「……行っちゃったね…」
「うん…」
「……っく……ひっく……」

「大丈夫だよ…」
「うん、絶対大丈夫だよ…」
「…ん……えっく……」

「「だから……泣かないで、リリー(お)姉ちゃん…」」


 豆粒ほどの飛空挺が青空に溶け込んでとうとう見えなくなった頃。
 泣きじゃくるリリーを、小さい子供達が途方に暮れて慰めている。
 普通なら逆だろうその構図に、神羅の若き社長はどことなくげんなりした顔をして見つめていた。







Fairy tail of The World 74







 少なくとも、リリー・フローが知っている『プライアデス・バルト』という青年は、これまで出会った人物の中で一番と言って良いほど温厚な人物だった。
 人の悪口を口にしたり、愚痴をこぼしたり、嫌味を言ったり…。
 そういうものとは無縁の青年だった。
 いつも穏やかな笑みを湛え、魔晄中毒と闘っている女性を心から慈しんでいた…春の陽だまりのような美男子。

 その彼が…。

 リリーはヒーリンに到着した頃から今までを思い出すと、子供達の前で恥ずかしいと思いながら、どうしても涙を止めることが出来なかった…。








「えっと…ここ、ですか…?」
「そうそ!大丈夫だから、さ、入るんだぞっと」
「外は冷えますからね、早く入りましょう」

 赤い髪と金髪のタークスに促されて建物に入る。
 一見、なんの変哲も無い建物だが、中に入るとその豪華振りには目を見開いた。
 今ではお目にかかることも少なくなったマテリアが飾られていたり、ちょっとしたインテリアの一つ一つがえらく高いものだったり…。
 ラナの屋敷に招かれた時に目にしたものと似たようなそれらの調度品に、リリーの中で警戒心が一層強くなった。
 先ほどの天使のような親子に促されてここに来たが、もしかしたら英雄の子供達を誘拐しようとしてる一味なのかも!
 だとしたら、自分が気を引いてる間に子供達を逃がさなくては…。
 でも、どの町からも離れているこんな辺鄙な所からどうやって小さい子供二人で逃げたら良いのだろう…?
 などと考えているリリーの心など知らず、子供達は緊張しながらも警戒せずに建物に入った。
 そうして、その中に座っていた人物に気がつくと、パッと顔を輝かせて駆け寄った。

 その金髪の紳士はニヒルな笑みを湛えて子供達を迎え、部下達を一瞥し、最後にリリーに目を止めて軽く眉を寄せた。

「子供達の保護者代わりです」

 察したツォンが一言だけで説明すると、
「そうか…やれやれ。この星には私の知っている以上にお節介な人種がいるものなのだな」
 そう軽く皮肉を込めて笑った。


 リリーがヒーリンのルーファウスと対面して数十分後。
 建物の外から飛空挺らしきエンジン音が響いてきた。
 デンゼルとマリンが、リリーの傍らで舟をこいでいたのにハッと顔を上げて窓に駆け寄る。
 そうして、夜空に浮かぶ飛空挺のライト。
 残念ながら、小型艇であったためにシエラ号ではなかったが、それでもここに来たという事はWROかジェノバ戦役の英雄か…はたまた神羅の組織のものかであろうから、敵ではないだろう。

 飛空挺から降りる人影が見えたが顔までは分からない。
 だが、ルードがムッツリとドアを開けて中に招き入れた人物達を見て、リリーは勿論、子供達も…そうして、何故かルーファウス達までもが驚いた。


「……WRO局長が自らやって来るとは…。それに……」

「「 リト(お)兄ちゃん!? 」」「 !? 」

 金髪をした隊服に身を包む男に抱えられてグッタリしている青年に、子供達とリリーが息を飲んだ。
 レノとイリーナが顔を見合わせ、ツォンがそっと大きめのソファーへ寝かせてやるよう促す。
 スライ大将が部下を寝かせている間に現れた人物に、子供達がまたもや目を丸くした。

「「 シェルク!? 」」

 シェルクは虚ろな顔をしてゆっくりと子供達を見やると、支えてくれていた姉からそっと身体を離し、駆け寄った子供達をギュッと抱きしめた。


 そうして。
 リリーと子供達は、ルーファウス達と共にWRO本部壊滅の全貌を聞かされたのだ。


 信じ難い幾重もの出来事に、流石のルーファウスとツォンも驚きを隠せない。
 子供達とリリーは、親しい人の死に泣きじゃくった。
 アイリが魔晄中毒と闘いながらも、星を守るために魂までかけて闘っていた事実。
 WRO本部に最後まで残り、隊員達を逃がし、星に還ったこと…。
 その全てが本当は信じ難いことなのに、何故か信じられる。
 語ってくれているのが堅物の軍人だからなのか…。
 それとも、稀代の英雄だからなのか…。
 ……いや、それらもあるだろうが、やはりこれまで接してきた少ない時間の中で培われてきた、彼女との時間のせいだろう…。
 魔晄中毒と闘いながら、そっと青年に寄り添い、時折ハッとするほど回復の兆しを見せてくれた…あの強い少女の姿のせい…。

 その事を思い出し、リリーの啜り泣きが大きくなる。


 その泣き声に……、グリートが目を覚ました。

 その後は本当に…大変だった。
 リリーは初めて『取り乱す』人間を目の当たりにした。

 もう手遅れだというのに、それでも部屋を飛び出して単身本部に戻ると言い張り、上司と乱闘にまでもつれこんだグリートの半狂乱の姿に、恐怖さえ覚えた。
 それと同時に、妙な親近感も感じたのだった。

 それまでのグリート・ノーブルという人物は、リリーの中では『親友の陽気なお兄さん』というイメージしかなかった。
 付け加えるなら、『金持ちなのに偉ぶらない人』『カッコ良くて人当たりの良い、誰にでも優しくて面白い人』くらい。
 だから、こんなにも何かに必死になって我を忘れているグリートに、新鮮なものを感じた。


「ライに…、あいつに合わせる顔がないんですよ!」「お願いですから行かせて下さい!せめて……せめて…アイリの身体だけでも!!」


 スライ大将を始め、タークス達まで相手にして大乱闘になろうかと言うその時。


「…リト!!もう……」


 声を震わせて背中に抱きついたシェルクに、グリートはピタリ…と硬直した。
 背から必死に腕を回し、青年のお腹の上で強く握り締められている小さな手が、真っ白になるくらい力が込められていて……、震えているのを知ったとき。

 グリートの全身から力が抜けた。

 そのまま床にガクンッ、と座り込んで前に崩れ、両手で顔を覆って声を殺し、身体を震わせて泣くグリートと…。
 その背にしがみ付いたまま同じく身体を震わせ、声を殺して泣くシェルクの姿に、リリーの足元からストン…と、地面がなくなった気がした。

 魔晄に染まった虚ろな瞳を持つ美しい少女を思い出す。
 彼女を心から愛し、紫紺の瞳を甘やかに細めて見つめる青年を思い出す。
 彼が微笑みかけると、いつもは何の反応もしない彼女が、やっと…やっと!
 最近は応えるかのようになんとか目を合わせ、ジッと見つめられるようにまでなったと言うのに…!!


 あぁ…。
 どこまで残酷なんだろう…?
 精一杯生きた彼女が、本当はこの星を闇から守るためにずっと苦しみ、闘い続けていただなんて!
 そんなこと、一体誰が気づけたと言うのか!?
 何が悪かった?
 もっと…、自分も含め、星の事を考えて生きていけば良かったのか!?
 しかし、一体どうやったら良かったと言うのか…?
 魔晄に関するエネルギーはもうほとんどの人間が手放した。
 星に負担がかかることをイヤと言うほど思い知ったのだから。

 そして、オメガの事変。

 あの経験も凄まじいものだった。
 まさに星の危機に現在を生きる人間の大半が三回も遭遇している事になる。
 当然、三回目は今回の出来事。


「アイリ……本当に……ごめん………ごめん……ご、めん……!!」



 グリートの涙に震える声が、何も知らないタークス達の涙腺までも刺激する。
 イリーナが目をウルウルさせながら必死に泣くまいと顔を硬直させ、レノがそっぽを向きながら落ち着きなく小刻みに身体を揺らしている。
 ルードは……サングラスをそっと外して袖でサッと目元を拭うと、何食わぬ顔をしてまたかけた。


 そうして、どれほどの時間が経ったか。
 空が白み始めた頃、リリーと子供達が待ちに待っていたシエラ号が到着した。


 そこでまたひと騒動あった。
 意識の無いクラウドに子供達が蒼白になって駆け寄り、同じく失神したままのラナにグリートが死人のような顔で呆然と突っ立った。
 リリーはそんな親友の兄の手をギュッと握り締めると、ぐいぐい引っ張りながら、
「リトさんはラナのお兄さんじゃないですか!!しっかりして下さい!!!!」
 泣き出しそうになりながら怒鳴りつけた。
 リリーのその叱咤。
 青年の死んだような瞳に僅かながら光が戻る。

 クラウドはグリートが横にされていたソファーに寝かされ、ラナはグリートが二人掛けのソファーに腰掛けてその膝の上に抱き、ギュッと胸に包み込んだ。
 その隣にリリーが極々自然に腰を掛ける。
 そっと顔を寄せると、ラナが微かに息をしているのが分かって心の底から安堵し、涙がまたこぼれた。

 ヨロヨロしながら巨体を揺らしながら入って来たバレットにマリンが泣きながら抱きつき、養父は顔をクシャッと歪ませてボロボロ泣いた。
 その後ろから、足元のおぼつかない女性を支えるようにしてヴィンセントが現れる。
 女性を見て、シエラ号でやって来た者以外の英雄と神羅に属する者達全員がギョッとした。


 ― エアリス!? ―


 一体誰が漏らした声だったのか分からない。
 まるで幽霊を見たかのように目を見開いて蒼白になる面々に、リリーは胸の中がざわつくのを抑えられなかった。


 そうして。
 最後に入って来た人物に、またまた子供達とグリート、リリーは息を飲んで硬直することとなった。


 良く知っているはずの紫紺の瞳を冷たく光らせながら、土気色をした青年を抱きかかえている……プライアデス・バルト。


 グリートが咄嗟にラナを膝に乗せたまま立ち上がろうとして落としそうになり、慌てて座りなおす。
 リリーがギョッとしてラナの身体を支える。
 クラウドにベッタリ張り付いていたデンゼルが立ち上がり、駆け寄ろうとして……。

 その足を止めた。

 まるで、別人のような青年に目を見開いて硬直する。
 タークスの面々にとって、こうして間近で会うのは初めてだったが、それでも青年から醸し出される異様なオーラに全身が総毛立った。
 条件反射で銃に手を伸ばす。

 だが、そんなものにもこれっぽっちも動じず、青年はスーッとクラウドの足元側の床に腰を下ろし、片膝を立てて壁に背を預けた。
 完全にリラックスした体勢。
 青年の異様な雰囲気とその態度に、従兄弟は凍りついた。
 口を開けては閉じ、開けては閉じる。

 声を掛けたいのに、なにを言えば良いのか分からない…、そんな感じだった。

 言わなくてはならないことがある。
 アイリの事を…。
 彼女の最期の事を。
 だが…。

 グリートの悩みと戸惑い、混乱が、隣に座っているからだろうか…?リリーには痛いくらいに伝わってきた。


 そうこうしている間に、痺れを切らしたルーファウスがリーブやシドに説明を求め、それに満足に答えられるだけのものを持っていないリーブ達がプライアデスをチラリと見やり………声をかけた。
 しかし、それに対して青年はただ一言。


「何度も説明をするのは面倒なので、クラウドさんが起きたら説明します」


 不遜すぎる態度。
 だが、誰も腹を立てなかった。
 多少、苛立ちは感じたものの、言いようの無い『不気味さ』がそれに勝った。


 そうして…。
 クラウドが目を覚まし、大富豪ルーン家の騒動があり……。


 現在(いま)に至る。






「まぁ、なんにしろ、あの者達に頑張ってもらわないと仕方ない…」

 ポツリ…と、こぼした神羅の社長にリリーは泣き顔のまま顔を上げた。
 どこか遠い目をして空を見上げているその横顔が、少しだけ『寂しそう』だったのに、リリーは心の片隅で驚いた。

「マテリアと『約束の地』は…もう…」

 諦めるしかないか……。



 若き社長の独り言が、妙に清々しく聞えたのは、恐らく気のせいではないだろう…。

「クラウド達が成功したかどうか、一番に知る為にはここにいた方が良いが…どうする?」

 振り返った青年のニヒルな笑いがとても温かくて。
 子供達とリリーは、一も二もなく頷いた。








「………」
「………」


 リリーと子供達がルーファウスの提案に明るい声を上げてから小一時間ほど経った頃。
 シエラ号では重苦しい空気がずっしりとのしかかっていた。

 驚くべき各隊員達からの嬉しい報告は、仲間達の間で大きな希望となった。
 しかし、その喜びの感情も目的地に到着するにつれ、緊張感に摩り替わってそれが高まっていく。
 だが、重苦しい空気の原因はそれだけではない。

 どうにも……居心地が悪い。

 ノーブル兄妹は始終、従兄弟に話しかけたそうにしていたが、肝心のプライアデスはデッキに座り、相変わらずシュリを抱きしめたまま他の者を近づけまいとする無色透明の壁を作っていた。

 端から見れば、憂いを含んだ美青年が、眠っている美青年を膝の上に抱きかかえて座っているのだから、妖しい構図この上ないはずなのに、何故か神聖なものを感じてしまう。
 決して割り込めないものが二人の間にある。
 そう感じるにやぶさかではない。
 まぁ、事実そういう関係なのだが…。
 そして、その空気が…、薄い壁が…、現世の従兄妹達にはとても…悲しくて…辛くて…惨めにさせていた。
 英雄達やクルー、タークス達ですらそれに気付いているのだから、プライアデスが気付いていないはずが無い。
 しかし、青年は誰も寄せ付けまいとするかのように高速で飛行しているシエラ号のデッキの床に悠然と座り込み、青い空へ視線を投げている。

 漆黒のサラサラした髪を好きなように風になぶらせ、人形のように動かない。

「………」
「………」

 兄妹の手には朝食の乗ったトレーがあった。
 合計三人分。
 自分達と従兄弟の分だ。
 それを、デッキに繋がるドアの前に立って、窓から従兄弟を見るだけで……精一杯。
 声をかけることが出来ない。
 ましてや、朝食を一緒に……とは、どうしても誘えない。

 そんな兄妹を他の面々がチラチラ心配そうに盗み見ては、自分のトレーからチビチビと食事を口に運んでいる。
 正直、美味しくない。
 シエラ号の食事はWROの隊員達が任務中に口にするような簡単に栄養が摂取出来るような簡易食ではあるが、決してまずくは無い。
 それなのに……。

「不味い…」

 ボソッと呟いたナナキに、ユフィの蹴りが炸裂した。
 鳴き声を上げると兄妹達に余計な心配をさせる。
 ナナキは必死になって呻き声を抑えながら、涙目になりつつユフィを睨み上げた。
 が、逆に般若の形相のウータイの忍を前に尾を垂れる。


 カタン。


 音をした方に一同が目を向けると、クラウドが自分の分のトレーを持って立ち上がっていた。
 そのまま自分に注目する仲間達に背を向けると、突っ立ったまま項垂れている兄妹に近付く。

「行くか?」
「「 え…? 」」

 戸惑ったような顔をする兄妹に軽く片眉を上げて見せると、そのままそっとドアを開けた。
 ドアは二重式になっているため、一つのドアを開けて中に入り込んでしっかり締めてから、もう一つ、デッキに繋がるドアを開ける。
 途端、凄まじい風に歓迎されて三人の身体が少し押される。
 よく食事がトレーから落っこちなかったものだ。

 三人は風に負けないように慎重に歩きながら、青年達に歩み寄った。


「ライ、何か口にしないと身体に障るぞ?」

 風に負けないようにいささか大きめな声で話しかける。
 クラウドの後ろから兄妹が固唾を呑んで見守っていた。

 プライアデスは真っ直ぐ前を向いたままチラリとも見ない。
 クラウドは困ったように眉を寄せた。
 そうして、そのままプライアデスの隣に腰を下ろす。

「ライ、言ったよな?『アルファの元に辿り着いたら敵だ』って」
「はい…」

 返事が返ってきた事にホッとする。

「じゃあ、少なくとも今からそんなにつんけんする必要は無いんだよな?」

 クラウドの言葉に、無言のまま顔を向けた青年は、無表情の中で僅かに驚いているようだった。
 クラウドはその表情を前にして視線をそらし、真っ直ぐ前を向く。
 視界に広がるのは、どこまでも澄み渡る青い空と、雲の海。

「俺は…ティファを取り戻す。生きたままで…」
「……僕は……手を抜きません。全身全霊かけて、ティファさんに入ったアルファを殺します」
「そうだろうな…」
「…ですから…皆さんの大切なものを奪う、そう宣言している時点で、アナタ方にとっては僕はもう既に敵でしょう…?」
 だから…。


 そう続きを言おうとしたプライアデスに、
「そんなこと、誰が決めたんだ?」
 クラウドがぶっきらぼうに阻んだ。

「少なくとも、俺はライを敵だとは思ってない。いくらティファごとアルファを殺そうとしているとしても。それでも…俺はライを敵だとは思えない…」

 クラウドの言葉に、青年の表情が僅かに揺らいだ。
 従兄妹達が心配そうにそのやり取りを聞いている。

「ライ…お前が俺達の事を敵だと思いたいなら仕方ないけど、そうじゃなくて、気を使ってのことなら、そんな気遣いは無用だ」
「………」
「お前がどう思ってるか知らないけど、俺にとってライとシュリは…仲間だからな」

 そうキッパリと言ってから、ちょっと照れ臭そうにそっぽを向いた英雄に、従兄妹達の目に涙が浮かぶ。
 暫しの沈黙。

「………本当に…。アナタのような…、アナタ方のような人がセトラにもっといれば…。そうしたら、アルファの目の前で殺されずに済んだかもしれないですね…。僕も…シュリも…」

 その内容はとても悲しいものなのに、青年はようやく皆が知っている青年にほんの少しだけ戻った。
 微かに笑みを浮かべたプライアデスに、従兄妹達とクラウドの胸にグッと込上げるものが募る。
 そうして。

「…たりめぇだろぉが!!!」
「本当にもう、私達の事を見くびりすぎ!!」
「オイラ…傷ついた…」
「………腹が減ったから、とっととこっちに来い」

 食事を途中で放り出したのだろう。
 いつの間にかドアの向こうに勢ぞろいしていた仲間達に、クラウドが驚いてノーブル兄妹を見る。
 グリートとラナも気付いてなかったみたいで、ビックリしている。

「「「「 ほら、早く来い! 」」」」

 投げかけられた言葉の端々に、温かさを感じさせる。


「…………」


 なにも言わず俯いた青年から、ほんの少しだけ……微かに透明の壁が薄らいだ気がした…。




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