エアリスは目の前で膝を着いている少女を呆然と見つめていたが皆の、とりわけザックスの驚愕の視線に気づき、一気に血の気が引いた。
 なりふり構わず身を翻してこの場から立ち去りたいのに、まるで縫い付けられたように身体が動かない。


「現ポセイドンの第一王女……だと…?」


 静かな声音の中に驚きを混ぜ込んだヴィンセント王の言葉ですら、エアリスを動かすことは出来なかった…。






人魚姫の恋 14







 とんでもない衝撃がバレンタイン国の会議室を襲っている頃より少し時間は遡る。

 地上よりもうんと世界の重力に近い位置ある海底王国では、海底の楽園の主がウロウロウロウロ、全く落ち着く様子もなく玉座の前を行ったりきたりしていた。
 傍に控えている重臣が冷や汗をかきかき、ポセイドンという位(くらい)を持つバレット王に何度目かの言葉をかけた。

「王よ、落ち着かれよ。地上の者が我らに何を出来よう…」
「そうですぞ。いかほどの力を持っているか…。笑ってやることも出来ぬ無力さ加減に決まっております」

 しかし、それらの気休めはバレット王の癇癪に触れるものでしかなかった。
 カッ!と目を見開きながら腹の底から「やかましいーー!!」と一喝する。
 ビクッ!と重臣たちは固まった。

「じゃあお前ら説明してみろ!この海底王国は人間どもに知られずにもう何百年もあったんだぞ!?それを、『あら、本当に海底の世界とやらはあったんですね』なぁんて軽々とこの海底宮殿にこんなもの送りつけられる人間が能無しか!?本当に能無しだと思ってるのか!?!?」

 怒りまかせに王が床に叩き付けたのは手鏡だった。
 水の浮力のお陰か、それともその鏡が持っている不思議な力のお陰か、鏡は床にふにゃん…とした感触でもって弾んだだけで、ヒビ一つ入っていない。
 王は怒りのままに怒鳴り散らした。

「しかも、『もしかして、そちらの世界の大切な人がこちらの世界に紛れてませんか?一週間ほど前から精霊たちがうるさくてうるさくて。『海の世界からとっても大切な力がやって来た』『このままじゃあ大変、大変』ってそればっかり言うんです。何かありませんでしたか?例えば、王族の血を引いておられる人魚か誰かがこちらに来ている…とか…。』だなんて、何も知らない人間が言ってくるか!?」

 重臣たちは黙り込んだ。
 王の指摘に対して何も言えない…ということもあったが、単に王の逆鱗にこれ以上触れたくない…というのもあっただろう。
 黙りこんだ重臣たちをイライラと睨みつけながら、バレット王は再びウロウロウロウロと玉座の周りを回り始めた。

「あ〜…本当になんてことだ!エアリス姫…、エアリス姫〜!
 まさか…。
『ポセイドン族の長子として、この海底世界を末永く守るべく、来る(きたる)日のために今一度、見聞を広めたく思います。どうかご心配なさいませんよう…。必ず、長子として相応しい知識と教養を身につけ、夫を迎えるに相応しい淑女となって参ります』
 だなんて立派な置手紙をしてまで宮殿から出て行ったのが地上の世界とはー!!」

 スラスラとエアリスの置手紙を諳(そら)んじたバレット王に、重臣たちはビクビクしながらも内心驚いていた。

『『『王が…、王が難しい言葉まできちんと一言一句、間違えないで覚えておられるとは!!』』』

 すぐにカッとなって、すぐに涙ぐむ直情型の王がこれほどまでスラスラと諳んじられるほど、エアリス姫の置手紙を読んでいた。
 その事実にうっかり涙が溢れる。
 当然バレット王はそんな重臣たちの心情など知る由もなく、頭を掻き毟らんばかりにイライライライラしていた。

「くぅ!エアリス姫…、本当に…本当に地上なぞという恐ろしいところへ…!?」

 頭を抱えてググ〜〜ッと縮こまり、次の瞬間、バネ仕掛けのように勢い良く顔を上げる。
 重臣たちはハッと身構えた。
「俺様も地上に行ってやるー!!」
 うがーーっ!

 わけのわからない雄たけびを上げて海底宮殿の壁をぶち壊す勢いで猛然と玉座を後にしようとする。
 それを重臣たちが体当たりで止める。

 もうそれを何十回も繰り返していた。
 すっかりタイミングを覚えた重臣たちのファインプレーにより、なんとか宮殿はぼろ屋敷にならずに済んでいる。
 その、ぼろ屋敷になるかもしれない!という崖っぷちギリギリラインの宮殿に何本も立っている柱の影から、人魚が3人、スイ〜ッ…と隠れるようにして奥の部屋に吸い込まれた。
 第二王女、第三王女、そして王女の付き人の少年人魚だ。
 3人は難しい顔をして暫く黙り込んでいた。

「姉さま…、人間にも力のある魔法使いっているんですか?」

 マリンが思い切って顔を上げる。
 ユフィは眉間に刻んだしわをそのままに、「う〜ん…」と唸った。

「確かに、人間の中にも魔力を持った者がいる…とは文献にあるんだけどさぁ、まさかこの結界張りまくってる海底宮殿に『連絡手段』が取れる魔法を施して送りつけられる人間がいるとはちょっと信じられないんだよなぁ…」
「でも、実際送られてきたんだろ?」

 鹿爪(しかつめ)らしい顔をするデンゼルに、ユフィはもう1度唸った。

「そうなんだよなぁ…。なんであんなことが出来るんだろう…。てか、そんな力を持つ人間が、なんで今さらこんな海底に?」

 腕を組んで行儀悪く仰向けで泳ぐ。
 マリンはすぐ上の姫の様子を見るとはなし見つめた。

「デンゼル、私はお父様がその『手鏡』でお話しをしたところは見てないんだけど、デンゼルは見たの?」
「あ〜…うん、見た…というか、『手鏡』からの声は聞いたな」
「なんて言ってた?」

 パッと顔を輝かせて腕にちょこん、と掴まった末姫に少年は頬を薄っすら染めながら、視線を明後日の方向へと彷徨わせた。

「あ〜…なんだっけ…。確か…、『あら、素敵な宮殿ですね。太陽の光が届かない海底だからもっと薄暗いのかと思ってましたが、意外と明るいのにはビックリ』って言ってた」
「へ〜!『ヒカリゴケ』があるから明るくて当然なのに、地上じゃあ『ヒカリゴケ』はないのかな?」
「言われてみたらそうだな、ないんだろ、きっと」
「こんなに素敵なのに、可哀相ね、地上の人たちって」
「そりゃ仕方ないだろ?『ヒカリゴケ』はポセイドン王家の力の象徴なんだから。あ、そうだよな、『ヒカリゴケ』が地上にあるわけないや。『ポセイドン王家の力の象徴』が地上にあるわけないんだから」
「あ、そっか〜。でも、エアリス姉さま…大丈夫かなぁ…」
「……うん…」

 俯いたマリンにデンゼルも顔を曇らせた。
 もう一刻の猶予もないはずだった。
 エアリスの足は激痛に見舞われ、少し身じろぎしただけで悲鳴を上げてしまうほどになっているはずだった。
 その呪いを解くために彼女がしなくてはならないこと。

 地上に上がる決意をさせた人間の心臓の血を浴びる。

 普通の人魚でもそんな恐ろしい、大罪を犯すことになったら、躊躇して当然だ。
 中には、他の命を奪ってまで生きながらえることを良しとしない者もいるだろう。
 エアリスはその『良しとしない者』の代表のような人魚だ。
 心優しく、自愛に満ち溢れているこの海底王国の至宝。
 そのエアリスが人を殺して再び海底に戻ってくる…?

 ユフィとマリンはエアリスが『長子』としての責務を果たすために戻ってくる、と信じているようだったが、デンゼルにはそうは思えなかった。

(あの優しいエアリス姫がそんなこと出来るわけないよな…。でも、そうしないと姫が死んでしまう。今のこの世界にエアリス姫の力は絶対に必要だ…)

 デンゼルは、最後に会った深緑の瞳を持つ美しい第一王女を思い出した。
 魔力の宿った短剣を渡したあの夜のこと。
 いつも微笑みを湛えていた優しい瞳が、驚愕と恐怖、絶望に染まったあの瞬間。
 胸が張り裂けそうだった。

 そのときのことを思い出した、デンゼルは胃がキリキリする思いを必死にかみ殺すのだった…。


 *


「とまぁ、そういうわけでこちらのエアリス王女の気持ちもきちんと汲んだ結果、婚姻阻止となったわけです」

 シーン。

 シェルクが語り終わった後、ただただ沈黙のみが横たわった。
 豪胆なヴィンセント王ですら身じろぎできず、エアリスを凝視している。
 一方、自分のことをツラツラと立て板に水と言ったように言い当ててしまったシェルクにエアリスはすっかり動転してしまっていた。
 地上の者には決して知られてはいけないはずの海底王国の存在。
 それがバッチリと知られていたというのだから、驚かないはずがない。
 おまけに、どうして自分がここに来たのかまで言い当てられてしまった。
 自分の口から話すのと、第三者の口から語られるのとでは周囲の者の印象や受け止め方が変わってくる。
 誰も彼もが信じられない!と言った形相でエアリスを見ていた。
 ザックスまでもが形容し難い表情を浮かべている。
 初めの頃はクラウドにこそ惹かれていたことはとっくにバレているのに、そのことはすっかり頭から抜けていた。

 ひたすら、苦しい。

 クラウドの困惑仕切りな表情も、彼を一途に思っていた王女の動揺した様も、そのほか、『人魚』という『珍獣』を生まれて初めて見る人間たちの奇妙に興奮した様子も。
 その全てがエアリスを押しつぶそうとしていた。
 息が詰まりそうな圧迫感。
 肩で大きく呼吸を繰り返したが、ちっとも息がラクにならない。
 胸はバクバクと激しく鼓動を刻み、その激しさゆえに胸から飛び出してしまいそうだった。
 体中の血管を血液が駆け巡っている。
 ワンワン、と耳鳴りがするほどの……緊張感。

(人間じゃないってバレちゃった…。しかも、こんな形で!)

 自分に集中する視線。
 その瞳の全てがシェルクの言葉だからこそ、否定という結果にならず、『本物の珍獣』を目の前にしている、という異様なまでの興奮状態につながっているということがビリビリと伝わってきた。

 居た堪れない…!

 それらの視線の中、特にエアリスの気持ちを掻き乱したのは、紺碧の瞳。
 2人分のその瞳。
 1人はこの地上に来ることを決意させた人。
 もう1人は…。


 ―『エアリス…俺、かなりわがままなこと言ってる自覚がある。でも、やっぱ自分を抑えて…ってのは俺のキャラに合わないと思うし、俺自身がイヤだからさ。だから、最後まで付き合って欲しいんだ。そしたら……、ちゃんと全部終わったら、きちんと『言う』から』―


 突如。
 昨夜、彼がくれた大切な言葉が脳裏を駆け抜けた。
 全身から音を立てて血の気が引く。

(あぁ…!私…私…!)
 ちゃんと自分の言葉で彼に打ち明けようと決心したばかりだったのに…!
 黙って身元を隠していたことがバレてしまった。
 いや、勿論ザックスは自分が身元を隠している…と知っていたけど、まさかその身元がこんな『得体の知れないもの』だとは思っていなかったはず。
 一体誰が、海底からやって来た生き物などと想像しただろう?
 人に話したら笑われるしかないその素性。
 でもきっと、ザックスなら戸惑いながらも受け入れてくれたはず。
 それなのに、こんな形で第三者から暴かれてしまうなんて…!

 エアリスとザックスの視線が交差する。
 ザックスの唇が何事かを言わんと微かに震えるのが見えた。
 瞬間、エアリスは心臓がギュッと鷲づかみにされたような鋭い痛みに襲われた。
 鋭く息を吸って胸を押さえる。
 傍らにいた重臣がギョッとして手を出した。
 ザックスやクラウドが驚いて腰を上げる。
 ティファも呆然としていた表情を一変させ、慌ててドレスの裾をつまんで席を立とうとした。


( ああ、もうダメ! )


 そのどれもがエアリスにとって苦痛以でしかなかった。

 ザックスとクラウドが駆け寄るよりも早く、エアリスは飛びずさるように立ち上がった。


「「エアリス!!」」

 2人の王子の呼び声を背中に受けながら、エアリスは会議室を飛び出した。


 足の痛みなぞ関係なかった。
 頭の中はもうパニックで収拾がつかない。

(どうしよう…、どうしよう、どうしよう、どうしよう!!)

 ひたすら走って、走って、走って…。
 途中、何人もの城の兵士や女官たちとすれ違った。
 彼らがギョッと目を見開いて固まったのにこれっぽっちも気づかない。
 ただただ、恐ろしかった。
 自分のことを『珍獣』としてしか見なくなったら?
 あんなに優しかったのに、『騙してたんだ…』と、幻滅されたら?
 侮蔑のこもった目で見られたら?

 きっともう、優しく抱き上げてくれることもない…。

 喘ぐような息を繰り返し、激痛に見舞われる足を酷使し、エアリスは走った。
 広い広い城の廊下を走りぬける。
 そうして…。


(…もう……もうダメ…!)


 何もかもお終いだ。
 ザックスとクラウドに自分が人魚だとバレてしまった。
 しかも、クラウドに惹かれて地上にやって来たというのに、今では彼の兄に心奪われているということまで。
 なんて浅ましくて、卑しい『女』だろう?
 蔑まれても仕方ない。
 仕方ないけど、2人に蔑視されるのが辛くて、悲しくてたまらない。
 ザックスに惹かれるようになったからといって、クラウドにどう思われても構わない、なんてことはない。
 断じてない。
 出来れば、彼が想い人と幸せになれた時、傍にいて『よかったね、おめでとう!』と言いたかった。
 照れる彼と彼女を笑いながら抱きしめたかった。
 そうして、恐らく感極まって瞳を潤ませているであろう彼の兄の手を握って、
『良かったね…。これで安心だよね』
 と、微笑み合いたかった…。

 でもそれは所詮、夢物語。
 絶対に叶わないことだ。

 海底の掟を破って地上に出た自分への……罰。

 と…。

 突如、エアリスは足を止めた。
 足の激痛がとうとう興奮状態の精神を凌駕して身体に猛然と『魔法の薬の副作用』を主張したのだ。
 痛みはそのまま激しい衝動を心臓に与え、極太の錐で胸を深々と突き刺されたような激痛を与えた。
 息が止まる。
 胸を両手で強く押さえ、弓なりに背が反り返る。
 大きく見開いた瞳は、廊下の終わりをガラスのように無機質に映していた。

 そう…。

 大きな城に相応しい、広くて大きく…、高い階段を。

 階段の下に控えていた衛兵数名と、廊下に配置されていた衛兵数名が驚愕に目を見開き身を乗り出し、駆け寄るその姿も…。
 衛兵たちのみならず、誰かの叫び声が響き渡ったのも…。
 それどころか、自分が落下していることにすら気づかず、エアリスはバランスを崩して階段のてっぺんからまっさかさまに落ちた。

 足と胸の激痛で急速に意識が薄れる中、世界が反転する様をどこか非現実的に感じながら…。


 *


 『エアリス!!』
 『はい、ちょっとお待ちなさい、ザックス殿下』
 『なんだよ、邪魔するなシャルア博士!!』
 『エアリス姫を追いかけてどうするのかもう決めたんですか?』
 『はぁ?なに言ってんだよ、そんなこと言ってる場合か!』
 『言ってる場合です。なにも決めていないのに追いかけてどうするんです?それに、彼女は今、どこにもいけません。飲んだ薬が変に効いてますから、海に行ってもおぼれるだけです。あ、クラウド殿下はさっさと追いかけて。ザックス殿下には大事な話しがまだ残っているので、代わりに追いかけて宥めてて下さい。まったく、シェルク、もう少し言い方を考えないと…。姫の繊細な乙女心を粉砕してどうするんだ?』
 『そんなつもりはサラサラなかったんですけど…』
 『最初に惚れた男の兄に惹かれるだなんて、他の人間の前で暴露されたらどの乙女だって繊細なハートは粉砕されるんだよ…覚えておきな』
 『おいおいおい、そんなことはどうでも良いからとっととどけ!』
 『ダメだって言ってるでしょう?あ、それからヴィンセント王とルクレツィア王妃も残ってて下さい。この国の一大事ですから』
 『だぁあっ!だから、その一大事な話は後にしろよ』
 『ザックス、落ち着け。博士、大事な話しとは?』
 『父上も、いい加減に〜…して下さいっ…てば!!』

 『『 ! 』』

 『マジでもういい加減にしろ!あんな状態のエアリス放っておいてまで大事な話なんかあるか!!』

 『『 …… 』』
 『行っちゃいましたね』
 『…博士、試したな…?』
 『おや、なんのことだか。ま、あれくらいの気概がないと、すぐ未来に迫ってる試練は絶対に乗り越えられない、と思ったのは事実ですけどね』
 『……』
 『あなた』
 『…ルクレツィア…』
 『寂しいですけど、子供は親をいつかは追い抜いていくものです。ザックスもクラウドも、そういう時期になった…ということでしょう…?』
 『……そう…、だな…』

 『おい…』
 『ふふっ。行っちゃいましたね、私たちの可愛い姫も』
 『シエラ…おめぇ、笑ってる場合か…?』
 『あら、じゃあ怒る場面なのかしら?』
 『…少なくとも、こんな事態を招いてくれたバレンタイン王国一の権力者に愚痴の1つはこぼしても良いんじゃないのか…?』
 『あら、それは出来ないわ。だって、元はと言えばティファが結婚の誓いのときに『異議あり』って言っちゃったんですもの。それに、わが国の王室付き魔法使いも色々と爆弾発言をしてくれちゃったもの』
 『……あ〜あ…。ったくよぉ…』

 『姉さま、エアリス姫の飲んだ薬、なんだか分かりますか?』
 『あ〜、なんだか古すぎる魔法みたいで良く分からないんだ。これが薬の入ってた瓶だけど』
 『……わぁ……本当に古いですね…』
 『なんとかなりそうか?』
 『……ナナキ、どう?』
 『う〜ん…、そうだなぁ…。これ、『対価の呪い崩し』でなんとかなる気もするけど』
 『そう?じゃあ試してみようかな』
 『でもさ、この魔法を作った張本人と会うのが一番手っ取り早いけど?』
 『ん〜…そうは思うんですけど、私、イカってあまり好きじゃないんです』
 『イカ?』
 『あのねシャルア。この魔法を作った魔法使いはたぶん、イカの魔法使いなんだよ』
 『へぇ、そんな珍妙な生き物が』
 『姉さまはイカ、好きでしたよね?じゃあ、私の代わりにナナキと一緒に』
 『『 職務放棄は許さん 』』

 ((( け、獣がしゃべった!?!? )))


 それは、エアリスが飛び出してから僅か数十秒後に交わされてた会議室でのやり取りだった。