*こちらは『シンデレラ』を基にした完全パロディーです。
 ストーリー、キャラ設定、捏造しまくりです。
 苦手な方、嫌悪感を感じられる人は今すぐに回れ右して下さい。

 なんでもどーんと来いや〜〜!!という度胸のある方のみ、お読み下さい。








『無理だって…!!』
『大丈夫だ!俺を信じろ!!』
『仮にも俺達が同じ女性を二人選んだら、その時点で俺達の将来はアウトなんだぞ!?』
『ありえない!!俺達の女性の好みはエラク違う!だから、俺達が二人を選んだとしても、すっごい数の女性達の中から番号が同じになるなんて可能性、万に一つも無い!それも二人も一緒になるだなんてありえない!!』
『……その自信はどっから来るんだよ…』
『ふっふっふ、俺とお前の付き合いの年月からだ!!』
『………俺はイヤだ…』
『頼む!協力してくれ!!』
『………』
『クラウド〜!』
『………万が一が起こったとしても、俺は責任取らないぞ……』
『クラウドー!!恩に着る!!』
『ぐぇっ!』


 これが、パーティーホールの壇上に上がる数分前に交わされた会話である。





シンデレラ……もどき? 9






「それで、ワタクシの家は、代々絹織物を取り扱っておりますの」
「あら、ワタクシの家は世界各地の名産と謳われるもの全般を取り引きしておりますのよ」
「まぁ…!じゃあ、例えばどのような!?」
「ふふ…、象牙、ヒノキ、サンゴ、トリカブト…」
「フッ。ワタクシの実家の絹織物に比べると、いま一つ品位に欠ける物ですわね」
「まぁ!なんと仰いまして!?」

「「 ……… 」」

 火花を散らすうら若い女性。
 王子と付き人はジト目でそのやり取りを眺めやった。

 もう…何人目だろう…。
 ザックスとクラウドはうんざりとした顔でチラリと互いの顔を見合った。
 二人ずつが壇上に上がってザックスとクラウドに『自己アピール』を行う。
 会場にはザッと数えても千人未満もの女性達が集まっていた。
 はっきり言って、どの人が良いのか選ぶ時間は僅かに数分間だけ。

 数分間で一体何が分かる!?

 クラウドはザックスとその父親に内心で噛み付いた。
 だが…。

『そんなのは直感だ』
『運命の相手だったら、目を見た瞬間に分かるって』

 なんともあっさり一蹴してのけた。
 流石親子…。
 クラウドは反論する前に抗議の言葉を封じられた。


 お見合いの方法。


 まず、数分間という極々限られた時間で女性達を『ふるいにかける』。
 その際、女性は自分の名前を名乗ることを禁じられた。
 何故なら、苗字を名乗らなくても名家の令嬢なら名前だけで分かる可能性があり、公平性に問題があるからだ。

 第一関門を突破する為の条件としては、ザックスとクラウドの双方が選んだ女性限定となっている。
 そして、その選ぶ女性の数は、ザックスとクラウド、それぞれ僅か『最低十名』だけ。
 何故なら、これは『王子と王子の付き人二人のお見合い』だから、選ぶ女性も多すぎず、少なすぎず必要というわけだ。
 そうして、第一関門を突破した女性達と二時面接のような形で会うことにしていた。
 だが!!
 以下のようになった場合、事態は急展開を迎える。

 例)

 ・ザックスとクラウドが同じ女性を選んだ。
 ・ザックスがA番、クラウドがB番の女性を選んだが、A番の女性はクラウドを、B番の女性はザックスとお付き合いしたいと意思表明をした。
 ・ダンスを踊るなり、お茶をするなり一緒に過ごしてお互いの相性を確かめる。
 ・被った女性が二人以上の場合も同様。


 お互いが十名ずつ選ぶのだから、奇跡が起きたら十名とも被ることもあるかもしれない。

 ……まぁ、ありえないが…。

 そうして、その女性達に選んでもらいつつ、ザックスとクラウドも最終選考をするのだ。
 即ち、本当に結婚しても良い女性をその被った女性の中から選ぶことになる。
 もしも、ザックスとクラウドの選んだ女性が自分を選んでくれた場合……。

 その時点でこのお見合いは終了され、通常の誕生パーティー&王子の婚約パーティーへ突入する流れになっていた。


 普通。


 これだけの人数が集まったら王子と近衛兵の選ぶ女性が重なることはまずない。
 そう、王子が言った様に『ありえない』のだ。

 それなのに…。


「「 …… 」」


 ザックスとクラウドは、同時にリーブの持っているかごの中に札を入れた。


「はい、そこまででお願いします。次、31番、32番の方、お願いします」


 白熱したバトルを繰り広げていた女性二人がハッと我に返って媚びた笑みを浮かべ、時間の延長を申し出ようとするが、控えていた他の近衛兵が女性達を壇上から追い出す。
 そして、新しい女性二人が意気揚々と壇上に上がってきた。

 新しい二人の装いに、女性慣れしていると称されるザックスですら、ゲンナリとした顔をしたのだった。


『…ありえない事が……ありえるかもしれない…』


 クラウドは胃がキリキリ痛むのを感じずにはいられなかった。
 何故なら、あまりにも……そう、あまりにも…!!

『なんでこんなに性格が悪いんだ…?』


 玉の輿を狙ってやってきた女性達は、自分達の実家の自慢、先祖の自慢、更には自分自身の自慢を口々に捲くし立て、挙句の果てにはライバルである相手の女性を攻撃するような言葉を発していた。


 幻滅だ…!!


 これでは、本当に『良さそうな人』は僅かしかいない気がする。
 という事は、ザックスとクラウドの選んだ女性が被る可能性が非常に高い。
 クラウドは女性不審になりそうだった…。
 人付き合いに対してクラウドよりも心の広いザックスでさえ、すっかり辟易していた。
 それに反比例してますます初恋の人に焦がれる気持ちが加速する。

『やばい…!!』

 クラウドの真似をして愛想の悪い青年を演じていた……つもりだったが、いつの間にか演技から本物に変化している。
もう…愛想を振りまけ、と言われても難しい。
 引き攣った笑顔なら出来るだろうが、いつも他の国を訪れた時に見せる『王子スマイル』に『王子トーク』は無理だろう…。
 国際的な行事の催し物に招待されることの多いザックスは、それなりに女性の扱い方やマナーをマスターしている。
 しかし、現在それらを披露しろ!といわれても不可能な心境になっていた。
 他国を訪問した時に接してくれた女性達は、いずれも自分の自慢を過剰までにせず、つつましやかにするよう教育されていた人達ばかりだ。
 だが…。
 今夜はそのようなマナーを一切受けておらず、いかにして『玉の輿に乗る』かしか考えていない人達…が多い。
 これまで30名程に面接(?)したが、いずれも過剰な自慢話で聞くに堪えない。
 別に、名家の令嬢が后でなくても良いのだ。
 そういうものを求めていないのだから。
 后の実家からの支援等を当てになど全くしていない。
 そんなものが必要ないくらい、この国は潤っているし、王政制度はバッチリだ。
 多少、貧富の差はあるが他国に比べたらまだマシな方だし、これからも自分は頑張って福祉等に力を入れていくつもりである。
 だから、むしろなんの苦労も知らずに育った女性達よりも苦労を知っており、一般庶民の目線に立てる人の方が良いのかもしれない。

 だがしかし…。

『さっきの一般出身の人達なぁ…』

 目の前で化粧と香水のにおいを撒き散らし、媚びた笑顔を向けてくる31番、32番の女性を見ながら先ほどの面会した女性を思い出した。

 容姿………『中の下』。
 トーク……『下の上』。
 度胸(王子を目の前にしていかに自分をアピール出来るか)……『下の下』。

 これでは、一国の后は務まらない。
 自慢ばっかりする女性達は、度胸だけはピカ一。
 容姿も『上の中』〜『上の上』が多かった。
 だが……肝心の思いやる心は著しく欠けている…と思う。

 ザックスは内心で、苦し紛れにクラウドを巻き込んだ今回のお見合い作戦を発案したことに心から『良かった…』と思っていた。
 クラウドは非常に人への関心が薄い。
 極限られた人間しか心を開かない傾向にある。
 だからこそ、人を見る目は確かだと思うし、自分にはない冷静さがあると思う。
 そのクラウドと自分の選んだ番号の女性こそが、后に相応しいと思える。

『ま、俺はやっぱりあの子以外は…なぁ…』

 ザックスは隣でげんなりしているクラウドと同時に溜め息を吐いた。




「次、33番、34番の方、お願いします」
「あ、私の番だ」

 美味しい手料理に舌鼓を打っていたエアリスが顔を上げる。
 ユフィがモゴモゴ口を動かしながら、
「はれ〜、本当ら。もう順番まわっれきらんられ〜」
「ユフィ…お行儀悪いわよ」
 ティファに苦笑される。

 エアリスはニッコリ笑うと、軽く手をヒラヒラさせながら、
「じゃ、ちょっと行ってきま〜す♪」
「頑張って、王子でも付き人でも良いから心をガッチリ掴んできてね〜!ティファのために〜!!」
「ユ、ユフィ!!」
「ふふ、まぁ頑張ってみるわ〜」
 軽やかな足取りと自然に身につけたのであろう優雅な身のこなしで壇上へと上がっていった。

 エアリスが壇上に向かう。
 それまで殺気だった雰囲気と、面白おかしく見ている物見遊山のような雰囲気がない交ぜになっていたもので溢れていたホールが一瞬、シン、と静まり返った。
 そうして次には、静かなどよめきが客達に広まる。

 新しい雰囲気。
 それは、エアリスの登場によってもたらされたものだと疑うべくも無い。

 その場の空気を支配してしまうような存在。

 柔らかな笑みを浮かべているエアリスに、ティファとユフィは感嘆の溜め息を吐いた。

「凄いわねぇ」
「ホントホント。あっという間に主役になっちゃったよ」

 ホールの端で食事の乗った皿を手に、二人がコソコソ話していると、
「あらぁ、またあ〜んな小娘が王子様の前に〜!」
「やっだ〜!!本当に恥知らずなんだから〜!キャハハハ!」
 どこからともなくそんな笑い声が聞こえた気がして、ユフィとティファはギョッと身を竦めた。

 かなり離れた所で、義父と義姉達が胸を仰け反らせて笑っている。

 これだけの距離と、間にいる人達の山で隠れる必要は無いのに、ついついティファは身を低くして肩を竦めた。
「自分達の方が恥ずかしいっつうのに…」
 ユフィの独り言に、心の底から同意しつつ、エアリスが恥をかいたり、悔しい思いをしないよう願うのだった。





「「 …!! 」」

 ザックスとクラウドは、目の前に現れた新しい女性二人のうち、一人に目を奪われていた。
 淡いピンクのドレスに身を包み、穏やかな笑みを浮かべている女性。
 清楚で可憐な装いは彼女にピッタリだ。
 更には輝く深緑の瞳に宿る凛とした光は、他者を魅了せずにはいられないだろう。
 なによりも、クラウドの心をくすぐったのは『化粧と香水臭くないこと』。

 もう…本当に化粧臭さには辟易していたのだ。
 もう一人、エアリスと一緒にやって来た33番の女性が悔しそうに顔を歪めている。
 自分に二人が全く見向きもしないので、いたくプライドを傷つけられているのだ。
 だが、そんな事には全く三人とも気付いていない。
 完璧に三人の世界が出来上がっていた。


「では、どうぞ」


 大臣の一言により、何度目かの面会(?)が始まった。

「あの、王子様。ワタクシの家は…「あの!」

 気を取り直した33番の女性が口を開いたが、大声でそれを遮ったのは…。


「はい、なんですか?」
「どこかで…会いませんでしたか…?」


 深緑の瞳から目を離せずにいるザックス。
 尋常ではないその様子に、クラウドは軽く目を見開いた。
 ここまで真剣な顔をして女性に接する彼を見た事が無い。
 真摯な態度、縋るような…眼差し。
 そっと34番の女性を窺うと、彼女はちょっと小首を傾げてマジマジとザックスを見つめている。
 値踏みとは全く違う、その目。
 先ほどまでの女性達は、クラウドとザックスのどちらが王子か見定めるべく、目を皿のようにして『鑑定』していた。
 そういった類のものからかけ離れた……真っ直ぐな瞳。

 クラウドはどこかホッとするものを感じた。


「……えっと…ごめんなさい。覚えてないです…」
「そりゃそうよね。王子様が一般市民とお知り合いになど…「でも、どこかで…なんか会った気が…」

 申し訳なさそうに謝るエアリスの言葉に便乗するように33番の女性が自分の存在をアピールする。
 が、それもあっさりとザックスによって流された。
 33番の女性の額に青筋が浮かんだのをクラウドは見た。
 そして、すぐさま見なかったことにした。
 これ以上、女性の醜い様を見て、女性不審にはなりたくない。

 いつになく積極的に話しかける主とその相手に、クラウドは興味を持った。
 改めて二人を見る。

 今は対面式に座っているが、この二人が並んで座ったらどうだろう…?
 非常に……似合っているのではないだろうか?
 見た感じ、34番の女性はこれまで面会(?)した女性達には無いつつましやかさがあると思われる。
 それに、どちらが王子か品定めするような目もしていなかったし、今もしていない。
 それどころか、しどろもどろになって一生懸命話しかけているザックスに、温かな笑顔で楽しそうに相槌を打っている。

 これは…。
 中々…。

 良いのでは!?


 チラリ、とクラウドの脳裏にザックスが何度も話した『妖精』が過(よ)ぎった。

『まさかな…』

 そうは思うのだが、可憐でコロコロと笑うその仕草と表情は本当に素敵だと素直に感じる。

「普段はどんなことをして過ごしてるんですか?」
「ふふ。両親と一緒に植物を採取したり、動物の様子を見たりしてます。どの子達も本当に可愛いの」
「へえっ!ってことは、アナタは自然に囲まれた所に住んでるんですね?」
「ええ。とっても綺麗なところなの。私の自慢なんです、あそこは」
「是非、拝見させて頂きたいものです」
「ふふ。本当に?でも、王子様には退屈だと思いますけど…」
「いや、絶対にそんな事は無いし!ワタシも自然は大好きだから」

 自然な会話。
 その会話を傍聴しているクラウドと33番の女性。
 エアリスがザックスを自然に『王子様』と呼んだことに、クラウドは内心でギョッとしたが、当の本人は全くそれに気付いていないくらい話にのめりこんでいる。

 冷や汗を流しながら、後方に控えている大臣を見る。
 眉をピクピクッ、と僅かに痙攣させているところを見ると、大臣も内心穏やかではないのだろう。
 そそくさと、カードを入れるためのかごを差し出そうとする。
 が…。

「あの!ワタシと踊って頂けませんか!?」

 ガタンッ!
 勢い良く腰を上げて手を差し出したザックスに、大臣は蒼白、クラウドは唖然、エアリスはポカンとして目を見開いた。
 嫉妬にメラメラと燃える33番の女性は全員スルー。
 ルールを無視していきなりダンスを申し込んだ王子に、エアリスは戸惑いながら差し出された手を、唖然としているクラウドを、蒼白になっている大臣を見比べた。
 気が着けば、会場もシーンと静まり返っている。
 客達がヒソヒソと囁く声が聞こえるほどの不気味な静けさ。

『あの青年(ひと)、きっと王子付きの護衛ね』
『ええ、そうに違いないわ。いきなりルールを無視するだなんて、真摯な男性と名高いザックス王子のはずないもの』
『なら、次は私達の番だから、あのひとを無視して話を進めたらいいわ』
『楽勝ね』
『今、この瞬間からアナタとワタクシは敵同士よ』
『あら、望むところよ!』

 エアリスの耳にそんなやり取りが聞こえた。

 思わずその声のした方を見る。
 扇でサッと顔を隠した女性達を軽く睨み、改めてザックスを見た。
 微かに震えている差し出された手を見て…、紺碧の瞳に宿る真剣な光を見る。

 と…。


「はい、それはルール違反です。さ、次の方、どうぞ」
「ちょ…、おい!」

 大臣が割って入り、大声を上げて抗議しようとするザックスの口を塞ぐ。
 クラウドが背に回って、
『ダメだ。彼女が気に入ったなら札を選んで大事に持ってたら良いだろ?また王に怒られるぞ!』
 小声でそう諌め、王子の身体から力が抜けた。

 どこかしょぼくれて、
「申し訳ありません。困らせてしまいましたね…」
 苦笑を浮かべて頭を下げる。
 エアリスはそれらをジッと見つめていた。


「では、お二人共…」
「ちょっと、ワタクシは何も話をしていませんわ!」

 33番の女性がキーキーと怒りの抗議を行う。
 当然のように、控えていた近衛兵達が連行した。

 壇上から去ろうとするエアリスを名残惜しそうに見つめるザックスに、エアリスはふと…、
「赤い獣は怖いですか?」

 唐突なその質問。
 会場がザワッとどよめいた。
 赤い獣は不吉な象徴として倦厭されている。
 王子の誕生パーティー(お見合い)の場で口にするにはあまりにも無礼極まりない。
 近衛兵達がサッと顔を強張らせてエアリスに腕を伸ばす。


「いや、怖くないですよ」
「どうして?」


 あっさりと答えた王子に動揺して伸ばした腕をそのままに固まる。
 小首を傾げて王子を真っ直ぐ見つめる女性。
 その女性を見つめる青年。
 二人の視界には他に何も映っていない。
 ハラハラしながらリーブ大臣が壇上の奧を窺っている。
 この国の主が高みの見物…、いやいや、隠れた場所から温かくお見合いの行く末を見守っているのだ。
 当然、王子はその事を知っているのに…。


「俺、昔会ったことあるから」


 会場が更にざわめく。
 クラウドも驚いていた。
 ザックスの口調がすっかり元に戻っていることも驚いたが、それ以上に『王子として絶対に口にしてはいけない過去』を話したからだ。

 初恋の人に会った時。
 赤い獣に彼女が跨っていたという話は、絶対に口外してはいけないと硬く禁じられていたのだ。
 それなのに!

 大臣が顔色を変えてザックスに詰め寄ろうとする。
 会場がザワザワと不穏な空気に染まる。
 クラウドも思わずザックスの肩に手を置いた。


「ふふ」


 ハッと顔を向けると、そこには輝く笑顔を浮かべてザックスを見つめるエアリスの姿。
 ザックスは勿論、大臣とクラウド、それにエアリスの周りに集まっていた近衛兵達の心臓を鷲掴みにするその笑みを残し、エアリスは背を向けた。

 数歩歩いて立ち止まり、
「あ、そうそう!」
 クルッと踵を返して、タタタターッとザックスの目の前に駆け戻る。
 誰も止めない。
 止められない。


「怖くない、と言って下さるなら、是非、一度我が家にいらして下さい」


 スカートの裾を優雅につまんで持ち上げ、一礼する。
 その所作に、思わず異性の客からうっとりとした溜め息がこぼれた。

「思いもかけず、楽しい時間を過ごせて本当に嬉しかったです。出来れば、42番と108番の女性もよろしくお願いします」

 そう言い残すと、今度こそ本当に壇上から去ったのだった。



 あとがきは最後にまとめて書きますね。