ギーーーンッ!!!

 突如、騒然となっている会場に金属音が鳴り響いた。
 一瞬にして会場内にいる全員が声を奪われる。

 バレンタイン国王は、床に打ち付けた剣に両手を添え、ギロリ…と会場内をねめ回した。


「黙れ」


 殺気すら感じる一瞥。
 その言葉に抗える者など…。



「まったく、騒々しいですねぇ」



 ハイウィンド国王室付き魔法使いシェルクだけだった。






人魚姫の恋 13







「さて、話を聞かせていただこうか」


 とんでもない事件勃発となった『結婚式』は、当然だが中止となった。
 国同士の結婚は諸外国に多々あれど、その重要な式が中止になるなど、前代未聞。
 式には至極当然であるが沢山の諸外国から要人が招待されていた。
 だというのに、この事件。
 バレンタイン、ハイウィンド両王国共に諸外国へ『腑抜けの王国』と吹聴してしまうようなとんでもない大事件だ。
 何しろ、結婚式の主役2人による『『異議あり』』宣言がなされたのだ。
 しかも、その他に宣言した者たちも大問題すぎた。

 バレンタイン王国の第二王子。
 バレンタイン王国の考古学博士。(第一王女の従姉妹)
 ハイウィンド王国の王室付き魔法使い。(第一王女の従姉妹にして、バレンタイン王国の考古学博士の実妹)

 重要も重要、最重要のポストに位置する人間が同時に『異議』を申し立てた。
 国同士の大切な結婚式に、最重要ポストの人間が『異議』を!?

 参列者たちは当然だが、ハイウィンド王国、バレンタイン王国の家来たちもパニックになった。
 それらの『混乱分子』をとりあえずそれぞれの『宿舎』『客室』『持ち場』へと戻らせ、バレンタイン王国の国王は、有無を言わせぬ気迫で当事者たちを会議室へと連行した。

 その輪の中に何故かエアリスも入っていた。

 重苦しすぎる空気を更に重圧で締め付けるようなヴィンセント王の言葉。
 ザックス、ティファ、クラウドはビクゥッと内心、縮み上がっただろう。
 だが、流石に大胆な真似をした『猛者』たちだ。
 見た目では全く分からない『無反応』でもってヴィンセント王を見た。

 口火を切るのはザックスだろうか?
 エアリスは緊張高まる空気に息苦しさを感じながらぼんやりそう思った。
 だが、まさにザックスがエアリスの予想通りに口を開こうとしたその一瞬早く、

「そうですねぇ、今回のことは『仕方ない』、としか言いようがありません」

 登場した時と変わらず、飄々とシェルクが言った。
 出鼻を挫かれたザックスがガックリと肩を落としている。
 かなり気合を入れて口を開いただろうに、その気合が徒労に終わってしまった……。

(ま、まだよ、ザックス王子!これからまだまだ頑張らないといけないんだから!!)

 無意識にザックスへと声援を送る。
 ザックスの右隣でクラウドがチラリ…と気遣わしげに兄を見た。
 その視線が、同じように気遣わしそうにザックスを盗み見ていたティファ王女と重なる。

 ボボンッ!!

 音を立てて2人は真っ赤になると、慌てて視線を外した。

(…なにやってるの……2人とも…)

 初々しいのは喜ばしいのだが、今はそんな風に『いやん、恥ずかしい〜』なんてことをしている場合ではない。
 ちょっぴりムッとしてしまったのは嫉妬からだろうか?
 それとも、もっと別?

(ザックス王子のこと、もっと心配してあげてもいいんじゃないの!?)

 …。
 嫉妬ではないらしい…。

 そのことにエアリスは気づかない。
 それくらい、ザックスが今、置かれている立場を思い、彼に感情移入してしまっているのだから…。

 自分の感情を解き明かす間など微塵もなく、エアリスの思考はヴィンセント王の不機嫌極まりない声で遮断された。

「『仕方ない』では済まされない」

 決して大きな声を上げたわけではないのに、腹にズシンッ、と響く声音に、思わず全身が総毛立つ。
 ゾッとするほどの威圧感。
 誰もが息を呑み、身を固くした。
 だが、当の本人であるシェルクと、彼女の姉だけは飄々としてどこ吹く風と言った様子だ。

「『仕方ない』で済ませるしか致し方ないんですよね」
「陛下、人生において、あきらめて受け入れなくてはならないことが山ほどあるんですよ」
 などと神経を逆なでしているとしか思えないことを口にする。
 背中といわず、全身から冷や汗が吹き出してしまうほどの事態をこの姉妹は引き起こしていた。
 ヴィンセント王の眉が危険な角度に跳ね上がる。
 流石にザックスとクラウドも色を変えて爆弾発言オンパレードの姉妹に向かって腰を上げかけた。
 両殿下の動きを封じたのはまたしてもハイウィンド国王室付き魔法使いの少女。

 ゆったりとした動作で目の前に置かれていたお茶に手を伸ばして一口すすった。


「…悪くないですね」


 ノォーーーーーッ!!


 誰かの悲鳴が聞こえた気がした。
 いや、誰か…のじゃない。
 魔法使いとその姉以外、全員が心の中で上げた悲鳴だ。
 エアリスも目をむいていた。
 シャルアの隣に座っているシェルクを穴が開くほど見つめる。
 足元に座っていた赤い獣が一瞬、
『おいおいおい!』
 と言わんばかりに顔を上げたように見えたが、気のせいだ、と即座に否定した。
 獣が人間(人魚)みたいに焦ったり、会話を聞いてたり、その会話に『突っ込みを入れる』わけがない!
 シェルクの2つ隣に座っているハイウィンド王までもが顔を引きつらせていることに、気づいた人間はどれくらいいるだろう?
 この会議室で怒りに震えているバレンタイン王と唯一同等の位(くらい)にある人だが、他の面々と同じでシェルクのあまりの傲岸不遜さにすっかりしてやられていた。

「シェルク、いい加減にしろよ…!?」

 諫めてみるが、か細く小さな声では迫力も何もあったものではない。
 隣に座っているシエラ王妃が情けなさそうにため息をついたが、それに気づいたのは恐らくルクレツィア王妃だけだろう…。

 シェルクは自身の最高位にある上司の叱責(?)にもなんのその!という態度を崩さなかった。
 優雅にカップを置くと視線だけで殺してしまいそうな王を見た。

「正直に言ってしまうと、国とか、民とかどうでも良いんです」

 はいっ!?
 ちょっと待てー!!

 エアリスはまたもや、誰かの心の叫びを聞いた気がした。
 いや、これも『誰か』ではなく、この部屋にいる大半の人間の心の叫びだ。

 シェルクは氷のような冷たく鋭い怒りを燃やしているヴィンセント王を真っ直ぐ見た。

「私たち姉妹にとって、ティファが心から想う人と幸せになる。これが何よりも大切で、優先するべきことですから」

 ティファ王女は目を丸くして息を飲んだ。
 隣に座っていたザックス王子と、その隣に座っていたクラウド王子は揃ってティファを見た。
 2人とも、目をまん丸にしている。
 ティファは2人の視線を集めてしまったことに気づいていない。
 ただただシェルクを見つめている。

「国や民よりも1人の人間を優先する…と…?」

 抑えがたい怒りを溢れさせた声音は低く低く、地の底を這うようだ。
 それに対し、
「えぇ、そうです」
 あっさり過ぎる軽い口調でシェルクは頷いた。
 隣の姉も頷いている。

 ブルリ。
 背筋に悪寒が走りまくる。
 赤い獣が持っている尾の先の小さな炎も、極寒オーラを放出させるヴィンセント王の前で吹き消されてしまいそうに感じた。
 勿論、そんなことにはならないのだろうが…。

「私は生まれつき人間離れした魔力を持っていましたから、余計なものを沢山引き寄せてしまいました」

 唐突に身の上話をしだしたシェルクに、バレンタイン王の眉間に更なる深いしわが刻まれる。
 しかし、王はさえぎったりしなかった。
 シェルクは続けた。

「今、私が手にしている魔力を操る力を得るまで、私はいつも1人でした。姉さまはティファ王女がいずれはこの国に『政治的道具』として嫁ぐことになるだろうと読み、先にこの国に移住していましたからね。本当に私は1人でした。でも、それでも全然寂しくありませんでした。奇異なるモノとして遠巻きに『見物』されたり、厄介なものを引き寄せる『病原菌』として白い目で見られる生活も、なんてことはありませんでした」
「ティファ王女が良くしてくれたから…とでも言うつもりか?」

 シェルクの1人語りを遮るようにヴィンセント王が口を挟む。
 心底『くだらない!』と思っているのが手に取るように分かった。
 不機嫌極まりない王の態度に、シェルクはやはり微塵も動じなかった。
「えぇ、そうですよ」
 否定するどころか、あっさり肯定する。
「ティファ姉さまのように素敵な女性が、自分の心を押し殺して違う男の元に『道具』として嫁ぐ。これを見過ごすことなど出来ませんね」
「ティファ王女も王女としての任を担っている。それは他の諸外国の王族や貴族に生まれた者にとっていささかも変わらない『当然の責務』だ。それを果たすことこそが、『税を納めてくれている民』への礼儀だろう」
「他の人たちなんかどうでも良いんですよ。その人たちは『自分の責務』として納得した上で婚姻関係を結んでいるんですから」
「ほう。今のそなたの言い草では、ティファ王女には『王女としての責任感』が欠如している、ということになるな」
「あら、一国の王たる人が、揚げ足取りして楽しいですか?満足できるわけですか?だとしたら、底の知れた王ですね。民も気の毒なこと」

 ガタンッ!

 勢い良く立ち上がったのはティファ王女とヴィンセント王の2人の息子。
 ティファはシェルクの前でドレスの裾を翻し、ヴィンセント王へ頭を垂れ、ザックス、クラウド両殿下はティファを挟むようにして立つと片膝を立てて拝謁の姿勢をとった。

「バレンタイン国王様、どうか不肖の従姉妹をお許し下さいませ」
「父上、どうかご寛恕をもってお怒りをお抑え下さい」
「…どうかご容赦を…」

 ヴィンセント王はゆっくり息を吐き出した。
 そして、背もたれに背を預けて、
「下がれ、3名とも。杞憂だ」
 一言、命じた。
 エアリスはその一言で遅ればせながら気づいた。
 3人が躍り出なければ、ヴィンセント王の腰に佩いている剣が一閃していたことを。

 ゾッと背筋を悪寒が走りぬける。
 確かに、シェルクの言い様は一国の王相手だとは考えられないほどの侮辱。

(な、なに考えてるの!?)

 3人に庇われなくては死んでいた魔法使いと、その姉を見る。
 3人の後ろで2人は同じ表情で飄々と座っていた。
 まるで危機感がない。
 それを表すように、
「ティファ王女も第一王子も第二王子も大丈夫ですよ。まだ私、死にませんから」
 など、サラリ、と言っている。

 ギンッ!と王女と王子たちは睨みつけたが、全く伝わった気配はない。

「話しを戻しても?」

 などと、一国の王に向かって途切れた会話へと引き戻そうとしている。
 いやいやいや、アンタが余計なことを言うから王様が激怒して話しが途切れたんでしょうが!?

 なぁんて会議室の人たちの悲鳴がリアルに聞こえる気がするのは、きっとエアリスの気のせいではないだろう…。

 こめかみをピクピク引き攣らせながら、あまりの『傲岸不遜さ』に二の句が継げない王と王妃たちを前に、シェルクは少しだけ遠い目をした。

「バレンタイン王の仰る『貴族・王族の責務』を果たすべく『婚姻の道具』となることを選んだ人たちは、『それだけ』を聞いたらたいそう立派です。でも、彼らの大半がおおよそ『貞淑』とか『理念』からは縁遠い。『婚姻』を成立させた当然の報酬として、民の血と汗の結晶である『血税』を自分たちの懐に入れては『愛人』たちと豪遊する…。そして、『過ぎた火遊び』が己の身に『呪い』となったとき、『魔力に長けたもの』をアゴで召し使い、なぜ『呪われることになったのか考えもせず、同じことを繰り返す…。『自分たちは民のために望まぬ婚姻をしたのだから、これ(豪遊)は正当な報酬だ、と堂々と胸を張るんです。まったく、唾棄すべき下らぬ輩ですよ」
「シェルクはその有する魔力と魔術に関する知識の豊富さから、諸外国からも『ひっぱりだこ』でしてなぁ…」

 ハイウィンド王が絶妙なタイミングでフォローした。
 きっと、『自分も一国の主なんだから、頑張らなくては!』と、密かに頑張れる土俵を伺っていたに違いない。
 ヴィンセント王は、一等客人でもあるハイウィンド王の言葉を無下にも出来ず、苦い顔をしながら黙っていた。
 いや、もしかしたらハイウィンド国王の言葉がなくても、ヴィンセント王はなにも言わずに話の続きを待ってくれたかもしれない…と、エアリスは思った。
 なにしろ、この国の国王は無駄なことはしない。
 無駄に感情を左右されない。

(まぁ…さっきは魔法使いさんの言い草に腹を立ててたけど…)

「ティファはそんな唾棄すべきくだらない人間とは違います」

 シェルクは自国の王がフォローしてくれたことに対し、ま〜ったく何も感じていないらしい。
 淡々と話を勝手に進めている。
 さすがに「おい、お前なんか言うことないのか、俺様に…」とシド国王が呆れながら突っ込んだ。
 それすらも華麗にスルーする…というよりもまったく気づいていないかもしれない。
 シェルクは真っ直ぐ前だけを見ていた。
 前に座っているヴィンセント王だけを…。

「一国の女王という前に、人間的に素晴らしいティファは、この世界の宝です。彼女のような人間がいてくれるからこそ、まだこの世界はマシなラインを保っているんですから」

 なにを大げさな…と一笑に付すにはいささか真剣すぎるシェルクの言葉。
 ヴィンセントのみならず、当の本人であるティファも、ザックスも、クラウドもたしなめたり笑ったり出来なかった。
 その迫力にただ息を呑む。

「シェルク…」

 ティファの母親であるシエラ王妃が、魔法使いの言葉の真意を推し量れず、困惑しきりに眉根を寄せる。
 シェルクは視線を母国の王妃に向けた。

「叔母様…、いえ、王妃様。何度も言ってきましたが、この世界は皆が思っている以上に汚れています。綺麗な魂を持つものは本当に少ないんです。生まれたときには等しく無垢で真っ白な魂なのに、時を重ねるごとに純白な魂は穢れていく…。それは生きていくうえでは絶対に必要なことなんでしょう。純真無垢なままでは周りのハイエナどもに食い物にされるだけ…。餌食にならないためにも、最低限、ハイエナの思考知り、その視点に立ってずる賢く立ち回らなくてはならない。でも…」

 静かな眼差しでティファを見る。
 ティファは自分が褒められている、という感覚がないようだ。
 どこか、別世界の話を聞かされているという顔で、シェルクを見ていた。
 その瞳が魔法使いと重なる。
 シェルクのスカイブルーの瞳が急に誇りをたたえた微笑に彩られた。

「一度、穢れ始めると堕ちるところまで堕ちてしまう者が本当に多い。この世の理(ことわり)の1つでもあるかのように…。でも、それなのにティファ姉さまは一国の姫君という立場にありながら、大切な『魂の核(コア)』をちゃんと守って生きてくれているんです。ティファ姉さまのように、それを無意識に出来る人は本当に…、本当に限られています」


 しかも、国の要人としてその義務を謙虚に受け止めてくれている。これ以上に民が安心出来ることは他にないでしょう。


 ティファの頬に朱が差す。
 真正面からのストレートな褒め言葉。
 ウロウロと視線を彷徨わせ、ふと自分に注がれている視線の1つに気づいて恐る恐る目を上げる。

 紺碧の瞳がやさしく輝いている。
 ティファの薄茶色の瞳が少しだけ見開かれ、次いで、はにかむように…、ドギマギしながら視線を彷徨わせた。
 久しぶりに再会した時は警戒心しかなかった目が、慈しむような色を湛えてジッと見ている。
 国と国同士の大切な『契約』だと知っていながら、異議を申し立てた第二王子の瞳。
 ティファの心を彼は知らない。
 知らないまま及んだ凶行。

 もしかしたら、ティファに軽蔑されるかもしれないだろうに…。
 父王に…、兄殿下に多大な迷惑をかける結果となることを痛いほど分かっていたのに、異議を申し立てた第二王子。
 これを喜ばないはずがない…と、エアリスは思った。
 ティファ姫の心の動きが手に取るようにエアリスには分かった。
 望まぬ相手との婚姻を阻止してくれた想い人。
 嬉しくないはずがない。

 エアリスは少しだけ胸がチクリ…とした。
 確かに、今はザックスが好きだと自覚している。
 しかし、そもそも声と引き換えにたったひと時、人間として過ごしたいと思ったきっかけはクラウドなのだ。
 その彼が目の前で他の女性を見つめている…。
 胸の中では『良かった』と安堵する気持ちと『自分ではダメだった…』という落胆やほんのちょっぴりな嫉妬が混ざっていた。
 勿論、『良かった』の気持ちのほうが断然多いのだが…。

「だから、ティファ姉さまは私の自慢でもあり、誰よりも優先すべき人なんです。姉さまが幸せになるなら、国や民が滅びても良いと真剣に思います」
 ですが…。

 抗議の声を上げようとしたティファをやんわりと『ですが…』と遮ると、シェルクはバレンタイン国王を見た。
 紅玉の瞳を真っ直ぐ見つめる。

「姉さまは国民が滅んでも幸せでいられるはずがありません。そんなことになるくらいなら、自分の気持ちなぞ押し殺してどんな不細工で性格ブスで意地汚い中年男にでも嫁ぐことを選びます。そういう人です。そして、姉さまと同じくらい、自己犠牲精神が旺盛な人が…」

 そこまで言うと、彼女は何を考えているのか掴みきれない瞳をスイッ…と滑らせた。
 ピタリ…と止まる。
 どこで?
 何を見て?

(え…?)

 翡翠の瞳は『遠慮』とか『世間の常識』といったものを全く持ち合わせていないようにエアリスを見つめた。
 対するエアリスはまさか自分が見られるとは思っていなかったので、シェルクの唐突な凝視にドギマギした。
 視線をそらせるもシェルクがじっと見ているのが痛いくらいに分かる。

 と…。

 椅子から誰かが立ち上がった微かな物音。
 同時に誰かが息を呑む気配がした。

( ? )

 ふと自分の前に人影が出来たのを感じて顔を上げると、ハイウィンド国王室付き魔法使いが目の前に立っていた。
 視線を上げてビックリするエアリスの前で、シェルクはゆっくりと膝を着いた。
 エアリスの深緑の瞳が見開かれる。
 シェルクの動きを見つめていたその場の全員があんぐりをと口を開けたり、目を丸くした。
 皆の驚きを一身に受けているというのに、シェルクはどこまでも淡々としていた。
 そして…。


「初めまして、現ポセイドンの第一王女、エアリス殿」


 驚愕するエアリスの前で頭を下げたのだった…。