思いがけずに一人旅 6




 リーブがクレーズと共にため息を吐きながらティファとクラウドの心配をしている時…。
 当の本人達は…というと…。

 まず、ティファはコスタでユフィ達が自分の存在を携帯の向こうで気付いてくれるのをひたすら待っており…。
 クラウドは少々青ざめているクラウン隊員と共に、次の出港予定の船の乗船手続きを行っていた。
 ところがここで、思わぬ『おまけ』が付いてきた。
 救出した女の子も同伴するよう、救助隊員から頼まれてしまったのだ。

 本当ならば、母親がコスタからジュノンへとんぼ返りするのを待つ方が良いのだろうが、緊急の用事があるとかで、出来ればコスタに連れきて貰いたい……と母親が希望したのだ。
 勿論、女の子が心身共に大丈夫ならば…のはなし。
 あまりの出来事に卒倒してしまうのではないかと思われるほど取り乱していた母親に、女の子は周りの大人達が驚くほど元気一杯に『大丈夫だよ〜!カッコイイお兄ちゃんが助けてくれて、ず〜っと優しくしてくれたんだ〜!!』と明るく話をした。
 という訳で……。
 クラウドとクラウン隊員は、女の子を伴い次の船に乗船する事が周りの人間により決定された。(クラウドとクラウン隊員の意見を聞こうとは誰もしなかった…。)


 女の子はシャイン。
 年齢は五歳。
 母親と共に、ゴンガガに住んでいる祖父母の所へ行く予定との事…。
 祖父母が病に倒れ、一人娘だったシャインの母親が看病に向かう途中だったらしい…。
 シャインの父親は現在エッジで懸命に働いている。
 今回、エッジにいる父親が共に行けなかったのは、仕事が急に忙しくなり、職場で寝泊りしなくてはならない程多忙である為との事だ。
 それらの話を船が出るまでの間、シャインは明るく笑いながら話して聞かせた。
 クラウドは元々が無口で口下手。
 セブンスヘブンでデンゼルとマリンの話しを聞く時でさえ、時々相槌を打ったりする程度の事が多い。
 という訳で、シャインと話をするのは専らクラウン隊員………になるはずだったのだが………。

「…ってお母さんがお鍋焦がしちゃってね。もう、煙は凄いし、焦げ臭いにおいはするし、隣のおばちゃんが凄い顔して飛び込んできてとっても大変だったの!」
「……へぇ…それは大変だったね」
「……火事にならなくて良かったな」
「うん!もう本当にびっくりしちゃった!」
「…………」
「…………」

 ニコニコと笑顔で屈託なく話をしているのはシャインだけ。
 クラウドとクラウン隊員は、ひたすら相槌を打ったり、微笑を微かに浮かべるだけ…。
 それだけで精一杯だ。
 クラウドが無愛想で口下手で人付き合いが苦手な人間なのはもう既に分かっていたのだが……。
 なんと、クラウン隊員もクラウドに負けず劣らず話し下手な人間である事が判明した。
 シャインの話しに、必死に相槌を打ったり頷いたりして相手をしているのだが、その全てがぎこちない。


『こう言う時…ティファなら上手に話を聞いて、自分の話も面白おかしくしてやるんだろうな……』


 そう思って胸が酷く痛む。
 彼女の傷ついた表情が鮮明に脳裏に甦った。
 あの優しくていつも笑顔を絶やさない彼女…。
 時には自分の心配をして悲しそうな瞳を向けられることもあったが、それでも仕事で疲れた時には必ず温かな眼差しと、温もり溢れる微笑で出迎えてくれる…。
 そんな彼女に、いつの間にかすっかり甘えきってしまっていたのだ。
 その結果が……これだ…。
 何とも情けない…。
 あんな顔をさせたのに、それなのに謝罪一つ出来ないまま、彼女の後を追っている。
 イヤ…。正確には追うつもりは目一杯あるのだが、足止めを喰らっている状態で、ちっとも進めていないという、何とも歯痒い状況に身を置いている…。
 彼女にきちんと謝罪し……そして仲直りする為に一刻も早くティファに会いたいというのに…。
 それなのにどうして自分の周りにいるのが……。

「ねぇ、お兄ちゃん達はシャインのお話、つまんない?」
「え!?そ、そんな事ないよ、うん!!」
「あ、ああ…そんな事ない。…すまないな、話をするのが苦手なんだ…」
「本当に、つまんなくない?ごめんなさい、私一人がしゃべってばかりで…」

 シュンと項垂れる少女と、その少女を必死に宥める褐色の肌の若い男…。

 今の自分には、愛しい彼女の代わりに今日会ったばかりの人間しかいない……。
 おまけに、一人はマリンよりも幼い少女に、自分に負けず劣らず口下手と思われる青年…。
 これで一体どうやってこの少女を『お守り』しながら渡航しろというのだ……。
 不器用に必死に宥めている隊員の姿をボーっと見守りながら、クラウドは溜め息を吐いた。
 一週間も過剰労働して予定を調節させたというのに、自分の至らない言葉と態度のせいで大切な家族を傷つけ、約束を反故にしてまで請け負った仕事が他人の仲を取り持つもので…。
 おまけに気がついたら仲間達の『計画』とやらに乗らされており、しかもそれがかなり腹の立つものだったらしく…。
 更に更に、何故か目の前には今にも泣きそうな顔をした幼い少女と初対面の青年…。
 こんな理不尽な状況で、溜め息を吐くなというのが酷な話しなのかもしれない…。

 しかし、それがいけなかった。

 クラウン隊員の必死の慰めによって何とか笑顔を取り戻しつつあったシャインが、クラウドが溜め息を吐いた事によってあっという間に再び泣き顔に戻ってしまった。
「や、やっぱり……お兄ちゃん……怒ってるぅ〜……」
 大きな瞳からポロポロと涙が零れだす。
 ようやく落ち着いたとホッとしていたクラウン隊員は、ギョッとして再びシャインを宥め始めたが、今度はそう上手くいかなかった。
 シャインが泣き始めた原因がクラウドなのだから、クラウン隊員がいくら宥めてもその原因が取り除かれない限りは泣き止まないだろう……。
 という訳で、いくらクラウン隊員が不器用ながらも必死に頑張っても中々成果は上がらない…。

 暫く必死に頑張っていたクラウン隊員は、困ったような顔をして事の成り行きを傍観していたクラウドを恨めしそうに見やると、急にシャインを抱き上げた。
 そして、びっくりしているシャインをグイッとクラウドの目の前に突き出した。
「…な…なんだ…!?」
「クラウドさん。クラウドさんが怖い顔をしているからシャインちゃんが泣き始めたんです。原因はアナタなんですから、責任をもって泣き止ませてください」
「「え!?」」
 この言葉に、クラウドだけでなくシャインまでびっくりした。
 そうして、そのびっくりしたショックのせいか、少女の涙はピタリと止まったのだが、それに構わずクラウンはクラウドにシャインを押し付けた。
「お、おい…!!」
「ほら、しっかり抱いてやって下さいよ。でないと落っこちちゃうじゃないですか」
「お…落っこちるって…、わっ、バカ、急に手を離すな!」
 いつまでもクラウドがしっかり抱き上げようとしないのに痺れを切らせたのか、青年はパッと手を離した。
 危うく重量の法則にしたがって少女が落下しそうになる。
 それをおっかなびっくりクラウドが受け止めて阻止すると、シャインは再び泣き始めた。
 しかも、今度の泣き方は『ポロポロ』ではなく『ビギャーーー!!!』という凄まじい泣き方だ。

 これが『火がついた様に泣く』ってやつか……。

 などと感心している場合ではない。
 大声で泣きながら手足をジタバタさせるものだから、油断していると本当に落っことしそうだ。
 しかも、シャインが泣き出す前から周りにいる乗船待ちの人達の注目を何となく浴びていたのに、今でははっきりと注目の的になっている。
 皆の視線が全身に突き刺さるようだ。

 クラウドは完全にパニックになった。
 必死で落とさないように抱っこしながら、
「わ、悪かった。本当にごめん…。怒ってるわけじゃないんだ、その……頼むから泣き止んでくれないか…?あ〜、その……何か飲むか?それともお菓子が良いかな…?な?本当に悪かったから……お願いだから泣き止んでくれ……!」
 それはそれは、必死になってあやし始めた。
 その姿は、まるで新米パパのようだ。
 見ていて微笑ましいその慌て振りに、乗船待ちの人達は笑みを浮かべて温かく見守っているのだった…。
 しかし…。
 当の本人であるクラウドからしたら…。


 見てないで助けてくれ!!!!


 シャインはそのクラウドの心を知ってか知らずか…。
 泣き止む気配を見せないのだった……。





「こうなったら…意地でもクラウドにどんだけ自分にとってティファが必要か自覚させて、それをティファにアピールするように仕向けてやる!!そんでもって二人を仲直りさせて、ラブラブモードに突入させてやるんだ!!」
 ワナワナと震えながら高らかに宣言するお元気娘に、周りの人間は冷たい…もとい、至って冷静な眼差しを向けた。
「あのな…。どうやってそんな状態に持っていくんだよ……?」
「そうそう。それにここまできたら仲直りさせるのも難しいっつうの」
 呆れ返って言葉もない…と言わんばかりに、シドが舵を取りながら投げやりに言葉をかけた。
「どうやって…って、だからこれからその方法を考えるんじゃない!」
 ムッとして喧嘩腰になるユフィに、デンゼルとマリンが顔を見合わせてガックリと肩を落とした。
 ナナキとヴィンセントはそれぞれ明後日の方向を向いている。

 …もう何も期待していない事が見え見えだ…。

 バレットも太い腕を顔の前で振り振り、「あ〜、お前ぇに関わるとろくな事にならねぇぜ…」とぼやいている。
 あからさまに呆れかえる仲間達に、ユフィは益々ヒートアップした。
「なにさ!!じゃあ聞くけど、このままクラウドとティファがぎくしゃくしたまんまでも仕方ないって言うわけ!?ハッキリ言って、あの二人が最悪なコンディションでボーンビレッジに来てみなよ!モンスター退治どころじゃないじゃんか!!!!」

 この言葉に、仲間達はピクリと頬を引き攣らせた。
 そうして、そろそろ……と真っ赤な顔をして仁王立ちしているユフィを見る。
 そんな仲間達に、お元気娘は更に声を荒げた。

「ハッキリ言って、私はごめんだからね!!クラウドとティファが仲直りしないままボーンビレッジに来たりしたら、何が何でもウータイに帰るから!!!!想像してみなよ、あの二人がぎくしゃくしたまんまモンスター退治に参戦した場合をさ!モンスター諸共、私達まで星に還っちゃう可能性大だと思わない!?」

「『モンスター諸共、星に還る』って……。ユフィったら大袈裟だよなぁ…」
「そうだよねぇ…」

 そのユフィの台詞に呆れてデンゼルとマリンがコソコソと囁いたが、大人達は大袈裟だと思っていないようだった…。

 ビシッ…!!!!

 音を立てるのではないかという勢いで身を強張らせると、ギギギ……と音が鳴りそうなぎこちない動作でそれぞれが顔を見合わせた。
 冷静沈着なヴィンセントでさえ、どこか動きがぎこちない…。

「そ、そうだな…」
「今回の任務は危険を伴うし…」
「マリンとデンゼルもいるしな…」
「……リスクは最小限に減らすべきだ…」
「…おいら、まだ星の旅を続けたいし…」

 空々しく言い合う大人達に、子供達は呆気にとられた。
 それは、操舵室にいた他のクルー達も同様だったのだが、そんな奇異な視線を向ける乗組員達に気を尻目に、ジェノバ戦役の英雄達の意見はあっさりとまとまった。

「「「「何が何でも、ボーンビレッジに二人が到着するまでに仲直りをさせる!!」」」」

 拳を振り上げ、そう誓い合う大人達をデンゼルとマリン、それに他のクルー達がポカンと見つめる。
「……それだけクラウドとティファの影響が強いという事だ…」
 至極冷静な声で、ヴィンセントが呆気に取られているデンゼルとマリンに説明した。
「あ……そうなんだ…」
「…まぁ…分からないでもないけど…」
 今や異様な盛り上がりを見せるユフィ達を、デンゼルとマリンは何とも言えない表情で眺めた。
 そのユフィの手には通話中の携帯が虚しく握られている事に、誰も気付いていなかった…。





「ユ、ユフィ……」
 計画の全貌を聞いていたティファは、フルフルと肩を震わせた。
 携帯は相変わらず通話状態。
 その事にシエラ号に乗っている仲間達は子供達も含めて誰も気付いていない。
 そのお陰で、ユフィの計画は携帯から全部だだ漏れ状態…。
 ティファは、ユフィの企てに初めは耳を疑い、次いで呆気に取られ、最終的には怒りがフツフツを湧いて来た。
 しかし…。
 その怒りもユフィの『ある一言』であっという間に霧散し、怒りの為ではない別の要因で顔を真っ赤にさせる事になった…。

「ラブラブモードって……」
 ユフィの台詞が頭の中をグルグル回る。

 そりゃ、ユフィの言う通りクラウドと仲良く……目の前を幸せ一杯に歩いているカップル達のようになれたら……恥ずかしいけど…嬉しい……。
 しかしバレットの言っていた通り、現実はクラウドと仲直り出来るかどうかも非常に怪しい…。

 通話中の携帯からは、まだ仲間達が何やらやる気満々で話し合いをしているのが漏れ聞えてきたが、ティファはそれ以上耳を傾ける気にならず、携帯を切った。
 そして、道端のブロック塀に背を預けて空を仰ぐ。
 目に染みるような青空が視界一杯に広がり、そのまま見ていると何だか吸い込まれそうだ…。
 澄み渡る青空を見ているうちに、火照っていた顔が段々と落ち着いてくる。


 この空は…クラウドにも繋がってるんだよね……。


 当たり前の事を今更ながらにふと思う…。
 ユフィ達が自分達を何とか仲直りさせようと色々画策していた事に、いま一つ素直に感謝しきれない部分もあるのだが、それでもやっぱり嬉しいと思う…。
 子供達も今回の計画について知っていたようだし…。
 知っていてそれに賛成したからこそ、ユフィの言う通りクラウン隊員と共にコスタへ渡航するよう勧めたのだろうから。
 あの聡明で優しい子供達が賛成した…という事は、それほどまでにクラウドと自分の仲を心配したという事に他ならない。

「悪いことしちゃったな…」

 幾度目かの罪悪感に駆られる。

 もっと自分が余裕を持ってクラウドと話が出来たら…。
 もっと自分がしっかりしていたら、せめて子供達にここまで心配されるような事態にはならなかっただろうに…。

「これじゃ…半年前と比べて全然進歩ないじゃない…」

 半年前…。
 正確には半年と少し前になる。
 クラウドが家族に黙って家を出た…。
 どれほど辛かったか…。
 どれほど悲しかったか…。
 そして…。
 どれほど情けなかったか…。

 彼の変化に気付く事が出来なかった自分…。
 出て行った彼を捜し、共に生きていこうと告げられなかった弱い自分。
 彼を捜し出して、拒絶されたら……!?
 そう思って、結局何も出来なかった臆病な自分。
 そして何より…。
 年端もいかない子供達に、そんな弱い自分を隠せず心配かけてしまった情けない自分…。

 その弱くてみっともなくて、子供達の母親代わりとしては失格としか言いようのなかった自分は、それでもクラウドが帰って来てくれた事によって少しは成長出来たと思っていたのに…。

「ぜ〜んぜん、ダメじゃない…」

 ちょっとこじれただけでこのザマだ。
 全く成長していないではないか。
 その為に、仲間達にまで余計な心配をかけてしまっている。


 このままで良いの…?

 本当に…このままユフィ達が立ててくれようとしている計画にまかせっきりにして……本当に良いの?

 自分から何もしないで…それで後悔しない…?


 後悔しないはずがない!


 ティファは大きく深呼吸をすると、携帯を開いた。
 慣れた手つきで操作し、ディスプレイに表示させた名前を見て、再び大きく息を吸い込む。
 そして、通話ボタンを押した…。

 イヤ、押そうとした。
 その時。

 ピピピピピ…。

 手にした携帯が突然着信を告げた。
 本日二度目のその絶妙なタイミングに、再び携帯を落っことしそうになりながら、今回もかろうじて落とす事無く通話ボタンを押す。

「はい」
『やぁ…ティファさん。ユフィさんから聞いたんですが…思わぬアクシデントがあったそうで…』
「ええ…そうなの…」
 落ち着いた声のリーブに、ティファは苦笑を漏らした。
 リーブも携帯の向こうで苦笑しているようだ。『やれやれ…、本当にあなた達二人は…』と、独り言めいた事を呟いている。
「…本当にごめんなさい…」
『いや、良いんですよ。それがお二人のスタイルなんですから』
 おっとりとしたその口調に、心から余計な力が抜けていくのを感じた。
 本日……イヤ、ここ数日感じた事の無いその安らぎにも似た心地に、危うく再び涙が零れそうになる。

 このままの自分と…このままの彼でも良い…。
 そう言ってもらえる事がこんなに嬉しいと感じるなんて…。

 ティファはそっと目尻を拭いながら、
「ありがと…」
 その一言にありったけの感謝を詰め込んだ。

『ティファさんもクラウドさんも真面目で、案外不器用ですからねぇ。たまには良いんじゃないですか、周りに頼っても』
「うん…。もう十分頼らせてもらってるよ」
『そうですか?なら良いんですが…』

 おっとりとした口調で、リーブが本来の用件を思い出したらしい。
『そうそう…。危うく忘れる所でした』
 そう前置きしてWROの局長がティファに告げた内容に、ティファは穏やかな笑みから一変、びっくりした顔になった。

「え…!?クラウドとクラウンさんが…!?」
『はい、そうなんですよ…』
「…………」
『ティファさん?大丈夫ですか…??』
「あ…ええ、大丈夫。ちょっとびっくりし過ぎちゃって…」
『ハハ…、私もですよ…。まぁ、彼にはクラウドさんと接触するなと言っていなかったので、仕方ないのですが…』

 ティファはリーブからクラウドとクラウン隊員がジュノンで一緒になった事を報告した。
 そしてそれに伴い、今回のユフィの計画の目的を洗いざらい話して聞かせたのだ。
 ティファは、携帯から漏れ聞えてきた仲間達のやり取りで知ったばかりだったが、知らない振りをしてリーブの話しを最後まで聞いた。
 そして…。

「じゃあ、クラウドは今、ジュノンにいるのね?」
『はい、そうです』
「……クラウドは…私が怒ってるって思ってるの…?」
『そのようですね。クラウン下士官からの報告では、身体的疲労よりも精神的な疲労の方が大きい様に見えるとの事でした。恐らくティファさんや子供達に対して、かなり申し訳なく思っているんでしょうね』
「そんな…」

 リーブの言葉に、ティファの胸は潰れそうになった。

 自分こそがクラウドに酷い言葉を言わせてしまったというのに…。

「クラウドは…次の船で来るのよね?」
『ええ。その予定になってます』
「分かったわ…。じゃあ…悪いけど私とクラウド、かなり遅れてそっちに行く事になっちゃうけど…」
 申し訳ない気持ちで一杯になりながらそう告げるティファに、
『いえいえ、良いんですよ。むしろ、こっちが遅れて来てくれるようにお願いしたいくらいです』
 と、悪戯っぽい口調で返した。
「…どうして?」
 首を捻るティファに、リーブが答えた言葉にティファは顔を真っ赤にさせた。


「リ、リーブ!!」
『ハハハ。それでは、どうかゆっくり来て下さい』

 ピッ。

 切れてしまった携帯を握りしめたティファの顔は、夕焼け空よりも真っ赤になっていた。




『お二人が仲が悪いと、皆がモンスター退治どころでなくなりますし、何より仲の良いお二人が私達は好きなんですよ。ま、奥手で初々しいお二人も好きですが、もう少し幸せ一杯という姿を見せてもらいたいですからね。ゆっくりお二人で養生してからこちらに来て下さい』


 真っ赤に頬を染めながら…それでも幸せそうに笑みを浮かべるティファを、ビーチにいる男性達がうっとりと見つめている事にティファは気付いていなかった…。




 あとがき

 あっさりと計画をばらしたリーブ…。
 この後でユフィ達の猛反論を受けそうですが、彼ならさらりとそれらをかわしてくれるでしょう(笑)
 さてさて。
 このまま本当に幸せモードに突入出来るのでしょうか…。