Fairy tail of THe World 19「本当にもう良いのか?」 心配そうに眉を寄せるクラウドに、ティファはコックリと頷いた。 「うん。もう大丈夫!これくらいでへばってたら、アイリさんに申し訳ないもん」 そうキッパリと言い切って明るい顔をし、退院の準備を進めるティファとは対照的に、クラウドの表情は冴えない。 日頃から責任感と思いやりの強い彼女の事が本当に心配だった…。 特に、アイリがティファの命を救って魔晄中毒患者末期に舞い戻った事実を彼女が知ってからというもの、その不安はクラウドの中で急速に膨らんだ…。 彼女の『犠牲』を無駄にしないように頑張りすぎるのではないか……? それが心配でならない。 そして、その心配がまさに現実になろうとしている危うさを、クラウドは明るい笑顔を見せる彼女に感じずにはいられなかった……。 「早く帰ってお店を開いて、子供達も呼び戻してクラウドとシェルクも一緒に暮らして…」 楽しそうにこれからの生活を口にするティファに、違和感を感じるのは気のせいだろうか……? 彼女が無理をしてしまうのではないか…? そう思ってしまうのは心配のし過ぎだろうか……? いや、心配のし過ぎでも勘違いでもない。 彼女はきっと……己が壊れるほどに無茶をする。 そんな時、自分は彼女を支えられるだろうか…? …支えてみせる! 絶対に……ティファを壊させたりはしない…! だが……そんな力が自分にあるだろうか……? クラウドは言い知れぬ不安を胸に抱えながら、彼女の退院手続きを手伝うのだった…。 そして。 二人がセブンスヘブンに戻って来たのは、英雄達がシュリと星を救うべく話し合いをしたその翌日の事だった。 セブンスヘブンのドアを開けた途端。 自分に飛びついてきた子供達にティファは驚きのあまり一瞬立ち尽くした。 てっきりバレットかシドが引き取っていたと思い込んでいたのだ。 しかし、すぐに我に返ると嬉しさのあまり涙を浮かべて子供達を抱きしめた。 デンゼルは恥ずかしそうに……マリンは素直に喜びながらティファの胸の中で「「おかえり!!」」と言った。 その後ろでは、クラウドが穏やかな笑みを浮かべて見守っている。 幸せな家族の姿がそこにはあった。 そう……確かにあった。 手を伸ばせば触れられる……幸福が…。 だがそれは…。 嵐の前の…。 束の間の平安……。 「それで、俺達は具体的にどうしたら良いんだ?」 北の大空洞に向かうシエラ号の中で、バレットが目を閉じて座っている青年に訊ねた。 クセのある漆黒の髪を持つ青年は、ゆっくりとその双眸を開くと巨漢の男を見た。 「俺が『術』を施している間の警護…。それだけをお願いします」 「『術』?」 ウータイの忍びが耳慣れないその言葉に眉を顰める。 その隣の床で、赤い獣が尾をパタンと振り下ろした。 「はい。昨夜も説明したとおり、北の大空洞で俺は星に『同化』します。まぁ、『同化』と言っても半分程度…ですが」 「「「「「『同化』!?」」」」」 シュリの言葉にその場の全員がギョッとして身を仰け反らせた。 ユフィが「昨夜は『ツボを刺激する』って言ってたじゃん!」と喚き、あまり表情を変えないヴィンセントですら目を見開いた。 「ええ…。『同化』という表現はちょっと適切ではないかもしれませんが……それ以外に上手く表現出来ません。あまり深く考えないで下さい」 淡々と語る青年からは、何の感情も感じられない。 英雄達の背筋を、言い知れない冷たいものが走りぬけた。 「『同化』している間、俺は完全に無防備になります。ですから、『術』を施し終えるまでの警護をお願いしたいのです。『シャドウ』がどこから襲ってくるのか、どれだけの大群でやってくるのかは分かりませんが…」 「大群って……マジか…?」 引き攣りながらタバコを口からポトリと落っことした艦長に、青年は無表情のままコックリと頷いた。 「はい。この星で『生きたまま星と同化』出来るのは恐らく……今は俺だけでしょうからね。何が何でも俺を排除しようとするはずです」 「『今は』…という事は、これから先、シュリのような力を持つ人間が現れるかもしれない…という事か?」 部下の言葉に驚きを隠せないデナリに、 「その可能性はあると思われます。何しろ、この世はいつでも予想もつかない『奇跡』を起こしますから」 ニコリともせずに淡々と答える。 「ま、そうかもなぁ。三年前の旅だって、ありゃ奇跡みたいなもんだしな」 シドがプカリとタバコの煙を吐き出した。 それをブンッとグーで殴るようにして掻き消したユフィが、 「なに言ってんのさ!アタシ達が命がけで闘って、もぎ取った勝利じゃん!!」 と、鼻息も荒く息巻く。 「だからよぉ。『命がけで起こした奇跡』だって言ってんだっつうの」 ケケケ…と、笑ってヒラヒラ手を振るシエラ号の艦長に、赤い獣が隻眼を細めて頷いた。 「そうだね。だから……今回も絶対に……絶対に『奇跡をもぎ取らないと』…ね」 英雄達と隊員達は力強く頷いた。 「ところで…」 テーブルに頬杖をつきながら、財閥の令嬢がチラリと上司を見る。 「昨夜は聞きそびれたのですが、大佐はこれまで『同化』をしたことがあるんですか?」 何気ないその質問に、その場の数人がハッとして顔を見合わせる。 シュリの作戦は『シュリが言う通りの力を有していなければ』意味が無い。 「いや、出来るから言ったんだろ?」 呆れたように巨漢の英雄が突っ込んだが、寡黙な英雄は鋭い視線を向けた。 あまりにも、シュリから聞かされた話の全てが突飛過ぎる。 星の危機。 それは真実だろう。 現に、英雄の一人が謎の『生き物』に殺されかけたんだから。 しかし、だからと言ってシュリの話した『陽(ひかり)が闇に侵食される現象』という表現は、冷静に考えたら奇抜すぎるのではないだろうか…? セブンスヘブンで昨夜、シュリから話を聞いた時にはつじつまが合っていると思っていたこの星の現象も、こうして時間が経ってゆっくりと……じっくりと思い返してみると、フツフツと疑念が湧いてくる。 シュリの『妄想』、もしくは『幻想』ではないのか……と。 だがしかし…。 シュリの話以上に、この星の現象を説明出来ない。 という事は、万が一シュリの話が嘘や、間違いであったとしても彼の言う通りにするしか他に方法が無い。 だからと言って、このまま『はい、そうですか』と従う事も……無論出来ない。 なにしろ、仲間達の命がかかっているのだから。 「そうだな…。したことはあるのか?」 剣の篭った言葉に、ユフィとナナキが非難めいた眼差しを向ける。 『これ以上、ウダウダ言っても仕方ない』『他に方法が無いし、彼は信じるに足る人物だ』 仲間が心中でそう言っているのが手に取るように分かる。 だが、引くことは出来ない。 ここではっきりとした『勝算』や『手ごま』を確認しておかなくては。 「ありますよ」 ヴィンセントの鋭い眼光をサラリと流し、漆黒の髪の青年は一言そう言った。 「勿論、これから北の大空洞でしようとしている程の『同化』はしたことがありません。したことがあるなら、今頃俺は死んでるでしょうからね、『闇』に襲われて」 なんともない世間話をするような口調で、あっさりと肯定した部下に、デナリが何やら言いたそうな顔をした。 デナリが何を言いたいのか聞かずとも分かる。 「今回の五つの場所の探査と他の所で少し……ね」 シュリは無表情のまま上司が質問する前にその問いに答えた。 「しかし……そんな事をしていたのなら、何らかの現象が……」 疑問を呈する上司とその意見に同意する部下を前に、シュリは淡々とした表情を崩さない。 「勿論、『闇』に目を付けられない程度にしかしていません。だから、本当に『ほんのちょっと』星の声を聞く程度だけの『同化』というか…『同調』しかしてないんですよ」 言葉を区切って疑わしそうな目や興味津々な目で見る面々を見渡す。 「だから、ティファさんを見つけられたんです」 誰も何も言わない。 誰も何も言えない。 忘れていたわけではないのに…。 目の前の謎だらけの青年がティファの居場所を星から教えてもらった……という事実を。 いや、そもそも星から本当にティファの居場所を聞いたのかはまだ疑う余地があるが、それでもシュリが血まみれで瀕死のティファを抱きかかえて飛空挺に運んだのは紛れもない事実なのだから…。 「悪かった…」 目を伏せて頭を軽く下げる寡黙な英雄に、シュリはそっと手を上げて制した。 「構いません。俺は全く気にしてませんから…」 その口調はヴィンセント達が自分を疑ったことや中傷めいた言葉等々、全てに対して『どうでもいい』と思っているようで…。 シークレット・ミッションに携わる事になったメンバーを押し黙らせた。 ここまで自分に対して『自尊心』がない人間は珍しい。 と言うよりも……。 『異常だな…』 ヴィンセントは胸中で呟いた。 ヴィンセント自身、最愛の人を救えなかったという自責の念を未だに抱えていることから、己と言う存在に重きを置けない部分がある。 しかし、バカにされれば憤りもするし、信じてもらえなければ傷つきもする。 それなのに、目の前の青年は全く『自分』と言うものに対して無頓着過ぎる。 『シュリは…何の為に生きてるんだ…?』 生きる意味を見出せている人間は、普通でもそうはいない。 生きているから『生きている』。 そんな風に『風に吹かれて…』と言った人間の方が多いのではないだろうか? しかし、それでも『子供の為に』『夫・妻の為に』『家族の為に』『金の為に』『好きなものを心ゆくまで楽しむ為に』という『何かしらの理由』を胸に、人はそれなりに頑張って生きているのに…。 『……星の為に生きてるのか……?』 そうとも言えるかもしれないが、そうではない気がする。 あくまでこれはヴィンセントの勘であるが…。 だがしかし、ヴィンセントは自分の『勘』が当たっていると何故か確信していた。 恐らく…。 シュリは、『星の為』でも『己の為』でもない『理由』から今日まで必死になって生きてきた。 それは…何だろう? 今回の『シークレット・ミッション』に関係があるのだろうか…? もしも関係があるとしたら、自分達はシュリの『生きる理由』を『達成させる為』に踊らされることになる。 『…ま、いいだろう…』 踊らされていたとしても、その結果、星が助かったら……それでいい。 自分達が危地に赴くのは、星を救うためなのだから。 その目的が達成されるのであるならば、どんな形を取ったとしても構いはしない。 「ところで、大佐。どうしてライを前回の捜索チームに任命したんですか?」 「お、おい…ラナ!」 何となく話しかけづらい空気を突き破るようにして令嬢が声を上げた。 令嬢の兄の顔から冷や汗が噴き出す。 英雄達は顔を見合わせた。 「なんかさぁ…。ちょっと意外だよね…」 「なにが?」 コソコソッとユフィが隣に座っているナナキに耳打ちする。 「こう、兄貴の方が大胆なのかと思ってたけど、妹の方が『向こうっ気』が強いじゃん?」 「あ〜…そうだねぇ…。昨日もシュリにティファの病室の前で噛み付いたらしいし…」 「そうそう。そのせいでティファにバレちゃったんだよなぁ…」 困ったように笑うナナキに、ユフィは溜め息を吐いた。 「まったく…今回の『シークレット・ミッション』…。上手くいくのかねぇ…」 「いかなかったらおいら達全員、犬死だねぇ…」 「ナナキ…、あんたほんっとうにイヤな事をサラッと言うね…」 「うん、ユフィの次にね」 「………本当にムカツク!」 「シュリはムカついてないみたいだねぇ…」 「…あ〜、そうだなぁ…」 「ああいう風に言われたら、おいらだったら腹が立つと思うけどなぁ…」 「どうでもいい…って感じだよねぇ…」 「うんうん」 「なんか、『眼中にない』って感じだよな〜」 「ラナが?」 「ん〜〜…。ラナって言うよりも、『自分』がどう思われてるのか…ってことに…」 「あ〜、おいらもそう思う。もっと『プライド』持ったら良いのにねぇ…」 「え〜…。あたしはヤダなぁ。だって、今みたいにすました顔が、プライド高くなったりしたら益々『ツンツン』しちゃうじゃん?そうなったら、ただのムカツク野郎に成り下がるじゃんか」 「今は違うの?」 「そう!今は『ただのわけの分からない野郎』だね」 「……それって大した違いない気がするなぁ……」 「そ?あたしにとってはだいぶ違うけどなぁ…」 ヒソヒソ、コソコソ、内緒話をしている……つもりの英雄達の会話は、ミッションに携わる全員の耳にしっかりと聞えていた。 しかし、ラナがそれで動揺するか?と言えば、答えは『ノー』なわけで…。 ユフィ達の内緒話を右から左に聞き流す。 英雄達は、ヒソヒソ話をする仲間達に目配せを送ってやめさせようとするが、その視線に気付かないと意味がないわけで…。 結局、 「コホン」 見る見兼ねた……と言うよりも、耐えられなくなったデナリが咳払いをしてやめさせた。 「それで、どうしてなんですか?」 シーンと静まり返った面々の前で、何も答えずにいた上司にラナが詰問口調で問い詰める。 グリートが必死に抑えようとするが、兄を払いのけて答えを要求する令嬢に、シュリは一瞬……本当に一瞬、空虚感を漂わせていた漆黒の瞳を細めた。 空虚感の代わりに……笑みを湛えて…。 その表情に息巻いていたラナがハッとする。 毒気を抜かれる…とはこのことか……? ほんの一瞬の上司の青年らしい表情に、憤りがスッと冷えてしまった。 それはハラハラしながら自分を抑えようとしていた兄は見ることが出来なかったようで、突然固まった自分に驚いている。 視界の端に、上司の表情の変化を見たと思われる寡黙なガンマンと上司の上司の驚いた顔が映った。 他の英雄達は見られなかったらしい…。 怪訝そうに自分を見つめてくるだけだ。 「俺がバルト中尉を探査チームに入れたのは、有能で手の空いてる隊員が他にいなかったからだ」 「……え…?」 呆けた頭にシュリの言葉が意味を成すのに僅かな時間を要した。 間の抜けた声を出してしまったラナは、シュリの言葉を理解すると同時にカァッと顔を赤らめ、 「そ、そんな事を聞いてるんじゃないんです!」 と、照れ隠しに早口で捲くし立てた。 「ライ以外にも、あの時は大佐のお気に入りの『ティアマー・タシュミト』も手が空いていたはずです」 「……前回の探査チームに女性は一人も関わらせていない」 「ウッ……!そうではなくて…!!」 「…フゥ…」 「ムッ!なんですか、その小バカにしたような溜め息は!!」 「小バカにしたような……じゃない。『小バカにした』んだ。ラナ・ノーブル軍曹」 サラッと肯定した上司に、冷えていた怒りがあっという間に沸点に達する。 「なっ!!」 ガタンッ! 勢い良く立ち上がったせいて椅子が大きく音を立てて転がりそうになる。 隣に座っていたグリートがサッと転倒を阻止し、次いで妹の肩に手を置いてグイッと座らせた。 「お前…これ以上は『上官反抗罪』になるからやめろ!」 「兄さん!!こんだけバカにされてるのに黙ってろって言うの!?」 「そうだ、黙ってろ!!」 「兄さんの人でなしー!!」 「あ、あのなぁ……」 先程まで漂っていた重苦しい空気はどこへやら。 子息と令嬢の兄妹喧嘩に強張っていた心がほぐれる。 英雄達とWROの上官達は、口元に笑みを湛えてギャーギャー騒いでいる兄妹を見た。 すっかり和んだ雰囲気を纏ったシエラ号が目的地に着いたのはティファが退院した翌日の昼間だった。 「ティファちゃん!ほんとに心配したんだよ〜!!」 「そうだぜ!俺なんかメシも喉を通らなかったから、こんなに痩せちまってよぉ…」 「なに言ってんだ!お前、逆に太ったんじゃないのか!?」 退院した翌日。 クラウドと子供達の反対する声を無視し、ティファはセブンスヘブンを開店させた。 それは、アイリを犠牲にしてまで生き延びた自責の念も勿論あったが……。 落ち着かない。 何かをしていないと…! そんな気持ちでいっぱいで…仕方なかったのだ。 追い立てられるような気持ち。 一体何に追いたてられているのかは分からない。 それでも……それでも!! 病院のベッドの上で……自宅のベッドの上で、天井をただじっと見て過ごす事に耐えられなかった。 一日も早く、自分の『居場所』に帰りたかった。 だがしかし。 こうして店を開店させ、常連客達から歓待の言葉を満面の笑みで受けながらも…。 ティファの心は虚ろだった。 ― なにが…違うの? なにが…足りないの…? ― アイリの事の他にも何かある。 そんな気がする。 空虚な気持ちを抱きながら、ティファは常連客達に営業スマイルを見せるのだった。 ティファの『虚無感』にクラウドと子供達はすぐに気がついた。 今のところ、客たちには気づかれていないらしいことがせめてもの救い。 自分達が『虚無感』に気付いたと彼女に知られるわけにはいかない。 デンゼルとマリンが意味深に頷き合い、自分にそっと視線を送ってくる。 クラウドは聡い子供達にコックリと頷き、内心で舌を巻いた。 何も言わなくとも子供達が自分の意図することを理解し、実行してくれるのだから。 デンゼルはティファの傍らに駆け寄って客達との会話に加わった。 冗談を飛ばす客に冗談でもって返す。 ドッと湧き起こる笑いに、ティファも声を上げて笑う。 その笑顔は決して営業スマイルではない。 それは長年一緒にいたからこそ分かるものだ。 僅かな違いでも…彼女の事なら良く分かる……つもりでいる。 まぁ、分かっていてもフォロー出来なければ意味がないのだが…。 クラウドは、さり気なくティファをフォローする子供達に感謝と羨望の眼差しを送った。 自分には持っていない『柔軟性』を子供達は持っている。 溜め息を吐きながら、クラウドが他のテーブルへ料理を運ぶべく足を向けた。 チリンチリン…。 「いらっしゃい…って、リーブにシェルク!」 「シェルク!」 「おかえり、シェルク〜!!」 子供達がパッと顔を輝かせてもう一人の家族に飛びつく。 シェルクは華奢な身体でしっかりと子供達を受け止め、フンワリと笑みを浮かべた。 「ただいま戻りました」 「どうしたの、シェルク。今日はWROの医療施設で泊まる…って……。それにリーブまで……」 「なに言ってるんですか。仕事から戻ってきたらティファさんが退院したって知らせを受けて、びっくりして駆けつけたんですよ」 呆れた顔をするリーブとその隣で無表情にコクンと頷くシェルクに、ティファは「あ、えっと…エヘヘ、ごめんね?」と、取り繕うように引き攣り笑いをする。 「ま、お元気ならそれで良いんですけどね…」 苦笑交じりにそう言った仲間からは、怒りも呆れも感じない。 ティファはホッとすると、リーブを席に案内した。 シェルクは当然のように店の奥に引っ込んで自分のエプロンを身につけて出てくる。 「クラウドさん…ちょっと…」 「………」 ティファに聞かれないように耳打ちしてきたリーブに、クラウドは小さく頷いた。 |