「お〜、久しぶりじゃねぇか旦那」 「なんでい、生きてやがったのかよぉ」 「相変わらず別嬪だなあ」 「うるさい、悪かったな。別嬪言うな」 口ではイヤそうに言いながらも常連客たちに親しげに声をかけられ、クラウドは微かに笑っていた。 いつも以上に店内が明るく、活気があるように感じるのはティファの気のせいではないだろう。 子供たちも普段より楽しそうに働いている。 目の前に広がる光景にティファはカウンターの中で微笑んだ。 永久に 2幼い頃、クラウドの周りには誰も居なかった。 強いてあげるなら、母親と一緒に居る姿を見たことがあるくらいだ。 だから今、こうして親しげに『他人』に話しかけられ、笑顔で囲まれている姿を見るのはとても嬉しいし、いつまで経っても新鮮に見える。 仲間たちに囲まれて旅をしている頃でも、時としてフッと眩しくて仕方ないと感じることがあった。 誰かに囲まれているクラウドはとても魅力的に見える。 勿論、独りで佇む姿も気高く、凛としているように見えて素敵なのだが…。 そこまで考えてティファはハッと我に返った。 カウンターに座っていた馴染み客がニヤニヤと笑っている。 「…えと…なんですか?」 「んにゃ、別に〜」 明らかに『別に』ではない雰囲気にティファは頬を薄っすら染めた。 クラウドを見ていた姿を見られていたのだろうと察するに難くない…。 照れ隠しにおかわりはどうか訊ねると、ニヤニヤ笑ったまま「もらおうか」と言われた。 「はい、どうぞ」 新しいジョッキをその客の目の前に置くと、中年のその男はニヤッと笑ったまま目元を和らげた。 「あぁ、ありがとよ。それにしても」 「はい?」 「やっぱりあれだな、ティファちゃんも『女』だな」 え?と首を傾げるティファに、男は泡の残る注ぎたてのビールを美味そうに半分ほども空けてからティファを見た。 「旦那がいない普段の時よりも艶っぽい」 艶っぽい、という表現にティファは耳まで真っ赤になった。 そんなつもりはなかったのだが、やはりそうなんだろうか? クラウドが傍にいるとどうしても気持ちが弾んでしまう。 それが、常には押さえ込んでいる『女』を露にしてしまうほど…なのだろうか? 仕事(セブンスヘブン)をしているとき、ティファは『女』を出さないように気をつけている。 『女』を出さない、というのは、『女』を武器にして仕事をしない、という意味だ。 酒を出す夜の営業という仕事柄、『女』を武器にした方が得をする場合も多いだろうが、それをしないように断固として己に戒めていた。 『女』を武器に営業するということは、相手の『男』の部分を刺激するということ。 とてもじゃないが、変に期待されても困るしそこまでして営業成績を上げようとは思わない。 そうでなくとも、ティファが『女』を殺して営業していても勘違いする客は後を絶たないし、正直それだけで手一杯だ。 それなのに、クラウドがいるというだけで封じているはずの『女』が出てしまうというのは、本当なら考えものだ。 しかし…。 「ほらな、また『イイ女』の顔してる」 「え!?」 チラッとクラウドへ視線を投げただけのつもりだったのに、気がついたら見つめていたティファに、馴染み客が笑う。 頬を押さえながら「からかわないで下さい!」と恥らうと、ますます笑われた。 「ティファ、注文」 「え!?」 たった今まで客たちに囲まれていたはずのクラウドがカウンターにやって来ていてビックリする。 ドキドキと駆け足になる鼓動を抑えるかのように片手を胸に押し付けながら、 「うん、分かった」 ぎこちなく笑みを返すと何故かクラウドは視線をフイッとカウンター席の方へ逸らしてしまった。 馴染み客がまた笑った声がしてティファの鼓動は落ち着くどころか更に加速した。 恥ずかしいから顔を上げれなくなったティファは、クラウドの受けてきた注文の品を作り始めた。 実に手際良く、一心不乱に作るからティファは気づかない。 クラウドが馴染み客をジトッ…と睨みつけたのも、睨みつけられた馴染み客が意味深に指一本だけでクラウドを招いたのも、その招く仕草に眉間のしわを深くしながら大人しく彼の傍にクラウドが行ったことも…。 そして…。 「旦那、ちゃんとティファちゃんを大事にしてやれよ」 そう囁かれたクラウドが目を丸くした後、苦笑交じりに微かに微笑み、小さく肩を竦めてそれに応えたことも気づかなかった。 * 「なぁティファ。そろそろ閉めないか?」 そっと囁いてきたデンゼルにティファは店の時計を見た。 勿論、いつもならまだ閉める時間ではない。 しかし今夜は特別だ。折角クラウドがいるのにお店を開けて一日が終わるのは勿体無さ過ぎる。 「そうね、そうしようか」 しゃがみ込んでデンゼルの視線に合わせたティファに、少年がパッと顔を輝かせた。 カウンターから顔をひょっこり出して、ドア近くにいたマリンに大きく頷く。 デンゼルの合図を待っていたマリンがニッコリ笑ってCloseの看板を外に吊るそうとドアノブに手を伸ばした。 が、一瞬早く、外からドアが開けられる。 新しい客の来店に、マリンだけでなくデンゼルも戸惑った。 戸惑いながら「いらっしゃいませ」と出迎え、困ったようにティファを見る。 新しい客は3人連れの若い女。 男なら、遅くまで飲む傾向にあるためお引取りをするところだったが、女ならまぁ大丈夫だろう…と、ティファは苦笑交じりに微笑みつつ頷いた。 「いらっしゃいませ、こちらへどうぞ」 自らその客をテーブル席に誘導する。 マリンに目配せするのも忘れない。 心得たマリンはコックリ頷いてドアの外に看板を吊るしに一瞬外へ出てすぐ戻ってきた。 「まずドリンクのご注文をお願いしたいのですが、いかがいたしましょう?」 ニッコリ笑っていつもの台詞を口にすると、彼女たちは楽しげに笑いながらドリンクメニューをああでもない、こうでもない、と言い合いながら三種類のカクテルを注文した。 「はい、では少々お待ち下さいませ」 一礼してテーブルから離れる。 丁度カウンター席に座っていた馴染み客がクラウドに勘定をしてもらっていた。 目が合うと中年の男はニヤッと笑った。 その笑みが彼にとっての親愛の情がこもった笑みなのだ、と分かっているから不快にはならない。 「じゃ、またなティファちゃん。今夜は特に美味かったよ」 「もう〜!」 含みのある言い方に頬を染めながら少しだけ拗ねたような顔をすると、楽しそうにカラカラと笑った。 「じゃあな、旦那も元気で。たまには店に顔出せよ?でないと…知らないぞ〜?」 「……分かってる……」 からかうような客の言葉にクラウドが憮然と答える。 その光景が、かつての旅をティファの脳裏に蘇らせた。 なんとも言えない郷愁にも似た気持ちがこみ上げる。 「ティファ?」 不思議そうな声に下を向くと、クリクリとした目でじっと見つめているマリンがお盆を持って立っていた。 ごめんね、と謝ってからどうしたのか訊ねると、女性客に持っていくカクテルを取りに来たのだ、と闊達な答えが返ってきた。 微笑みながらマリンの頭を軽く撫で、すぐに作る旨伝えると少女はいつものようにニッコリ笑った。 その笑顔に釣られて笑みが深くなる。 手早くカクテルを作り上げると、マリンの持っている盆に載せ、 「お願いね」 小さい背に一声かけた。 そうして、改めてたまっている注文の品を作るべく取り掛かったティファの耳に、女性客たちの少し黄色い声が飛び込んだ。 何とはなしに目を向けたティファは、その光景にドクリ…と1つ、不快に心臓が跳ねた。 「じゃあこの前、ナンパで困ってるのを助けてくれたこと、覚えてないんですか?」 「……その…」 「それってある意味すごいですよねぇ」 「……ごめん…」 「やだ〜、違いますよ。責めてるんじゃなくて、もっとこう、『俺が助けてやったんだぞ』って自慢げにしてもいいのにそういうのが全然無いから逆にすごいって意味ですよぉ」 「……?」 「そうそう。だってほら、男の人ってそういう『俺が!』っていうの、持ってるじゃないですか。そういう偉そうぶったところがないっていうのがすごく新鮮だなぁって」 「…そう…なのか…?」 「そうですよ!全然偉そうぶってなくて…すごく素敵!」 「「キャ〜!言っちゃった〜!!」」 女性客に捕まっらしく、話しかけられて困惑しているクラウドの姿に一瞬で浮き立っていた気持ちが消し飛ぶ。 代わりに、胸いっぱいの不快感がこみ上げてきた。 クラウドが素敵な男性(ひと)だということはティファにとって至極当然のことで、改めて他の人から言われるまでもない事実だった。 それを、彼女たちは嬉しそうに笑いながら口にした。 それだけでも腹立たしいのに、困ったようにしながら彼女たちから逃げようとする素振りすら見せず、オロオロとその場に居続けるクラウドにも腹が立つ。 なに…あの人たち…。 不快感で胸がざわめく。 こみ上げてくる苛立ちは大き過ぎて抑え込めず、眉間にしわが寄った。 思わずカウンター内のシンクの端を握り締め目を眇めたティファに、カウンター席に座っていたまだ若い男の客が短く口笛を吹いた。 ハッとして顔を向けると、ほろ酔いを少し通り過ぎた赤ら顔で男がニヤニヤ笑っている。 「ティファちゃんもそんな顔、するんだ〜」 先ほど帰ってしまった馴染み客とは違い、不快感を煽るからかい口調とその言い回しは、逆にティファを一瞬だけ冷静にした。 「『そんな顔』って?」 営業スマイルを貼り付けながら小首を傾げて見せる。 しかし、そのにわか仕込み的な冷静さも、男の次の一言で簡単に消し飛んだ。 「嫉妬に狂った女の顔」 薄茶色の瞳を見開き、男を見る。 横っ面を思い切り張り倒されたほどの衝撃だった。 逆に男は、驚き固まるティファの姿を見て悦に入ったような笑いを漏らした。 「え?なにその顔。無意識〜?」 言いながら、カウンターへ身を乗り出しティファへ少しでも近づこうとする。 幸いだったのは、カウンター席でも端の方だったのでティファに近づいたとしてもその距離は広い。 逆に言えば、カウンターの他の席には他の客たちが座っており、この会話が彼らに聞かれているということだ。 しかし、酔っている男にはそもそも聞かれてマズイ、と思う気持ちなどさらさらなく、むしろ今までティファと親しく話すチャンスを伺っていたのに『女』を抑えて営業していたティファに隙がなく、今日まで無為に過ごしていたという鬱憤があった。 ようやく巡ってきたチャンスに舞い上がっている。 男はカウンターテーブルに肘を着き、無理な体勢で顎を乗せた。 「いいねぇ、ティファちゃんの『女の顔』、色っぽいよ」 ティファは鋭く息を吸い込み唇を引き結ぶ。 咄嗟の『かわし』の言葉が思いつかない。 内心、激しく動揺しながらも身体は硬直したように動けないティファに、調子に乗った男が更に口を開く。 「ねね、ティファちゃんもさ、たまには羽目外してみたら?」 クラウドさんだって女の人に囲まれてまんざらでもなさそうだしさ〜。 続けられた言葉に思わず顔が歪む。 チラリ、と伺い見ると、クラウドはまだ女性客たちのテーブルに着いていた。 改めて女性客たちを見る。 年相応に明るく着飾った彼女たちはとても華やかで可愛かった。 中でも、熱心にクラウドへ笑い、言葉をかけている女性は茶色いセミロングの髪をフワフワと遊ばせ、翡翠色の瞳をキラキラと輝かせていた。 髪と目の色だけを見れば、今は亡き親友と同じ…。 顔の造形は全く違うが、それでも十分その女性客は可愛くて魅力的だった。 よくよく見れば、クラウドも他の2人の客よりもその茶色の髪の客と視線を合わせることが多いように感じる…。 「ティファちゃ〜ん?」 男のからかった声音にほんの少しの苛立ちが混ざっている。 ティファは無理やり女性客に囲まれているクラウドから視線を引き剥がすとニッコリ笑った。 「ごめんなさい。もうそろそろ閉店しますね」 その男だけでなく、驚き目を丸くする客たちへティファは店主としてラストオーダーに移ると宣言した。 笑っているのに全く目が笑っていないティファの姿に、子供たちがビックリして顔を見合わせて不安そうに眉尻を下げ、クラウドは我に返って彼女たちから慌てて注文を取りはじめた…。 当然のように女性客たちは不満そうな顔をしたが、ティファは謝罪を口にしながらもその抗議を完璧な営業スマイルで真っ向から跳ね返したのだった。 * 気持ちがざわついて落ち着かない。 店をするのが楽しいと思っていた日々が遠い昔のようだ…と、ティファは苛立つ感情に翻弄されながら思っていた。 今までと何が違うのか、それは考えるまでもなく目の前にあった。 「今夜もクラウドさん、いないんですか?」 「えぇ、今日も仕事ですから」 「大変なんですね…」 「そうですね」 顔には笑顔を貼り付けたティファは淡々とその客に答えていた。 あの日。久しぶりにクラウドが店を手伝った日に来た3名連れの女性客。 そのうち、クラウドへ熱い視線を送っていた茶色の髪の女性がたった1人でカウンター席に座っている。 彼女は明らかにクラウドへ恋慕を抱いていた。 無理もない、とティファは思う。 自分がピンチのときに颯爽と現れた男の人に気持ちを傾けてしまうのは至極当然だ。 それも、あれだけの容姿をしていたら憧れが恋に変わっても不思議はない。 だが、それでも面白くなかった。 この女性客は、クラウドの見た目のカッコ良さと腕っ節に気持ちを傾けているに過ぎないのだから。 「でも…本当に素敵…ですよね、クラウドさん」 夢見るような瞳でそう言った彼女に、だがしかしティファはあえて言葉を返さなかった。 下手に口を開くと、彼女を罵倒してしまいそうだったからだ。 アナタに何が分かるの? クラウドが素敵なのは外見だけではなく、その内面こそなのに。 無愛想で不器用で、でも誰よりも繊細で優しい男性(ひと)なの。 それを知らないくせに、知ったような顔をして『素敵』だなんてよくも言えたわね。 胸の中で彼女を罵倒するティファに、不意に彼女がはっきりとした意思を持って顔を向けた。 「あの…ティファさん」 夢見るような表情から一変し、真正面から挑むようにまっすぐ見つめてくる彼女にティファも営業スマイルをスーッと消した。 丁度、オーダーを取って帰ってきたマリンがギョッとカウンター入り口で立ち止まり、近くにいた客がコソコソッと「修羅場か…?」と声を潜めて囁いた。 マリンだけではなくデンゼルもまた、店の端にいながらその瞬間を見ていた。 母親代わりのここ最近の様子を案じていたこともあり、意識が常にティファへ向いていたのだ。 そうして、ついに訪れたその瞬間に我知らず、生唾を飲み込む。 「クラウドさんとティファさんは…ご夫婦…じゃ、ないんですよね?」 「…えぇ、違います」 問われた質問に、ティファの胸が軋む。 そして、あからさまにホッとした女性客へ激昂しそうになり、カウンター席から見えないようにシンクの下で強くこぶしを握った。 それがなに!? クラウドと結婚していないからって、アナタに勝ち誇った顔をされる謂(いわ)れはないわ! クラウドのことをほとんど知らないアナタに、そんなこと聞かれる筋合いなんかないじゃない! 今度、無礼なことを口にしたら叩き出してやる!と、心の中で息巻いたティファだったが、しかし彼女の質問はそれで終わりだった。 1人、納得したような顔でティファの作ったカクテルを口に運び、薄っすらと頬を染めて微笑む女性客に、ティファは言いようのない敗北感を感じた。 それを認めたくなくて慌てて否定するが、1度感じてはっきりと言葉にして表した感情は、そうそう簡単に消えてくれそうにない。 なんで…こんな思いを味わわないといけないわけ!? それもこれも、クラウドがこの人にイイ顔するからじゃない! この人も見てて分からないわけ?クラウドには私がいるのに…!! 「ティファ…」 おずおずと声をかけてきたマリンに、いつもなら荒れ狂う感情に苛まれていたとしても笑顔らしきものを貼り付けるティファだったが、それに失敗する。 歪んだ顔でマリンを見下ろすと、少女はビクリ、と怯えたように身体を震わせた。 その姿に、自身への不甲斐なさよりもマリンに苛立ちが芽生え、心の片隅で驚く…。 そう、ティファはマリンに苛立った自分に確かに驚いた。 その驚きは小さかったが、驚いたことにより自分の中に残っていた理性を手繰り寄せ、急速に膨らませた。 ほんの瞬きほどの一瞬で、ティファは荒れ狂う感情全てにふたをする。 「ごめんね、なに、マリン?」 一瞬で自分の気持ちに一時的なケリをつけられたのは、これまでにティファが生きてきた環境ゆえに出来たことだ。 目の前で親を殺され、故郷を焼かれ、自身も死に掛けて這い上がった。 そして、星を救うための活動を行いながら生きるために必死に働いたあの日々。 感情に任せて行動することがいかに愚かなことか、あの日々で学んだ。 だから、ティファは己の感情を瞬時に殺す術を自然と身に着けていた。 身に着けていたからこそあの旅の最中、初めて出来た同性の親友が幼馴染とどんどんその関係を深めていく姿をただ黙ってなんでもないような顔をして見つめていることが出来たのだ。 たとえ、心の中で泣いていたとしても、決して表情には出さなかった。 落ち着きを取り戻したティファはマリンの視線に合わせてしゃがみ込んだ。 少女は躊躇いながらも結局首を振り、小さな声で注文の品が滞っていることを告げた。 「あ、本当だ。ごめんね、すぐ作るから」 笑って手早く作り始めたティファを、マリンは心配そうにただ見上げることしか出来ず、ティファもまた、マリンの心配そうな視線を強く感じながらも、余計なことを考えまいと一心不乱に手元へ集中するしか出来なかった…。 そうしないと、醜い心が自分の全てを飲み込んでしまいそうだった。 まさか、マリンに苛立ちを感じてしまうとは、信じがたい。 だが、確かに自分はマリンへ苛立ちを覚えた。 それは、八つ当たり以外の何者でもないと、冷静になった今では分かっている。 こんな…こんな私の姿がもしもクラウドにバレたら…? 1つの可能性が脳裏を過ぎり、身が震えるほどの恐怖が走った。 明るく、美人だったエアリス。 だが、それだけではなく、彼女はどこまでも凛として、清廉な女性だった。 だからこそ、クラウドはエアリスに惹かれていた。 その彼女がいなくなったから現在(いま)、女の中で一番近い存在として彼の傍にいられるのだ。 そのことをティファは忘れていた。 だから、ティファは誰よりも清く、美しくなくてはならないのだ、エアリスのように。 それなのにエアリスと同じ髪、同じ目の色を持つ女性客の登場で、今まで抑えていた醜い『女』の部分が顔を出した。 このままじゃ…いつか……。 クラウドを失ってしまうかもしれない、今度こそ。 家出をしていた間、クラウドが身を寄せたのはエアリスの許だった…。 それを忘れたことはなかったのに、それが何を意味するのかを忘れていた…、いや、考えないようにしていた。 そして、今、目の前にエアリスと同じ髪色、同じ目の色を持つ女性客が現れた。 それが、星の中にいる彼女の意思のような気がして、折角ふたをした感情がまた顔を覗かせた。 エアリス……! クラウド…どうして…! やっぱり…エアリスでないとダメなの…? こんなに愛してるのに…!! 久しく感じていなかった大好きなはずの親友に対する嫉妬が再び芽吹いた。 |