さぁ…。
 祭りをしましょう。

 盛大に…。
 …それはそれは華やかに…。


 最期に相応しいものとなるように…。


 さぁ…。
 カウントダウンを……。


 一緒に…。


Fairytail of The World 34




「皆さん、ようこそカームへ!」

 癖のある短髪を持つ愛らしい女性がストライフファミリーの新居へやって来た。
 手には特製のケーキの箱。
 子供達が歓声を上げながらその女性…リリーへと駆け寄る。

「わ〜!リリー姉ちゃん、久しぶり!!」
「本当!久しぶり〜〜!!」

 ピョンピョンと飛び跳ねて喜ぶデンゼルとマリンに、リリーも嬉しそうに笑顔をこぼした。
「うん、二人共、本当に久しぶり〜!」
 はい、これお土産ね♪

 差し出された大きなケーキの箱を、デンゼルとマリンが嬉しそうに仲良く持つ。

「「ありがとう!!」」
「どういたしまして」

 礼儀正しくお礼を言う二人にリリーの眉尻が下がる。

 クラウドとティファは、作業の手を止めるとフッと微笑み合った。
 子供達の無邪気な笑顔と心のおける親しい人。
 その存在が…ありがたい。

「リリーさん。わざわざありがとう」
「いいえ!何かお手伝いできたら良かったんですけど、ちょっとお店が忙しくてこんな時間になっちゃいました」
「ううん、その気持ちだけで十分よ」
「あぁ…。本当にありがとう」

 ティファとクラウドに笑みを向けられ、リリーは頬を染めてはにかんだ。
 彼女にとって、クラウドは初恋で…初めて失恋をした相手。
 本当なら、もっと複雑な気持ちにならないでもないのだが、彼女はティファのことも大好きだった。


 ― ま、仕方ないよね ―


 ほんのちょっぴりちくりと胸が痛まないでもないが、それでもやはり大好きな…憧れの二人が微笑みあっている姿にホッとする。
 特に、ティファが自分の店からエッジに戻る途中で『事故』にあって病院へ搬送された…と聞いた時には心配で仕方なかった。
 見舞いにも行きたかったが、親友であるラナに『今はちょっとごたついてるからもう少し落ち着いてからね』と諭され、断念したのだ。

 ティファが生死の境を彷徨ったという真相は、一部の人間しか知らない。
 常連客達にも『ちょっと怪我をして休業』という曖昧な説明しかしていなかった。
 本当の事が分かればまだまだ不安定なこの世界はあっという間にパニックになってしまう。

『ジェノバ戦役の英雄』は、ある意味神格化されている部分が多く見られている。
 それゆえ、下手な騒ぎは起こしたくなかった。

 もっとも…。
 ティファがヤバイ状態になる…という話しはどこからか漏れていたわけだが…。


「これ、うちの店のイチオシケーキなんです!是非食べてみてください」
 リリーがおどけて笑いかけると、子供達はいそいそとケーキの箱を開け……。

「「わーー!!」」

 歓声を上げた。

 クラウドとティファも、箱の中から現れたそのケーキに目を丸くする。

 ふんだんにフルーツを使い、生クリームで綺麗に模様がつけられ、ケーキの表面にはマーブル模様になるようチョコソースがかけられている。
 そして…。

「すごい…これ……砂糖菓子…?」
「はい!」
「…たいしたもんだ…」

 感嘆の溜め息を吐く。

 ケーキの真ん中には、クラウドとティファ、デンゼルとマリンを模した砂糖菓子がちょこんと乗っていた。
 それはそれは可愛らしい出来栄えに、子供達は目をキラキラさせる。

「じゃあ折角だからお茶にしましょうか。リリーさんもご一緒に…ね?」
「え?良いんですか!」

 ティファがニッコリと微笑みかけると、大きな目をクリクリと丸くし、ビックリする。
「ああ、是非」
 クラウドの一言に、リリーはほんのりと頬を染め、破顔した。
「じゃ、お言葉に甘えて」
「わーい!」
「じゃあ、お客様はこっちこっち!」
 子供達が歓声と共にリリーの両手を引っ張る。
 ある程度片付いたダイニングに連れて行き、さささっと慣れた動作でリリーを座らせ、お茶の準備をするべくキッチンへと飛んで行った。

 …ティファとクラウドを残して…。

「流石……」
「ふふ…そうね」

 呆気にとられて見送る形となったクラウドに、ティファがクスクスと笑う。
 リリーもポカンとしていたが、振り返って二人に微笑みかけた。
「本当にデンゼル君もマリンちゃんもしっかりしてますよね」
 彼女の感想に二人は頷いた。



「う〜〜ん!!」
「美味しい〜〜!!」

 子供達の明るい声が新居に響く。
 ティファもクラウド、そしてリリーもそれぞれケーキをフォークで刺し、口に運んだ。
 甘いものが少々苦手なクラウドにも、それはとても美味しく感じられて…。

「美味い…」

 驚きの声を思わず漏らすほどだった。

「良かった〜!」
「クラウドがケーキとかの甘いもので美味しいって言うの、珍しいわね」
 クスクスッと笑いながらティファも一口食べ、「う〜ん!本当に美味しいわ!」と感動の溜め息を漏らした。
「えへへ〜、本当に良かった!自分で言うのもなんですけど、ここ最近の中では会心の出来なんです!」
 素直にそう言って喜ぶリリーに、
「え!?これって姉ちゃんが作ったのか!?」
「すっご〜い!今度作り方教えて!?」
 子供達が口の周りにクリームをつけて身を乗り出した。
 デンゼルの口の周りの方が汚れているのはお約束だ。
 そんな子供達を微笑みながら「うん、良いよ〜!これからはお隣さんだし、いつでもおいで」と、明るく言ってくれるリリーに親代わりの二人は心から感謝の念が込上げる。
 和やかで幸せな時間。
 リリーの差し入れのケーキをあらかた食べ終わり、新しいお茶を用意すべく立ち上がったティファを手伝おうとクラウドも腰を上げた。

 と…。

 ピリリリリ…ピリリリリ…。
 クラウドの胸ポケットから携帯の着信音が軽やかに鳴った。
 ティファに申し訳なさそうな顔を向けながら携帯を取り出す。
 ティファもニッコリと笑って軽く手を振った。
 マリンがクラウドの代わりにティファを手伝うべく席を立ち、デンゼルはリリーのお相手をして盛り上がっている。
 そうしないと、お客様であるリリーまでが「手伝います!」と働こうとするのだから…。

 そんな子供達のさりげない連係プレーを横目で見て口元に笑みを浮かべ、携帯のディスプレイを見る。

 クラウドの魔晄の瞳が軽く見開かれ、チラリ…と、ティファと子供達、リリーの様子を盗み見た。
 特に誰も自分に注目していない事を瞬時に確認し、さり気なく皆に背を向けながら玄関に向かいつつ携帯に出る。

「はい、デリバリーサービスです」

 そんなクラウドの声が無意識に皆の耳に届く。
「クラウドさん…お忙しいんですね」
「うん!クラウドの配達は大人気だからな!」
 デンゼルが自分の事のように嬉しそうに胸を反らした。
 キッチンではティファがそんなデンゼルに吹きだし、マリンが「相変わらずデンゼルはクラウド大好きだねぇ」と呆れたような、それでいて嬉しそうに笑った。

 やがて、嬉しそうな顔をしてクラウドが再び家の中に戻って来た。
 滅多に見せない綻んだ表情に、リリーが頬を染める。
 ティファと子供達は不思議そうにクラウドを見た。

「クラウド…なにかあったの?」
「え…あぁ…なんで?」

 質問しているのはティファなのに、クラウドはドキッとしたように身じろぎすると質問を質問で返す。

「え〜、だってなんかニヤニヤしながら携帯切って戻ってきたからさ〜!」
「そうそう!ねね、何かあったの?」

 目をキラキラさせ、興味津々に駆け寄る子供達に、クラウドは「あ〜…まぁ、大したことじゃ…」と目をそらせ、すっとぼけようとした。
 が、結局は根負けして子供達を抱き上げ、
「話の分かる依頼人でな。遠方への配達は無理だ…って言ったら『エッジの端から端』までの短い距離でも良い…って納得してくれてな」
 嬉しそうに笑った。
 子供達とリリー、そしてティファはその答えのような…答えでないような言葉に首を傾げる。
「遠方への配達が本当の依頼なのに、エッジの端から端まででも構わない…って…」
「おかしくないですか???」
 キョトン…とする二人の女性に、クラウドは苦笑し、
「あぁ、なんでも俺の代わりにそのエッジの端に他の大陸に渡ってくれる人がいるらしくてさ。交渉してくれたんだ。それで、交渉成立になった…ってわけ」
「あ!」
「なるほど!」
 納得したティファとリリーに、クラウドはそっと安堵の溜め息を漏らすと、子供達をギュッと抱きしめてから下ろした。
 二人共くすぐったそうに…それでいて嬉しくて仕方ないように笑ってクラウドの手を握り、元いた席へと引っ張った。

「それで、いつ配達に行くの?」
 コーヒーを口に運びながらティファが上目遣いでクラウドを見る。
 彼女のそんな仕草にドキッとしながらも、あくまでポーカーフェイスを保ちながら、
「ああ。あと三十分ほどしたら出るつもりだ」
 そう答えた。
「えぇ〜、今日なの〜?」
 つまらなさそうな声を上げるマリンの横では、デンゼルも不満そうに頬を膨らませている。
 クラウドは苦笑しながら立ち上がると、二人の頭をポンポンと叩きなら「すまないな」と謝った。
 子供達の機嫌はそれで回復。
「仕方ないなぁ〜」「荷解きは俺達がやっとくから、今から行ってサササッと帰って来いよ!」
 ニコニコと笑顔を向け、腕まくりをする。
 クラウドは肩を竦めて「あんまり早くに出ても待ちぼうけ食わされるだろう」と苦笑してみる。
「あ、そっか」
「時間が勿体無いよな」
「じゃあ、クラウドがいる間に少しでも片付けしちゃおうよ!」
「それが良いな!クラウド、あと三十分で自分の分だけでも荷解きしちゃえよ!!そしたら、帰ってからゆっくり出来るじゃん」
「………無茶言うな…」

 リリーとティファは顔を見合わせて吹き出した。


「それじゃ、行って来る」
「「「「いってらっしゃ〜い!」」」」

 ティファ、デンゼル、マリン、リリーに見送られ、慌ただしくクラウドはエッジに愛車を走らせた。
 あっという間に小さくなっていく後姿に、ティファは少し顔を曇らせた。

『……贅沢…だよね』

 これ以上の幸福を望むなど、贅沢以外の何ものでもない…。
 愛する人が自分を好奇の視線に晒されることを良しとせず、一緒に違う町に越してくれた。
 子供達も付いて来てくれた…何の不満も口にしないで…。

 それなのに。

 心無い噂が立っている『所』へ彼が行ってしまった。
 それは仕事だから仕方ない。
 依頼人を選ぶ権利などないのだから。
 だが…。

『ダメ!クラウドは…帰って来てくれるから!』

 弱くなりそうな心を叱咤し、ティファは子供達とリリーを振り返った。

「さ、続きをしちゃおっか!リリーさん、本当に今日はありがとう」

 笑顔を見せるティファに、子供達とリリーは同じ様に輝かんばかりの笑顔でもって応えたのだった。






「『器』って……なんだ、そりゃ……」
 バレットがゴクリと唾を飲み込み、呼吸を整えて問いかける。
 誰もがその答えを知りたがっていた。
 シュリは苦渋に満ちた表情で重々しく口を開いた。
「『器』とは『身体』の事です。『魂の器』、『魂の入れ物』、それが『肉体』です」

 全員の背筋に怖気が走る。
 なにか…とてつもなく大きなおぞましいものを聞かされる。
 イヤでもそう予想されるシュリの口調と…表情に、イヤな汗が流れる。

「その『器』をずっと…『闇』が探していたんです」
「『闇』…というのは…『ミコト様』のことか…?」

 ヴィンセントが彼らしくなく上ずった声で問いかける。
 シュリは頷いた。


「『ミコト様』の話が一番最初に出たとき、俺は『俺と同じ人間が現れた』としか思いませんでした」


 話しが急に逸れた感が否めない。
 全員が「は?」と口を開け、ポカンとしたり怪訝そうな顔をした。

「『ミコト様』は『星の声が聞ける人間』なんだと思ったんです。ですが、それが違う事にすぐ気付きました」
 言葉を切って俯く。

「『ミコト様』の話しがノーブル中尉から持ちかけられた前後くらいから、『星』が悲鳴を上げ始めたんです」
 ギュッと拳が握られ、微かに震えているのをグリートとヴィンセント、そしてデナリが気付いた。
 彼の苦悩がそんな前からずっと…孤独の内に続いていたのだと物語っている。
 いや、もっと……もっと前からなのだろう。


「それまでにも『星』はずっと…助けを求めていた。『魂の循環』がうまくいかなくなってもう既に二千年をかるく越えているんですから」


 え……?


 全員の脳が停止する。

 二千年。
 言葉にすれば僅か五文字。
 しかし、その年数は尋常ではない。
 しかも…。

「二千年…とは、ジェノバが地球にやって来たのと…同じ頃じゃないのか?」
 WROの中将が声まで青くなってこぼしたその言葉に、イヤでも全員が固まらざるを得なかった。
 ジェノバがこの星に襲来した詳しい年代は明らかになっていない。
 おおよそ二千年。
 それが分かっているだけだ。
 しかし、そのジェノバの襲来のお蔭で、この星は何度も危機を迎えている。
 そして、その度に…正確には二度、英雄達が戦ってかろうじて勝利した。
 その大きな闘いの他にも、小さな影響という波紋は闘いの前後で見られている。
 一番記憶に新しいのは星痕症候群。
 体内に侵入した『異物』を排除すべく働いた力の『過剰な反応』の結果という悲しい病。
 恐らく、他にも記録に残されていない『ジェノバの影響』が数多くあるのだろう。
 その『ジェノバの襲来』前後から既に『星の魂の循環』が上手くいかなくなっていた…というのは衝撃以外の何ものでもない。

「すいません、色々お知りになりたい事やあるかと思いますが、話を戻します。」

 そう前置きをすると、固まっているメンバーに説明を続ける。
 何人かはまだショックのあまり呆けた顔をしていたが、シュリの言葉にとりあえず押し寄せる疑問の波を押し殺して耳を傾けた。

「バルト中尉が『ミコト様』探索に任命されていますが、恐らく見つけることは出来ないでしょう。『闇』は、『獲物になるモノ』以外の前に身を現さないようにしています。だからこそ、今回のシークレットミッションで星のツボを刺激して周り、星の活性化を図りながら闇の動きを捉えようとしていたのですから」

 シュリの言葉に、グリートはホッと安堵の息を吐き出した。
 ユフィとナナキも強張っていた顔を少し緩めて目を合わせる。

「だが、これまでに『ミコト様』が自らその姿を現した際、必ず『その姿を現した相手』を助けるような発言をしているが……」
 デナリが眉間にシワを寄せる。
 ヴィンセントが同意するように軽く頷いた。
「『闇』はそうすることで、『ミコト様』という『女性』が『特別な力を持っている』と『まことしやかに囁かれる』ように仕向けたんです」
「で、でもさぁ……、そりゃ確かに『危険人物』だとは思うけど、だからと言ってその…『ミコト様?』…がさぁ、『己の器』を捜してる…って。だって…『ミコト様』って『身体がある』じゃん…?」

 しどろもどろ、ユフィが言うのをシュリはゆっくりと首を振って否定した。

「じゃ、じゃあさ。その『ミコト様』って女の人を『操って』闇が『身体』を捜してる……とか…?」

 気を取り直したようにナナキがユフィの言葉を受け継ぐ。
 シュリは再び首を振って否定した。

「ならば……一年前の『カダージュ』達のような『セフィロスの思念体』か…?」

 ヴィンセントが一番説得力のある予想を口にする。
 何名かのメンバーが「あ〜、なるほど」と頷いたが…。
 それもシュリは否定した。

「『ミコト様』は……身体がありません。ライフストリームから現れたままの状態……魂の状態です」
「…思念体とどこがどう違うんです?」
「ノーブル中尉や皆さんの疑問は最もだと思います。ですが、本当に時間がないので、今回の『ミッション』が無事終了した時にきちんと全部、説明させて頂きます」

 グリートを申し訳なさそうに見やってシュリは軽く頭を下げた。
 頭を下げられた青年は慌てて首と手を振り振り、恐縮して見せたが、顔を上げたシュリの目はもうグリートを見ていなかった。
 真っ直ぐに全員を見渡す。

「『闇』は『自由に陽の世界』を闊歩出来る『身体』を捜していた。『ミコト様』として『陽の世界』に『実体となんら遜色ない姿で現れることが出来るほどの力』を『受け入れることが出来るだけの身体』。そんな『最高の身体』なんか、そうそうあるものじゃありません」

 緊張が高まる。
 全員が全身を耳にして、シュリの言葉を聞く。


「そうそうあるものじゃないのに……とうとう見つけてしまったんです……エッジでね」


 イヤな汗が全身から噴き出す。
 今から聞かされることは…恐らく絶対に良くないことだ。
 いや、勿論良い話であるはずがないのだが……そうではなくて…身近で…かけがえのないものが対象となっている……と。
 そう確信させる何かがシュリから醸し出されている。


 皆の気持ちを察したシュリは…ゆっくりと頷いた。

「グリート・ノーブル中尉。ラナ・ノーブル中尉。ヴィンセントさん。バレットさん。以上の四名はすぐにエッジに向かってクラウドさんとバルト中尉に説明し、合流して下さい。残りの皆さんは、申し訳ありませんが俺と一緒にこのまま旧・ミディールでの任務を遂行、その直後、エッジに向かいます。他の場所へのミッションはひとまず中止です」

「…電話で話しをした方が早くないか?」
 寡黙な英雄の冷静な判断に対し、シュリは片手を上げて見せた。
 その手には携帯電話。

「通じません」
「「「「「!?」」」」」
「『闇』が本格的に妨害に出ました。恐らく、電話で話しをしたとしても、それが『曲解して伝わるように妨害される』恐れがあります」
「「「「「!!」」」」」
「ですから、このまま直接戻って危険を促して下さい。一番確実ですから」

「な、なぁ……その…よぉ」

 バレットが巨漢を震わせながらシュリを見下ろす。
 その目には恐怖が浮かんでいた。
 どの面々も似たり寄ったり…。

 クラウドの名前が出た時点で……最悪のケースが脳裏をよぎった。
 シュリはグッと唇を真一文字に引き結び、眉間にシワを深く刻んだ。



「『器』として狙われているのは…ティファさんです」



 シドの口からタバコがポトリと床に落ち、転がった。
 ユフィが口を両手で覆い、目を見開く。


 恐ろしいほどの緊張感と焦燥感。
 シエラ号が旧・ミディール跡地に着くまで、あと三十分を切った時だった。




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