*こちらは『シンデレラ』を基にした完全パロディーです。
ストーリー、キャラ設定、捏造しまくりです。
苦手な方、嫌悪感を感じられる人は今すぐに回れ右して下さい。
なんでもどーんと来いや〜〜!!という度胸のある方のみ、お読み下さい。
シンデレラ……もどき? 7
ポーン、ポーン!
パン、パン、パン!
澄み渡る青空に花火が上がる。
夜空ではないので白い煙が際立って見えるのだが、それでも青空に黄色と赤い花火が良く映えた。
大きな城の立つ城下町。
様々な店が軒を連ね、華やかに彩られて人々の気持ちを高ぶらせる。
とうとうやって来たのだ、『お見合いパーティー』…もとい、『王子誕生パーティー』の日が!
ウキウキと街を行く人々の中、一際目立っている親子連れがあった。
「ガッハッハ!なんとも賑やかなもんじゃないか!!」
「お父様、それはそうですとも」
「ええ。こうでなくっちゃ、キャハハハハ!」
「 ……… 」
言わずと知れた大富豪の親子。
着飾り過ぎたその衣装は、一種の道化のようでもある。
だが、本人達は至って真面目に『お見合い』に向かっているのだ。
本当ならこんな人混みに紛れるなど、常のこの親子からは考えられないのだが、これは一種の作戦だった。
こんなに素敵な美女達が王子のパーティーに!?
私(自分の娘)が敵うはず無い!!
そう、城下町に来ている玉の輿を狙っている人々に先手を打つためだった。
ティファは、普段着のまま親子から少し離れて歩いている。
両手には買い物で一杯だ。
いつもそうだった。
この親子の買い物の荷物持ちをさせられているのだから…。
だが、今日ばかりは、
『良かった…一緒に並んで歩かなくて済んで…』
そう思わずにはいられない。
どう考えても義父と義姉達のセンスがいいとは思えない。
『普通に着飾ったら綺麗なのに……』
そう。
義姉達は性格はサイアクだが、それに反比例して美人だ。
ロッソもスカーレットも、口を開きさえしなかったらモテモテ間違いないだろう。
それなのに…。
「あら、あの女性の貧粗なこと…」
「あ〜ら、本当!やっだ〜、よくあんな格好で歩ける〜、キャハハハ!!」
黙ってさえいたら……極上なのに…。
ちょっと口を開いた途端、性格の悪さがあっという間に露見してしまう。
ティファは人々の注目を集めている血の繋がらない姉達を見て、そっとため息をついた。
そして。
ところ変わって溜め息を吐いている男がここにもいた。
言うまでも無く、本日のメインであるザックス王子である。
「はぁ……」
「 ……… 」
「はぁ……」
「 ……… 」
「はぁ……」
「 ……… 」
「………クラウド…、お前、なにか突っ込めよ!」
「……何を言ってやって良いのか分からない」
「……お前に慰めを期待した俺がバカだった…」
「 ……… 」
「はぁ……」
辛気臭いことこの上ない。
どんよりと分厚い雨雲を頭上僅か数センチ上に纏わりつかせているようだ…。
折角の煌びやかな王子の服が泣いている。
クラウドは内心で盛大な溜め息を吐いた。
『良いか、クラウド?』
『……はっ』
『なんとしても本日中に王子の花嫁を探し出せ』
『……はっ(ドキドキ)』
『適当に数人選んでおいて、「やっぱりこれらの女性の中からは后に相応しいと思われる人はいません」などとふざけたことを言わないように、王子にはきつくお前から言っておけ』
『(ギックーーーン!!!)』
『くれぐれも、こそくな手段を使ってこの私をはぐらかそうとするな』
『………滅相も無い…』
『ふっ…そうか?お前達の考えそうなことだと思ったのだがな』
『……まさか…(ビクビク)』
『では、しかと申し付けたぞ?良いな?』
『ははっ』
数十分ほど前の王との会話。
言えない!!!
自分達の作戦が既に看破されていることなど、この状態の王子には絶対に言えない!!
恐るべし、セフィロス王!!
ただのマザコンとあなどったことなど、一度も無いが、それにしてもこの観察力は反則ではないだろうか…?
『あぁ……俺、もう今日限りにクビになるかも…』
本当なら王子以上に泣きたい心境である王子の護衛 兼 付き人は、そっと後ろで控えている上司であるヴィンセント近衛隊長の痛いほどの視線を感じながら、素知らぬふりを続けるのだった…。
楽しくてもっと長く過ごしたい『時間』と、絶対に来て欲しくない『時間』というものは、何故か駆け足で過ぎ去り、やって来てしまうもので…。
あっという間に城には着飾った国中の娘達がやって来る時刻となった。
多くの馬車が城門に横付けされる。
城門からパーティー会場となるフロアまで、延々と長い階段がデデーン!とそびえていた。
「サイアク…」
「こんな階段を歩けって言うの!?」
「…娘達よ、頑張るんだ、ガハハ!!」
うんざりする声にヒステリックに歯噛みする声、そしてバカみたいな笑い声を上げながら階段を見上げてるのは勿論ハイデッカー親子。
その後ろには…。
粗末な服を着て控えているティファ。
次々と国中の娘達が着飾ってやって来る中、ティファの服は悪い意味で目立っていた。
ヒソヒソと囁きながら、同じ年頃の娘達が階段を上る。
それらの非難とも言える視線を受け、ティファは恥ずかしさのあまり俯いて顔が上げられなかった。
まさか、こんなところまでつれてこられるとは思っていなかったのだ。
てっきり、宿屋の一番安い部屋で籠らされると思っていたのに…。
「じゃあティファ、行って来るから」
「馬車の番、ちゃんとしないと承知しないからね!キャハハハ!!」
「そうそう、それからお前は『病人』で『ここにはいない』はずなんだから、その服を脱いでいつもの服を着ることは許さんぞ!」
そう。
今着ている服は、いつもの服とは違う。
物乞いのようなボロボロの服。
よもや、普通の育ちの娘とすら思ってもらえない様な服だ。
ティファは悔しさと理不尽な仕打ちに対する憤り、そして…ただひたすら哀しくて唇を噛み締めていた。
義父達は、そんなティファに満足したのか、高らかに笑いながら延々と続く階段を上って行ってしまった。
ピシッ。
軽く鞭を払って馬車を移動させる。
次々と招待客が現れるから、早く馬車の停留所として設けられているスペースに移動させなくてはならなかったことと、どうにも居た堪れなかったからだ。
何故、こんな仕打ちにあわなくてはならないのだろう?
馬車の手綱を強く握り締める手が、小刻みに震えている。
ティファは……泣きたかった……。
別にパーティーに行けないことは…もうどうでも良かった。
義父達が絶対に行かせるはずないと分かりきっていたので、そう願う気持ちは既に微塵も無かった。
だが、ここまでの屈辱を与えられるとは…正直予想していなかった。
自分と同じ年頃の女性が着飾り、パーティーへの期待を胸に目を輝かせている前で、こんな惨めな格好をさせられるとは…!!
何故、ここまでひどい仕打ちを受けないといけないのだろう…?
自分が何をしたと言うのだろう…?
理不尽過ぎる今の現状。
ティファは涙をこぼさないよう、俯きながら馬車を操った…。
と…その時。
「ティファ、ティファ!」
「 …? 」
「ティファ、こっちこっち!」
「 ??? 」
馬車の停留所につくと同時に、小声で誰かに呼ばれる。
キョロキョロと周りを見回すが…誰もいない…というか、いるにはいるのだが、自分を呼んでそうな人が誰もいない…。
首を捻りながらも御者台から降りる。
馬車の後ろに回り、美しく手入れされた植木の向こうを覗き込んで…。
ガサガサガサッ!!
「え…!?む、むぐ…!!」
口を覆われて植木の向こうへ引っ張り込まれる。
咄嗟に得意の格闘術を披露する寸前、目の前に現れたのは短い髪をした幼馴染の少女。
『ユフィ!?』
目を丸くして抗うのを止めると、巨漢の男がそっと手を離した。
「ティファ、良かった間に合って〜!」
パーッと笑顔になりながらティファに抱きつく。
バレットは額に浮かんだ汗を拭き拭き、
「あ〜…ビビッた。マジで鳩尾一発くらうかと思った…」
とこぼしている。
その傍らからひょっこり現れたのは…。
「え…と………」
「こんばんは、初めまして〜♪私はエアリス、よろしくね、ティファ!」
茶色い髪をフンワリと結い上げた絶世の美女。
傍らには闇色の獣。
ティファのことをジッと見つめている見知らぬ美女と闇色の獣の眼差しは暖かい。
ティファはますます目を丸くした。
そんなティファからユフィは離れると、暫しティファの姿を頭の天辺から足の先まで見つめた。
「ユフィ…あの…どうし」「ティファ!こんな格好させられてるなんて!!!!」
ティファの言葉を遮り、ユフィが悲痛な叫び声を上げる。
悲哀に満ちた表情は一瞬。
あっという間にメラメラとユフィの双眸に怒りの炎が燃え上がる。
「あんの…クソ親子〜〜…!!!!」
「良い年した女がなんつう言葉遣い…」
怒りにフルフルと拳を振るわせるユフィに、ボディーガードの巨漢が溜め息を吐いた。
「でもまぁ…確かにひでぇ…」
ボソリ…と呟かれたその一言に、ティファの羞恥心が再び蘇える。
恥ずかしそうに…哀しそうに目を伏せるティファに、エアリスがニッコリと笑った。
「だ〜か〜ら!ここに来たんでしょう?」
「 ??? 」
キョトンとするティファに、ハッと当初の目的を思い出したユフィとバレットは勢い良く顔を見合わせ、ニ〜ッと笑った。
悪戯に満ち満ちた笑顔にティファの胸が危険信号を打ち鳴らす。
「あ、あの……ちょっと……」
「さぁ、楽しいパーティーの始まりだ〜!!」
「「「 お〜!! 」」」
「 !?!?!?」
引き攣りながら事情説明を求めようとしたティファを尻目に、高々と腕を上げたユフィに呼応し、バレットとエアリス、そして漆黒の獣が楽しげに声を上げた。
ティファは獣が人の声を上げたことに口と目を最大限に開けて驚愕したのだった。
「うん、中々どうよ!この出来栄え〜♪」
「うんうん、すっごく綺麗〜!!」
「「 ……(あんぐり) 」」
数十分後。
ティファは問答無用で自分の馬車に押し込められ、ユフィとエアリスの手であっという間にドレスアップさせられた。
粗末な服を剥ぎ取られ、与えられた極上のドレスに目を白黒させている間に二人手早く着替えさせられる。
バレットとナナキはその間、当然見張りだ。
屈強な体躯の男と漆黒の獣が、カーテンを引いた馬車を守るようにして周りにガンを飛ばす様は、ある意味人目を引いて仕方ない。
だが、一体誰がこのボディーガード達に話しかけられると言うのだろう…。
力に全く自信の無い御者達は、一様に明後日の方向を向いてその場をやり過ごした。
と…。
バタン!と景気の良い音と共に馬車のドアが開き、出てきた妙齢の美女三人に御者達の目が見開かれる。
それは、ボディーガードの男と獣も同様だった。
闇夜に浮かぶ白いドレスは一見、花嫁衣装のようだ。
王子の誕生祝いのパーティーにしては、少々不似合いの色と思われるそのドレスも、着ている女性があまりにも美しくてそんなもの、宇宙の彼方に飛んでいってしまう。
「あの……その…これって……」
「うんうん、もう絶対にこれで王子様はティファに釘付けだね!」
「ええ!本当に素敵〜♪あ、ティファ、ホラホラ、そんなに困った顔しないで?大丈夫、ティファには星が味方だから!」
ショート丈の水色のドレスに身を包んだ活発な女性と、淡い桜色をしたプリーツをふんだんに使ったドレスに身を包んだ女性も、闇夜に浮かんでそれはそれは美しい…。
ドレスの美しさに中身が全く見劣りしないのは、漆黒の瞳と深緑の瞳に宿っている光のせいだろう。
二人共、意志の強い生き生きとした輝きをその双眸から放っている。
思わず御者達は自分の主人の娘達と三人の美女を比べた。
そして、知らず知らずのうちに『…お気の毒に…』と同情の念を寄せる。
敵うはずが無い…。
三人とも非常に魅力的だ。
誰が一番か…と言われても、それはもう個人の好みだろう。
ショートカットの先を可愛く跳ねさせたユフィも…。
茶色い髪を優雅にアップさせ、わざと後ろ髪を残して垂らしているエアリスも…。
わざと残した後れ毛と横髪の毛先をカールにし、アップさせているティファも…。
非常に……なんというか……。
「すごい…可愛い〜!」
思わず人語を話したナナキに、御者達が疑問を感じる余裕など奪い取ってしまうほど、魅力的な存在だった。
「さ、行くよ〜!」
「え、でも…ちょっと待って!」
グイッと引っ張られたティファは、ユフィの手を押し止めた。
振り返った幼馴染に口を開く。
「だから…招待状は…」
「あ〜、大丈夫、大丈夫!」
「うん、平気よ。私も持ってないもの」
「はい!?」
軽く手を振ってケタケタ笑うユフィと、それを支持するエアリスに、ティファはギョッとした。
「いや…だって、持ってなかったら門前払い…」
「ふふふ、抜け道があるみたいなのよねぇ、このお城♪」
「は!?」
何故そんな事を知っているのか…?
そう疑問に思っているティファに、エアリスは悪戯っぽく片目を瞑った。
「星がそう言ってるんだもの。間違いないわ」
自信満々に言い切ったエアリスに、ティファは絶句した。
絶句しつつも……徐々に気分が高揚してくる。
初めて会ったこの女性に、すっかり心惹かれている。
大丈夫…と言われたら、本当に大丈夫だと思える。
そんな安心感を与えてくれる…不思議な女性。
『なんか…魔法使いみたいね…』
言葉と仕草一つでこんなにも惹き付けられて、安心感を与えてくれる。
エアリスという女性に、ティファは初対面とは思えない親しみを感じていた…。
「じゃ、しゅっぱ〜つ!!」
やる気満々のユフィが高らかに腕を上げる。
エアリスが真っ直ぐ前を見ながらギュッとティファの手を握る。
その深緑の瞳は、これから起こる事でキラキラ光っていた。
『…ユフィが二人いる…』
ティファは内心で苦笑した。
「出発…ってどこ行くんだ?」
バレットが実に冷静…というか素朴な疑問を投げかけた。
「ん?最初は正面に行くんだ〜。んでもって…」
「その前を通り過ぎて茂みに入るの♪」
ユフィの言葉を次いで、エアリスがニッコリ笑う。
「でもさ、ユフィは招待状、持ってるんでしょ?じゃあ、正面から堂々と入ったら?」
至極ご尤もなことをナナキが口にする。
ティファが、その意見に賛成しようと口を開いた。
が…。
「なぁに言ってんの!こんなに面白そうなのに、私だけ正面から普通に入るなんてつまんないじゃん!」
呆れたような顔をしてナナキを一瞥する。
ティファは『その表情をするのはナナキのほうじゃないのかしら…』と思いながらも、この大胆不敵で猪突猛進な性格をしている幼馴染に深い感謝を感じずにはいられなかった。
自分のためにこんな無茶をしてくれた……大切な幼馴染。
うっかり涙がこぼれそうになる。
「ティファ…」
「…あ…」
耳元で今日初めて知り合った女性が、そっと目元を拭ってくれた。
フンワリと笑顔を見せる……聖母のような女性。
「折角のお化粧、とれちゃうよ」
キュッと握っている手に力を入れるエアリスに、ティファは照れたように微笑んだ。
「ありがとう」
まだ、エアリスがどういった女性で、どのような経緯でユフィと知り合ったのか、どうして自分を助けてくれるのか、何も説明を聞いていない。
だが…そんなもの、どうでもいい。
この女性は…信じられる。
「行こう!」
「うん!」
促すエアリスに、ティファは極上の笑みをもってそれに応えた。
「えっと、確か…そこだと思うわ」
「ここ?…うわっ!」
「「「 シーーーッ!! 」」」
ガサガサガサ。
エアリスの言う通り、正面の階段を何食わぬ顔をして通り過ぎ、人目を盗んでササッと脇の茂みに入り込んだ五人は、城壁に沿って歩いていた。
途中、当然幾人もの見張りの兵士が立っていたが、実に素晴らしいタイミングでそれらの目を掻い潜った。
その功績はもう素晴らしいの一言。
そして、エアリスの力。
星の声が聞けるというエアリスは、最大限にその力を発揮した。
角を曲がったら兵士が立っている…とか、陰になって全く見えないところに兵士が立っているとか…。
今なら余所を向いているから走るなら今!!とか…。
裾のフンワリとしたドレスを身に纏っているとは考えられないほど、三人の美女の動きは素早かった。
『『 なんて身軽な… 』』
バレットとナナキは内心で舌を巻くしかなった。
そうして辿り着いたのが…。
正面の階段からやや真後ろ的な場所の城壁。
一見、なんの変哲も無い城壁の壁の一部を、エアリスが言う通りユフィが思い切り押した。
ガッコン。
重い音がして、城壁の一部が薄っすらと隙間を開ける。
隠し扉になっていたのだ。
「うわ〜、ワクワクする〜♪」
嬉しくてたまらない!と、全身で表しているユフィとは対照的に、エアリスはジッとどこか遠くを見ている。
それが、星の声を集中して聞いているのだ、ともうティファは理解していた。
その深緑の瞳がキラリ、と光る。
「うん、今なら大丈夫!さ、行きましょ!!」
「よ〜し!行くぞ〜!!」
こうして五人は城の隠し扉に身を滑り込ませたのだった…。
あとがきは最後にまとめて書きますね。
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