でビクビクした。
いつ王が憤激するか分からない。
もしかしたら、永久追放宣言をするかもしれない!
セフィロスには愛人がいない。
后が亡くなってから、後妻を娶ることもしていない。
だから、一人息子のザックスのみが、唯一の王位継承者だ。
その王子を永久追放するかもしれないと二人が心配するほど、今回のザックスの反乱は二人に凄まじい衝撃をもたらした。
しかし…。
「ほぉ…この私を狭量と言うか…」
意外にも面白そうに王は息子を見やった。
虚勢を張るでもなく、ザックスは常に無い父親を真正面から見据えている。
セフィロスの口元が吊り上がった。
「面白い、ではお前の言う『妖精さん』とやらを見つけ出して連れて来い。直接どのような女かしっかと確かめさせてもらおう」
「望むところです」
まるでコブラとハブが睨みあっている様だ。
同族同士の熾烈な争い。
ヴィンセントとクラウドは、親子の間に火花がバチバチと散っているのを確かに見た気がした。
そうして。
「ふっふっふ。彼女がどこの誰か突き止めるのに三週間も時間くれちゃってさぁ、父上って意外と懐が広かったよな」
上機嫌で鼻歌交じりにそう言う王子に、クラウドは溜め息で返答した。
王は息子に条件を出した。
三週間以内にその女性を王の前に連れて来て、王の審査を受けるというものだ。
「「 審査……って… 」」
王と王子の後方に控えていたヴィンセントとクラウドは、同時に呆気にとられた声で呟いた。
しかし、白熱している親子には聞かれなかったらしい。
父親に指を突きつけ、
「言いましたね!?見事、妖精さんは父上の審査をクリアすること間違いないです!この勝負、俺が頂きます!!」
高らかに勝利宣言をしてしまった。
クラウドは反射的にザックスの後頭部を張り倒したくなった……。
我慢した自分を、ヴィンセントがあとでこっそり褒めてくれたのは誰にも内緒だ…。
「あんな条件、彼女に失礼じゃないですか…?」
幾分か非難がましく王子を見る。
ザックスは鼻歌をピタリ…、と止めると、ジッとクラウドを見た。
「…失礼…かな…?」
「…俺が彼女の家族なら、失礼だと憤慨する気がします」
「…そうかな…?」
クラウドの冷たい視線に僅かに動揺しながら、王子はヴィンセントを見た。
渋面の近衛隊長は、ムッツリとしたままフイッと視線をそらして即答を避けたものの、その姿が雄弁に『その通り』と語っている。
一瞬、言葉に詰まったものの、
「だ、大丈夫だ!彼女はあの時言ってくれたからな!『赤い獣が怖くないなら、遊びに来て欲しい』って!」
自分の都合の良い部分を思い出し、またもや上機嫌になった。
そんな王子を、ヴィンセントとクラウドはずっと言えずに胸に秘めている一つの心配事を思わずにはいられなかった。
『『もしもその妖精さんが王子との結婚を嫌がったら…どうするんだろう……』』
ゾッとする。
そうなったらきっと、この国の未来はおしまいだ。
二人は窓の外を虚ろに眺めて、自分の胸に巣食っている不安をやり過ごした。
暫くした頃。
「大体、王子。彼女の居場所を調べるのにどうしてわざわざ回りくどいやり方を?」
ヴィンセントがムッツリしながら、馬車の窓から見える沿道の光景を眺めながら口を開いた。
そこには、自分の家の前に馬車が止まるかもしれない!!と、期待に胸を膨らませた女性達が窓や玄関から顔を覗かせては、通り過ぎる馬車にガッカリとしている。
「だって、あっさりとキサラギ家に向かったら『やっぱりキサラギ家はつるんでたんだ』ってことになるし、『ロックハート家』にあっさり行ったら、来てる筈のない女性を迎えに来てるってことで、ティファちゃんがまずい立場になるだろ?」
「だからって……『パーティーに参加した方々の人数が余りにも多いので、抽選で訪問する』ってどうなんだよ、そのアイディア!!!」
そう。
王を説得したその翌日、国におふれが出された。
― 王子が見初めた女性を捜すべく、各町、村を訪問する。然るに、あまりにも多数に上るため、参加された方を抽選で選出。抽選に当たった女性宅を訪問し、王子自らが確かめる。もしもその女性が王子の心を奪われた方ならお城へ、違う場合は王子の意中の人の特徴を話すので、知っている情報を話すべし。情報を与えてくれた一家には、それ相応の褒美を出す ―
それはもう、色めきたったものだ。
何しろ、自分が選ばれるかもしれない…という淡い期待など、もはやほとんどの人間が持っていない。
だからこそ、王子が求めている女性の情報を提供できれば、とりあえずは褒美がもらえるのだ!!
コレはチャンス!!
特に、少し経営の傾いているような『ロックハート家』には千載一遇の大チャンスだ。
実は…。
クラウドがちょっと調べてみて分かったことなのだが、ハイデッカーが当主になってから、確実に業績が落ちている。
そのくせ、暴飲暴食、絢爛豪華な生活を続けているので、非常にヤバイ状態なのだ。
だが、そんな事実を世間に知られるわけにはいかない。
だからこそ、今のこの『チャンス』には絶対に飛び掛ってくる。
散々焦らし、他の屋敷や庶民宅を周り、時間をたっぷりと友好的に使った。
「それにしても、本当にお前ってよく調べられたよな…」
「まぁ、キサラギのお嬢さんとは幼馴染みたいなもんですし…」
「じゃあ、今から行く悲劇のヒロインも幼馴染になるんじゃないのか?」
「な!!彼女はただの資産家の娘ってだけで、小さい頃は口を利いたことも無いです!それに、『悲劇のヒロイン』なんて呼びかたしたら、彼女に蹴り飛ばされますよ」
「「 ……え…? 」」
ザックスにからかわれて真っ赤になっているクラウドの口から洩れた一言に、王子と近衛隊長が短く声を上げる。
不思議そうな顔をする二人に、クラウドも『?』と首を捻ると、
「もしかして、彼女が格闘術が得意だって…言ってませんでしたっけ?」
「 ……… 」
「 聞いてない! 」
ヴィンセントは無言。
ザックスは詰め寄るように大声を上げた。
「なんだよそれ、だからあんなに身軽だったのか…」
「あぁ。彼女は運動神経抜群でさ。何とか流…ってよく覚えてないけど、そこの師匠に才能があるって太鼓判もらってたな。最初習い始めたのは、誘拐されたりしないように護身術を身に付けさせるため…だったんだけど、意外にも素質があったらしい」
のんびりとした口調で話すクラウドに、ザックスは呆れた顔をした。
「もっと早く教えろよ」
「なんで…?」
「面白いじゃんか!!」
「 …………はぁ… 」
キラキラ輝くザックスを乗せて、とうとう馬車は『ロックハート家』に辿り着いた。
到着すると、予想していたように満面の笑みで当主とその連れ子達が出迎えた。
今か、今かとてぐすね引いていたのは明白だ。
勿論、ハイデッカー達は、エアリスの事など知らない。
だが、ここまで待っていたのには理由がある。
それは。
「パーティーの際、私の心を掴んだ女性がおられましてね。その女性を捜してるんです」
「「「 はい、窺っております(わ) 」」」
「その女性は、残念ながらお会いした僅かの時間だけでしたので、覚えているのは茶色の髪と深緑の瞳、そして輝く笑み。それくらいです」
「「「 はい 」」」
満面の笑みで王子に半分身を乗り出して積極的になっているロッソとスカーレットは、あろうことか茶色のウェーブが入ったかつらと、緑のカラーコンタクトをしていた。
つまり、二人の姉妹は自分達こそが王子の見初めた人だ!という演出をしているのだ。
実に…バカバカしい…。
しかし、姉妹の言い分はこうだ。
確かに34番の女性は綺麗だった。
だが、会ったのはたったの数分間。
その間、王子はすっかり虜になったらしいが、所詮はその僅かの時間では覚えている印象も薄い。
ここではっきり、自分たちこそが!と名乗りを上げ、城に連れて行ってもらいさえすれば、後は自分達の魅力で何とでもなる!!!
壇上に二人いた青年が執着したのはたった一人の女性だったことも、姉妹はバッチリと見ていて観察していたのだ。
当然、『私の方が上!』と変な自信を持ったのは言うまでもない。
ジッと期待を込め込めに王子を見る二人の余りの気迫に、ザックスは顔を引き攣らせた。
「クラウド、アレを」
「はい」
振り返ってクラウドに合図を送る。
不思議そうな顔をする三人の前にクラウドが差し出したのは…。
「「なに、この安っぽいハイヒール…」」
姉妹が同時に吐き捨てるように口にした。
クラウドの片眉が上がる。
視界の端でその変化を見ていたザックスは、目の前の姉妹への不快感を少し和らげることが出来た。
軽く息を吸って気持ちを切り替える。
「これは、私の心を掴んだ女性…………………………の物です」
妙な間を空けたザックスの言葉に、ハイデッカーと姉妹は石化した。
暫くの沈黙。
そのシーンを見たわけではないが、城から二人の女性が逃げ出したらしいことは知っている。
そのうちの一人が、もう一人を抱きかかえて城の長い階段の中ほどにある踊場まで一気に飛び降りて無事だったということも。
そんな神業が出来る女など、いるはず無い。
そう、笑っていたと言うのに…。
「階段にはコレしか残っていませんでした。恐らく、飛び降りた際に脱げてしまったんでしょう…」
「「「 ……… 」」」
余りの衝撃に言葉が出ない。
折角変装したのに全くの無駄だ!!
打ちひしがれた顔をして俯く親子に、王子が全く意に介さず明るい声を出した。
「ところで、我が城からの招待状によると、もう一人お嬢様がおられるはず。その女性は?」
途端に、三人の顔に焦りが走った。
「いや、ちょっと体調を崩しておりましてな」
「そうなんです!パーティーから戻ったらすっごくへんな『おでき』が顔中に出来ちゃって…」
「人様の前に現れるのは恥ずかしい、と部屋に籠ってて…」
「「「 ですから、王子様の前に現れるのは無理かと… 」」」
いかにも胡散臭いウソに、クラウドの胸がギュッと縮まる。
何か…あったんだ!
咄嗟に二階に続く階段を見る。
そこへ向かって足を数歩進めるが、あっという間に巨漢のハイデッカーに行く手を阻まれた。
「ここから先は申し訳ありませんがご遠慮願えませんでしょうか?」
慇懃無礼に断る口調には絶対に上には行かせまいという強い意志が感じられる。
間違いない。
ティファは監禁されている!
クラウドが眉間にシワを寄せ、眦を吊り上げてハイデッカーを睨みつけた。
そして、口を開いて怒りを吐き出そうとした……その時!
メキベキゴキグシャーーーーッ!!!!!!
濛々と立ち上る砂煙。
心臓が止まるのではないかと言うほどの衝撃音。
寡黙で何事にも動じない(いや、最近はそうでもない)ヴィンセントまでもが、ギョッとして二階を見上げる。
砂煙から一人の人影がユラリ…と揺れながら、立ち上がる。
呆然と見上げる面々の前で、煙が徐々に晴れて…。
「「「 ティファ!? 」」」
「「「 !!(滝汗) 」」」
現れたその女性に、ハイデッカー親子が悲鳴のような声で叫び、王子と近衛隊長、そして王子の付き人は声をなくした。
呆然とする六人は、怒りに溢れ、凛とした眼差しでハイデッカー親子を睨みつけているティファを見上げた。
あとがきは最後にまとめて書きますね。
|