英雄達のリーダー 4ガキーン!! クラウドの振り落とされた斬戟がシュリのクロスさせたファルシオンで受け止められる。 そのまま、勢いを殺さずクラウドは右足を振り上げ、側頭部に蹴りを喰らわそうとした。 シュリはその一瞬先にラグナロクを絡めとるようにして弾き飛ばし、上体を思い切り仰け反らす。 鼻先すれすれをクラウドのブーツが空を切ったその瞬間、仰け反らした上体をそのままに、背中から地面に突っ込ませて両手を地面に逆手で着くと、がら空きになっているクラウドの軸足を思い切り蹴り飛ばした。 「っつ!」 バランスを崩して転倒しそうになるクラウドに、観客席から悲鳴が上がる。 「おーーっと!!クラウド、大丈夫か!?!?」 ユフィのナレーションがどこか遠くで聞えてくるようだ。 クラウドにはそれをじっくり聞く余裕など無い。 バランスを崩させる事に成功したシュリは、その成功を確かめる事も無くすぐさま自分の体制を整えるべく、間髪入れずに地面から跳ね起きた。 その鮮やかな身のこなしに、会場の一角から「キャーー!!中佐〜〜!!!!」という黄色い歓声が上がる。 「……シュリ兄ちゃんってモテるんだぁ……」 「きっとクラウドと同じで、『クール』でカッコイイ……って人気があるんだよ」 子供達が実に冷静に小声で話をしているのを、大人達は苦笑しながら聞いていた。 勿論、視線は目の前の激戦に釘付けだ。 一体どれ程剣を交えただろう…? クラウドとシュリの身体は、ある時はぶつかり、ある時はかなりの距離を持ち、その表情は二人共真剣だ。 着かず離れず、わざと隙を作って相手を罠に誘い込もうとする事何十回。 そして、さらにその罠にわざと引っかかったような振りをして反撃する事幾たびか…。 中々決着がつかない。 その間、ユフィの興奮した声が、マイクを通して観客たちの耳を打ち、熱狂を煽る。 ティファは固く手を握りしめ、目の前で真剣な表情で剣を交えている二人を見守った。 あのクラウドとここまで同等に一対一で戦える人間が仲間以外にいた事実に驚きを禁じえない。 そして、それは恐らくクラウド自身が最も今、感じている事だろう…。 「クラウド……楽しそうだね」 「え…?」 ポツリと呟いたナナキの言葉に、ティファはびっくりして思わず目の前の闘いから視線を逸らし、赤い獣の形をした仲間を見る。 隻眼の仲間は、にっこりと嬉しそうに口を歪め、同じくティファの様にキョトンと自分を見つめている仲間と子供達に言った。 「だってさ、こんなに全力で戦える相手ってこれまで敵ばっかりだったでしょ?だから、戦っても楽しいとかワクワクした気持ちになんかなれなかったじゃない?だけどさ…」 言葉を切って、剣を交えている二人を見る。 「あのシュリさんは、クラウドの友達……でしょ?友達とこうして真剣勝負が出来るだなんて、ワクワクするじゃない?」 「…あ〜、そうだな。アレだ、『ライバル』っつうやつだな!」 バレットの言葉に、ナナキはコクコクと頷き、嬉しそうに鼻を鳴らした。 「クラウド、真剣に戦ってるけど、あんなに自由にのびのび戦ってるのっておいら、見た事ないや」 ティファは視線をクラウドに戻した。 ナナキの言う通り、あの旅の最中、戦いで彼が見せた表情は、いずれも切迫した……殺伐とした表情だった。 殺るか…殺られるか…。 そんな世界だったのだから、無理は無い。 でも今は…。 ナナキの言う通り真剣な表情はそのままなのに、どこか……嬉しそうに……楽しそうに……のびのびと剣を振るっている。 その表情はまるで……。 「フフ……少年みたい」 ティファのその笑みを含んだ呟きに、子供達は目を輝かせて食い入るように観戦するのだった。 いつの間にか、クラウドの右頬には薄っすらと傷が斜めに走り、シュリの左の袖が大きく千切れている。 その下の肌からは、血が滲んでいた。 二人共、額に汗を浮かべ、軽く肩で呼吸をしている。 「中々勝負がつきません!!解説のデナリさん、今後の戦闘模様はどう思われますか?」 二人が距離を置いて次の攻撃に移る一瞬の間に、ユフィが隣に座っているデナリに話を振った。 実は、これまで全く一言も話す事無く観戦することに没頭していたデナリは、ギョッとしたように差し出されたマイクを見つめ、次いで自分の置かれていた本来の立場を思いだ。 困ったように眉を寄せると、 「………そうですね…」 一言そう口にして、頬を掻いた。 「今のところ、シュリ中佐とクラウド氏はほぼ互角です。ですが…」 「ですが!?」 ずずずい…!!と顔を寄せるユフィに上体を仰け反らせ、デナリは顔を引き攣らせつつ言葉を続けた。 「両者ともそろそろ決着をつけに入るでしょう」 その言葉が二人に聞えたのか否か…。 先に行動を起こしたのはシュリだった。 身体全体をグッと屈め、次いで爆発的な勢いでクラウドに向けて突進する。 その駆ける姿はまるで獲物を見つけた豹のようだ。 クラウドがラグナロクを構えなおす。 と…。 シュリはクラウドのかなり手前で力一杯飛び上がった。 その跳躍に、観客たちは目を剥く。 クラウドは静かに……そして油断無く自分に向かってくる青年を凝視した。 そして…。 まず、シュリが右手の武器を閃かせて頭上から浴びせようとする。 クラウドはそれを何故か左手で拳を作って剣の腹を殴るようにして払いのけた。 乱暴すぎるその防御の仕方に、観客席にいた他のWRO隊員達がどことなく釈然としない顔をする。 しかし…。 武器を払いのけられた直後。 それを想定していたシュリは身体を空中で捻ると、着地と同時にもう片方の手が握っていた武器を繰り出す。 クラウドもその攻撃を予想していたのだろう。 右手に握っていたラグナロクで受け止め、そのまま剣でくるりと円を描き、シュリの武器を手からもぎ取った。 天高く弾き飛ばされたファルシオンに、観客たちの口から感嘆の呻きが上がる。 武器を片方失った主は、それでも全くその闘争心を失う事は無かった。 武器を弾き飛ばされた事などそもそも無かったかのように、残っている武器ですかさず切りかかる。 当然、クラウドも応戦に入った。 一戟。 二戟。 三戟。 四戟。 刃が合わさる回数が増えていくごとに、激しさが増す。 ただの『手合わせ試合』が『真剣な試合』になっていることに、一体どれほどの人数が気付いていることか。 戦っている二人は最初から真剣そのものだったが、観客達の多くは『余興程度』にしか考えていなかった。 まさか、ここまで真剣な勝負を目にするとは……! ユフィもいつの間にか実況中継そっちのけで、二人の真剣勝負に釘付けになっている。 誰もそれを突っ込むだけの余裕は無い。 そして…。 クラウドがラグナロクを突き出し、シュリがすれすれでそれを回避した。 が…。 散々打ち合い、駆け回ったせいで地形が歪んでいたそのくぼみの部分に足をとられ、シュリはバランスを崩した。 転倒するまでにはいかなかったが、その隙をクラウドは見逃さない。 ありったけの力を込めてシュリの横っ面を蹴り飛ばす。 シュリは寸前で腕を上げてカバーしたが、完全に威力を殺す事が出来ずに横へ吹っ飛んだ。 そのまま…。 「……………はぁ…。参りました」 起き上がろうとしたシュリより半瞬早く、クラウドが喉元にラグナロクを突きつける。 シュリは肩を竦めると、どこか清々しい顔で負けを宣言した。 闘技場が歓声に包まれる。 割れんばかりの拍手と、両者を称える言葉で溢れ返ったその中で。 ティファはうっすらと涙を浮かべながら…。 子供達は顔をキラキラ輝かせて、喉を枯らしながら…。 仲間達は大いに満足した表情で、二人の勇姿を称えた。 「流石、中佐にクラウドさん」 「………本当になぁ…」 「「「…………」」」 「僕達も恥をかかない様に頑張らないとね!」 「………俺は今すぐ帰りたいね」 「「「…………」」」 一部始終を闘技場のそでから見ていた残り五人の挑戦者は、ある者は感動し、ある者は苦笑を浮かべ、そしてある者達は真っ青になって自分達の番を待っていた。 「いやぁ…。ほんっとうにすっごい試合でした!まさか、ここまでクラウドに対抗できる人間がいるとは!!WROの人材は本当に素晴らしい!!」 ユフィの言葉に、再び割れんばかりの拍手と黄色い歓声が上がった。 クラウドとシュリは握手を交わし、シュリだけがそでに引っ込んだ。 クラウドに女の隊員がエリクサーを渡すべく駆け寄る。 とりあえず、体力は全回復。 その様子に、ティファと子供達はホッとした。 「なんでぇ、そんなにホッとしてよ」 シドが呆れたような顔をした。 「だって、ライ兄ちゃんとリト兄ちゃんも結構強いんだぜ?」 「うん、だから疲れたまま試合したらクラウドがいくらなんでも辛いなぁ…って思って」 子供達の言葉に、シドだけではなくバレットとナナキ、そしてヴィンセントまでもが疑わしそうな顔をして、ティファを見た。 ティファは仲間達に苦笑しつつ、軽く肩を竦めるとコックリ頷いた。 「さぁ!!お待ちかね、早速参りましょう!!第二回戦で〜っす!!!」 ユフィの宣言に、そでからプライアデスとグリートが現れた。 二人共、やはり剣タイプの武器を手にしている。 グリートは細身の刀身レイピア、プライアデスはレイピアよりもやや幅も厚みもあるクレイモア。 いずれにしろ、素人やちょっとかじった程度の人間ではまともに扱えない。 二人はやや緊張気味に闘技場の真ん中に歩いてくる。 すると…。 「キャー!」「バルト准尉〜!!」「ノーブル准尉〜〜!!」 「「「頑張って〜〜!!!!」」」 女性隊員の黄色い歓声、熱い応援が一角で湧き起こった。 グリートは満面の笑みでそれに応える。 当然、そのために歓声が大きくなった事は言うまでも無い。 一方、プライアデスはと言うと…。 若干頬を赤らめながら引き攣った顔を俯かせ、黙ったままギクシャクと中央へ足を運ぶばかりだ。 「ライ、お前も少しは応えてやれよ」 「………………無理」 即答したプライアデスに思わず、 「……ライ、気持ちは察する」 クラウドが心の底から同情を寄せた。 「ありがとうございます」 何となく打ち沈んだ空気を纏いながら、三人は改めて武器を構えた。 そして…。 ズザァッ!! 一気に二人は後方へ飛び、クラウドの斬戟をかわす。 最初に仕掛けたクラウドに対し、ニッと笑ったグリートはレイピアを構えると一気に間合いを詰めた。 金属を弾いた甲高い音が闘技場に響き渡る。 弾かれたレイピアは、細身の刀身からは考えられないような強靭さを兼ね備えているようで、折れるどころかヒビ一つない。 しかし、バランスを崩したグリートは、若干足を空で躍らせ転倒を防ぐ。 クラウドがその隙に新たな攻撃を仕掛けようとしたとき、突然真横から白刃が襲ってきた。 危うく顔面を直撃しそうになるのをギリギリで交わすと、空を切ったその刀身に遠心力をかけてクルリと身体を回転させ、更に力を加えた斬戟を叩き込もうとするプライアデスに、クラウドは内心で舌を巻いた。 それでも感心ばかりしていられない。 新たな斬戟をかわしたその視界の隅に、グリートが体勢を立て直してプライアデスの後方から躍り出るのがチラリと見えた。 『まったく……大した奴らだよ…』 クラウドは先程のシュリと言い、この目の前の二人組みと言い、WROに……リーブの部下にこれほどの有能な人材が揃った事を嬉しく思った。 『エアリス……ザックス……。こんなにも頼もしい奴らがいるぞ……』 心の中で、星に還った大切な人達に話しかける。 クラウドの気持ちは、今、この戦いを見ている英雄達の気持ちそのものだった。 ティファ達も必死にクラウドを応援してはいたが、心の中で誇らしげに亡き友に目の前の光を報告していた。 「きっと……見てくれてるよね」 「「え?」」 ティファの独り言に、子供達は不思議そうな顔を見せたが、仲間達は泣きそうな……それでいて心から嬉しそうな笑みで頷きあった。 そうしている間にも、クラウド達は激しい戦いを繰り広げている。 クラウドがグリートを追い詰めるとプライアデスが絶妙なタイミングでフォローに入り、逆にプライアデスにクラウドが斬戟を喰らわせようとするとグリートが援護に入った。 先程のシュリとの手合わせと違い、この二人は完全に息がぴったりと合っていて、その分威力が二倍以上になっている。 「流石、WROが誇る期待の若人です!!ジェノバ戦役の英雄に負けず劣らずの攻防戦を繰り広げております!!」 ユフィの実況中継が熱狂の中に更に興奮を巻き起こす。 ある者はクラウドを……そしてある者はグリートとプライアデスを応援して総立ちになっていた。 ティファと子供達もいつしか身を乗り出して必死にクラウドへ声援を送っている。 しかし、いつまでも果ての無いダンスを踊るわけにはいかない。 クラウドがグリートを蹴り飛ばしたその直後。 プライアデスが手にしていた武器を投げつけてきた。 かなり離れた位置にいた為、駆けつけても間に合わなかったからだ。 クレイモアをラグナロクで弾き飛ばすと、クルクル旋回しながらクレイモアは闘技場の壁に勢い良く突き刺さった。 柄(つか)までめり込んだその武器に、観客達が息を飲む。 しかし、実際に戦っている三人にそんな余裕があるはずも無く…。 プライアデスが空手でクラウドに突っ込む。 その間にグリートが完全に体勢を立て直してクラウドに向き合う。 クラウドは身を固くし、己に迫ってくる二つの強大な敵に身構えた。 そして…。 ジェノバ戦役の英雄達のリーダーが繰り出した技は…。 『十六連続斬り超究武神破斬』 ガガガガガガガガガガッッッ!!!! 十連続までグリートとプライアデスはしのいだが……。 残りの六連続を仲良く二人で喰らってとうとう地面に倒れこんだ。 「クラウドの勝利で〜っす!!!」 湧き立つ闘技場に、クラウドとプライアデス、そしてグリートの汗と弾む息が掻き消される。 肩で息をしながら三人はニッコリと笑いながら握手を交わした。 泥まみれなのに本当に綺麗なその三人の姿はまさに感動もので……。 「ライ兄ちゃんもリト兄ちゃんもすっげ〜〜!!」 「うん!でもやっぱり……」 「「クラウドが一番カッコイイ〜〜!!!!」」 子供達の歓声が熱気溢れる闘技場の中にいても耳に届いた。 クラウドはゆるりと頬を緩めると、子供達とティファの座っている方へ視線を向けた。 そこには満面の笑みを浮かべ、少々涙ぐんだ子供達と仲間達…。 そして、感極まって涙を流している愛しい人。 彼女のその姿で、全てが報われる…。 クラウドは瞳を細めて世界で一番愛しい人に笑みを見せた…。 しかし…。 「はい、とうとうやって来ました、最終決戦で〜っす!」 ユフィの言葉に、クラウドは……いや。 クラウドだけでなく仲間と子供達もキョトンとした。 一斉に実況席にいるユフィに顔を向ける。 ユフィはと言うと。 何故、一斉に不思議そうな顔をされたのか首を捻ったが、即座にその原因に気がついた。 悪戯っぽく笑うと、「コホン」と咳払いをする。 「え〜〜、最後となります三回戦は、WROの期待の星である三人がクラウドと勝負をしま〜す!しかもな〜んと!!!この試合に勝てば、ジェノバ戦役の英雄であり、料理の達人であり、エッジの人気者でもあるティファ・ロックハートとのお付き合い権が手に入りま〜〜す!!!!」 闘技場が観客達の絶叫で揺れる。 あちらこちらで「マジかよ!?」「ウッソーー!?」「冗談だろー!?」「ギャーー!!!!」という声が上がって大変な騒ぎになった。 その中で、肝心のティファ達は…。 「「「「「「「「「あ……」」」」」」」」」 間抜けな顔で周囲から突き刺さる視線とユフィの言葉に、この『手合わせ試合』の目的を漸く思い出した。 あまりにも一回戦と二回戦が激戦であった為、本来の目的である『問題児を懲らしめよう!』作戦は忘却の彼方にぶっ飛んでいたのだ。 「クラウドさん……忘れてたんですね…」 「………」 「ライ、それは言うな」 苦笑するプライアデスに、クラウドはバツが悪そうに肩を竦めて無言。 グリートが悟りを開いたかのような穏やかな顔をしてプライアデスの肩に手を置いた。 「じゃあ、俺達はこれで」 「クラウドさんの相手としてはかなり力不足だと思いますけど、今回は回復アイテムが無いので気をつけて下さいね」 軽く手を上げたグリートと、ペコリと頭を下げたプライアデスに「ああ、良い試合だった、ありがとう」そう一言口にしたクラウドは、二人の照れた笑いに頬を緩めて見送った。 そでに引っ込む二人の若き隊員に、『景品がティファ』という事で半分パニックのようになっていた観客達は、律儀にもちゃんと拍手を贈り、客席の一角では「ノーブル准尉〜!」「バルト准尉〜!!」「「「素敵でした〜〜!!!」」」という黄色い歓声つきというオマケまでついて、二人を華々しく見送ったのだった。 勿論。 観客席にいるティファと子供達、そして他の英雄達も同じ様に割れんばかりの拍手を送った事は言うまでも無い。 さぁ…。 残る試合は…。 あと一試合。 あとがき 本当に…どうしてこんなに長く……(撃沈) あああ…どうかお許しを〜〜!!!!(土下座) |