*こちらは『シンデレラ』を基にした完全パロディーです。
 ストーリー、キャラ設定、捏造しまくりです。
 苦手な方、嫌悪感を感じられる人は今すぐに回れ右して下さい。

 なんでもどーんと来いや〜〜!!という度胸のある方のみ、お読み下さい。









シンデレラ……もどき? 4





「こんにちは〜」
「あ、ティファ〜!!」
「ティファ、待ってたよ〜!!」
「 ??? 」

 王子の花嫁選びをすると国中におふれが出て、こき使われる日々を送り、今日、ティファは久しぶりに僅かな時間を縫って、孤児院に向かった。
 古い門扉を押し開け、中に入る。
 庭で遊んでいた子供達が、ティファの声にパッと顔を上げ、嬉しそうに駆け寄った。

「待ってた…って…私を?」
「そう!」
「あのね、ユフィお姉ちゃんが昨日の夜にいきなり来たの」
「え!?」

 数日前のやり取りを思い出し、ティファはユフィの行動力に驚いた。
 確かに孤児院に行け、と彼女は言っていた。
 そこで落ち合うことも出来るし、伝言も残せるから…と。
 まさか本当になにか行動を起こすとは…。
 ティファの顔に苦笑が浮かぶ。
 あのお元気娘は昔からパワフルだった。
 思い立ったが吉日。
 その諺どおりに行動する性格は、今も健在と言うわけだ。

「それで、なにかあった?」
「うん!」
「おばさんになにか言ってたよ。聞いてみて!」

 はしゃぐようにそう言う子供達に背を押され、ティファは館の中に入った。

「あら、待ってたわ!」
 子供達と同じく、ティファが入ったと同時に本日当番の近所のおばさんがそう言った。
 顔にはいつものように穏やかな微笑み。

「こんにちは。あの…ユフィからなにか言付かってる…って聞いたんですけど…」
「ええ。はい、これ」
「 ??? 」

 差し出された小さな木箱。
 なんの変哲も無いそれ。
 しかし、ただの木箱ではないだろう。
 あのお元気娘がわざわざ寄越した物なのだから、中身はきっと度肝を抜く奴ではないだろうか…。

 ちょっとしたワクワク感を味わいながらふたを開けると…。

「 !? 」
「ふふ、驚いた?私も初めて見た時は驚いたわ」

 そこにあったのは、マテリア。
 それも非常に小粒のピンク色をした貴重なもの。
 それが、なんとイヤリングに加工されている。
 恐らく、パーティーに行けるようにと、彼女が贈ってくれたんだろう。
 父親にそれとなくおねだりをして。

 ティファは暫くそれを愛しそうに眺めてみたが、やがてそっとふたをした。
 それをそのまま嬉しそうな顔をしていたおばさんに返す。

「え、ちょ、ちょっと、ティファちゃん?」
 戸惑う彼女に、ティファは苦笑した。
「ユフィの気持ちは嬉しいけど…。私はきっと、パーティーには参加できませんから…」
「いや、だからユフィちゃんが色々パーティーに必要な物をこれから調達するって…」
「それに、そうしてユフィに負担をかけたくないし…」
「なに言ってんだい!ユフィちゃんはお金持ちだから大丈夫だよ、あんた一人のドレス代くらい。そりゃ、高いものは無理かもしれないけど……」
「ううん、そうじゃないの」
「え…?」

 ティファは、昨夜の出来事を話した。


 昨夜、夕飯の時。

 ハイデッカーは相変わらずなにがおかしいのか分からないのに、大口開けて笑い、義姉達もいつものようにティファへ嫌味を言って笑っていた。
 その席で。

「ティファ、お前はパーティーに出させん」

 そう言って、目の前でティファ用に届けられていた招待状を真っ二つに破り、暖炉の火に放り込んでしまったのだ。

 元々、連れて行ってくれるとは思っていなかった。
 しかし、昨日、ユフィに街で偶然会って、何となく…本当に何となく、王子様に会ってみたい…。
 そう思った矢先の義父の仕打ち。
 ティファは思わず笑みを浮かべた。

 自嘲の笑みを。

 義父達がティファの笑みを見て、またもやガーガーとうるさく罵ったが、それも気にならなかった。
 自分が一瞬でもパーティーに行く気になったということが滑稽に思えて仕方ない。
 所詮、枷をはめられている自分は、この居心地の悪い鳥かごの中でこき使われるのがお似合いだ。

 そのまま、ティファにしては本当に珍しく、義父達の嫌味を背中で跳ね返し、さっさと屋根裏に引きこもった。
 当然、翌日の今朝、昨夜の態度をイヤというほどお仕置きされたわけだが…。


「そんな、だって年頃で未婚・恋人のいない女性は全員参加が義務付けられてるんだよ!?」

 あまりの暴挙におばさんは絶句する。
 ティファは困ったように笑った。

「えぇ。でも『病人』は参加しなくて済むでしょう?」
「 !! 」

 そう。
 パーティー当日、ティファは『急病人』になるのだ。
 一人でもライバルを消したい。
 しかも、強力なライバルこそ潰したい。
 それが、憎らしい義理の娘なら尚更だ。

 おばさんはワナワナと怒りに震えると、
「訴えてやる!!」
 鬼の形相で駆け出した。
 慌てて彼女を後ろから羽交い絞めにして押さえる。

「おばさん、良いの!良いから!!」
「なにが良いんだい!?ちっともよかないよ!ティファちゃん、アンタは幸せになる権利があるんだよ!いつまでも、この孤児院に縛られてないで、自由になって良いんだ!そのきっかけになるかもしれないチャンスをこのままみすみす手放そうってのかい!?」

 ティファの腕の中でジタバタしながら大声で喚く女性に、ティファは胸を打たれた。

 まさに…ここ数日自分が思っていたことそのもの。
 このまま、こき使われて一生を終える…。
 ゾッとする未来図。
 それを打破出来るかもしれない千載一遇のチャンス。
 それを義父は目の前で破り捨てた。
 理不尽に思わないはずが無い。
 だが…。

「ありがとう…」
「…ティファちゃん」

 そっと手を離したティファに、女性はハッと振り返った。
 ティファの頬に涙が伝っている。
 やんわりと微笑んでいるティファに、今更ながら胸が抉られる。

 目の前で招待状を破り捨てられた時、どんなに悔しかっただろうか…。
 ティファにとって、今の生活がどれだけ苦しいか…。
 どれほど…『自由』に恋焦がれていることか…!

 微笑んだまま涙を流しているティファを、女性は顔をクシャクシャにしながら抱きしめた。








「づ、づがれだ………」
 だらしなくベッドに突っ伏した王子に、メイド達がせっせせっせと世話を焼く。
 やれ、温かい紅茶だ、甘いものだ。
 湯も沸いたから疲れた身体をゆっくりほぐしてきてくれ。

 そんなメイド達に囲まれている王子を、金髪・碧眼の青年はジトーッとした目で見つめていた。
 青年の視線に気付いたのか、王子はモゾモゾと動くと、
「…なんだよ…言いたいことあるなら言えよ…」
 ボソボソと言う。
 紛れも無く、拗ねている。
 そして、青年も不貞腐れていた。

「じゃ、俺はこれで」

 王子の言葉をそのまま受け取り、あっさりと背を向けて見せると…。

「薄情モノ〜!クラウドのバカ〜、アホ〜、人でなし〜!!」

 なんとも子供じみた文句が飛んでくる。
 予想通りの反応に、クラウドは盛大な溜め息を吐きながらゆっくりと振り返った…。

「言いたいことあるなら言え…と、仰ったので」
「言えとは言ったけど、『出て行っていい』とは言ってない」
「素直に言う許可は頂けても退室する許可は頂けない…と?」
「当然だ!」
「………」

 ムキーッと言わんばかりにガバッと上体を起こした王子に、メイド達が「「キャッ!」」と可愛らしい声を上げて驚いてみせる。

 その可愛らしい仕草に、いつもなら王子が悪乗りするのだが、今日はとことん疲れ切っているのでそんな余裕は微塵も無い。
 ただ『うそ臭い……』と思うだけだ。
 それはクラウドも同様で、シラッとした眼差しをメイド達に向けた。
 メイド達は別段クラウドの存在には興味が無かったが、流石に王子にまでシラーッとされてしまい、居心地が悪い。
 そそくさと退室する。

 ドアがパタン、と閉じられた後に残ったのは、不貞腐れた美青年二人。
 それぞれが反対のほうを向いている。
 一人は天蓋付きベッドの上で。
 もう一人は広いガラス窓の傍で…。

 やがてどれ程の時間が経ったのか…。
 先に痺れを切らせたのは…やはり…。


「あーったく!」


 黒髪をガシガシと掻きながら身体を起こした王子。
 イライラとしながらも、どこか根負けした!と言わんばかりにさばさばしている。

「お前さ、俺が言うのもなんだけど、よく俺みたいなのに付き合ってるよな」

 王子の一言に、付き人はちょっと驚いた顔をして振り向いた。
 その顔に気を良くしたのか、ニシシ…と笑う。

「はっきり言って、ヴィンセントがお前ともう一人…、誰だったか、孤児院から連れてきたときは『嫌味か!?』って思ったもんなぁ」
「………ジョニーだろ」

 付き人は苦笑しながら身体を真っ直ぐ王子に向けた。
 王子もベッドの上で先ほどとは打って違って寛いで座り込む。

「だってさ。そのジョニーって奴、お前と同じ時に俺の付き人として孤児院から来たのに、一週間で根を上げたもんなぁ」

 しみじみとそう言う王子に、青年は溜め息を吐いた。

「俺だって、何度孤児院に戻ろうと思ったか」
「でも、お前は戻らずにここにいる。それがすごいと俺は思うよ」

 王子の称賛の言葉に、青年はちょっと戸惑った。
 そして、何となくバツが悪そうに顔を背ける。

「俺には…ここしか行く所が無かったからな…」
「なに言ってんだよ。ジョニーって奴もお前と同じで家族みんなを盗賊に殺された孤児だろ?俺のわがままに付き合いきれなくて孤児院に泣いて戻ったじゃないか」
「 ……… 」

 呆れたように言う王子に、クラウドは困ったように顔を戻した。
 そんな自分専属の付き人に王子は心底不思議そうな顔をする。

「俺だったら、俺みたいにわがままな主はいやだから、ジョニーみたいにさっさと逃げるけどなぁ…」
「………自分の事をよくそこまで言うな…」
「自分のことだからだよ」
「……まったく…」

 苦笑とも自嘲ともとれる微笑を浮かべる。
 クラウドのその顔に、王子はフッと微笑んだ。
 先ほどまでのいたずら小僧の笑みではない……、年相応の青年の微笑み。

「お前さ、もしかして『誰か』のために頑張ってきたのか?」

 途端、ピクリ…、と青年の顔が引き攣る。
 王子はニヤッと笑った。

「お!?そうなのか〜!?」

 自分と同じ様に、子供の頃から想う人がいる、という事実に純粋に喜んでいる。
 嬉しそうにベッドから飛び起きると、肘でグリグリと青年の肩を小突いた。
 対するクラウドは、眉を顰めつつ頬を薄っすらと染めて否定する。

「違う!俺は本当に帰るところがなかったし、孤児院には戻りたくなかったんだ!」
「ウソ付け!お前、本当は好きな子が孤児院にいたんだろ?その子と一緒になりたくて、小さい頃から頑張ってたんだろ?そうだろ〜?」

 まるで新しいおもちゃを見つけた子供のような王子に、付き人は顔を顰めながらもおどおどとする。
 誰も助けてくれる人間はいない。
 当然だ、先ほど出て行ったメイド達以外、この部屋にはいないのだから…。

 クラウドは深い溜め息を吐くと、
「本当に…、小さい頃は恋とかそんなのする余裕が無かったんだ…」
「 …… 」

 その言葉に、王子はハッと我に帰る。

 そう。
 クラウドは、自分がたった今、口にしたように両親や親類を盗賊に殺された。
 天涯孤独の身の上だ。
 クラウドが孤児になったのは五歳。
 孤児院で育った年月は、五年。
 王子の付き人として育ったのは十二年。

「…悪い…」

 シュン、と肩を落とした主に、青年は苦笑して見せた。

「良いんだ。小さい頃は今以上にひねくれてたし、それに今は充実した毎日だからさ。でも…」

 ちょっと考えるように遠くを見る。
「本当に『恋』は…したことがないな」
「ゲッ!マジ!?今もか!?!?」

 ギョッとする王子に、クラウドは肩を竦めた。

「今も。だって、『恋』なんて、しようとして出来るもんじゃないだろ?」
「そうだけど、お前モテるのに…」
「……なに言ってるんだよ、モテる分けないだろ、この俺が…」
「は!?マジで言ってるのか!?」

 呆れ顔になる付き人に、王子は仰天して目を丸くした。
 そんな王子に付き人も目を丸くする。
 暫しの時間、目を丸くした者同士が見つめあう。

 先に項垂れたのは…やっぱり…。

「お前…本当に自分の価値が分かってないのな…」
「……なんだよ、それ……」
「メイド達がしょっちゅう騒いでるぞ?『近衛隊長贔屓の男の子はクールでカッコイイ』って」
「……俺じゃない誰か別の隊員じゃないのか?」
「…………アホ」

 はぁ…。

 深い深い溜め息。
 クラウドは面白くなさそうにそっぽを向いた。
 そんな仕草が妙に年下だと思わせる。
 王子は苦笑した。

「お前さ、これまでで気になった女の子はいないのか?」
「……いない…なぁ…」
「本当に?」
「……。『気に入らない』女の子ならいた」
「……なんだそれ?」

 なんとも奇妙な物言いに顔を顰める。
 付き人は決まり悪そうにガシガシと後頭部を掻いた。

「俺のいた孤児院に多額の寄付をする富豪がいてさ。そこのお嬢様がよく孤児院に遊びに来てたんだけど…」

 話し始めて…すぐに口を閉ざす。
 王子は首を傾げた。
 恋心を語るには複雑な色合いの表情に首を捻る。
 付き人は少しの間、なんと言うべきか困っていたようだが…。

「そのお嬢様が…さ。俺と同い年くらいで、おまけに同年代くらいの子供達にすごく人気があって…」
「あぁ」
「それが…なんだかすごく『面白くなかった』んだよな」
「……は?」
「いや…なんか、『恵んでやってる』って思われてるんじゃないか…と……」
「 ………… 」

 あまりにも捻くれたその思考。
 ポカン…とした王子に、付き人はカァッと顔を赤らめた。

「分かってるって、子供じみたバカな考えだって!だけど、その時はそう思ったんだ。綺麗な服着て、優しい母親や召使と一緒に豪華な馬車に乗って…さ。本当に、俺と同じ子供かよ…ってそう思ったんだ…」

 ザックスはそっぽを向いて吐き捨てるように言うクラウドの気持ちが何となく分かった。
 自分も王族だ。
 だから、どうしても孤児院等の福祉施設に行かなくてはならない事がある。
 その際、彼らは自分や父親の事を『神』か『仏』のように扱う。
 逆にそれが『空々しく』感じられていた。
 それは、彼らが心の中では小さい頃のクラウドのように『恵んでやってると思ってるんだろ?』と思っているからだろう。
 どこか…冷めた笑み。
 うそ臭い賛辞の言葉。
 クラウドは、子供じみたバカな考えだ…と言った。
 だが、それは人として当然の心理だ、と王子は思う。
 同じ人間のはずなのに、その生活環境は雲泥の差があるのだから。
 きっと、その富豪の母子も孤児院を訪れる際、『金持ち』だと分かる『服装』で訪問していたのだろう……。

 自分の家族は盗賊に殺され、余儀なく孤児院で生活していたクラウドと、お嬢様としてなに不自由なく暮らしていたその少女。
 妬むな…という方が無理だ。

「でもさ…」
「ん?」

 まだ話しが続くことに少し意外に思いながら相槌を打つ。

「その富豪の女の子…。今は召使同然の扱いを受けてるんだってさ…」
「は!?」
「なんか、再婚した母親が事故死したらしい。その後、義理の父親にいつの間にか持っているはずの権利の大半を奪われたんだって…随分前にジョニーが言ってた……」
「はぁ!?なんだそれ!お前、そんな悠長に……」

 淡々と語る青年とは対照的に、王子は驚愕と理不尽な怒りにカッとなる。
 しかし、付き人はそっぽを向いたままだ。

「本当なら、家を捨てたって良いんだ。それなのに、召使同然という屈辱にあの子は身を置いてる」
「……なんで?」

 憮然とした面持ちをする王子に、クラウドは深く息を吐いた。

「脅されてるんだってさ。昔からいた使用人全員を解雇して、彼女一人に家の事をさせて…。『お前が家を出て行ったら、孤児院への寄付金を一切絶つ』って…」
「 !! 」

 カッと王子は目を見開いた。
 普段、お調子者だが筋が通っており、真っ直ぐな性格で義理人情に厚い性格をしている。
 そんなザックスに、そのような理不尽極まりない話はとてもじゃないが容認出来ない事柄だ。

「お前、なにをそんなにのんびり構えてるんだ!すぐにその悪人をしょっ引いて!!」
「だから…そんなことをしたら逆に王家は訴えられるって。どこをどうしたのか分からないけど、法律的に正当な手段を踏んで今の権利をもぎ取ったんだ。逆に、下手に訴えたりしたら彼女が悪者になる」
 それに……。

 言葉を切って真っ直ぐ主を見る。

「そんなことが出来るなら、彼女の親友であるキサラギ家が黙ってない」
「キサラギ?キサラギ…ってあの宝石商の…?」
「あぁ。彼女の家の次に孤児院に寄付をしている富豪だ」

 クラウドの苦虫を噛み潰したような顔に、王子はようやく理解した。

 キサラギ家がその不幸な少女の代わりに寄付金を増やすことはたやすいのだろう。
 だが、そうすることで、その富豪の権利を乗っ取った悪人は、自分達の顔に泥を塗ったとしてキサラギ家を非難するだろう。
 真実がどうであれ、汚い手を使って法を捻じ曲げ、権利をその手に握ったその富豪だ。
 どんなことになるか分からない。
 ましてや、王家が下手に出たとしたらそれこそ、国家の威信に関わる。

 王子は唾を吐くように鋭く息を吐き出した。

「だからさ…」
「…ん?」
「だから……、俺が一人前になって、彼女の代わりに孤児院を切り盛り出来るように……って……今は…思ってる」
「 !? 」
「そ、そりゃ、ロックハート家みたいに多額の寄付は無理だ。だけど、近衛兵仲間や他の街の金持ち達ともここ数年で顔見知りになれたから、一軒ずつ当たったらなんとかなる。それに、彼女が家を出た直後はちょっと大変かもしれないけど、なんとかなるさ。あの孤児院にいる子供達は皆しっかりしてる。頑張って最初の一年くらいはなんとかしのいでくれるし、それだけの年数が経ったらキサラギ家も寄付が出来て不自然じゃないだろうし…」


 シリアスな話しから思わぬ展開に転がり、王子は目を丸くした。
 視線の先には、ちょっと頬を染めながら矢継ぎ早に言葉を紡ぐ親友の横顔。


 なぁんだ…。
 こいつ、しっかりと『恋』をしてるじゃないか。


「へへっ。お前も素直じゃないなぁ〜♪」
 それとも、本当に気付いていないのか…?
 案外、鈍いこの親友の事だ。
 自分の『恋心』にすら気付いていないのかもしれない…。

 グイッと親友の肩を抱く。
 そのまま、青年の頭頂部に顎を乗せてグリグリとする。
 途端に上がる悲鳴と抗議の声。

「イタタタタ!!頭が禿げる!やめろってば!!」
「本当にお前は可愛いなぁ〜♪」
「痛いって、本当に!!やめろって!!」

 ジタジタジタ。

 暴れる一つ年下の親友を、王子はしっかりと抱きしめた。



 あとがきは最後にまとめて書きますね。