風に吹かれて、風に乗せて…(中編)*勝手にウータイでは『御輿』に触れられるのは『男性』のみという設定を作っちゃいました(汗)。完全に捏造ですので、サラッと流してやって下さいm(__)m 「お待たせ!!」 ダチャオ像の所で待っていたクラウド達をユフィが迎えに来たのは、ヴィンセントが登場してから小一時間ほどしてからだった。 「遅せえ……って……」 文句を言おうとしたシドが呆気に取られて、くわえていたタバコをポトリと落とした。 「「うわ〜〜!!」」 子供達が歓声を上げる。 現れたユフィの出で立ちに、クラウド達は目を丸くした。 ユフィは頭部にねじりはちまきを小粋に結び、澄んだ青空のような半被を羽織っている。 「フフン、これが祭りに参加する者の王道ってやつよ!」 クルリと背中を向けると、『祭』と白文字が書いており、何やら波しぶきの様な柄が入っている。 てっきりウータイ名物の『浴衣』とやらで来ると思っていた大人達は、そのあまりの予想とのギャップに戸惑った…。 自分達の記憶が正しければ……。 「…ユフィ…、それって男性向けじゃないの?」 おずおずとティファが口を開くと、ユフィは「チッチッチ」と人差し指を立てて左右に振った。 「言ったじゃん?『祭りに参加する者』って。祭りと言えば『御輿』でしょうが!」 「「「「え……」」」」 ユフィの言葉に、クラウド、ティファ、シド、シエラがギョッとした。 ヴィンセントは既に達観したかのような……諦めたような遠い目をしている。 子供達は純粋に「へぇ!お御輿!?」「わ〜、私、見るの初めて!」と大喜びだ。 「ね、ねぇ…ユフィ…?」 「んあ?なに?」 「あの…ユフィもお御輿担ぐの……?」 子供達と一緒になってキャーキャー笑っていたユフィに、ティファが恐る恐る質問する…。 いや、ティファだって分かっていたのだ……本当は聞かなくても…。 そう、この目の前のお元気娘の答えなど……。 「あったり前じゃん!私が担がないでどうするのさ!!」 予想を裏切らない答えに、ティファは顔を引き攣らせたまま「そ、そう…」とだけ答え、後は「アハハ…そうよね…アハハ」と意味なく笑って見せている。 「どうしたの、ティファ?」 「ユフィお姉ちゃんがお御輿担ぐのって…変?」 子供達がキョトンとして顔を見合わせる。 「あ…うん……」 返答に困っているティファを見かねたのだろう。 それまで黙っていたクラウドが一人やる気満々のお元気娘に声をかけた。 「ユフィ…お前以外にも誰か女の人が御輿を担ぐのか?」 「へ?そんなわけないじゃん、私は特別〜♪」 「……というわけだ。分かったか、二人共」 聡い子供達は、この会話だけでティファの戸惑いを理解した。 それと同時に、シド夫妻が微苦笑を浮かべているのも…寡黙な青年がユフィを素通りして遠い目をして空を見上げている理由も……理解した…。 「ま、ユフィ姉ちゃんはさ…特別だもんな」 のほほんとデンゼルが頭の後ろで手を組む。 「そうだよね。逆に普通にお祭り見学してるユフィお姉ちゃんって……おかしいよね」 マリンもそんなデンゼルよろしく、後ろでに手を組んでデンゼルに笑いかけた。 「あ〜、そうそう!そんなの気色悪いよな!」 「うんうん、静かなユフィお姉ちゃんって…想像出来ないよね!」 すっかり盛り上がって笑い合う子供達に、当然本人は黙っていない。 「くぉら、そこのお子様二人組み!人の悪口を本人の目の前で堂々と口にするな!!」 二人の頭を少し乱暴に押さえ込むと、そのままグリグリと髪をかき回した。 「うわっ!イタタタ…やめろ〜〜」 「きゃ〜、髪の毛、髪の毛引っ張ってる〜〜、イタイイタイ!!」 何と言う順応力だろう……。 やはり、子供の持っている力は素晴らしい……。 目の前でこの状況にすっかり馴染んでしまっている子供達に、大人達はしみじみとそう感じるのだった…。 「それにしても、良いの?女の人は『不浄』だからってお御輿に触ったらダメ…っていう土地があるって聞いた事あるけど…」 村に戻る山道の途中で、ティファが踊るような足取りで前を歩くユフィに尋ねた。 「んあ?ああ…まぁ、本当はうちでもそうなんだけどさ」 まぁ、良いじゃん?私、ウータイ地方の頭(かしら)の娘だし〜♪ 軽くそう言ってのけたユフィに、その場の全員が固まった。 いや、正確にはヴィンセント以外…ではあるが……。 流石の子供達も「「え!?」」と驚きの声を上げ、目を丸くしている。 『やっぱりな…』 『ユフィ…』 『親父の力をフル活用してやがる…』 『ユフィさん……良いんですか、そんなんで……』 『…………』 五人の大人は、それぞれ言いたい事があったりしたのだが、それも目の前のお元気・はちゃめちゃ娘を見てきた経験から、(シエラの場合はシドから話を聞いた数々の思い出話により)全員口をつぐんだ…。 所詮、何を言ってもダメなものはダメ、通用しないものは通用しないなんだから…。 しかし…。 「でもさ、それって良いのか?」 大変純粋で素直な子供達は、思った事を口にした。 「お父さんの権力使って強制参加とかして、後でお父さんとユフィお姉ちゃん、困った事にならない?」 至極真っ当な言葉を口にした子供達に、大人達は顔を引き攣らせて顔を見合わせた。 自分達が本来なら言うべき言葉を言っている……。 しかし…。 言うべき言葉を言った所で……。 「あ、だいじょぶだいじょぶ!今時『男尊女卑』だなんて時代錯誤だっちゅうの!それに、私が神輿担ぐって言ってもだ〜れも反対しなかったもん。やっぱあれだよねぇ。持つべきは『権力を持った親』だよねぇ」 いや……それは違うそ、ユフィ…。 お前だから、皆もう止めなかったんだ…。 『言っても無駄』だから……。 それにそもそも『持つべきは権力持った親』だなんて……思ってても口にするなよ…。 いや、そこがお前らしいんだけどさ……。 心の中で実に冷静に分析したものの、誰もそれを口に出来ない大人達は、 「え〜と、何かそれって間違ってない?」 「…きっと別の理由だと思うな…」 と、承服しかねている子供達と、あっけらかんと笑っているお元気娘を生暖かい眼差しで見守っていた。 そんな、何ともくだらない…いやいや、楽しい話をしながら一行はウータイの広場、五強の塔の前に到着した。 そこには立派な櫓(やぐら)が組み立てられている。 勿論、その櫓の上には大きな和太鼓。 そして、その櫓の周りには一定間隔を空けて、露店が所狭しと軒を連ねていた。 それは見事な、祭りの風景…。 子供達は当然目をキラキラさせて歓声を上げ、大人達も知らず知らずの内に心躍らせていた。 ただ…。 人混みが大の苦手……というよりも、騒がしい事から無縁の寡黙の男は、いよいよ視点が定まらなくなってきているような気がする…。 そんなヴィンセントに、シエラが気遣わしそうな顔をしながら、そっとマントを返して頭を下げた。 ヴィンセントは、「あ、ああ…いや、大した事は無い…」と、シエラに対してもどこか魂の抜けた表情で応えている。 シドは益々心配そうにする妻に「そっとしておいてやれ…」と耳打ちし、心から同情の念を寡黙な青年に寄せるのだった…。 ヴィンセントは元々人付き合いが『超』が付くほど苦手…というよりも関心の無い事なのだ。 それなのに…こんな『お祭り』に強制参加させられるとは……。 つくづく不幸な奴だと思わざるを得ない…。 「ホラホラ、皆ボヤ〜ッとしてたら良い場所、なくなっちゃうよ!」 その不幸の元凶であるお元気娘は、寡黙な仲間の心労などどこ吹く風だ。 人混みを掻き分ける様にして、仲間を振り返る。 振り返ったユフィの満面の笑みと、子供達の無邪気にはしゃぐ様子。 それらを前にして、ヴィンセントには悪いと思いつつ、クラウドとティファ、そしてシド夫妻は漸く人心地が着いた気分になり笑みを浮かべた。 本当に……『この笑顔』は良いんだがなぁ……。 「ここ!ここだと御輿が通った時に良く見えるからね!」 ユフィが場所を提示したのは、丁度櫓と五強の塔の間。 ユフィが言うには、御輿を担いだウータイの若い衆達は、御輿を猛スピードでウータイ中を走り回り、一蹴してから再び櫓まで戻って、最後はダチャオ像の所まで櫓を運ぶのだそうだ。 ただ、一昔前までは神々を祭っているダチャオ像が最終目的地なので、観客達もそこまで見物出来るようになっていたのだが、最近は一般人の立ち入りは禁止されているらしい。 「え!?」 「おいおい、俺達そこでお前ぇの事待ってたじゃねえか…」 「……不法侵入したのか…俺達…」 「ユフィ……」 絶句する仲間達に、ユフィはカラカラと笑って見せた。 「大丈夫!祭りの間だけ立ち入り禁止なんだ。ほら、あそこって崖があるっしょ?そこの転落防止柵、もう古くて老朽化が進んでてさ。祭りで盛り上がった勢いで、崖下にダイビング〜〜…なぁんて事になったら一大事だから、御輿で盛り上がる最高潮の場所がダチャオ像の前だとヤバいんだよ」 それだけだから、心配ナッシング〜!! そう言うと、呆気に取られている仲間達に大きく手を振って御輿の所へ駆けて行ってしまった。 「………」(クラウド) 「………」(シエラ) 「…何て言うかよ〜…」(シド) 「…相変わらずね…」(ティファ) 「………フッ……」(ヴィンセント、遠い目) もう、何も言うまい……。 大人達はすっかり諦めの境地に突入していたが、子供達は元気一杯に「「頑張ってーー!!」」と声援を送っている。 こんなにも沢山の非常識に囲まれているのに、子供達の何と純真で愛らしい事か…。 荒んだ心に温かな潤いが染み渡るようだ…。 ああ…本当に子供達がいてくれて良かった…。 つくづくそう思う、心労の尽きない大人達だった…。 ドン、ドドドン!! 力強く、和太鼓の音が響き、待ちに待った祭りが始まった。 見物人達の歓声がウータイを沸かせ、あっという間に祭りに参加する若者達の血に熱を注いだ。 「「「オオオーーーー!!!!」」」 「「「「うりゃーーーーー!!!!」」」」 「「「「「どわーーーーーー!!!!!」」」」」」 何だか良く分からない掛け声を上げ、若者達は勇ましく御輿を担ぎ上げた。 色とりどりの装飾をなされ、豪華絢爛のその御輿。 見た目よりもうんと重いとされるその祭りのシンボルに……。 「「「「ゲッ!!」」」」 「「あ…!」」 「…………」 大きく揺れる御輿の上に、実に身軽に乗りこなす『うら若い』女性の姿……。 『『『『『『『……ユフィ……』』』』』』』 お元気娘は上機嫌で、御輿の上で大きな団扇(うちわ)を担ぎ、時には煽って、 「ほ〜ら、気合入れな!!わっしょいわっしょい!!」 と、御輿を担いでいる若者達に活をいれ、見物人に笑顔を振りまいている。 大きく揺れる御輿の上で、時にはジャンプをしたり、片手倒立をして見せたり……。 見物している者達を魅了した。 御輿はユフィを乗せ、素晴らしいスピードでウータイの中を駆けて行く。 「すっごいわね、あの女の子!」 「本当に!!」 「あんなに揺れるお御輿の上で…!!」 「そこら辺の男よりもよっぽど素敵じゃない!?」 「「「「うんうん!!」」」」 あまりの事に呆気に取られているクラウド一行…。その傍にいる女性達が、興奮して話す言葉の一つ一つがイヤでも耳に入る…。 「ま、あいつはあんな感じだな…」 「そうね」 あまりの事に呆然としていたが、流石に御輿が遠く離れる頃にはクラウド達の顔にも苦笑が浮かんでいた。 「…にしてもよ…。御輿って本来神聖なもんじゃねぇのか…?」 罰が当たってもしらねぇぞ…と言わんばかりに、シドがぼやく。 「でも、どこの土地かは忘れましたが、御輿に人を乗せて猛スピードで走るお祭りをしている所がありましたよ…。しかも、その土地では御輿が一つではなくて、いくつかあるんです。御輿どうしで競争する……っていうお祭りが……ああ…どこだったかしら…?」 「ゲッ!マジかよ!?」 額を押さえてうんうん唸っているシエラに、シドがギョッとする。 子供達は、シエラを見上げて「本当!?」「わ〜、観に行きたいなぁ!!」と、実に無邪気に笑って見せた。 「……本当にデンゼルもマリンも…」 「順応性が高いな…」 クラウドとティファは顔を見合わせて苦笑した。 ヴィンセントは、相変わらず無言のまま御輿の去った方へ視線を向けていたが、ふぅ…と息を吐き出すと、 「帰ってきたな」 誰に言うともなく呟いた。 「え!?どこどこ!?!?」 「ユフィお姉ちゃん、ちゃんと落ちないで乗ってる?」 子供達がヴィンセントの視線の先へ目をやると、そこにはどこか先程と比べて変形した御輿が、先程よりもスピードを上げて帰って来るのが見えた。 お元気娘は……。 「あ…!」 「良かった、乗ってる…!」 「「「「…ホッ…」」」」(クラウド、ティファ、シド、シエラ) 「………」 仲間達の見守る中、お騒がせ娘は元気に無傷で帰ってきた。 そして…。 御輿をダチャオ像の前に納める儀式は、残念ながらユフィが先程言った通り見学出来ない為、他の観光客達も皆、思い思いの露店へ足を向け、あっという間に『ウータイ祭り』はどこにでも見かける『お祭り』となった。 「おっ待たせ〜♪」 「お帰り!!」 「凄いじゃん、ユフィ姉ちゃん、御輿の上に上るなんてさ!!」 「へへ〜ん、どうだった?」 「「カッコよかった〜〜!!」」 足取り軽くお元気娘が戻って来たのを、子供達が諸手を挙げて出迎えた。 口々にユフィの勇姿を褒めちぎる。 ユフィも満足そうに「そうでしょ、そうでしょ!?」と満面の笑みをこぼした。 「でもユフィ…。『お御輿を担ぐ』って言ってなかった?」 苦笑するティファに、ユフィは頭を掻くと、 「うん、実はさ、担ごうとしたんだけど…」 そう言ってニヘラ…と笑った。 「他に御輿を担ぐ野郎共との身長差が激しくてさぁ。どうしても『ぶら下がり状態』になっちゃって。仕方ないから御輿に乗る事にしたんだ〜」 「「「「え!?」」」」 「ま、担ぐよりも『乗って大暴れ』する方が私の性に合ってたから、丁度良かったんだけどね!」 ギョッとして目を剥く四人の大人に、カラカラと大口開けて笑うお元気娘。 何ともちぐはぐなその光景に、周りの観光客達が好奇の視線を投げかけつつ通り過ぎる。 「…皆、今更だろう、ユフィの奇行は…」 ハァ……。 溜め息を吐きながら、クルリと踵を返して立ち去ろうとするヴィンセントに、ユフィがすかさずマントを掴む。 「ぐぇっ!!」 「な〜に『蛙が潰されたみたいな声』出して逃げようとしてんのさ…」 「ユフィ……私を殺す気か!?」 「なに言ってんの!これくらいで死ぬようなら、アンタ、とっくの昔に死んでんじゃん!バカな事言ってないで、ホラ、さっさとこっち来る!!」 喉を擦りながら睨みつける仲間をいともあっさりと流して対応すると、引き攣った顔をして自分を見ている仲間達と子供達に、 「ほら、あっちで美味しいたこ焼き売ってるんだ!お祭り見物の前に、軽く腹ごなししようよ!!」 そう言って、マントを掴んだままさっさとその屋台の方へ向かってしまった。 当然、ヴィンセントは抗議の声を上げたのだが、それもやはり、 「アンタ、男のクセにごちゃごちゃうるさいな!折角のお祭りに『誘ってやった』んだから、有り難く楽しみなよ!!」 と、一蹴されてしまった…。 「相変わらず……『俺様』な野郎だな…」 「シド…。ユフィさんはお嬢さんなんですから『野郎』はダメですよ」 「いや……シエラさん、ユフィの場合は『野郎』で十分だ」 「だよな?」 「何言ってんの、二人共…。ダメよ、子供達の前で汚い言葉使ったら…」 ユフィとヴィンセントの後姿を見送りながら、大人四人が疲れ切った声で何とも実の無い会話をしているのを、子供達が顔を見合わせて肩を竦めた。 「どっちにしてもさ…」 「早く行かないと、見失っちゃうよ?」 「後できっとうるさく言われるから、早く追いかけようよ」 そう言い残し、子供達はサッサとユフィの後を追って人混みの中に飛び込んだ。 大人達はハッと我に変えると、苦笑しつつ肩を竦め、子供達とその先を行くユフィの後を追いかけるのだった…。 「おっそ〜い!もう、この人混みの中はぐれたら見つけるの大変じゃん!ちゃんと付いてきてよね!!」 息を切らせて追いついた仲間達に、ユフィが腰に片手を当てて眉を吊り上げる。 しかし、もう片方の手には、しっかりと戦利品のたこ焼きが四パック袋に入って握られていた。 「ほら、ここのたこ焼き超最高なんだ!」 しかも、私だと一パックおまけしてくれるしさ! 声を落として悪戯っぽく笑う。 子供達は目を輝かせて一パックを貰うと、嬉しそうにユフィに礼を言い、クラウドとティファに見せた。 「あ〜、良いの良いの!それはお子様二人で一パック。クラウドとティファ、シドとシエラさん、それで、私とヴィンセントで一パックずつ。丁度四パック。ね♪」 そう言うと、ユフィは人混みから離れた空きスペースに皆を誘導すると、直接地面に腰を下ろした。 地面とは言え、芝が敷き詰められている為、大して汚れは気にならないだろう…。 一行はそこで腰を下ろすと、それぞれに割り当てられたたこ焼きを食べ始めた。 子供達はそのたこ焼きの味に終始、「美味しい!!」「すっごい、この辛子マヨネーズ、最高!!」「ティファ、今度お店でも出したら?」「でも、たこ焼き機がないだろ…?」「あっそか。でも、ウータイで格安で手に入らないかなぁ」などなど、話に花を咲かせている。 クラウドとティファ、そしてシドとシエラもたこ焼きの美味しさに、初めて祭りを楽しいと感じる事が出来たのだった。 流石にあの『御輿』の一件は手放しで楽しむのには、あまりに刺激が強すぎた……。 さて……ヴィンセントはと言うと…。 「ヴィンセント、これ、美味しくないの?」 ユフィが少々不満そうな顔をしている。 寡黙な青年は、他の皆ほどの反応をしてくれない。 というよりも……無反応だ…。 ただ黙々とたこ焼きを口に運んでいる。 『黙々と口に運ぶ』という表現だけだと、ある意味『たこ焼きが美味しくて我を忘れている』という風にも取れなくは無いのだが…。無論そんなはずは無い。 もう…目の前にご馳走が並ぼうが、逆にタダの真っ白なご飯しかなかろうが、全くそんなのに興味を示さず、 『目の前にあったから食べただけ』 と言わんばかりの無反応っぷりだ…。 このままでは、お元気娘のご機嫌が斜めになる!! クラウド達は一瞬肝を冷やしたが、意外にもユフィは「ま、しょうがいなよね、それがアンタだし」と、あっさりそれ以上の絡みはなかった。 そして、全員がたこ焼きを食べ終わったのを見計らって、元気良く立ち上がると、 「んじゃ〜、腹ごしらえもした事だし、食べ物の美味しい所はまだまだ沢山あるから、これからお祭りを本格的に楽しみに行くぞ!!」 明るく、元気にルンルン気分で今にも駆け出しそうなお元気娘を見て、子供達はすっかりやる気モードに突入している。 そして、ここにきて漸くクラウド達もお祭りを楽しむ気分になっていた。 折角ここまで仕事の調節を必死にこなしてやって来たのだから、楽しまなくては損というものだ。 「良し、じゃあユフィに案内を頼んで見物と行くか」 「「やったーー!!」 子供達の歓声に、ティファも顔を綻ばせる。 シドとシエラも、ニッコリと微笑み合った。 ただ…。 寡黙な青年だけは、どこか遠くを見るような目をして…。 「ハァ…」 と、溜め息をこぼしたのだった。 あとがき はい、まだ終わりません(コラ!) 本来書きたかった事もまだ書けて……(汗)。 すいません。 後編に続きます(土下座) |